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固定種、在来種の野菜を食べる方法、その3
固定種、在来種の野菜を積極的に栽培しておられる農家の方がいらっしゃる。
種の自然農園 岩崎農園、岩崎 政利(いわさき まさとし)さん
COREZO(コレゾ)「自然の中で選抜を繰り返し、その土地の風土にあった種を育て、命を繋ぐ、農家本来の姿を復活した種採農業家」賞
https://corezoprize.com/masatoshi-iwasaki
採種農家のパイオニア
岩崎 政利(いわさき まさとし)さんは、長崎県雲仙市で種の自然農園・岩崎農園を営み、50種以上の在来種を育てておられる、採種農家のパイオニアと呼ばれているようだ。かつては採種農家ばかりで、農家が当たり前にやっていたことを復活されたのに、パイオニアと呼ばれているところが、今の世の中を象徴している。
昔からあるF1種を否定することはできない
「農家として『F1種』を否定するかといえば、在来種も交雑の中で生きてきたわけで、自然の中で交雑したか、人為的に交配させたかの違いはあっても、どちらも交雑しているわけですし、F1種が開発されたおかげで、季節や旬に関係なく、画期的に幅広く作物を栽培できるようになって、農家は多大な恩恵を受けている部分もあります。」
「だから、昔からあるF1種を否定することはできませんが、優勢不稔とか遺伝子組み換えの技術を使って品種改良されていくのは少し考えないといけないところもあると思います。」
在来種だけを作って農業で生活するのは現実的には無理
「在来種がない時、特に端境期の3〜5月にはF1種を作っています。その時期、この辺でできる在来種はありません。そういうこともあって、交配によるF1種が作られるようになったわけですし、年間、トータルすると、どうしてもF1種は否定することはできません。それに、在来種がどんどん失われている中、1年間、在来種だけを作って農業で生活するのは現実的には無理だと思います。」
固定種、在来種の種も外国産が急増
「日本の固定種、在来種の種も外国産に代わってきています。日本国内では、採種農家は採算が合わないので、いずれは、生産農家が採種していかない限り、全部外国産になると思いますよ。一般家庭向けに小袋に小分けして売っている種苗店はともかく、我々、農家が買えるのは、最低でも1L単位なので、買っても使い切れないんですよ。それに外国産で、採種してから時間が経った種が多いです。種苗会社も売れる種には力を入れるけれど、売れないものには力を入れませんからね。」
冷凍保存しても種を繋げなくなる理由
「ジーンバンクのようにマイナス数十度で保存すれば、数十年以上保つと云われていますが、冷凍保存していても、発芽率は年々低下するでしょうね。例え、発芽率が下がっても発芽さえすれば、命は繋げますが、保存はできても、いざ、取り出して、栽培しようとした時に、その種がその時の環境に対応できるかどうかです。環境は年々、変化します。種は毎年、栽培して採種を続けなければ、その環境の変化に対応できず、種を繋げなくなる可能性が高くなると思います。」
農業を生業にする者の醍醐味とは?
「F1種は、世界中で誰が蒔いて育てても、同じ姿、同じ大きさ、同じ収量で収穫できるという大きな利点がありますが、F1種しか栽培していない農家では、在来種の種を買ってきて栽培しても、すぐには生かしきれないと思います。というのも、本来、農作物は、採種をしてはじめて、その作物と生産者である人との間に密接な関係が生まれるからです。」
「ここにある在来種の種は、私が毎年、選抜を繰り返して、この土地の風土や気候に合わせて姿形を整えてきているので、まず、他の農家ではこの種を生かしきれません。私しか生かしきれない種だというところにこの種の価値があります。それは、そのことこそが素晴らしいことだと思いますし、それが農業を生業にする者の醍醐味だと私は思います。」
経済と効率を優先する人の方が圧倒的に多い
「満足度は高いけど、経済的には無駄が多いから、やる人が少ないんですよ。種蒔き、収穫が終わった後に、植え直して、採種という、作業が増えるので、時間と労力、手間が倍かかります。おっしゃるように、F1種を作っても、規格品以外は出荷できませんし、価格は流通主導で厳しいですが、販路はできています。」
「ところが、在来種は出荷できないから、自分で販路を開拓しなければなりません。結局、どっちを取るかですが、経済と効率を優先する人の方が圧倒的に多いということです。でも、今では、こういう野菜を食べて、美味しいと思った人や使いたいという食材に関心の高い料理人の人たちや増えてきていて、少しずつ変化しているのは感じています。」
種の多様性を守るためにすべきこと
「種が世界的に支配されるというのは恐ろしいことです。本来、地域にある種を自分たち農家が大切に守っていくことが大事なのです。今のままでは、F1種や遺伝子組み換えばかりになって、種によって世界が支配される危険があります。」
「世界の食糧事情を考えると、そういう世界も否定はできないけれど、種の多様性を守るためにも、それと同時に並行して、それぞれの地域に昔からある在来種を守っていくことが重要です。どちらかがどちらかを否定するのではなく、共存して、選択できるようにしておかないと恐ろしい世の中になると思います。」
岩崎さんの野菜を食べる方法
「ほとんど直売ですね、7〜8割は、宅配便等で消費者の皆さんに販売しています。残りが高橋さんたちのような業者さんとか、通販会社を通じて販売しています。」
「FAX等で申し込んでもらえば、月に1回のペースで、その時期に収穫できた野菜をセットにして発送します。」
まとめ
農業や農作物の種も経済と効率が最優先された結果、在来種、固定種の野菜はほとんど生産も流通もしなくなって、私たちは選択の自由や権利を失っているのである。
種も選抜して、栽培を繰り返すことで、その土地や風土、農業生産者の技術にあった種に進化していく。
種採り農家の方々が増えない限り、種の自給率は下がる一方だし、種の多様性を守ることはできない。
消費者もそのことをしっかりと肝に銘じておくべきだろう。
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COREZO (コレゾ)賞 事務局
初稿;2015.06.14.
編集更新;2015.06.14.
文責;平野龍平
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