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COREZOコレゾ「亡父からの最後のメッセージと受け止め、食とまじめに向き合って、完全無添加・農薬不使用の食材だけを使い、一から仕込むオーナーシェフ」賞
清水 勝久(しみず かつひさ)さん
プロフィール
愛知県小牧市
Chez ChouChou オーナーシェフ
動画 COREZOコレゾチャンネル
清水 勝久(しみず かつひさ)さん/自然派レストラン Chez ChouChou (その1)「自然派レストランを始めた理由」
清水 勝久(しみず かつひさ)さん/自然派レストラン Chez ChouChou (その2)「食育を通じて料理人として伝えたいこと」
受賞者のご紹介
2017年9月某日、多くのコレゾ受賞者の皆さんが出店するという、「美の食祭2017in福井」がおもしろそうなので、日東醸造の蜷川社長に連れて行っていただいた。
そのイベントは、キャンプ場やログコテージ、BBQ施設等がある自然いっぱいのアウトドア施設で開催され、参加費数千円なのだが、大人も子どもも食べ放題というなんだかよくわからない大盤振舞いのイベントで、例によって、ブラおやぢこと、蜷川社長と昼間から呑んだくれていたのだが、そのBBQの食材には、ひと手間もふた手間も手が加えられており、どれも美味しくて、つい鯨飲馬食状態に…。
その夜は、ログコテージに雑魚寝で宿泊することになっていて、その夜には、イベントに出店した皆さんを中心に打ち上げもあると云うので、ほぼ満腹状態だったのだが、そちらにも参加させてもらった。
こちらもBBQ施設が会場だったのだが、仔羊のモモ肉、活オマールエビ、カモなど、高級食材のオンパレードで、それらのコダワリの食材を誇らしげに披露しておられたのが、シェ・シュシュ(Chez ChouChou)のオーナーシェフ、清水 勝久(しみず かつひさ)さんだった。
どれもこれも美味しく、昼間、食べ過ぎ、飲み過ぎたことが悔やまれた。
同席した黒怒の眞田社長から、シェ・シュシュは、完全無添加・農薬不使用の野菜しか使わないお店で、時々、休日に昼呑みに行っておられると伺い、それは是非行ってみたいと、11月某日、眞田社長に引率いただき、蜷川社長、堀田さんとご一緒にお邪魔した。
名古屋駅から地下鉄を乗り継ぎ、約40分、愛知県小牧市にあるお店に入ると、日曜日の1時過ぎだったが、ほぼ満席で、店内の棚には、見覚えのあるコレゾの皆さんの調味料や食材が並んでいた。
オードブルから締めのマグロスープのラーメンまで、フランス料理を基本に自由自在の発想で、手を替え品を替え、どれもこれも美味しく、ビールに始まり、シャンパン、白赤ワインと進む、進む…、幸腹感に満たされ、至福の時間を過ごさせてもらった。
―小牧でお店を始められたのは?
生まれ育った小牧でお店を始めて15年、6年程前には名古屋に移転しようと色々と物件を探していましたが、食育を始めるなら地元から、と思い移転を中止しました。
現在は、月に1回、お店で「親子お料理教室」を開催し、毎年10月の第4週には「味覚の授業」の講師として小学校で授業を行っています。日々、口にする“食”に関して、親が気付き気を付けてあげなければ、子どもたちは自分たちでは選べません。世のお母さん、お父さんたちにそれを伝えられたらいいな、と思っています。
お子さんにアトピーとかアレルギーがあった場合、病院に連れて行く親と、自分で色々調べる親に分かれます。調べる方の方は、それなりの知識を持っておられて、努力もしておられますが、外食にはほぼ行けません。でもそんなご家族も安心して食事が出来るお店でありたい、と心掛けています。
当然ながら、お店では既製品は使いません。仕込みには時間が掛かりますけど、自分の味として責任を持って提供することが料理人の僕でいる楽しみでもありますから…。昔ながらの製法で丁寧にまじめに作られた食材や調味料の価格は高いと感じるかも知れません。安価な食材や調味料と比べればですが…、本来比べるべき物では無いはずです。
料理教室に来た子どもたちはウチの野菜をモリモリ食べます。お母さんたちに聞くと普段は野菜を好んで食べない子も多いらしいですけど、子どもたちは、本能的に身体に良いものを分かっているのだなと感心します。
僕が使っていこうと決めた食材と調味料がここ二年くらいで揃いました。この先も増えるでしょうけど、選ぶ基準は“身体が喜ぶ”が大前提です。同じ方向を向いている生産者の方々と出会えたのが、料理人としての財産です。またその方々から繋がる新たな出会いに本当に感謝しています。
僕の店の食材や調味料の話を飲食店をやっている人たちに話すと、「すごいこだわりだね」と言われることが多いのですが、あまり嬉しくありません。それが普通だと思いますし、料理人であれば皆そうなって欲しいと切に願っています。
化学調味料無添加、抗生剤を与えて育てていない肉、農薬を一切使わず育てられた季節の野菜、養殖ではない天然の魚、無添加のカトラリー、大地や海を汚さない洗剤。それが普通になれば日本の医療費は格段に減ることでしょうにね。楽をするとか儲かるからとか…、料理人ではなく調理人が多い世の中なのが悲しいです。
―完全無添加・農薬不使用の食材しか使わないと決められたきっかけは?
そもそも、料理人としての僕がこの方向に向かうようになったのは、5年前(2012年)の父の死がきっかけでした。前立腺がんが見つかった時にはステージ4で、手術は出来ないと最初に言われました。闘病中は癌と薬について色々と調べました。癌治療に使われるホルモン剤と抗がん剤。主治医にまだ試していない薬のことを質問したりして…。父親の苦痛が少しでも和らげば良いかと思ってのことでした。
父の死後、視点を変えて調べていくと様々なことに気付きました。人間の身体は食べたものによってつくられている。食に関する勉強を始めると、図らずも今お付き合いしている生産者の皆さんとお知り合いになれました。
食に関する今の知識が当時あれば、父に抗がん剤など使わせなかったし、完治しないまでも、癌と共存しながら今も生きていてくれたのではないかと思います。
悔やんでも後戻りは出来ません。父が最後に教えてくれたメッセージだと受け止めて、これからも僕は食にとことんまじめに向き合いたい、「美味しい」と食べて下さる皆さんの記憶に残る味を提供していきたい、と思います。
このシェ・シュシュのように、真摯にお客様の身体や健康のことまで気を配って、料理を提供するお店はどのくらいあるだろう?
TVで有名レストランや料理店等の厨房に業務用のソース缶やポリタンクに入った醤油等の調味料等が並んでいるのを見るとガッカリするが、原価率を下げ、生産効率を上げ、味の一定化を図り、お客様により安価に提供するための企業努力をしておられるのだろう。
より安価に提供されることを求める消費者のニーズがある限り、本来そうあるべきことが当たり前にできなくなり、全てに経済効率を最優先する現代社会の構造は変わらない。
昔ながらの製法で丁寧にまじめにつくられた食材や調味料はそれ相当の価格(その手間暇を考慮すると大量生産品よりむしろリーズナブルなはず)となので、必然的に原価は上り、仕込みに時間をかければ、いきおい、経営を圧迫するだろう。
清水シェフは、「僕は、経営者としてはレッドカードです。」とおっしゃるが、まじめな生産者やサーピス提供者、料理人の皆さんの良心を守れるかどうかは、結局、私たち消費者次第なのである。
COREZOコレゾ「亡父からの最後のメッセージと受け止め、食とまじめに向き合って、完全無添加・農薬不使用の食材だけを使い、一から仕込むオーナーシェフ」である。
最終取材;2017年11月
初版;2017年11月
最終編集;2023年4月
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