山下 政男(やました まさお)さん他/彫金工房「月」・カフェ「銀」

COREZOコレゾ「昭和レトロな洋風建築を再生し、彫金工房、カフェサロンとして再利用、生徒さんが笑顔を取り戻す教室も運営する仲良し親子」賞

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山下 政男(やました まさお)さん

山下 眞澄美(やました ますみ)さん

山下 大輔(やました だいすけ)さん

山下 翔太(やました しょうた)さん

プロフィール

石川県加賀市大聖寺

「彫金工房月」、「カフェ銀」経営

ジャンル

町屋再生、再利用

手工芸

経歴・実績

受賞者のご紹介

現在も城下町としての面影を残す加賀市大聖寺地区

加賀市大聖寺地区は、山代温泉や山中温泉を有する加賀温泉駅の隣駅にあり、江戸時代の町割りをそのまま残し、現在も城下町としての面影を残す町並みが形成されているが、中心市街地の衰退や空き家の増加、高齢世帯の増加などにより、古い町並み景観やコミュニティの維持が危うくなっているなど、地域活力が低下している。

大聖寺地区 町屋再生計画

加賀市では、町屋による「歴史的景観の保全」、「良好な住環境の実現」、「まちなかの賑わい創出」を目指して、平成18年に「大聖寺地区 町屋再生計画」を策定し、町屋の活用・再生に向けた取り組みを行ってきたそうだ。

大聖寺地区 町屋再生第1号

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その町屋再生第1号で、彫金工房と教室、カフェサロンを営んでおられる山下 政男(やました まさお)さん、眞澄美(やました ますみ)さんご夫婦を大歩危峡まんなかの大平社長がご存知とのことで、同行させて頂いた。

以前は歯科医院として利用されていた、町屋というより、昭和初期の洋風建築の建物を平成18年にレトロな雰囲気を残す「カフェ銀」と「彫金工房月」のアトリエとギャラリー、彫金教室として再生されたそうだ。奥には住居として使っておられる純和風建築の母屋がある。

日本建築の技法を使って土壁で建てられた洋館

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アールの付いた屋根を持ち、日本建築の技法を使って土壁で建てられた洋館で、当時のままの姿で現存している例はほとんどなく、とても珍しいらしく、再生後、マスコミに報道されると、建築関係者が数多く見学に来られるそうだ。

加賀市から紹介を受けた候補の町屋、古民家が6軒あったそうだが、この昭和レトロ風の洋館が山下さんご夫婦のイメージにピッタリで即決だったという。

当時の面影を残す工夫

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不思議なご縁で元歯科医院をアトリエにするにあたり、なんとか当時の面影を残せないだろうかと考え、以前使用されていて、錆びたり、壊れたり、再利用できない物はオブジェとして、また、使える道具は丁寧に磨き、手入れをして再利用されている。

内装もできるだけ建てた当初のスタイルに戻し、当時カルテの受け渡しをしていた窓口がそのまま残っていたり、歯科医院としての面影が残されている。

不思議な共通点がある歯科と彫金

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歯科と彫金、一見、全く違うように思える二つの職業には不思議な共通点があり、歯科で使用する歯垢を削ったり、歯を削るリューターや充填物を詰める道具等は、彫金の作業でも重要な道具で、銀で歯の詰め物を作るかアクセサリーを作るかの違いなのだそう。

南向きの窓から陽が入り、6人が座れる円形の作業台のある部屋は、かつての診療室で、彫金教室として利用されていて、生徒さんがつくりたいものをつくり、その作りたいものを完成できるよう手ほどきして、早い段階で作品を作る喜びを味わってもらうスタイルが人気のようだ。

古民家再生の講演で彫金の実演

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この洋館の再生と再利用で話題になってから各所から話を聞きたいと声がかかるそうだが、お父様の政男(まさお)さんはシャイで人前で話すのは苦手なので、社交的な長男の大輔(だいすけ)さんが広報や講演を担当しているそうだ。

「ただ、話すだけでは退屈されるかもしれないと思い、いつも道具を持参して、彫金の実演もしています。それで興味を持って教室に来て下さる方も増えています。それに、モノづくりに没頭すると、雑念や嫌なことも忘れることができるようで、登校拒否や引きこもりのお子さんも通って下さって、笑顔を取り戻されるお役にも立っているようです。」と、大輔さん。

奥様がデザイン、ご主人が彫金を担当する、「ママブランド」等のブランドをはじめ、オリジナルなジュエリーやアート作品など様々なアクセサリーを取りそろえておられ、首都圏からわざわざ買いに来る方がたくさんいらっしゃるほどの人だそうだ。

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また、大輔さんと弟さんの翔太さんが立ち上げたロックなテイストの「DEVIL JOKER」は、ネットやイベントでの販売が中心だが、プロならではの凝った細工と手ごろな価格が若者に人気で、ネットで製作予定の作品を掲示するだけでも、注文が殺到する商品もあるらしい。

貸主さんも住まなくなった家を見事に再生して、以前の面影を残しながら、再利用されていることにとっても喜んでおられるようで、山下さん一家とまるで親戚のような親しい付き合いをされているとのこと。

親子4人と大輔さんのお嫁さんも本当に仲が良いそうで、いつもニコニコ、今でも息子さんたちにイタズラをして喜んでおられる、お父様のお人柄がそうさせているのだろう。

「カフェサロン銀」は、朝10時から18時まで営業しており、同じ建物内にある工房は、創作中でも、自由に観ることができるそうだ。

まだ、世間にはあまり知られていないが、山下さんご一家は、新たな加賀市大聖寺地区の魅力を創っている。

COREZOコレゾ「昭和レトロな洋風建築を再生し、彫金工房、カフェサロンとして再利用、生徒さんが笑顔を取り戻す教室も運営する仲良し親子」である。

 

COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.11.25.

最終取材;2015.11.

最終更新;2015.11.25.

文責;平野 龍平

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