永井 千春(ながい ちはる)さん/VegeTanaQ主宰

COREZOコレゾ「愛知県碧南の野菜と食文化を世界に発信する、農業生産者であり、野菜ソムリエでもあるニンジニア」賞

nagai-chiharu

永井 千春(ながい ちはる)さん

プロフィール

愛知県碧南市

日本野菜ソムリエ協会認定 シニア野菜ソムリエ
管理栄養士
碧南のニンジン農家のむすめ

Vege TanaQ 主宰

ジャンル

食づくり

農業

経歴・実績

受賞者のご紹介

日東醸造の蜷川社長のご紹介で永井 千春(ながい ちはる)さんにお目に掛かった。

野菜ソムリエの資格取得がきっかけでプロの農家に

―農業を継がれたのは?

「何代も続く農家に生まれ、食に関わる、特に、料理に関する仕事をしたいと思い、管理栄養士の大学に進み、厨房で調理師として働いてきましたが、いつか家に戻りたい、戻らなきゃという想いもどこかにあったのですが、3~4年前、父が背中を押してくれた野菜ソムリエの資格取得がきっかけになって、両親の跡を継いでプロの農家になる決心をしました。」

実家は、ニンジン、タマネギの専業農家

―ご実家は専業農家ですか?何を作っておられますか?

「昔は、いろいろ作っていたのですが、効率的な農業経営をするために、父の代から、ニンジン、タマネギの専業農家になりました。ニンジンは、碧南鮮紅五寸という在来種を改良した碧南美人というF1種を主に作っています。」

「祖父の時代には、その碧南鮮紅五寸を種採りから栽培していました。色も美しく、味も美味しいんですが、ただ、姿形、大きさが揃わないので、市場のニーズに合わなくなって、お金にもならなくなったんです。それで、農家が品種改良してできたのが碧南美人で、今では、碧南の主力品種になっています。」

野菜ソムリエとは?

「ワインのソムリエとは違って、ニンジンをかじって、味の良しあしを見分けるのではなくて、生産者の想いやその野菜ができるまでのストーリー等を消費者に伝える役目をするのが、野菜ソムリエです。」

野菜ソムリエの活動

「例えば、碧南美人の場合、野菜教室を開いて、一般の消費者にニンジンのことやニンジンを使った料理のことをもっと知ってもらえるよう、PR活動とかをしています。」

―どういう方々が参加されるのですか?

「農協のニンジン部会等が主催するイベントに参加された主婦層の方々が多いですね。月に1回開催している野菜教室では、調理の経験を活かして料理教室のようなこともやっています。」

―どのような料理を?

「カフェのスタッフをしていたので、目で見て楽しいカフェごはんとか、家庭で簡単に再現できる野菜をたくさん使った料理が多いですね。毎月、テーマを決めているんですが、例えば、5月はトマトだったので、トマトを使った春巻きを作りました。」

―野菜ソムリエは何人ぐらいいらっしゃいますか?

「野菜ソムリエ協会が資格を認定していて、全国に5万人ぐらい、愛知県には3千人以上います。食を通じて社会を豊かにする。農業を次世代に継承する。という協会の理念に従って、活動しています。資格取得者は主婦やOLの方が多く、それを仕事にしようというのではなくて、自身や家族で野菜をもっと美味しく食して、楽しもうという方が多いですね。」

「野菜ソムリエには、自分が楽しむ、人に伝える、職業として社会貢献をするという、3種類があって、私は、総数の0.1~0.2%しかいない職業としての資格を取りました。」

野菜ソムリエ資格を取ったメリット

「野菜のことをより深く勉強したことはもちろんなのですが、コミュニケーションの講座があって、人前で話をするのが苦手だったのが、話せるようになったこともよかったです。」

碧南のニンジン

―ご実家の耕作地の面積は?

「ニンジンとタマネギ、どちらも3町弱ぐらいを両親、祖父母、私の5人とパートさん3人で営農しています。4月~6月いっぱいがタマネギで、お盆が明けてから3月いっぱいまでがニンジンです。」

―碧南美人の特徴は?

「碧南で作っているニンジンのほとんどが碧南美人で、JA愛知中央のニンジン部会以外では扱えない品種です。愛知県全体でも7割の生産量があります。」

「中まで色が濃くて、肉質が軟らかく、形状は、お尻が丸くて、表面がツルツルです。味は、糖度が高く、甘いだけではなく、昔のニンジン臭さも残っています。」

「野菜ソムリエサミットに出品したところ、バランスのいい味という評価で、2つ星を頂きました。実は、まだ、3つ星を受賞した野菜はないので、それなりに高い評価を頂いたと思います。」

多品種のニンジンを作って、品種ごとの違いを研究

―鈴森農園さんのように在来種を少量多品目生産して直接販売しておられるところもありますよね?

「私は、ニンジン、タマネギ専業農家に生まれ、育ったので、それが当たり前だと思っていましたが、実は、個人的には、多品種のニンジンを作って、品種ごとの味や集荷時期の違いやどんな料理に適しているか等を研究しています。」

「均一で、高品質の野菜をより多くの人に安定的に届けながら、それと並行して、特別なニーズに応じた少量多品種をピンポイントで届けることもやりたいと考えています。」

―その少量多品種の部分はどれぐらい生産しておられるのですか?

昨年度は、1反で15品種つくって、まだまだ限定的ですが、個別販売しました。

―ニンジンは交雑しないのですか?

「花が咲く前に収穫してしまうので、交雑しません。」

―千春さんが目指すニンジン農家は?

「父のように機械を使って碧南美人を生産できるとは思えないので、父の跡を継いだ後は、機械を使える人を雇うなりして、今のニンジン生産は続けたいと思いますが、私自身は、販路を開発して、より多品種のニンジンを作りたいと思います。」

―今育てておられるのは全部F1ですか?

「いいえ、在来種の碧南鮮紅は種採りもしています。」

「在来種、F1種に関係なく、野菜たちは、声を出せない分、態度や成長で示してきます。碧南鮮紅五寸も目利きが母本を選んで、種採りをして、この地でこの地にあった育て方をして、例えば、ニンジンごはんにして食べるとか、この地の食文化として引き継いで行かなければ、本当の意味での伝統野菜とは言えないような気がしています。」

「私が小学生ぐらいの頃までは、祖父母は種を採って農業をしていたのを覚えています。時代が変わって、F1種が全盛になり、種採りをする農家はほとんど消滅してしまいました。在来種の種は誰でもどこでも採れますが、地元の伝統野菜を次世代に引き継ぐためにも、祖父母が元気なうちに、母本を選抜する目や技術の習得に取り組んでいます。」

ニンジニアが目指すのは?

「農家の皆さんは栽培のプロですが、人に説明するのが不得意なので、私がそういう部分も担っていけたらいいなと思っています。」

「これから、最先端のF1種、伝統的な在来種を含めて、碧南で生産されてきた野菜とニンジンを中心に、農業生産者として栽培しながら、野菜ソムリエとして、それぞれの良さ、碧南地域の中で受け継がれてきた食文化としてのニンジンやその他の野菜の料理のしかた、食べ方なども含めて広く伝えていきたいと思っています。」

農業生産者であり、野菜ソムリエでもある千春さんの今後の活躍に期待したい。

COREZOコレゾ「愛知県碧南の野菜と食文化を世界に発信する、農業生産者であり、野菜ソムリエでもあるニンジニア」である。

※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、一切、返答致しません。

COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.11.25.

最終取材;2015.6.

最終更新;2015.11.25.

文責;平野 龍平

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