自家受粉する実野菜に雄性不燃で花粉ができなかったら、一体、どうやって結実するんだ???
雄性不稔によるF1種の育種の話を聞いて、アブラナ科の葉菜類の白菜やキャベツ、根菜類のダイコンやカブは理解できるとして、どうにも理解できなかったのがナス科のナスやトマト、ピーマンなどの実野菜だった。
単為結果(たんいけっか)
植物では、花粉が雌しべに付き(受粉)、正常に種子が形成されることが果実の着果および果実肥大の一般的条件であるが、受精が行われずに子房壁や花床が肥大して果実を形成することをいう。
自動的単為結果
植物において、その種自身が持つ性質によって、受精(受粉)が行われなくても子房壁や花床が肥大して果実を形成すること。このようにしてできた果実は通常無核果(種無し)である。
カキ、カンキツの一部、イチジク、キュウリなど
キュウリは受粉をしなくても勝手に実を太らせる単為結果の性質を持ち、自然界でもバナナやパイナップル、イチジクなどは単為結果して種子のない実をつけることがある(原種に近いものほど種子がみられる頻度が高く、また種子が大型のことが多い)そうだ。
単為結果しやすい果実では、花蕾から幼果にかけての時期に子房内のオーキシンなどの植物ホルモン活性が極めて高いことが知られており、本来、胚や胚乳の発育に伴って生合成される植物ホルモンが果肉組織内で生合成されることで種子が未形成でも果実が発育するとのこと。
他動的単為結果
受粉や外的刺激によって単為結果すること。トマトではオーキシン、ブドウではジベレリンのようなホルモン剤などの化学薬品を使って人為的に刺激することで単為結果させる。
自動的単為結果ナス、トマト
ナス、トマトなどは、自家受粉植物なので、自然の状態では風や昆虫によって受粉・受精するが、ハウスなどの施設内では、開花した段階で強制的に振動を与えるなどして受粉を助けないと着果が安定しないため、一般的に手作業によるホルモン処理やマルハナバチなどの花粉を媒介する昆虫の放飼などによる着果促進作業が安定生産のために必要であるが、単為結果性を持つF1種が開発されていて、栽培にかかる作業全体の約1/3を占めるこれらの作業が不要になり、安定かつ低コストな生産に大きく役立っているとのこと。
自動的単為結果のトマトやホルモン処理をした他動的単為結果トマトは、種がないためゼリー部が少なく、果肉部が厚い実になるそうだ。
種なしブドウ
ジベレリンという植物ホルモンを用いることで、他動的単為結果させる。
参考
https://corezoprize.com/yoshiko-sato
種なしスイカ
四倍体と二倍体を掛け合わせて、人工的に三倍体植物を育成して、他動的単為結果する種子のないスイカをつくった。
有性生殖をする動物の多くは、両親から配偶子を通してそれぞれ1セットのゲノムを受け取り、計2セットのゲノムを持つ二倍体(ヒト, 2n = 46 など)であるが、植物には様々な倍数体が存在していて、栄養繁殖性の植物では、三倍体であることがそれほど珍しいことではなく、農業で役に立つ特性を持つことがあり、農作物の遺伝的改良(育種)に利用されているそうだ。
三倍体や四倍体では細胞・器官・植物体全体が大きくなる傾向があり、倍数体は種子ができにくいこと(不稔・部分不稔)もあるが、逆に三倍体の不稔を利用して「種無し」の品種を作ることにも利用されていて、人工的に倍数性を増加(倍加)させるには、コルヒチンなどの薬剤を使うとのこと。
まとめ
ホルモン剤などの化学薬品を使って人為的に刺激する他動的単為結果は、植物の想像妊娠を思わせるが、実際に結果してしまうのが動物との違い。
F1種の実野菜をどうやって結果させるのかを調べてわかったのはここまで。
ハチを使った受粉とかが検索でいくつもヒットするので、単為結果しない実野菜は、最終的に稔性回復核遺伝子を持つ品種と掛け合わせて、花粉ができるようにして商品化していると思われる。
稔性回復核遺伝子の話は、ハイブリッドライスの記事で詳しくする予定。
この辺りのことをよくご存知の方がいらっしゃったら、是非、ご教授願いたい。
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COREZO (コレゾ)賞 事務局
初稿;2015.05.27.
編集更新;2015.05.27.
文責;平野龍平
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