実用化済みのGMO遺伝子組み換え作物とは?
GMO遺伝子組み換え作物という言葉は知っていても、それが具体的にどういう農作物なのかご存知の方は少ないのではないだろうか?
遺伝と遺伝子の基礎知識
遺伝子組み換え作物を理解するためには、最低限の基礎知識は必要。
GMO遺伝子組み換え種
遺伝子組み換え作物の復習。
で、そもそも、遺伝子組み換え作物って何?ってことだが、
遺伝子を人工的に組み換えた、自然界では生まれることのない農作物やそのタネのこと。
「遺伝子組換え」を指すGMは、「Genetic Modification」の略で、遺伝子組み換え種は、「genetically modified seed」、遺伝子組み換え食品は、「genetically modified food」、遺伝子組み換え作物は、GMO「Genetically Modified Organisms」で、遺伝子組み換え生物全体のことも指すそうだ。
世界初の商用GMO遺伝子組み換え作物
フレーバー・セーバー
1994年、アメリカで販売許可された、遺伝子組換え農作物の世界第1号といわれる、日保ちの良いトマト。
トマトには、熟した実を柔らかくする酵素の遺伝子があり、この遺伝子の機能を抑制するように遺伝子組換えを行い、日保ちの良い腐りにくいトマトをつくったそうだ。
枝についたまま完熟できるように改良されたので、味も良かったらしく、GMトマトを使ったことを明示して、トマトソースなどに加工した缶詰などがスーパーに並び、価格が安いこともあって、当初、評判は上々だったようだが、BSE(牛海綿状脳症)問題が起きた英国などで、GM作物やGM食品への反対論が高まり、「フランケンシュタイン・フーズ」などと呼ばれるようになり、市場から撤去されることになった。
これを教訓にGMOの開発目的は、「消費者に直接恩恵を与える」から、「消費者ではなく農家や加工業者が喜ぶ」へ大きくシフトしたという。
除草剤耐性農作物
突然変異を誘発してつくり出された非GMの除草剤耐性作物も存在するので、GMでないとつくれないというわけでないが、GMは希望する性質の作物を狙って作出できるので、開発の効率がよいとされる。
除草剤耐性農作物開発のキッカケ
米国のバイオメジャーである化学薬品企業の除草剤製造工場では、何の処理もしないで廃液を流せば、周辺の動植物や環境に悪影響が発生したりして、環境汚染で訴えられては困るので、ダムをいくつも作って徐々に毒性を薄めながら排水していたそうだ。
ところが、とても生物が生きられない環境であるはずの一番最初のダムで、生き続けているバクテリアが見つかった。このどんな植物も枯らしてしまう程強力な除草剤に耐えて生きている微生物はスゴイと、1996年、自社の除草剤に対して耐性を持つその微生物の遺伝子を見つけ出して、作物の遺伝子を人工的に操作し、自然界では生まれることがない遺伝子組み換え作物を誕生させた。
遺伝子組み換え農産物と除草剤とのマッチポンプ関係
自社の除草剤に対する耐性を持った微生物の遺伝子を組み込むことで、その除草剤を使っても枯れないトウモロコシや大豆、ナタネが次々に開発され、種と除草剤がセットで販売できるようになった。
こうして、遺伝子組み換え種を開発、販売することで、必然的に自社の除草剤も売れるという完璧なマッチポンプの仕組みが出来上がったのである。
グリホサート系除草剤とは?
除草剤の1つで、植物が生きていくために必要なアミノ酸を作る酵素 (EPSPS) の働きを妨げるので、このグリホサートを有効成分とする除草剤を散布すると耐性のない植物は全て「根こそぎ」枯らしてしまうので、最強の除草剤といわれていたが、これにも耐性を持つ20種以上の雑草が出現してきたそうで、さらに強い除草剤の開発、複数の除草剤の併用の研究が進んでいるそうである。
これが、遺伝子組み換え作物を世界で初めて開発したバイオメジャーの化学薬品企業がセットで販売している非選択性除草剤で、商品名は「ラウ◯ドア◯プ」。
すでに特許権が切れているため、化学薬品各社からグリホサート系除草剤として販売されている。
グリホサートの長所
他の化学薬品メーカーが開発したグリホサート系以外の除草剤に耐性を持つも農産物も開発されているが、いずれもそれらは一種類の除草剤で雑草が一掃されるため、除草剤の総量が少なくて済み、環境などへの影響も小さくできるとされているが、適正使用量を守らなければ意味のない話だ。
というのも、農薬や化学肥料を使う慣行農業をしている日本の農家の特徴として、農薬や化学肥料をやたらとたくさん散布されるケースが多々あるようで、種苗会社では、農作物のタネの袋に表示する農薬や除草剤の適正使用量の倍以上の使用に耐えれるタネの開発をしているそうだ。
土壌中で分解されやすいので食品にほとんど残留せず、さらにこの酵素は動物の生育には関係ないので、動物への毒性は低く、安全性が高いとされているが、真偽のほどは不明。
グリホサートの欠点
非選択性除草剤なので、雑草だけではなく、その除草剤に耐性を持つ農作物以外は全て枯らせてしまう。
害虫抵抗性農作物
殺虫剤は適した種類のものを畑に散布すれば、作物の表面にいる害虫は駆除できても、茎の中に潜むような害虫には効果が薄いが、害虫抵抗性農作物には、植物が自ら殺虫毒素をつくりだす遺伝子が組み込まれ、その作物を食べた害虫だけを殺すのが特徴で、さまざまな作物で開発されていて、トウモロコシがその代表格である。
殺虫毒素をつくりだす遺伝子は、バチルス・チューリングエンシス(通称、Bt菌)という細菌から取り出したもので、その殺虫毒素はBt毒と呼ばれる。Bt菌は、「卒倒病」という蚕の病気の原因菌として発見され、Bt菌がつくりだすBt毒であるタンパク質が昆虫の消化管で細胞の受容体と結合し、機能障害を生じさせて昆虫を死に至らしめる。Bt菌の種類によって、チョウやガの類、ハエ、甲虫などに有効なさまざまなBt毒が存在するそうだ。
トウモロコシの一番の害虫であるアワノメイガというガは、茎の中に卵を産み付け、幼虫は茎の内部を食べて成長するので、殺虫剤の散布で防除するのは困難だが、トウモロコシの茎自体にBt毒を含んでいれば、確実に幼虫を殺すことができ、殺虫剤を使用する必要もないので、害虫ではない虫をむやみに殺す心配もないという。
昆虫の胃の中がアルカリ性なのに対し、哺乳類の胃は酸性に保たれているので、酸性中ではBt毒はすぐに消化されてしまうこと、哺乳類の胃にはBt毒と結合する受容体が存在しないことなどから、Bt毒は、哺乳類にはほとんど害がないとされている。
欧米では化学農薬を嫌う有機農法などで、Bt菌が生物農薬としてよく使用されているが、日本は養蚕国であることから、蚕に害を与える危険のあるBt菌の使用は厳しく制限されてきた歴史があり、蚕への影響が少ないBt菌の開発も進められているそうだが、欧米ほど一般的にはなっていないという。
スターリンク問題
スターリンクは、フランスの企業が開発した遺伝子組換えトウモロコシの商品名で、Bt毒による害虫抵抗性と、除草剤(グルホサート)耐性を持っている。
害虫抵抗性トウモロコシの多くはCry1Aと呼ばれるBt毒素を産生するが、スターリンクに組み込まれた遺伝子は、Cry9Cと呼ばれるBt毒素を産生し、比較的消化されにくく、熱にも強いタンパク質であることが問題視され、米国において、飼料用および工業用のみに限定され、食品用にはまだ認可されていない。
このため、飼料用と工業用のみに分別して出荷、流通されることとなっていたが、米国において食品に混入する事態が生じ、また、日本向けをはじめとする輸出用のとうもろこしにも「スターリンク」が混入し、大きな問題となり、2000年末から2001年初めにかけて、スターリンクが日本に輸出されないよう、日米間で取り決めが交わされたそうだ。
2012年度の米国におけるスターリンクの作付面積は0.43%程だが、トウモロコシは花粉を遠くまで飛ばし、広範囲に拡散することが知られていて、交雑して結実することもあり、既にスターリンクの遺伝子が広く薄く米国中に広がってしまっている可能性が高いという。
ウィルス耐性農作物
作物に病気を起こす細菌、ウィルスあるいはカビなどに強いGM作物も既にいくつか開発されていて、有名なのは、ハワイで開発された「リングスポットウィルス耐性パパイヤ」。
パパイヤの果実は、リングスポットウィルスに感染すると環状の斑点が生じ、小型化して商品にならず、また伝染性も高いため、パパイヤ畑が瞬く間に全滅することもあり、農家の強い要望に応える形で開発されたとのこと。
その他、コムギの縞萎縮病、イネのいもち病や縞枯れ病、メロンのモザイク病などに対して、耐性GM作物の開発が進められている。
参考
http://www.t-scitech.net/miraikan/gmo/gmo3.html
http://gmo.luna-organic.org/?page_id=18
まとめ
近所のホームセンターに立ち寄ってみると、接触した全ての植物を枯らす非選択的除草剤である「ラウ◯ドア◯プ」の他、化学薬品各社のグリホサート系除草剤(既に特許権が切れている)が山積みにされている。
「根こそぎ枯らす!」、皆さん、それがどんな除草剤かよく知らないで使っているのでは?
賛否両論があるので、お調べになって、お考えいただきたい。
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COREZO (コレゾ)賞 事務局
初稿;2015.06.04.
編集更新;2015.06.04.
文責;平野龍平
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