意外に知らない塩のことその1、食用塩と製塩用語の基礎知識

食用塩の定義と製塩用語の基礎知識

なんと、人間は、塩を摂取しないと生きていけないのに、国が定める食塩に関する法律や規定、基準はなく、いわゆる業界団体だと思われる食用塩公正取引協議会が決めた「食用塩の表示に関する公正競争規約」というものがあるようだ。

食用塩の定義

http://www.salt-fair.jp/explain/

より、以下、引用、要約

1997(平成9)年に92年間にわたって続いた塩の専売制が廃止されたが、表示や品質規格などについての全く基準がない状態で自由化されたため、国内産の「自然塩」「天然塩」と表記されていても、実際は安価な輸入天日塩や岩塩が原材料に使われていたり、固結防止処理等をされていたり、また、「自然」「天然」という言葉が、根拠も曖昧なまま、優良品であると連想させるなどの商品の表示等に関して様々な問題が起こった。

2004年、公正取引委員会から「家庭用塩について」適正な表示の是正の勧告、指導があり、また、東京都から「食塩の表示に関する業界自主基準策定に向けた指針」が公表した。

2004年、業界有志12社で食用塩公正競争規約作成準備会を発足し、2006年、76社の会員が参加する食用塩公正取引協議会を設立して、2010年、「食用塩の表示に関する公正競争規約」を完全施行した。

2014年4月時点で、188社にまで増え、承認点数は約1,500点だとのこと。

規約の概要

  1. 製造方法は、指定された用語に限定した上で、表示義務化。(例外として、表示可能面積は150c㎡以下の商品は適用外)
  2. 地域名を含む商品名の表示基準を設定。
  3. 原材料名の明確化。(海水、海塩、岩塩、湖塩の4つに限定)
  4. 表示できない表現について定義。(自然塩、天然塩、ミネラル豊富・健康や美容の効果効能など)
  5. 低ナトリウム塩の表示基準を設定。(塩化ナトリウム以外が25%以上の場合に限る)
  6. 上記を満たすものに公正マークを表示。「食用塩の表示に関する公正競争規約」に従った適正な表示であると認定された商品にだけ付けられるマークで、製造方法や品質の安全性を保証するものではない。

規約の対象

一般消費者に販売される包装した食用塩で、次のような塩は規約の対象にならない。

  1. 包装されていない塩,散塩
  2. 塩化ナトリウム含有量が40%未満
  3. 液体タイプ … 水塩
  4. 食品が混合された塩…ごましお,抹茶塩,塩こしょう
  5. 工業用・融雪用・浄水器再生用等

用語の使用基準(いわゆる塩の種類)

海塩

海水を原料として製造された食用塩に限り表示することができる。

岩塩

天然の岩塩鉱から採掘された食用塩及び岩塩鉱の塩を一旦溶かした塩水又は地下塩水から製造した食用塩に限り表示することができる。

湖塩

塩湖から採取又は採掘された食用塩に限り表示することができる。

天日塩

塩田、流下盤、枝条架、ネット等を用いて、主に太陽熱又は風力によって水分を蒸発させる方法により結晶化した食用塩に限り表示することができる。従って、地下かん水、湖塩など、海水以外の原料を天日で濃縮・結晶化した塩も天日塩という名称が使える。

焼塩

乾燥を目的とする高温処理は焼き塩とはいわず、温度380℃以上では高温焼塩、380℃未満では低温焼塩という。

藻塩

海水の中に海藻を浸漬して製塩したもの又は 海藻抽出物、海藻灰抽出物もしくは海藻浸漬にがりを 添加した場合に表示できる。

フレーク塩

顕微鏡下で確認し、麟片状結晶が大部分を占める食用塩に限り使用できる。

「にがり」の表示に関して

「にがりを含む」旨の表示は、マグネシウムが0.1%以上含まれれば、一括表示、製法表示の枠外に記載することができる。 「にがり」の定義は、海水または塩湖水を濃縮して塩化ナトリウムを析出した残液であり、Na,K,Mg,Ca,Cl,SO4,Brを主成分とし、それ以外の成分を1%以上含有しないもの。

「岩塩」の表示に関して

商品の表面(または正面)に「岩塩」の表示がある場合、同一視野に入る場所に、「天然の岩塩鉱から採掘された塩」(採掘法によるもの)か、又は「岩塩鉱の塩を一旦溶かした塩水から製造した塩」(溶解法によるもの)か、どちらの塩であるかの表示がされる。(H26年3月規約改定で新たに記載された事項。H28年3月まで猶予期間)

地名の付いた商品名に関して

地名が付いた商品にその地名以外の原材料を使った場合は、その地名以外の原材料を使っている旨を商品名と同一視野内に注意書きをしなければならない。例えば、「原材料にメキシコ産を使用」など。

 製造方法の表示義務

「製造方法」には原材料の説明と工程の概要を決められた16種類の用語で工程順に表示する。

海水から製塩するには、直接海水を煮詰めて食塩をつくるより、濃度の高い塩水を作ってから煮詰めたほうが効率が良い。この濃い塩水を「鹹水(かん水)」といい、「鹹水(かん水)」をつくる作業を「採鹹(さいかん)」、また煮詰める作業を「煎熬(せんごう)」という。

工程に使える用語

濃い塩水(かん水)を作る工程(さいかん)

イオン膜(塩分濃縮膜、イオン交換膜)

電気を流した時に塩分だけを透過する膜を使い、海水の塩分を約6 倍(3%→約18%)に濃縮する方法。塩の主成分である塩化ナトリウムを効率的に濃縮し、生産性が高く、自動化され、海水汚染の影響を受けにくい。

逆浸透膜(淡水化膜、RO膜)

真水だけが透過する膜の筒に圧力をかけた海水を流し、真水と分かれて排出される濃い海水(元の海水の2 倍程度:塩分5-6%)を利用する方法。海水成分比はほとんど変わらない。真水の採取と共用できる。

溶解

天日塩、岩塩などを、水または海水などに溶解して濃い塩水(かん水)を作る操作。天日塩や岩塩に含まれる砂泥を除き、再結晶することで異物を除去できる。

浸漬

海藻を海水または濃縮された海水(かん水)などに浸し、海藻成分を海水に溶かし出す操作。海藻に含まれるうま味成分を溶かし出すことができる。

濃い塩水を作る工程 + 塩を結晶させる工程

天日

塩田等で、太陽または風力といった自然エネルギーを利用し、水分を蒸発させる方法。太陽熱や風などの自然エネルギーを利用する方法を総括して「天日」といい、「天日」は、蒸発濃縮する工程だけを表す用語、また、蒸発濃縮して塩を採るまでの全工程を表す用語として用いる。

天日塩田

広く整地された池に海水を導き、天日、風力を利用して蒸発させて塩の結晶を得る方法で、日本では行われていない。製品は通常「天日塩」と呼ばれる。自然の環境下で作られるため、砂などが混じる場合がある。産地の気候、地盤によって管理方法も異なり、塩の特性も異なる。

結晶盤

海水またはかん水を浅い箱型の容器(結晶盤)に貯留し、ハウス内で静置して濃縮、結晶させて塩を作る方法。塩の結晶を得るまで、釜で煮詰めるより長い時間を要し、稀に濃縮だけ行う場合もある。日本国内で、小規模に天日塩を作る方法として用いられている。

日本式塩田(揚浜、入浜など)

海水を原料とし、塩田地盤上で濃縮させる。海水濃縮だけで結晶まではしない。日本の古い塩田の存続を目的として、小規模の塩田で生産が行われている。

揚浜式

潮の干満差が小さい日本海側や太平洋側の外海に面した波の荒い海岸で行われた海水を人力で塩浜まで運び上げる方式

入浜式

干満差の大きな内海や、干潟の発達した場所で、潮の干満を利用して、海水を自動的に塩浜へ導入する方式

流下盤

緩やかな傾斜をつけた平面に海水を流下循環させ、主に太陽熱を利用して水分を蒸発させて濃い塩水をとる。

ネット式

漁網状のネットを組上げ、上部から海水を流下循環させ、主に風力を利用して水分を蒸発させて濃い塩水をとる。

枝条架

竹笹を立体的に組上げ、上部から海水を流下循環させ、主に風力を利用して水分を蒸発ことで濃い塩水をとる。

塩を結晶させる工程・煮詰める作業(せんごう)

平釜

開放釜で煮詰めて塩の結晶をつくる方法。釜に蓋があっても、形状が縦長であっても、大気圧に開放されていれば平釜という。結晶がやわらかく、溶けやすく、やや軽い(かさばっている)塩ができ、温度、攪拌条件により小結晶の凝集、フレーク、などができる。

立釜(蒸発缶)

真空式(減圧式)、加圧式など密閉釜で加熱濃縮を行い、塩の結晶を作る方法。大規模生産。大部分が0.2-1mm のサイコロ型の結晶になり、平釜より結晶構造が緻密で、結晶が大きく、やや重い(かさ密度が大きい)塩ができる。

噴霧乾燥

海水を霧状に噴霧し、水分を蒸発させて塩の結晶を取る方法。微粉で海水とほとんど同じ組成の塩ができる。

加熱ドラム

海水を液滴として、加熱した円筒上で蒸発させて塩を取る方法。微粉で海水とほとんど同じ組成の塩ができる。

塩の品質、性状を整える工程

乾燥

塩の水分を、装置を用いて人為的に蒸発させて除く操作。加熱、除湿、減圧乾燥を含み、天日乾燥は含まれない。

焼成

塩の結晶を焼く操作。380℃以上は高温焼成、380℃未満は低温焼成という。焼く工程により、塩に含まれる塩化マグネシウムが水に溶けにくい塩基性マグネシウム化合物に変化し、塩の結晶を包み込むように付着するので、塩がサラサラになり固まりにくくなり、味も少し変化する。焼く温度によって、生成するマグネシウム化合物には差があり、高温では酸化マグネシウムが生成される。

混合

原料塩や添加物を加えて混ぜる操作。添加物(にがり、固結防止剤、塩化カリウム、各種無機添加物、うま味調味料など)を加えることで塩の特徴が変化する。

洗浄

天日塩や岩塩に含まれる砂泥などを水や塩水で洗って除く操作。過剰の「にがり」分などを除くために洗浄する場合があり、極めて簡易なものから丁寧なものまで、洗浄のレベルは様々。

造粒

塩を粒状などに成型する操作。成形にはプレスするもの、でんぷんなどの成型材を加えて固めるものなどがある。

岩塩や湖塩を掘り出す工程

採掘

岩塩や湖塩を掘り出すこと。採掘されたままの岩塩や湖塩は、産地によっては、塩の生成時に混ざった鉱物をそのまま含んでいる場合がある。

まとめ

人間は、塩を摂取しないと生きていけないのに、国が定める食塩に関する法律や規定、基準はなく、いわゆる業界団体だと思われる食用塩公正取引協議会が決めた「食用塩の表示に関する公正競争規約」があるが、その公正マークは、表示ルールに従って適正な表示がされていると認定したマークであり、製造方法や品質のの安全性を保証したものではないそうだ。

http://www.salt-fair.jp/explain/

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COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.04.17.

編集更新;2015.04.17.

文責;平野 龍平

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