種タネの話15、GMO遺伝子組み換え農作物とは?つくり方編

GMO遺伝子組み換え農作物のつくり方とは?

さて、GMO遺伝子組み換え農作物はどのようにつくられるかご存知だろうか?

遺伝子組み換え技術

遺伝子組み換え技術とは、人為的にある生物の遺伝子(DNA)を別の生物に組み込み、新たなタンパ ク質を合成させ、目的の形質にする技術。

この遺伝子組み換え技術を使えば、目的とする遺伝子だけを組み込むことが可能で、例えば、ある「害虫に強い」といった性質を加えたい場合、まず、植物や微生物など幅広い生物の中から、その「害虫に強い」性質を持っている生物を探し、その生物がもつ「害虫に強い」性質を持たせる遺伝子を見つけて取り出し、品種改良の対象となる植物の細胞に導入する。

遺伝子の導入方法

遺伝子組み換えの方法としては、次の3つの方法があるが、中でもアグロバクテリウム法が最も安定していて、広く使われているとのこと。

アグロバクテリウム法

アグロバクテリウム法とは、「アグロバクテリウム(根頭癌腫病菌)」という、土壌中にいて、植物に感染して自分の体内の遺伝子領域を宿主の植物に送り込み、自分が生きてくために必要な養分を作らせるという「植物病原性土壌細菌」を利用した遺伝子導入方法。

遺伝子を送り込むしくみ

アグロバクテリウムは、プラスミドと呼ばれるリング状の細胞質DNA(核DNAではない)に、T(transfer)-DNAと呼ばれる遺伝子を持ち、植物に接触するとその遺伝子は、プラスミドを相手の細胞核に送り込み、感染した植物の遺伝子を操作して、根元にこぶ状の塊(癌腫の一種)や無数の根を形成し、自らの生存に必要な栄養素(アミノ酸)と植物ホルモンを作らせ、植物には水分も養分もいかなくして、枯らしてしまう(クラウンゴール病と呼ばれる)という仕組みが明らかになった。

遺伝子を組み換える手順

このアグロバクテリウムのT-DNAを持つプラスミドを組み込みたい遺伝子の「ベクター(運び屋)」として利用する。

予め探し出した生物のDNAから組み込みたい目的(耐除草剤性や殺虫性など)の遺伝子を酵素を用いて切り取る。

アグロバクテリウムの細胞の中からを「プラスミド」を取り出し、感染した植物に害を与える遺伝子を酵素を用いて切り取り、その切り取った部分に組み込みたい遺伝子を繋いで置き換えた後、アグロバクテリウムの細胞に戻し、植物に感染させて植物細胞に送り込む。

しかし、導入された他の生物の遺伝子は、その遺伝子情報に従ってたん白質を作り出そうとするが、導入された側の生物にとっては全く無用なものなので、それを抑えようとする力(拒絶反応のようなもの)が働いて、うまく機能しない。そこで、「プロモーター」と呼ばれる遺伝子を起動させる物質も一緒に組み込んで無理やり働くようにするという。

そのプロモーターが、目的の遺伝子以外の遺伝子を起動させ、有害な物質を作り出す危険性があると指摘されているそうだ。

この方法は、アグロバクテリウムが感染する植物にしか使えないが、現在では、使える範囲がかなり広がっているとのこと。

パーティクルガン法(遺伝子銃法)

パーティクルガン法とは、導入したい遺伝子を金やタングステン等の重金属の微粒子に吸着させ、高圧ガス等の物理的な方法で細胞に打ち込む方法で、遺伝子が入る確率が低いらしく、現在はアグロバクテリウム法が主流だとのこと。アグロバクテリウムが感染し難いトウモロコシなどに用いる。

エレクトロボーレーション法(電気穿孔法)

細胞壁を取り除いた植物の裸の細胞(プロトプラスト)に電気パルスで穴をあけ遺伝子を取り込ませる方法で、プロトプラストから植物体の再生 が可能な植物にのみ利用できる。

商用GMO遺伝子組み換え農作物の作出

遺伝子導入後

GM細菌を作出する場合は、遺伝子を導入した細菌の中から選抜して培養し、検査をして狙い通りの性質が現れていることが確認できたら完了だそうだが、植物の場合は、導入した細胞を特殊な培地に入れ、化学物質で刺激を与えて培養し、細胞から再生させる必要があり、多くの困難が伴ったという。

導入した遺伝子の固定化

遺伝子組換えを施した細胞が一人前の植物に育ち、目的の性質がしっかりと現れていることが確認できたら、自家受粉を繰り返して、導入した遺伝子を固定させる。

染色体は二本一組になっているが、遺伝子組換えをおこなった段階ではその片方にしか目的の遺伝子が入っていないので、自家受粉でできたタネには、目的遺伝子が両方の染色体に入ったもの、片方にしか入っていないもの、どちらにも入っていないものが混在する。そこで、両方の染色体に入っているタネを選抜して自家受粉させれば、できたタネも必ず両方の染色体に目的遺伝子が入ったものになり、開発用の遺伝子組換え品種が完成する。

戻し交配

さらに、改良したい栽培品種と開発用GM品種とを交配し、例の「戻し交配」をして、改良したい栽培品種の形質と、目的遺伝子の形質の両方を兼ね備えた商用品種を作出することで、GMO遺伝子組み換え種として販売できるようになる。

参考

http://www.cis.kit.ac.jp/~hanba/lecture/plantBio11/11PlantBio_1.pdf

http://www.t-scitech.net/miraikan/gmo/gmo3.html

http://gmo.luna-organic.org/?page_id=18

まとめ

遺伝の記事の中で触れたが、生物のDNAの内、遺伝子情報が書き込まれているのは、僅か数%に過ぎず、その他の一部は、遺伝子を起動するプロモーターと呼ばれる機能や、制御や調整をする情報を持つが、その他の大半は一見無駄なように見える情報だが、どうしてそういう情報がDNA上にあるのか、その全容は未だ解明されていないそうだ。

全てが解明されていないということは、完全にコントロールできないはずなのに、今、見えている現象面だけで目先の利益のために実用に供されているところが、原子力利用などと共通する危うさを感じる。

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COREZO (コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.06.03.

編集更新;2015.06.03.

文責;平野龍平

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