種タネの話27、固定種、在来種の野菜を食べる方法、その4

固定種、在来種の野菜を食べる方法、その4

在来種、固定種のみを扱う八百屋さんがある。

旅する八百屋 warmerwarmer、高橋 一也(たかはし かずや)さん

COREZO(コレゾ)「 生産者と消費者をつなぎ、昔から受け継がれてきた命ある種と本物の野菜を子供たちにつなぐ、旅して、種を蒔く八百屋」賞

https://corezoprize.com/kazuya-takahashi

「warmerwarmer」とは?

「私が、『古来種』と呼んでいる野菜を知っていただき、その種と生産者を守るため、それらの販売と語りつなげる活動、また、消費者やレストラン、料理教室からの『どこのどういう野菜を食べる?』、『こうゆう野菜を食べたい』等のご相談、ご要望にお応えしながら、お野菜のセレクション、コーディネートやプロデュースの他、さまざまな『古来種』とそれを種採り生産する農家さんの特長や得意分野を知っているからこそできることをしています。」

『古来種』とは?

「『古来種』というのは、私の思いを込めた、在来種、固定種を表わす造語です。種を蒔き、芽が出て、ふくらんで、花が咲き、種を採り、そして、また、その種を蒔く。そうして、幾年もの時間をかけて命の循環が絶えなかったのは、種そのものの生命力とそれを守ってきた日本人の土や未来への想いがあったからです。それらすべての種、そして、その想いを総称したものを『古来種』と呼んでいます。」

旅する八百屋とは?

「まず、『古来種』がどうして大切か、その考え方とか想いの種をまずいろんなところに蒔かなければなりません。野菜の生産も、種を蒔かないと芽が出て来ませんし、先に収穫はできません。種を蒔くには旅をしなければなりません。だから、声がかったら、机ひとつと野菜を持って、どこにでも出掛けて、移動八百屋を出店します。いろんなところに『旅する八百屋』であり、いろんな人に『種を蒔く八百屋』でもあります。」
「その他にも、カフェやイベントでのトークイベント、ワークショップを展開したり、新しいカタチの八百屋のプロデュースや『種市』という、古来種野菜ファーマーズマッケットの企画も手掛けています。とにかく、一度、昔から受け継がれてきた『本物の種』のお野菜を食べて欲しいと願って、活動をしています。」

「『古来種』のように、命ある種から作った野菜は、いつか食べたことのあるような懐かしいおいしさを持っていて、きっと食べた方の心も体も喜ぶはずです。同時に、その野菜の背景には、物語がたくさん詰まっています。『生命力のある野菜を頂いている』と感じると、土との距離が近くなり、四季折々の私たちの暮らしが豊かになります。そういうライフスタイルまで語り継ぐことができる八百屋を目指しています。」

古来種にはそれぞれにストーリーがある

「古来種にはそれぞれにストーリーがあって、例えば、『平家大根』は、800年間、命をつないできた、日本で一番古い品種で、宮崎県椎葉村の焼畑農で有名なおばあちゃんの家で代々守ってきた種を、長崎県雲仙市で、自家採種し、種を守っておられるパイオニア的な生産者が、譲り受け、大切に繋いでおられるのです。」

「でも、東京で見かけることはありません。形は揃わないからバラバラだし、味もバラバラ、日持ちもしなかったり、全部同じような形や規格に揃うよう人為的に作られた野菜とは違い、流通には乗らないのです。」

「この平家大根は、辛味が強いので、すりおろしにしてもとても辛く美味しいですし、また、煮込み大根などに調理すると、しっかりと大根としての味を主張してくれます。」

古来種の『平家大根』とF1種の『青首大根』を比べて見えてくるもの

「古来種の『平家大根』とF1種の『青首大根』を比べてみると、いろんな社会の仕組みが見えてきます。今、市場に流通している野菜の99%が規格の揃う、人為的につくられたF1種です。」

「F1野菜が出てきて、小売りでは、昔の量り売りは無くなり、この規格のこのサイズは1本、1個いくらという販売方法に変わりました。現状の流通に都合のいいように規格が決められ、野菜も人為的につくられています。本来、同じ野菜が、形が悪い、不揃いだからと安く売られるのもおかしな話です。」

「今の子供たちはスーパーに並んでいる野菜しか見ていませんから、『青首大根』しかなければ、それ以外は、『大根』とは認識されなくなります。5年後、10年後、どうなっているのでしょうか?そういう種の野菜は、歴史から無くなっているかも知れません。」

F1種とは?

「皆さんが普通に食べている野菜は、種を蒔いて、実がなって、種ができて、それを蒔いて、というのを繰り返していると思われていますが、F1種の農業生産者は、自分で種を採らずに、毎回、種苗会社から購入して栽培しています。」

「実は、F1種というのは、一代交配種という意味で、一代限りしか命をつなぐことができない野菜です。というのも、同じ種類の野菜でも、大きく育つとか、病気に強いとか、次の代に受け継がせたい異なる性質を持つ品種を人為的に交配すると、両親のいいところだけを受け継ぎ、両親のどちらよりも丈夫でよく成長し、品質もよく、収量も多い子が、一代に限りできます。」

「これは雑種強勢という、動植物に発現する自然界の仕組みを利用しているのですが、二代目からは、バラバラなものができるので、種は採れても、一代限りしか栽培できません。交配も、昔は、ピンセットを使って、手作業で雌しべに受粉していたのですが、今では、雄性不捻という技術が使われています。これを説明すると長くなるので省きますが・・・。」

種なしトマトや種なしスイカに違和感を感じない⁉︎

「今では、バイオ技術の力や、農作物を人為的に交配させて、病虫害に強いから農薬を使わなくていいとか、栄養価を高くするとか、里芋とかの皮を剥く時に手が痒くならないようにするとか、大抵のことはできてしまいます。例えば、種がないトマトとか、種がないスイカも開発されているそうです。種なしトマトは、種を取除く手間が省けるし、可食率が高いはずですから、レストランには売れると思います。」

「私は、別にそれに反対している訳ではありませんが、種がないのはおかしくないですか?人間に種があるのと同じように、野菜にも種があるのが普通でしょ?なんで種がないの?って、疑問に思うのが普通なのに、科学技術の力を使って、F1とか、人間の都合のいいように人為的につくられた野菜がどんどん増えて、種なし◯◯等が、ごく普通に日常生活の中にあるので、違和感を感じなくなってしまっているのです。」

昔のニンジンと今のニンジンの違い

「昔のニンジンは、表面がとてもゴツゴツしています。洗う時もヒネリながら丁寧に洗わないと土が残ってしまいます。ところが、今、スーパーで売られているニンジンは、ゴツゴツ感がなく、スラッと真っすぐで、表面もツルッとしていますよね。出荷時に、洗浄機に掛けて、効率よく洗えるように、種の時点で、真っすぐ、凹凸のできないよう、その上、規格やサイズまで、人為的にコントロールしちゃうんです。」

「例えば、通常、45日で収穫するホウレンソウが、30日で収穫できるようになれば、単純に、1枚の畑を1.5倍に活用できるのですから、ものすごく効率がいいですし、生育期間が短くなれば、端境期も短くなるので、生産者にとって、人為的に種をコントロールして野菜がつくれるのは都合のいいことです。」

「それにしても、人間は、この先の人生、例え45日先でもわからないのに、F1の野菜は、45日後がわかるって、すごいことですよね?私が扱っている在来種、古来種というのは、人間と同じように先がわかりません。その上、味、形、色、・・・、規格が揃わないし、非効率で、非経済的だから、店頭に並ばなくなりました。」

日本料理の組合せの妙が見えてくる

「昔からある在来のキュウリって、苦いんです。それで、苦味をとるためにどうしたらいいかと思って、塩でもんでもダメなのに、味噌と一緒に食べると、苦味がとれるんですよ。それを食べた時に、『あっ、そうか』って、居酒屋でもろきゅうってあるでしょ?味噌も付けて食べますよね?元々、キュウリって苦かったから、あの食べ方が広まったんでしょうね。」

「在来の野菜を扱っていると、日本料理では、どうしてこの組合せなのか、という答えが見えてきます。全て意味があるのがわかってくるんでおもしろいですよ。」

高橋さんが扱う古来種の野菜はどこで買える?

「常設の店舗を持っていませんので、『warmerwarmer』のWebサイトでの通信販売や、こうした催事やイベントの他、声が掛かれば、いろんなところで出店している移動八百屋ですね。」

「伊勢丹新宿店さんでは、売場を設けて、私の納品した野菜を販売して下さっていて、時々、私もお客様と直接コミュニケーションするために店頭に立っています。レストランや店舗に卸もしていて、食べられる場所や移動八百屋のスケジュールはWebサイトにアップしています。」

まとめ

高橋さんが古来種と呼んでおられる在来種、固定種は、最近、他店と差別化を図ろうとする料理店やレストランで人気があるらしいが、一時的なブームで終わらせないためにも、その良さがわかる消費者が増え、取り扱う八百屋さんや店舗が増えてもらいたいものだ。

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COREZO (コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.06.16.

編集更新;2015.06.16.

文責;平野龍平

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