鶴見 恵子(つるみ けいこ)さん/えひめ千年の森をつくる会

COREZOコレゾ「できることを少しずつでも続ける、夫婦二人三脚の千年の森づくり」賞

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鶴見 恵子(つるみ けいこ)さん

プロフィール

愛媛県東温市在住

えひめ千年の森をつくる会 事務局長

こころとからだがホッとする やさしいごはん作家

ブログ「えひめの森から♪マクロビオテック教室<松山・東温にて>

ジャンル

環境・自然保護 森林の保護、育成

食 農業

暮らし方、生き方、考え方

経歴・実績

2000年 えひめ千年の森をつくる会 設立

2001年 棚田の活動開始

2002年 森の活動、自然体験教室開始

2012年 えひめ千年の森をつくる会

「みどりの日」自然環境功労者 環境大臣表彰

受賞者のご紹介

千年の森をつくる活動とは?

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鶴見 武道(つるみ たけみち)さん、恵子(けいこ)さんご夫妻は持続可能な循環型の食糧自給自足の生活を目指して、愛媛県東温市のご自宅に付随した棚田で有機無農薬農業を営み、入手した山林他で、「千年の森づくり」の活動をしておられる。以前からそのお噂は伺っていて、監修されたDVDも一部拝見していた。

2011年、ご縁があって、ご自宅にお伺いする機会を得た。

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愛媛県東温市には初めて訪れた。松山自動車道の川内インターで降り、市街地から山間部に入っていくとどんどん道が狭くなって、石組みを積み上げた棚田の風景が上方に見えてきた。約束の時間にはまだ早かったので、さらに山道を上り、鶴見先生のご自宅周辺を俯瞰できる向かいの峠までやって来た。ご自宅の周りには棚田が広がり、すぐ上方には森林があり、桃源郷のように見えた。

到着すると、鶴見先生はにこやかに出迎えて下さった。挨拶を済ませると、「せっかくいい天気ですから、棚田を見渡せるいい場所があります。」と、茅葺きの納屋にご案内下さり、勧められて縁側に一緒に腰を下ろした。

「いい風景でしょう?ここの地形に合わせて曲線を描いている棚田が美しいです。この景観もここに決めた理由のひとつですね。ほとんどが実際に耕作されているのもいいところです。耕作放棄地も地域の皆さんと耕作地に戻す取り組みも始めています。」

鶴見さんのご自宅は井内地区の棚田の一番上部、標高約500mにある昭和24年(1949年)築の農家で、母屋と茅葺きの納屋、別棟の薪風呂があり、棚田が約30枚・6反歩(60アール・1800坪)ついていたそうだ。

景色を眺めながら、しばらく話を伺った後、玄関に干し柿が吊り下げられた母屋にお邪魔し、奥様の恵子さんにもご挨拶をした。床は無垢の板で張り替えられ、建具も一部入れ替えられているようだ。

「築60年以上経っているので、ところどころ補修をしたり、住み易いように手を入れています。標高が高いので冬の寒さが厳しく、少々高い買い物でしたが、燃料の薪も手に入りますし、薪ストーブはとても役に立っています。これ1台で家中が温かくなります。」と、鶴見さん。

2000年、千葉県から愛媛大学へ

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鶴見さんは、千葉県で22年間、農林高校の教員をしておられた。ずっと続けて来られた林業関係の研究が認められ、愛媛大学から声が掛かかり、2000年に愛媛に来ることになった。奥様の恵子さんは養護学校の教員をしておられたのだが、退職して、一緒に愛媛に移り住むことを決め、お子さんの学校の関係もあり、1年遅れの2001年にお嬢さんと来られた。

「愛媛に来て1年目は、単身赴任で暮らし始めたのですが、背後に森があり、棚田が広がり、水路も流れているこの家を見つけたのです。私の同僚はもう少し慎重に決めた方がいいと心配してくれたのですが、一緒に見に来た妻も、『あっ、ここだ』と気に入って、後押しをしてくれました。既に、千葉で『千年の森をつくる』活動をしていたので、せっかく移り住むなら、その千年の森の活動を日常的に行えるところの方がいいなと思っていましたが、ここに決めてよかったと思っています。」

「今、大学では『農山漁村地域マネジメント特別コース』のコース長(2011年度)をしています。愛媛県の農山漁村は農林漁業の低迷により過疎高齢化が進行していて、農山漁村の再生をめざして、地域の後継者・担い手及びそのリーダーを育成することが目的で、日本の国立大学法人で初めて設置されました。特色としては、長期実習やインターンシップを取り入れて、より実践的な農山漁村地域マネージャー等を育成します。ただ、私は2012年3月に定年を迎えるので、しばらくは大学に残るかもしれませんが、軸足は『千年の森をつくる会』の活動にシフトしていくと思います。」

千年の後までも森林であるようにしていく

「『千年の森をつくる』とは、現存の森林が更新を繰り返しながら、千年後も森林であり続けるようにすることです。ご存知のように、林業の採算が取れなくなり、植林した山林を中心に放置林が増えています。豊かな農村を支えてきた里山も人間が手を入れてきたのです。まず、森の整備活動から始まりました。森に入って活動すると、森が私たちを包み、再生の元気をくれます。しかし、活動を続けているうちに、千年の森づくりは森林や施設がなくてもできることに気付きました。『千年の後までも森林であるようにしていく』という思いを皆が共有すれば、いつでもどこでも誰でも、千年の森づくりは可能なのです。」

「えひめ千年の森をつくる会」には、森の整備活動を行う「森づくり」、間伐材を活用して、木炭作りや使い方を体験学習する「世界に開かれた木炭学校」、鶴見さんの棚田での活動を通じた「自然農法実践農場」、食の大切さを学ぶ「安全な食と農林産物の加工ができる場」、活動、イベントを通じて「ありのままの自分と出会う場」、意識を変えたり、気づきのヒントを発信する「未来循環型自給をめざした生活提案」の6つの柱があるそうだ。

「木炭学校」の効果とは?

「この地に移り住んで、活動の柱が増えたのです。どの柱も密接に関連しているのですが、『木炭学校』は、校外学習でチームワークを養ったり、人的交流の促進に非常に効果があり、世界に開いて、拡げていきたいと思っています。」

「私が考案したドラム缶窯等を設置して、炭焼き作業を体験するのですが、窯を築く人も、炭材を準備する人も、炭を焼く人も、炭を取り出す人も、使う人も、作業を分担した人たち全員が互いに協力し合わないと炭は焼けないのです。窯に着火してからは、お楽しみタイムもあり、観賞炭作りをしたり、パンを焼いたり、たき火をしたり、炭を焼きながら皆で火を眺めて語り合うと心身ともにリフレッシュされます。この地域に伝わる伝統的な土窯も完成しています。」と、鶴見先生。

恵子さんは、マクロビオティック師範

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恵子さんはニコニコと会話を聞きながら、昼食を用意して、ご馳走して下さった。

どこかの自然食レストラン(数回しか行ったことはないが)で出されるような本格的なもので、鶴見さんご夫婦が育てた玄米や野菜を使っておられる。どの料理も素材を活かした優しい味わいでおいしい。それもそのはずで、マクロビオティックを本格的に学び、師範科を卒業されて、料理教室も開いておられるそうだ。

マクロビオテックの発祥は日本だそうで、自然と生命の営みに気付き、生命を大きな観点から捕える、日本の伝統食をベースに穀物菜食を中心とした「食生活法」、「食養生法」で、欧米のスーパーモデルや著名人も健康と美容のために注目し、実践しているらしい。興味のある方は、お調べ頂きたい。

食後のデザートとお茶を頂きながら、恵子さんにもお話を伺った。

「実は、息子が小学校の低学年のころ、息子の足のひざ小僧の裏側にアトピーが現れ、花粉症気味になり、東京の大学附属病院他で検査や診療をしてもらいましたが、症状は改善されませんでした。その頃、私の勤務先が遠かった上に、仕事を長時間していたために、実家の母親に来てもらい、家事を手伝ってもらっていました。普段は、母が手作りの食事を用意してくれていたのですが、土曜日の昼には、息子が大好きだったので、せがまれるままにファーストフードチェーンのハンバーガーや、フライドチキンなどを食べさせ続けていました。」

「ひょっとしたら、原因は食べ物ではないかと思い、ファーストフードを止め、2次加工品を減らし、素材から調理して食べるように食生活を変えました。そうするうちに、アトピーは消えていき、花粉症も治まっていったので、それからは食の安全には気を遣うようになりました。」

自分たちで安全なものを作ってしまおう!

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「有機農生産者の方が届けて下さる野菜は、格別に甘くて香りがあり、とてもおいしく、有機農業を自分で行うことに興味を持ち始め、玄米酵素ご飯に出会い、私が玄米菜食になってからは、より安全な素材を手に入れることをめざしました。安全なものを得るためには、生産者の顔の見える関係が必要ですが、ここに移り住んだことをきっかけに、『自分たちで安全なものを作ってしまおう!』となった訳です。」

「田舎に行けば行くほど、よその人に来てもらいたいという気持ちもあるのに、自分たちの生活が崩されるのではないかという不安を持っているところもあるようです。私は、農業の経験はなかったのですが、近所の方々が手取り足取り面倒を見て下さって、周りの方に恵まれたなと思っています。」

「ここでの暮らしは、食糧の自給をめざしています。陽のあたる穏やかな自然に囲まれての有機・無農薬での米や野菜つくりです。棚田に種を蒔き、自然の雨や、清水の恵みを得て、芽を出し、育って、収穫のときを迎えるという自然の循環を体で感じることができます。自然と共に暮らすのは手間ヒマがかかり、時に大変さはあっても、生きるということの原点に立ち戻る、充実した時を過ごすことができます。」

「マクロビオティックは、玄米と野菜や海草、豆などを主に食べる食事法なので、より循環した暮らしになるのではないかなと思い、学び始めました。食べ物のいのちをいただいて生かしていただいているということをしみじみと味わい、こころとからだがホッとするやさしいごはんの暮らしをより多くの方々に伝え、拡げたいと活動をしています。」

子どもたちが育つのに、農林業の自然体験は欠かせない

「夫がこちらへ来た年に、『えひめ千年の森をつくる会』を立ち上げて、翌年、家族が来てから愛大農学部の学生さんを中心に棚田の活動を始めました。その次の年から、千年の森をつくる『森の活動』と、私がPTAの役員をしていた地元の西谷小学校のお子さんと先生と保護者とで『自然体験教室』を始めました。」

「子どもたちが育つのに、農林業の自然体験は欠かせません。自然の中で本物の体験をして欲しかったので、私たちはここで『自然体験教室』をやりたいと願っていました。ちょうど学校も、総合的な学習の時間に自然を取り入れた環境教育に熱心に取り組んでいて、その活動を地域に広げたいという学校のニーズと私たちのニーズとが一致したのです。」と、恵子さん。

「えひめ千年の森をつくる会」の森と棚田の活動内容は、ブログ「千年の森<森と棚田遍>」、食の情報は、ブログ「つるちゃんの日々の暮らし」で発信しておられる。また、家事家計講習会、家計相談会、味噌づくり教室等も主催しておられて、大活躍だ。

鶴見先生ご夫婦の後押しがあってCOREZO(コレゾ)賞を始めた

「千年の森づくり」は、お二人のやりたいことや想いを少しずつでよいからと、コツコツと、とにかくやり続けてこられた。鶴見さんご夫婦の生き方、暮らし方、考え方やその活動は、地球環境破壊、温暖化、資源の枯渇等の深刻な現状を知った上で、決して悲観的にならずに、森を守り育てる活動をはじめ、私たちにできることを少しずつでも続けることの大切さやひとりひとりの生き方、暮らし方、考え方、行動ひとつで未来が変わることを示唆している。

「森をつくり、森と生きることは、地域を活かすことにも繋がります。そこに眠っている宝物に気付き、現代的な意味を見つけ、光りを当てることで輝き出すのです。森の再生、地域の再生の活動を通じて、環境問題を身近な問題として捉え、ひとりひとりが行動を始めることが、それを解決していく大きな力になると信じています。」と、お二人。

これからもご夫妻二人三脚の活動と活躍の場を拡げ、一人でも多くの賛同者を増やして頂きたいと思う。

当時、構想の最終段階だったコレゾ財団・賞の趣旨をご説明し、ご夫妻での受賞をお願いしたことろ、

「とてもいいアイデア、取組みだと思います。私たちのできることならば協力します。」とおっしゃって頂いた。

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最後に、ご夫妻で棚田をご案内下さった。一番上の棚田で、「空に向かって手を拡げてみて下さい。天からエネルギーがもらえますよ。」と、恵子さんがおっしゃるのでやってみると、とても気持ちがよかった。

鶴見さんご夫妻からもたくさんの元気を頂いた。有難うございました。

COREZOコレゾ「できることを少しずつ続ける、夫婦二人三脚の千年の森づくり」である。

後日談1.第1回2012年度COREZO(コレゾ)賞表彰式

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COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2012.11.02.

最終取材;2012.12.

最終更新;2015.03.06.

文責;平野 龍平

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