石綿 奈巳(いしわた なみ)さん/Happy Village Farm

COREZO(コレゾ)「農業を通して、生き物や生態系の働きを理解し、自らも畑の一員となって、作物(たね)と土(生態系)をつなぐ物語を綴るHappy Village Farm」賞

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石綿 奈巳(いしわた なみ)さん

プロフィール

長野県松本市波田

Happy Village Farm 経営

信州ぷ組 組員

ジャンル

食づくり

自然農法による農業

経歴・実績

受賞者のご紹介

Happy Village Farm

石綿 奈巳(いしわた なみ)さんは、石綿 薫(いしわた かおる)さんの奥様。自然農法センターを退職されて、専業農家になられた薫さんと一緒にHappy Village Farmを営んでおられる。

双方のスケジュールが上手く合わず、大変失礼ながら、現場も拝見しないまま、薫さんには、2014年度のCOREZO賞を受賞して頂いた。2015年春、念願叶って、Happy Village Farmを訪ねることができた。

波田は、長野駅から松本電鉄に揺られて約30分のところにある田園地帯。2駅先は、上高地の入口、新島々だ。

かぼちゃと大根

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Happy Village Farmには、路地畑とハウスがある。見せて下さった路地畑は、カボチャと大根を交互に作付けするそうで、夏は大根列はマルチングしてお休みでカボチャ列との間には緑肥となる麦が植えられている。

肥料分が少ない状態で、カボチャは植え付けられて、土中の栄養を吸収しようと十分に根を伸ばしきった状態になった時点で、緑肥を漉き込むそうだ。そうすることで、健康で美味しいカボチャに成長すると云う。

カボチャが終わると、すぐに地上部分を刈り取ってしまわずに、大根の植え付けが終わり、根を伸ばし始めた時点で、カボチャの地上部分を土に漉き込むそうだ。そうすることで、地上部分がなくなって、根が枯れた部分に空洞ができ、大根の根がはりやすくなると云う。

そのカボチャや大根も元々、育種の専門家だった石綿さんが品種改良したものだそうだ。なんと、驚くことに個人の農家がF1種をつくっているのである。

トマト

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ビニールハウスでは、これも多くは石綿さんが品種改良したトマトが多品種栽培されていた。ビニールハウスの入口には花のプランターが置かれていたので、何かのマジナイかと伺うと、トマトに付く害虫がその花を好み、トマトより先にその害虫が付くらしく、その害虫を見つけると、害虫対策のサインになるそうだ。

このように、一事が万事、Happy village farmでは、生き物に学び農を組み立て、農業を通して生き物や生態系の働きを理解し、自らも畑の一員となって、作物(たね)と土(生態系)をつなぐ物語を綴っておられる。

「農業生物学」研究会

―元々、お二人は何を?

「夫は大学時代の後輩で、「農業生物学」研究会というサークルに所属していて、千葉県の農家への援農交流会に参加し、そこで食べたピーマンの天ぷらに感動して、卒業後もその農家さんへお手伝いに通ううちに、将来ともに農業をやろうという話になり、1996年に結婚しました。」

奈巳さんが先に起農

「夫婦共に大学の農学部を卒業後、別々の種苗会社に勤め、私は5年勤務して退職し、家庭菜園と子育てを10年やった後、2010年より近隣のリンゴ農家、スイカ農家の手伝いを始め、農作業パートの出来るお母さんによる農業お手伝い派遣の起業を思いつきました。」

「それで、農閑期に仕事をする場所を確保するため、自ら就農を決意し、2012年より松本市の就農支援制度を利用して土肥農園で研修した後、2013年に就農しました。」

「子供のお母さんつながりで数名にボランティア的に農園の手伝いをしてもらったのですが、人付き合いという面での試行錯誤が続き、中途半端な事業にならないように農業を通した人をつなぐ役割はしばし中断することにしました。」

まずは、健全な経営を

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「まずは、収益性と育土とを考慮した適正な品目バランスを見定め、各栽培品目の収量向上と安定化をして、健全な経営を目指しています。ゆくゆくは農家と地域のお母さんたちを結ぶための農業という全く新しい形態に挑戦したいですね。何事も決めつけず、思惑を持たず、その場、その時々に応じて展開していきたと思っています。」

自然農法とは?

「夫は、2001年まで種苗会社に勤務し、トマトなどの品種改良を担当していたのですが、自分のつくりだした品種が海外で使われ、輸入野菜として日本の農家を苦しめる結果となっていることを知って退職しました。2001年より自然農法センター農業試験場で有機栽培向け品種の開発や栽培方法の研究員として勤務し、有機や慣行という手法によるくくりではなく、畑1枚1枚、土壌も環境も異なるのだから、自然の仕組みに学び、農家自らが組み立てる農法こそが自然農法であるという結論に至りました。」

 信州ぷ組組長土肥氏との出会い

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薫さん、「2007年、信州ぷ組組長土肥氏と出会い、垣根なく共に学ぶという、ぷ組の勉強会に感銘を受けて以降、技術面からのサポートをさせていただいています。仕事以外に土日農業をやってきましたが、妻の就農をきっかけに農業へシフトを始め、2015年春、勤めを辞め、新規就農1年生として歩み出しました。」

薫さん、「自然農法センターに在職し、研究者としていろいろ学んだこと、やれたことは多かったと思いますが、品種改良、土壌改良を始め、農業技術は生業としての農業に直結するものです。私は、農家が自立できる農業を研究したかったのですが、雇われるという働き方には、自ずと限界があります。自立するということは、自らが全責任を負うということです。それで、サラリーマンをして兼業するのではなく、まず、自分が自立する道を選びました。。在野の研究者として、自立できる農業を実践したいと思います。」

トラットリアガブリエル

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その後、石綿さんご夫妻を再訪し、Happy village farmの野菜を食せるというトラットリアにお連れ頂いた。イタリアンオムレツがジューシーだと思いきや、在来種の大根を石綿さんが品種改良した水神三浦大根をブイヨンで煮込んだのが入っていたり、そのダイコンの煮物がハンバーグの付け合せになっていたり、素晴らしい野菜をつくる農職人とそれをイッピンに生まれ変わらせるシェフの腕の饗宴を味わう至福の時間を過ごさせてもらった。

COREZOコレゾ「農業を通して、生き物や生態系の働きを理解し、自らも畑の一員となって、作物(たね)と土(生態系)をつなぐ物語を綴るHappy Village Farm」である。

※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、一切、返答致しません。

初稿;2015.11.25.

最終取材;2015.11.

最終更新;2015.11.25.

文責;平野 龍平

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