中山 拓郎(なかやま たくろう)さん・かんなさん/チャヴィペルト

COREZOコレゾ「毎日の食のことだから、おいしくて安全なものを、首都圏のベッドタウンで、住民だけでなく、地域の学校給食にも新鮮な特別栽培農産物を供給する近郊農家」賞

中山 拓郎(なかやま たくろう)さん

中山 かんな(なかやま かんな)さん

プロフィール

埼玉県県草加市

株式会社ディジーフレッシュ

chavipelto(チャヴィペルト)

受賞者のご紹介

COREZOコレゾ「毎日の食のことだから、おいしくて安全なものを、首都圏のベッドタウンで、住民だけでなく、地域の学校給食にも新鮮な特別栽培農産物を供給する農家」賞

日東醸造の蜷川社長から地域の学校給食に「特別栽培農産物」を供給している農家があると聞き、ご一緒に訪問した。

—中山さんのご実家が農家なのですか?

そうです。草加で何代も続く農家で、父が亡くなって、今は、母と私が中心となって農業をやっています。

—農地はどちらに?

この店のすぐ隣と少し離れたところにもありますが、移動が大変なので、主に隣の農地で年間を通じて、約70種類の野菜を育てています。今や、この辺りは東京のベッドタウンで、家やマンションが立ち並んでいますが、私が子供の頃は、駅までずっと田畑でした。この店の裏もウチの畑でしたが、相続対策で手放して、今はマンションが建っています。

—こういう住宅地に畑があるのが、不思議な風景ですね。安全な野菜作りに取り組んでおられるようですが、いつ頃からですか?

元々、父の代から、市場価値を付けるために、できる限り、化学合成肥料や農薬を使用しない栽培をしてきましたが、私の代になって、さらに進めて、安全な野菜作りを基本に、人だけでなく、地球にもやさしい野菜作りをしています。

—具体的には?

多量の化学合成肥料や農薬を使用すると、生き物の共存や環境を破壊しかねません。実際、気になって、栽培に使用する地下水の水質を調べたことがあるのですが、それらで汚染されたと推測される成分が混じっていました。土だけでなく、地下水まで汚染されていたのです。

それで、さらに深く掘り下げて、くみ上げ、安全性を確認した地下水を利用しています。

ウチの野菜は、「特別栽培農産物」と云って、無化学肥料・減農薬栽培です。鳥や虫が害虫を食べに来てくれる食物連鎖の環境を維持し、野菜のくずなどを堆肥にしたり、糠やおからや落ち葉などや有機質の肥料を使ったり、自然なものから力を得てそれらを活用しています。

農薬適正使用アドバイザーを取得し、正しい知識を用いて管理しており、埼玉県の特別栽培農産物の基準から、さらに約2割ほど厳しくし、害虫忌避資材を使用し、出来るだけ農薬を使用しないようにしています。どうしても使用が避けられない場合には、主に食物成分由来・微生物農薬・特定農薬を使用しています。

農薬と云うと、散布物や殺虫剤をイメージされると思いますが、天敵(テントウムシ、寄生蜂)を畑に放すことなども、現在の法律では「特定農薬」と言い、農薬を使用している、という規制に入ります。非散布型フェロモン資材なども「農薬」です。購入した種に使用されている農薬も栽培中の使用の回数となります。

—害虫忌避資材とは?

黄色蛍光灯、害虫捕獲シート、フェロモントラップ、防虫ネット、マルチなどを使用します。

—非散布型フェロモン資材とは?

害虫のメスが放出するフェロモンを利用し、オスをトラップで補殺したり、交信を撹乱して防除する方法です。そのフェロモン剤を散布しなくても「農薬」の扱いになります。

—F1の種子のほとんどが種子消毒されている、と聞いたことがあります。

その通りです。種子消毒には農薬が使われているので、使用回数に入れることになります。

—植物のアレロパシー効果とは?

「アレロパシー」というのは「他感作用」と訳されており、その定義は『植物から放出される化学物質が、他の植物や微生物・昆虫に対して阻害的あるいは促進的な何らかの作用を及ぼす現象』とされています。我が国では、空き地や休耕地等においてセイタカアワダチソウが優先的に繁茂する場合に、放出された化学物質により他の植物生育を抑制する作用が代表的な事例として知られています。

隣同士に植えられた植物がお互いの成長に影響を与え、農薬を使用しなくても上手に育つように、コンパニオンプランツやバンカープランツを利用して天敵を増やし、天敵に害虫を駆除してもらいながら害虫の被害を最小限に抑えるようにしています。

野菜には、それぞれ集まりやすい特定の虫がいて、出やすい病気なども異なるので、こうした特性を利用して、違う種類の野菜を一緒に栽培することで、病害虫を抑えたり、生長を助けると云うような、良い影響が出る組合せを「コンパニオンプランツ(共生植物)」と呼ばれています。

トマトのハウスの入口にバジルを植えるのもその一例で、キク科、セリ科、シソ科など、強い香りを持つ野菜を用いると、それを嫌う害虫は近づかなくなり、近くで育つ他の種類の野菜も守られ、ネギ科の野菜は、根に共生する微生物が抗生物質を出して、ウリ科、ナス科などの病原菌を減らします。

一方、バンカープランツは、害虫の天敵を集めるために育てる植物のことで、おとり作物、天敵温存作物ともよばれています。天敵を「バンカー(銀行家)」プランツに預けておき、

必要な時にその効果を引き出す(=害虫を捕食してもらう)ところから名付けられたという説があります。

例えば、ナスと麦は、相性が良い作物同士で、まず、麦にアブラムシが集まり、アブラムシを食べにアブラムシの天敵であるナナホシテントウがあつまり、麦のアブラムシを食べるついでにナスのアブラムシも食べてくれ、麦につくアブラムシは、ナスにはつかないので、全く問題になりません。

自然の中のサイクルを作り出し、失われていた食物連鎖を導き出すことによって最小限の害虫と共存し、被害を抑え、農薬を使わないですむような環境を整えて栽培をしています。そのため蜂が舞い、鳥が集い、昆虫が数多く共存する畑になっています。

土壌消毒に薬剤を使用すると、病害菌・土壌害虫だけなく、美味しい野菜作りにはなくてはならない善玉菌や害虫を食べてくれる良い虫も一緒に殺してしまいます。チャヴィでは薬剤ではなく、太陽熱や緑肥作物のちからを借りて土壌病害を減らす努力をしています。

農薬を使用しないからといっても、除草剤をまいていては意味がありません。作物を作っている畑だけではなく、通路や畑の周辺にも使用していません。雑草だけ除外するという薬剤は自然に反しているのではないかと考え、畑は全て手作業で除草がチャヴィでは当たり前です。

さらに、チャヴィペルトでは、野菜に大切な肥料にもこだわっていて、肥料は原材料が厳選された有機質の肥料のみ使用し、落ち葉やヌカ、おからを熟成させた堆肥を使用しています。このような栽培方法でチャヴィぺルトの野菜が育っています。

—店名のChavipelto(チャヴィペルト)とは?

Chaviは、英語のおしゃべりを意味するchatty(チャティ)と、草加の直営店のログハウスの故郷でもあるフィンランドの言葉で野菜のvihanness(ヴィハンネス)を掛け合わせた私達が作った造語で、Peltoは同じくフィンランド語で「畑」を意味し、chavipeltoはおしゃべりな野菜たちの畑、という意味なので、chaviの畑そのものを表しています。

—お店を開店されたのは?

約13年前になります。直売所やマーケットに販売していたのですが、なかなか、こちらが思うような価格で販売できないことから、このお店をつくりました。チャヴィの野菜を食べて心から体から笑顔となるようにと体に・地球にやさしい栽培方法の野菜を直売しています。

―お惣菜も販売されているようで

(かんなさん)生鮮野菜の販売はどうしても売れ残りやロスが生じるので、モッタイナイところから、始めました。農家に嫁いで初めて知ったのですが、農家の人たちって、自分が育てた農作物でも、気に入らなかったりしたら、平気で捨てちゃうんですよ。義母もどんどん捨てるので、私がそれを拾って…。

―料理はどこで?

(かんなさん)こういうお店にふさわしいお惣菜を考えていて、タカコ・ナカムラ先生の「Whole Food(ホールフード)」に興味があり、スクールを受講したところ、すっかりハマってしまって、ホールフードマスターコースを修了しました。

―お店には、野菜だけでなく、コレゾでも見慣れた食材や調味料が並んでいますね?

(かんなさん)チャヴィぺルトの野菜を中心に化学調味料や保存料を使用せずにつくった野菜中心のお惣菜やお弁当を販売しているので、調味料も厳選しています。

また、牧草から安全にこだわった本物の低温殺菌牛乳やコクがあるお豆冨、知る人ぞ知る、日本では数少ない米糀から酵母から作る自社製酵母パンなど、これらの熱い思いから作られた安心の食べ物を取りそろえています。

チャヴィぺルトの野菜とこれらの食材・調味料を通じて、食卓を豊かにして欲しいと願い、また、野菜の使い方・レシピなどでたくさんのお客様と会話することを大切にしています。

—栽培された野菜の全量をこのお店で販売されているのですか?

お店が7割、あと、残りの3割は学校給食に納入しています。

—学校給食ですか?

はい、草加市は、今どき珍しいセンター給食ではなく、各校が栄養士の先生を置いています。17年ほど前に、ある学校の栄養士の先生から、地産地消で、地元の農作物を子供たちに食べさせたい、と相談がありました。実は、草加市の市場には埼玉の農産物は流通していませんでした。

それで、その一校から始めて、徐々に納入校が増え、チャヴィぺルトの野菜だけでは足りなくなり、仲間の農家にも声を掛け、今では、草加市立の全小中学校32校に納めさせていただくようになり、地産地消率は25%程度になっています。

また、納入している小学校の児童たちを始め、父兄や家族連れが収穫体験によく来てくれます。キャベツが人気なのは意外でしたが、スーパーで売られているものより大きなキャベツに子供たちは驚くようです。

—都会の子供たちが成っている農作物を自分の目で見る機会は少ないですよね?

そうですね。農産物の生産現場を見るのは食育にも繋がると考えています。

首都圏のベッドタウンとして急速に宅地開発された中にチャヴィぺルトさんの農園が残ったのは、近隣の消費者にとってはとても貴重だ。いつでも、安心、安全、新鮮で、美味しい野菜が手に入るからだ。うらやましい限りだ。

今春、西洋ミツバチの巣箱を畑に設置したそうだ。蜜の味は、はじめは、土臭かったそうだが、いろんな野菜や果樹の花が咲くにつれ、味がどんどん変化していくそうだ。受粉の効果もあり、また、生態系が変わったのか、見かけなくなった害虫もいて、今後も、養蜂を続けていきたい、とのこと。

お店のテラスでイートインできるそうだが、今後、独立したスペースを確保したいそうだ。

COREZOコレゾ「毎日の食のことだから、おいしくて安全なものを、首都圏のベッドタウンで、住民だけでなく、地域の学校給食にも新鮮な特別栽培農産物を供給する近郊農家」である。

最終取材;2017年9月

初版;2017年11月

最終編集;2017年11月

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