130名の株主会員を束ねて、四万十とおわを活性化しているスゴ腕おかーさん社長とは?

COREZO(コレゾ)「待っちょったらイカン、打って出るき、と130名の株主会員を束ねる、とってもカワイイ、スゴ腕おかーさん社長」賞

居長原 信子(いちょうはら のぶこ)さん

https://corezoprize.com/nobuko-ichohara

130名の会員をまとめて、株式会社の社長をしているおかーさん

2011年、1株5,000円(1人10口まで)で、130名の株主を集め、株式会社十和おかみさん市を設立し、代表取締役に就任されたそうだ。

「『待っちょったらイカン、打って出るき』ということで、任意団体の『おかみさん市』を立ち上げ、女性特有の、誰か一人のリーダーに頼るのではなく、グループとして一丸となって活動してきました。」

「しかし、活動も10年も経つと、会員の平均年齢が65歳を超え、高齢化で活動から離れる会員も増えて、少し停滞気味になっていました。そこで、活動を再活性化して、これからも女性が自立して仕事をつくり、自分たち自身で組織を運営していくことを目指して、法人化しました。会員には、株主としての責任も持ってもらい、やりがいにもつなげて欲しいと考えています。」

この小柄でとってもカワイイおかーさんの何処からこんなエネルギーが沸いてくるのか探ってみたい。

おかみさん市の活動の前身

おかみさん市の活動の前身は、旧十和村時代の昭和40(1965)年後半から、19あった集落単位で設立された女性加工グループの活動だった。

農産物を出荷しているだけでは地域経済の発展はないと、その女性加工グループが、漬け物や味噌等の農産加工品の製造・販売を開始し、独自に直売所を設置して直販する等、積極的に産直活動に取り組むようになった。

こうして、女性たちの間では、集落を守るためには経済的な自立が必要だという意識が高まったが、他方、旧十和村の人口は約2,500名で、少子高齢化、過疎化が進んでいた。やがて、販売額は伸び悩むようになり、集落単位での活動にも限界が見えてきて、1997年、「ふるさと産品協議会」を設立、村全体が連携しての活動を開始し、村内の農産品と加工品(栗ようかん、椎茸の佃煮、味噌等)を詰め合わせた「十和ふるさと便」(ゆうパック)等の商品が生まれた。

「十和村女性ネットワーク」発足

さらに、1999年には、村内の婦人会や女性活動グループの交流と連携を図る「十和村女性ネットワーク」が発足し、高知市内の日曜市から請われて、野菜の直販を開始した。それが評判を呼び、高知市内のスーパー等での直販へと拡大していったという

そして、2001年、「ふるさと産品協議会」のメンバーや行政、JA、四万十ドラマ等を構成員とする「十和村地産地消(産直活動)運営協議会」を発足。その後、2003年より、「おかみさん市」に名称を変え、任意団体として、地元の直売施設での販売、高知市内のスーパーでの産直販売、学校給食への地元食材の提供という活動を続けてきた。

都市部との交流事業開始

高知市内のスーパーでの産直販売活動では、対面販売を通じて、都市部の消費者との交流が生まれ、十和村に招いて、四季折々の手作り郷土料理で、もてなそうと、「おもてなしメニュー」を開発し、2004年には、「十和であいましょう」というイベントを実施して、都市部との交流事業が始まった。

2005年からは、「おもてなしツアー」として引き継がれ、年3〜4回実施しているそうだ。各地域の「おもてなしメニュー」でのもてなしや、田植え体験、茶摘み体験等、色々な農村・自然体験を通じて、交流できるツアーで、DMや都市部での産直市の際に募集をかけ、毎回5〜60名の参加が有り、会員は300名以上になっているという。

「正直エコ農産物表示」とは?

また、2002年から、販売する全ての野菜に、「おかみさん市」独自の「正直エコ農産物表示」を添付し、品名、生産年月日、生産地、生産者名、化学合成農薬の使用回数、化学合成肥料使用の有無を表示しており、消費者からの大きな信頼を獲得しているそうだ。

そして、都市部での対面販売の経験から、消費者の安全・安心とお互いの健康を思いやるこころ、環境に対する意識も高まり、生産に携わる全会員が、ISO14001 の認証を取得した。全会員が、認証を取得するには、何度も勉強会や講習会を開き、化学肥料や農薬を減らすための栽培技術、農家の畑や資材置き場における具体的な整理整頓方法等の習得、指導者と農家が一体となった地道な努力があったことが推察できる。

ISO14001とは、企業などの活動が環境に及ぼす影響を最小限にとどめることを目的に定められた、環境に関する国際的な標準規格で、PDCAサイクルによる継続的改善を取り入れている点と、環境目的・目標、環境パフォーマンスのレベルなどの具体的内容は組織が自ら定める点等が特徴だとのこと。

「十和おかみさん市おもてなしバイキング」開始

また、2007年7月1日にオープンした道の駅「四万十とおわ」の中にあるレストラン「とおわ食堂」の定休日を利用し、毎週水曜日に、地元食材でつくった郷土料理をバイキング形式で提供する「十和おかみさん市おもてなしバイキング」を開始した。

地区内の4グループが交代で運営していて、ここでも、「おもてなしツアー」、「おもてなしメニュー」で培ったノウハウが活かされている。献立は、自分たちが育てる季節の野菜を中心に決め、グループによって、毎回のメニューは多少異なるそうだ。

繁忙期には、1日200〜250人もの来店があり、地元の旬の野菜を基本にした郷土料理が他地域からのお客様に喜ばれていて、7〜80%は十和以外からの来店だという。席数は50席程なので、午前11時~午後2時の3時間の営業時間で、4〜5回転していることになるから驚きだ。都会にもこんなスゴイレストランはないだろう。

ある日のメニューは、しいたけのたたき、イタドリの煮物、猪肉のすき焼き風、里芋の煮物等、11種類のおかずと、ご飯類は、白飯、ちらし寿司、キビごはんの3種類、みそ汁、デザート。それで、料金は、大人が1,000円、小学生未満は500円である(取材当時)。

「地元の人はいつも食べている料理だけど、都会からのお客様は、とても喜んで召し上がって下さいます。一番人気は、しいたけのタタキですね。」と、居長原さん。

「しいたけのタタキ」とは、居長原さんのレシピによると、カリッと揚げたしいたけに、鰹のタタキ風のタマネギ、ネギ等の薬味を載せ、醤油、酢、みりん、砂糖、柚子等でつくった甘めのタレをかけたお料理。是非、食べてみたいゾ。

その他にも、地元の特産品を活かした「四万十にくびっ茸(しいたけ加工品)」、「豆腐の味噌漬」、「四万十からい醤」他、オリジナルの農産加工品を手掛け、道の駅四万十とおわ等で販売しておられる。

十和おかみさん市成功の秘訣とは?

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「成功の秘訣ですか?そんなに儲かっていないので成功かどうかはよくわかりませんが、女性グループの活動が母体になっていることが大きいと思います。女性と地域が経済的に自立するこころから始めましたし、女性は、男性と違って、我先にというより、協調性を重視します。誰かリーダーがいると責任転嫁しがちですし、個人でやっていると、失敗しても、自分の責任だけで済みますが、グループだと、役割分担をして、ひとりひとりがしっかり責任を果たさないと、グループ全体の責任が問われますから、なんとかやってこられたのではないかと思います。」と、居長原さん。

「今は、仮の事務所ですが、常勤2名で運営しています。1人は関西出身ですよ。」と、最後に「株式会社十和おかみさん市」の事務所にご案内頂いた。

きっと、大儲けされて、ビックリするような新社屋を建てられるのだろう。

四万十のおいしい水と空気の中で育てた野菜がおいしくないはずがない

「この四万十のおいしい水と空気の中で育てた野菜がおいしくないはずがないというのが私の自論です。皆さん、どうぞ、四万十の自然の中で、私たちの育てた野菜やお料理を食べにいらして下さい。お待ちしています。」

「実は、もうすぐ株主総会なので、その議案書をつくらないといけないので。こう見えても、結構、忙しいんですよ、ハハハハ。」と、居長原さん。

まとめ

四万十とおわには、元気で魅力的な方々がたくさんいらっしゃる。「待っちょったらイカン、打って出るき」という行動力が、地域を元気にしているのだろう。

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COREZO (コレゾ)賞 事務局

初稿;2013.10.11.

最終更新;2015.06.25.

文責;平野 龍平

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