目次
塩のミネラルとにがり
塩のことを調べ始めると、論調は、旧専売(JT )塩であるイオン交換膜塩派と反イオン交換膜塩派(今は表示できなくなった旧自然塩・天然塩派?)に大きく2分できるように思う。
反イオン交換膜塩派は、イオン交換膜塩は塩化ナトリウムの純度が高く(99%以上)、ミネラル分または、にがり分が少ないということを問題視しているようだ。
ミネラルとは?
生体を構成する主要な4元素(酸素・炭素・水素・窒素)以外のものの総称で、無機質ともいう。
ミネラルは体内で合成できないため食物として摂る必要があり、不足した場合は欠乏症やさまざまな不調が発生することもあるが、摂りすぎた場合にも過剰症や中毒を起こすものもある。
現在、人間の身体に必要とされるミネラルは16種類とされ、これを必須ミネラルと呼ぶ。
人体に含まれる量によって、主要ミネラル7種類と微量ミネラル9種類に分けられ、主要ミネラルはカルシウム・リン・カリウム・硫黄・塩素・ナトリウム・マグネシウムで、微量ミネラルは、鉄・亜鉛・銅・マンガン・クロム・ヨウ素・セレン・モリブデン・コバルト。
これら必須ミネラルのうち、塩素・硫黄・コバルト以外の13種類については、「日本人の食事摂取基準」で摂取量の指標が定められ、似通った性質のミネラル同士ではお互いの吸収や働きを妨げることがあるため、バランスよく摂ることが必要だとされている。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/syokuji_kijyun.html
ミネラルの表示に関する食用塩公正競争規約
「ミネラルたっぷり」、「健康・美容に良い」などの表示は使えない。
ミネラルたっぷり、健康美容に効果があるなどの表現は、健康増進法、薬事法などで従来からも使用は認められていなかったが、食用塩公正競争規約でも規定され、包装表示に使用できない。
「ミネラル」は無機物質全体を表す言葉で、ナトリウムは代表的ミネラルのひとつであり、塩の主成分は、塩化ナトリウムだからどんな塩にもミネラルは多いのは当たり前のことである。
「ミネラル」の用語そのものが健康によいイメージがあり、かつて、ミネラルの一部元素を多く含むだけで使用されていたケース、ミネラルの何が効果を示すのかが不明確なまま使われていたケースが多々あった。
健康増進法では、「ミネラル」として12元素が規定されており、そのすべての元素を検出し、一部の元素については規定量以上ないと、「含む」も「豊富」の表示もできない非常に厳しい基準である。
成分の含有表示として、「カルシウムを多く含む」のように具体的な成分の含有を示す表示はできる。ただし、栄養成分表の表示が必要になったり、健康増進法マグネシウムや鉄などのように表示できる含有量が規定されているものもある。 「にがりを含む」表示は、マグネシウムが0.1%以上含まれる場合にできる。
塩からのミネラル摂取量
海水中にはごく微量であっても、あらゆるミネラルが含まれているのは確かだが、海水と同じ成分割合の塩(海水をそのまま瞬間乾燥させてつくる)を毎日摂り続けたとしても、人間の必要量とされるミネラル量は摂取できないのは誰が考えても明らかである。
参考
http://www.geocities.jp/t_hashimotoodawara/salt6/salt6-98-07.html
厚労省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
多量ミネラル
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000067135.pdf
微量ミネラル
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000042638.pdf
参考 製塩各社の塩の成分分析
http://www.shiojigyo.com/a080data/img/data06_01.pdf
http://www.geocities.jp/t_hashimotoodawara/salt6/salt6-98-08.html
http://www.slowfood.co.jp/encyclopedia/saltcomparison/
にがりとは?
海水から塩化ナトリウムを析出分離してえられた、塩化マグネシウムを主成分とするもの。日本食品添加物協会の規格では、粗製海水塩化マグネシウム(塩化マグネシウム含有物)と呼んでいる。
豆腐づくりに使う「にがり」は、固体の塩化マグネシウムを使っても苦汁(にがり)使用と書くことが特例として認められていて、豆腐に使われている「にがり」は特別なこだわりがある豆腐でもなければ、昔からの製塩にがりを使っているものは、少なくなっていると云われている。
にがりの表示に関する食用塩公正競争規約
「にがりを含む」旨の表示は、マグネシウムが0.1%以上含まれる場合、一括表示、製法表示の枠外に記載することができる。
一括表示の枠外において「にがり」を含むことを表示できるのは、海水由来のマグネシウムを0.1%以上含む場合に限られ、また、にがりを添加した商品は、一括表示の原材料名欄に「粗製海水塩化マグネシウム」または「粗製海水塩化マグネシウム(にがり)」と表示される。
塩に含まれる「にがり」は塩の結晶の内部に入っているのではなく、結晶の表面に薄く付着する形で存在する。
にがり成分を多く含む塩の特徴
にがり分が多い塩は、塩化マグネシウムが吸湿し易いため、湿った感じの塩になり、価格もにがりが多い塩の方が高くなる傾向がある。
味噌や醤油の他、食品製造業で塩の種類を変えると微妙に味が変わるそうで、「にがり」が味に何らかの影響を与えると考えられている。
マグネシウムの多い塩は、丸み、甘みが強く、癖の多い塩になり、少ないとさっぱりして癖のない味になる傾向があり、カリウムは直接舐めると刺激的な味だが、10%以下の含有量では、料理に使うと刺激的な味が薄まってうまみを増す傾向がある。
溶けやすい塩は食材へのなじみが早く、振り塩での分散性のよさは水分(にがり分)と粒子の大きさが大きく関係し、乾燥した塩、中くらい(0.3~0.6mm)程度の粒の塩が振りやすい。苦汁分が多くてべたついた塩は一度空炒りをして水分を飛ばしてから適度に砕くと振りやすくなる。
塩の溶ける速さは、結晶粒子が小さいほど早く、結晶の形はフレーク状になると早くなる。作り方から見ると、低温で炊いた平釜塩(フレーク塩)、高温で炊いた平釜塩(凝集晶塩)、立釜塩(真空式)、多雨多湿地域の天日塩、乾燥地帯の天日塩、岩塩の順に溶けにくくなる。
にがりの健康上の効果
人体に必須の無機物質として重要な栄養素とされていて、現在(2015年度)、厚労省の定めるマグネシウムの摂取推奨量は成人男子1日300mgとされているようで、にがりの主成分のマグネシウムによる効果が謳われてきた。
塩のマグネシウム含有量は、市販塩で添加物がない場合、約3%が最大で、通常にがりを適度に含有しているとして販売される塩の大部分は、0.5%以下である。家庭用小売塩から摂取する塩の量は1g/日程度と推定されており、その中で摂取できるマグネシウムは塩中のマグネシウムが0.5%とすれば、5mg/日で、海水と同じ割合である約4%含んでいるとしても40mg/日にしかならない。
統計によると、マグネシウム摂取の大部分が穀類、芋、魚、海藻などからだそうで、通常、他の食べ物から摂る方が圧倒的に多いと考えられる。それでも、もちろん、塩は毎日使うので重要であるが、その前に、塩のミネラルだけではなく、食事全体のバランスを考える方が大事だろう。
にがりの種類
膜法濃縮にがり
海水を膜で濃縮し、釜で煮詰めて製塩した時に出るにがりで、国産にがりの大部分はこれ。カルシウム分が多く硫酸が少ないのが特徴で、色は無色透明。膜濃縮を使って濃縮したかん水から製塩した残りのにがりは、都市排水や農業排水などからの汚染物質は、分子が大きいためにほぼ完全に除去されていて、安全性の高いにがりと云われている。大部分は、カリウム塩、マグネシウム塩を作る化成品工場に販売されているそうだ。
蒸発法にがり
塩田や立体濃縮などで海水を濃縮し釜で煮詰めて製塩したときに出るにがり。輸入品が多いが、小規模の国内での製塩でできるにがりも市場で流通している。カルシウムがほとんどなく硫酸が多いのが特徴で、色は黄茶色に着色し、泥が混ざることもある。蒸発法で濃縮した場合には、海洋汚染物質もほぼ全部がにがりに濃縮されるので、原料海水は汚染されていないきれいなところを選ぶ等、注意が必要とのこと。
まとめ
塩づくりは、旧専売(JT )塩であるイオン交換膜塩派と旧自然塩・天然塩派(今は表示できなくなった)?、または、反イオン交換膜塩派に大きく2分できる。
イオン交換膜塩派は、安全性と経済性、効率を優先し、反イオン交換膜塩派は、製法とミネラル分または、にがり分の含有量を重要視している。
以前、「にがり健康法」が一時ブームになったが、いつの間にか消えてしまった。効果がなかったのだろうか?
いくらミネラル分が豊富な塩でも1日に必要な量は摂取できない。
にがりに含まれる主なミネラルは、マグネシウム、カリウム、カルシウムである。
「にがり」が多い方が健康にも味つけにもよいと考える人もいれば、その逆の考えの人もいて、塩に含まれる「にがり」の量を多くするか少なくするか、程よい「にがり」の量、その割合は、それぞれの製塩業者でまちまちである。
どれがいい塩なのか?正直、判断、選択に迷うところだ。
参考
http://www.siojoho.com/index.html
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COREZO (コレゾ)賞 事務局
初稿;2015.04.23.
編集更新;2015.04.23.
文責;平野龍平
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