現代版「ノアの方舟建設計画」とは?
現代版「ノアの方舟建設計画」と呼ばれるプロジェクトがあるそうだ。
スヴァールバル世界種子貯蔵庫
2008年、北極点からおよそ1,300km南の北極海に位置するノルウェー領スヴァールバル諸島最大で、唯一の有人島であるスピッツベルゲン島に「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」という種子銀行が完成した。
地殻変動が少なく、また、永久凍土に覆われているので、万が一、冷却装置が故障した場合にもマイナス4 度を維持できる環境が種子貯蔵庫の場所として選ばれた理由だという。
最大300万種の種子を保存可能とされる地下貯蔵庫は、マイナス18~20度に保たれ、その中で、種子は、湿気を防ぐため、四重に熱シールが施されて保存されている。地球温暖化が進み、海水面の上昇が起こった場合にも影響を受けることの無いよう、海抜約130mの岩盤内部約120mの地点に設置されていて、テロ攻撃にも耐えられるような構造になっているそうだ。
2015年現在、全世界から集められた840,000種類以上の植物の種子が保存されていて、現存する総種類数の半数を超える数だそうだ。当初は農作物が中心だったが、それ以外の樹木や植物にも範囲を拡大しているという。
ノルウェー政府はこれを「種子の方舟計画」と名付け、100ヵ国以上から支援を受けて具体化し、現在は、国連食糧農業機関(FAO)とロックフェラー財団、フォード財団やシンジェンタ財閥が資金提供を行っている国際農業研究協議グループ(CGIAR)の協力で2004年に設立された独立国際機関グローバル作物多様性トラストによって運営されているそうだ。
世界種子貯蔵庫の真の目的とは?
「年々、『固定種』は急速に消滅していて、我々は毎日のように作物生物の多様性を失いつつある。将来の農業のため、そして気候変動や伝染病などの危機から人類を守るため、あらゆる環境に適用できる種子や遺伝資源を安全に保存する必要がある。いわば、現存の世界のジーンンバンクをバックアップした上で、どのような危機が起こっても種子が生き残れるように保存しておけるフェイルセーフ(万一の場合でも安全側に機能する)の金庫が必要だ」
と、この計画には、ビル・ゲイツ財団が多額の資金提供をし、さらに、ロックフェラー財団、モンサント、シンジェンタ財団や国際農業研究協議グループ(CGIAR)なども、資金提供をしているそうだ。
設立目的は、将来起こるかもしれない、気候変動、自然災害、病虫害、核汚染など、地球規模の惨事から農作物や種の絶滅を防ぎ、農業を復活して食糧危機を回避できるようにすることだというが、独占ビジネスで巨万の冨を稼いだビル・ゲイツ、緑の革命を推進してきたロックフェラー財団や遺伝子組み換え種やF1種で世界支配を狙うGMO・バイオメジャーが名を連ねていることから、遺伝子組み換え種やF1種が行き詰った時の担保として、在来種の遺伝子情報も全て握っておこうという魂胆に見えて仕方がない。
日本のジーンバンク
日本でも、1980年に農林水産省が茨城県のつくば市に農業生物資源ジーンバンクを作って、植物、微生物、動物などの多様な遺伝資源を国内外から広く収集し、日本中の種屋からも在来種の種を集め、植物では約22万点の種を保存し、形質的な特徴や耐病虫性、品質などの特性が調査され、利用しやすいようにデータベース化が進められているそうだ。
冷凍保存した種子の発芽率
「スヴァールバル世界種子貯蔵庫」が行っているのと同じ方法で、零下18度か20度で保存すれば、理論上は1000年でも2000年でも保存ができて、少しずつ温度を上げて貯蔵庫から出せば、種は発芽するらしい。ところが、数年前、ある種苗会社が、そのジーンバンクから、温度を徐々に上げて常温に戻した野菜のタネを10数種購入して、撒いたところ、1種類しか発芽せず、あとは全て芽が出なかったという。1980年に日本中から集めた菜っ葉の種がたかだか30年でほとんどが死んでいたというのだ。
予算が無くなって、日本中から集めた種をただ保存しているだけという状況になってしまっているそうで、10年、20年単位で外に出して、種を撒いて、もう一度作物を育てることを繰り返えすことも必要だという。
種は毎年、栽培して採種を続けなければ、環境の変化に対応できない
種採り農家の第一人者である、岩崎 政利(いわさき まさとし)さんのお話によると、
「発芽率が下がっても発芽さえすれば、命は繋げますが、保存ができたとしても、いざ、取り出して、栽培しようとした時に、その種がその時の環境に対応できるかどうかです。当たり前のことですが、環境は年々、変化しています。私が採種している種は、毎年、蒔いて栽培して採種を続けているから、環境の変化に対応できるのです。冷凍保存していた種は、保存を始めた時の環境と、何年か後、何十年、何百年後か知りませんが、栽培しようと取り出された時の環境は当然違いますから、その変化に対応できず、種を繋げなくなる可能性が高くなると思います。それに、在来種の種は、同じ品種でも、その土地、風土、環境、栽培者の農作業や選抜の仕方によって違う進化をします。だから、私が採種している種は、私の農地では毎年ちゃんと育ちますが、他の農地で同じように育つとは限りません。」
https://corezoprize.com/masatoshi-iwasaki
参考
http://moneyzine.jp/article/detail/154637
https://www.gene.affrc.go.jp/index_j.php
http://matome.naver.jp/odai/2137415667159174201
https://retrip.jp/articles/406/
まとめ
種の多様性を守るためには、種タネを冷凍保存するより、毎年、栽培して採種を続けることが重要。
種タネの話は奥が深いが、私たちも知らなかったでは済まされない大きな問題だと思う。
是非、ひとりでも多くの皆さんに関心を持って、お考え頂きたい。
種タネの話については、下記の受賞者の皆さんのご紹介ページも併せてご覧頂きたい。
https://corezoprize.com/kazuya-takahashi
https://corezoprize.com/masanori-sano
https://corezoprize.com/satoru-nakamura
https://corezoprize.com/kaoru-ishiwata
関連記事
https://corezoprize.com/seed-14-gmo
https://corezoprize.com/seed-13-cell-fusion
https://corezoprize.com/seed-12-radiation
https://corezoprize.com/seed-11-radiation
COREZO (コレゾ)賞 事務局
初稿;2015.06.11.
編集更新;2015.06.11.
文責;平野龍平
コメント