遺伝と云えば、メンデルの法則
遺伝といえば、中学か高校の時に学んだ「メンデルの法則」?かすかな記憶を頼りに知ったかぶりをしていたが、遺伝のことが少しわかったところで、筆者の冴えない文系アタマでF1種や遺伝子組み換え種の理解をするために少しオサライをしておきたい。
メンデルの遺伝の法則
1865年、聖職者だったメンデルがエンドウマメを育てていて、遺伝の法則を発見した。
第一法則、優劣の法則
雑種第一代の子(F1)には両親(P)のどちらかの優勢な形質だけが現れる。
※遺伝学では系統が異なる個体間の交雑から生まれる子を雑種と呼ぶそうだ。
例えば、エンドウマメの種のしわの有無のような、生物のある1対の対立する形質をもつものを交配すると、雑種第一代(F1)では、全てが両親(P)のどちらか一方の形質のもの(しわ無し)のみが発現し、他の親の形質のもの (しわ有り) は発現しない。
第一代で現れる形質を優性、現れない形質を劣性といい、雑種第一代では、優性の形質のみが現れ、劣性の形質が現れない現象を優劣の法則という。エンドウマメの種のしわの有無の形質は、しわ無しが優性で、しわ有りが劣性となり、エンドウマメの七つの形質にはすべて優性のものと劣性のものとがあることがわかっている。
しわをつけない遺伝子をA、しわをつける遺伝子をaとすると、Aとaは、互いに対立する形質の遺伝子(対立遺伝子)で、Aの方がaより「強い」遺伝子なので、遺伝子Aが優性遺伝子、遺伝子aが劣性遺伝子となる。
生物の細胞には、同じ染色体が2本ずつペアで存在するので、遺伝子も2個ずつあって、エンドウマメには、しわの有無を決める遺伝子AA、Aa、aaをもつの3タイプが存在することになる。
AAやaaを同型接合体(ホモ)、Aaを異型接合体(ヘテロ)と呼び、当然、AAには、しわ無し、aaには、しわ有りが発現するが、Aaには、優性遺伝子Aの方のしわ無しが発現する。
しわの有無のような見た目の性質を「表現型」、AAやAaやaaのような、生物が持っている遺伝子の種類を「遺伝子型」と呼んでいる。
親(P)を対立する同型接合体どうしである、AAとaaとすると、この両親から生殖細胞 (花粉または胚珠) ができるときに染色体が半減し、遺伝子もAまたはaが一つずつ生殖細胞に分配されるので、この生殖細胞どうしが受精すると、雑種第一代 (F1) は、全てAaという組合せになり、Aはaに対して優勢なので、F1の個体は全てA(この場合、全てしわ無し)の形質を現し、優性の表現型となる。
第二法則、分離の法則
次に、このF1の異型接合体(ヘテロ)であるAa同士を掛け合わせると、雑種第二代の子(F2)には、4種類の組み合わせができて、AA、Aa、Aa、aaが生まれ、遺伝子型は、AA:Aa:aa=1:2:1、表現型は、「しわ無し」:「しわ有り」=3:1の割合となる。
このように、親の持つ対立する形質を支配する対立遺伝子は、子をつくるための生殖細胞をつくるときに2つに分離して子に伝わっていくため、雑種第一代で現れなかった劣性の形質が、雑種第二代では現れる現象を「メンデルの分離の法則」と呼ぶ。
第三法則、独立の法則
種のしわだけでなく、2つ以上の形質がある場合でも、それらは互いの影響を受けずに、別々に独立して遺伝する。
種を黄色にする遺伝子をB、緑色にする遺伝子をbとすると、F1は、全てBbとなって種が黄色くなり 、F2の割合は「黄色」:「緑色」=3:1となる。
このように色々な表現型(形質)がおたがいに影響を受けることなく、それぞれが独立して優性の法則と分離の法則に則り、遺伝していくことを「 メンデルの独立の法則」という。
しわが無く、黄色の種の同型接合体エンドウマメ(AABB)と、しわが有り、緑色の種の同型接合体エンドウマメ(aabb)を掛け合わせると、生殖細胞は、それぞれABとabとになり、これらの受精によって生ずる子ども(F1)は、全部AaBbで、全部しわ無し黄色とななる。
AaBbを掛け合わせたF2は、生殖細胞は、花粉も胚珠もともにAA、Ab、aB、ab、という4種の生殖細胞になるので、16通りの組み合わせができることになり、AABB(しわ無し黄色)×1、AaBB(しわ無し黄色)×1、AABb(しわ無し黄色)×2、AaBb(しわ無し黄色)×4、AAbb(しわ無し緑色)×1、Aabb(しわ無し緑色)×2、aaBB(しわ有り黄色)×1、aaBB(しわ有り黄色)×2、aabb(しわ有り緑色)×1の遺伝子型が生じ、表現型は、(しわ無し黄色)9:(しわ無し緑色)3:(しわ有り黄色)3:(しわ有り緑色)1となる。
メンデルの法則に則らない例外的な遺伝形式
不完全優性
強さが全く同じ対立遺伝子というのも存在する。
「マルバアサガオ」という花には、花を赤くする遺伝子Rと白くする遺伝子rという対立遺伝子が存在し、遺伝子の強さが同じで、どちらが優性とはいえないのを「不完全優性」と呼ぶ。
この場合、RRとrrのF1の遺伝子型は、Rrとなるが、表現型は赤花と白花の中間のピンク色になる。
F2の遺伝子型は、RR: Rr: rr=1:2:1となり、表現型は赤:ピンク:白=1:2:1となる。
複対立遺伝子
人間の血液型が代表的な例で、「A・B・O」は、お互いに「複対立遺伝子」の関係にあり、人間は、この3つの遺伝子のうち2をペアで持っているので、その組み合わせは6通りで、AA、AB、AO、BB、BO、OOの6種類の遺伝子型が存在している。
しかし、
AOとBOの両親からは、遺伝子型は、AB、AO、BO、OOの子どもが生まれるが、優性、劣性は、A=B>Oの関係にあり、AO、BOの表現型は、それぞれ、A型、B型となる。
雑種強勢
「雑種強勢」とは、同一種内のある特定の両親間の交雑により得られた一代雑種(F1) 個体が、両親の特性よりも優れた形質を示す現象で、この現象は、動植物の育種改良(収量増加等)に重要な遺伝現象であり、品種育成に広く利用されている。
農作物の育種では、品種改良において、優れた種同士を掛け合わせ、より優良な品種に改良する技術とは異なり、異なる形質を持つ両親の交配により、どちらよりも優良形質な雑種を生み出すことで、さまざまな品種を掛け合わせて、より求められる雑種強勢を示す品種間の組み合わせを見つける研究が続けられていて、日本国内では、ほとんどの野菜が、この雑種強勢を利用したF1種となっているそうだ。
雑種強勢の現象は、『進化論』のダーウィンや『遺伝の法則』のメンデルらにより、100年以上も前に発見されたのだが、その仕組みは、未だ、科学的に解明されておらず、研究が進められているという。
参考
http://www.nig.ac.jp/museum/history/03.html
http://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textbook/genetics.htm
まとめ
遺伝とメンデルの遺伝の法則、雑種強勢のことがある程度、理解できたところで、次回からF1種の話に入っていきたいと思う。
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初稿;2015.05.24.
編集更新;2015.05.24.
文責;平野龍平
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