山岡 康人(やまおか やすひと)さん/ヘルスステーションけんこう舎

COREZOコレゾ「食養が一番、薬を売らない薬局と施術しない鍼灸院」賞

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山岡 康人(やまおか やすひと)さん

プロフィール

京都府京都市出身、滋賀県大津市在住

ヘルスステーションけんこう舎 経営

ジャンル

自然食品販売

薬局

鍼灸院

経歴・実績

1973年 大学で応用化学を学び、卒業後、排水処理関係の企業に就職

1980年 一念発起し、鍼師・灸師免許を習得。

1984年 大津市中央に自然食品店「ヘルスステーションけんこう舎」を開店。

1990年 現在地、大津市唐橋町に移転。薬局、鍼灸院を併設し、現在に至る。

受賞者のご紹介

ヘルスステーションけんこう舎

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2010年、ご縁があって、山岡さんご夫妻が経営される「ヘルスステーションけんこう舎」兼、ご自宅に伺うことになった。その訪問時に、「ヘルスステーションけんこう舎」は、「自然食品店」も営んでおられることを知り、そういうお店に初めて入ったのである。

食いしん坊で、おいしい「食」には人一倍関心があったが、「自然食」や「自然食品店」には全く興味がなかった。「自然食」=「健康食」=「病人食」という強いイメージがあり、「自然食品店」は、アレルギーや生活習慣病等を患っている人や一時話題になった「◯ってはいけない」という類いの本の信奉者や一部のヘンなコダワリ(筆者とは異なる)のある人が行くところ、と思っていて、自分とは関係がないというか、正直、敬遠していた。

ちなみに「自然食」を調べてみると、「農薬や化学肥料を使わない農産物」、「化学調味料や合成保存料等の食品添加物を一切使っていない自然のままの食品」を指すらしい。

店内には、見慣れない食品や聞いたこともないメーカーの食品と一緒に、自分が使っている醤油や調味料も置いてあって、少し親しみも感じたが、奥には薬屋さんもあって、やはり馴染めない雰囲気があった。

その夜、お店の奥にある研修棟の「秀山荘」で、お店の食材で宴会をやろうということになり、山岡さんとはそれまでにも一緒に飲み食いしていたので、宴会には何の抵抗もなかったが、どんなものを食べさせてもらえるのか一抹の不安があった。

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「秀山荘」は新築された木造二階建ての「自然住宅」?で、ご案内頂くと、建材、建具、調度やしつらえにもこだわった日本の伝統工法で建てられていて、好みの建物だったので、好感度はぐっと上昇した。1階は、山岡さんの鍼灸院とイベントスペースになっていて、健康に関する催し等で使われ、2階は茶道を嗜まれる啓子さんの茶室と広いキッチンスペースがあり、「食」に関する調理教室等が開かれている。

当たり前のものを当たり前に作るのが難しい時代

山岡さんは、ご夫婦揃っての日本酒党で、無垢木の大テーブルには、ご自慢の純米酒がずらりと並べられ、乾杯して、出された汲み出し豆腐をひと口頂くと、これが「自然食」?に対するヘンな先入観がすっかり吹っ飛ぶほど「うんまい」のである。野菜や鶏肉も普通に旨いのである。

「どれもこれもフツーに美味しいですやん?」と云うと、

「ハハハハ、当たり前やん。一応ね、ウチで仕入れている野菜や豆腐はもちろん、その他の食材も塩や醤油といった調味料もぜーんぶ、つくってるとこやつくってる人を自分の目で確かめてんねんで。結構、手間かかってまんねん。どれもこれも手抜かんと、ちゃんと作ってはるほんまもんばっかりですわ。ちゃんと作ってはるホンマもんは、おいしいに決まってますやろ?今どきは、フツーにフツーのもん作るのが難しい時代になりましてんで、ハハハハ。(一部、標準語?に意訳)」と、笑い飛ばされてしまった。

この時は、まさか山岡さんのこの言葉を身をもって体験して、「コレゾ賞」に繋がることになろうとは思いもしなかったのである。それ以来、気をつけて見ていると、総じて価格が高めなので、関西には馴染まないのか、見かけることが少ないが、東京の都心にはとてもおしゃれな店舗が多く、チェーン店もあることを知った。

一念発起して、鍼灸師免許を取得

山岡さんは、大学で応用化学を勉強して、排水処理の機器メーカーに務めていたが、奥様の啓子さんが、漢方と鍼灸、食養で治療する診療所に務めていた影響もあって、ご自身も一念発起し、勤務先の近所にあった鍼灸師の専門学校に通って、免許を取得した。

いざ、鍼灸治療を始めてみると、鍼灸も手当てであり、薬と同じく食事指導では間に合わない時の一種の対処療法でしかなく、患者さんは患者さん自身でしか治せない。生活習慣を改善して自分自身の免疫力、自然治癒力を高めるしかなく、とりわけ「食」の大切さに気づいた。

自分と家族を守るには「健康」とそれを支える「食」が一番大事だということを広く知ってもらおうと、「食」と「健康」の情報ステーションである「けんこう舎」をオープンしたのだそうだ。

いくら「食」が大事だと言っても、おいしくないと続かない。だから、安全、安心で、おいしい「食」にこだわって店の品揃えをしておられる。「どれもこれもフツーに美味しい」というのは全く失礼な話である。

この後、「自然食品店」を気にして見るようになったが、東京や関東には店構えは一般のスーパーと見分けがつかないような大きなチェーン店も結構あって、関西、特に大阪には少ないようだ。有機JAS認証を取得するにもコストが掛かり、販売価格にも反映されるのもわかった。関東と関西には、「食」に対する意識の違いがあるのかもしれない。

薬を売らない薬局をやりたかった

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次に、奥様の啓子さんにも伺った。

「薬を売らない薬局をやりたかったんです。主人も言ったと思いますけど、薬の対処療法だけでは、患者さんを根本的に治すことはできません。免疫力や自然治癒力を高めるには、『食』が一番大切です。だから、このお店には自然食品店が前にあって、薬局は後ろに隠れています。」

「薬局・薬店の許可を受ける時には、薬局を前面に出さないと許可をしないという担当者と主人の間で、押し問答がありました。何とか許可してもらいましたが、思惑通り、処方箋を持って来られた方や薬を指名して買いに来られた方以外には積極的に販売していません。」

啓子さんは4児の母で、ご実家も薬局を営んでおられる。ご自身も薬剤師となられたが、東洋医学に興味を持ち、日本で初めて、漢方薬の「エキス剤」化に成功した聖光園細野診療所に就職。創設者の細野史郎院長の学術秘書も務めた経歴を持つ。

大学在学中に、食品汚染に興味を持ち、有機農法研究会というサークルを作って、援農にも出掛けていたほど意識を持っていたにも関わらず、社会に出て、結婚して最初のお子さんを産むまでは、添加物の比較的少ない食物を選んでいた程度で、あまり深く「食」に関心を持っていなかった。

出産が「食」に関心を持つ契機に

最初のお子さんが、ダウン症で生まれ、二番目のお子さんにアトピーが発症した。当時の保健所の指示通りに牛乳、卵、肉類をたっぷり摂っていて、その上、無性にチョコレートが食べたくなり、つい手を出していた。出産後、乳児湿疹だから直ぐに治るといわれたが、だんだんひどくなった。食品添加物等には人一倍気をつけていたつもりだったが、一般のスーパーで売っている食品にはいろんなものが添加されていて、知らないうちに摂っていたのだ。

妊娠中の食物からの影響を強く感じ、その頃から現代栄養学の頭でやるのは何か間違っているのではないかと思うようになった。今になって思えば、上のお二人のお子さんたちのおかげで、いろんなことに気づかせてもらった。ご主人が鍼灸や自然食に本腰を入れ、自然食品店を始めるきっかけにもなった、とおっしゃる。

その後、三番目のお子さんの妊娠に気づいてから、肉や魚抜きの玄米菜食を始め、四番目のお子さんも、近くの産婆さんで自然分娩出産し、お二人ともご健康で、上のお二人で経験された大学病院での非人間的な出産との大きな違いも実感したそうだ。

人体実験?10年で保健所の指導が変わる⁉︎

また、最初のお子さんと4番目のお子さんの出産には約10年の開きがあり、保健所は、1日に牛乳を2本以上、卵も1個以上摂るようにと指導していたのに、アトピーが増えてきて、牛乳が要因ではないかとわかってくると、牛乳は飲み過ぎるな、離乳食は早くから与えるな、に変わったという。

「ある程度実証数が揃わないと、保健所の指導も含めて、社会体制も変わらないのはわかりますが、その間、対象者は人体実験されているようなものですから、人間の健康をそんなふうに扱っていいのか、と疑問に思いますよね?女性の場合は、実際にお産を経験してみると、食べ物が自分自身や子供の身体にどれだけ影響するかがよくわかります。だから、妊娠出産期はご自身とご家族の『食』を考え直す一番いい機会です。自分が経験して初めて知ったことも沢山あって、できれば、店に来られる若いお母さんたちに教えて差し上げられたらいいなと思います。」

山岡さんご夫妻は、東洋医学を学び、勉強するうちに、漢方療法も、鍼灸療法も、食養を補うものであり、医食同源の本質である「健康」には、日常の「食」が一番大切であることに気づいたことが、「けんこう舎」のオープンに繋がったそうだ。

長い年月をかけたひとつひとつの積み重ね

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「お店で扱う『食』を調べ始めると、昔ながらの製法でちゃんと作っているものは手間と時間とが掛かっていて、おいしくて、身体に善く、それなりの値段がして、日持ちはしません。より安く提供するために、手間と時間を掛けず、ちゃんと作らないで、その上、日持ちがするものは、身体に善いとは思えないそれなりのものが必ず添加されていて、おいしくないことがわかってきました。昔の人の知恵ってすごいですよ。漢方も同じですが、長い年月をかけたひとつひとつの積み重ねですからね。」

と、お二人とも全く押し付けがましいところが全くなく、宴会の合間に、それとなく、教えて下さった。

その後の多くの人々との出会いを通じて、山岡さんご夫妻のおっしゃった意味が徐々にわかって来るのである。

 

2012年7月、1年振りにお伺いして、コレゾ財団と賞の趣旨を説明して、山岡さんご夫妻に受賞のお願いをしたところ、

「ハハハハ、そうきましたか?まさかアナタがねぇ、不思議なもんですねぇ、人間、どこかで繋がってますねんなぁ。」と快諾して下さった。

COREZOコレゾ「食養が一番、薬を売らない薬局と施術しない鍼灸院」である。

後日談1.第1回2012年度COREZO(コレゾ)賞表彰式

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後日談2.第2回2013年度COREZO(コレゾ)賞表彰式

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後日談3.第3回2014年度COREZO(コレゾ)賞表彰式

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COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2012.08.01.

最終取材;2014.12.

最終更新;2015.03.06.

文責;平野 龍平

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