仕入値を下回るような価格での客寄せ販売の是非

shiro-dashi

仕入値を下回るような価格で客寄せ販売することの是非を考える

日東醸造、蜷川社長の投稿

日東醸造の蜷川社長のFacebookのタイムラインに以下のような書き込みがあった。

http://corezoprize.com/yoichi-ninagawa

今朝(2015.04.30)の日経1面、春秋に物申したい
真っ当な酒屋さんの、仕入値を下回るような価格で客寄せ販売する連中は、私は不当廉売として規制していいと思う。
商品には正当な価格があるはずだ。
それを統制経済だの、消費者利益無視だのと決めつけるのは納得できない。
反論、お聞かせください。

筆者は、社会人になってからも自分で稼いだお金では、一度も新聞をとっていないし、Web上では、その記事を特定できないので、何に対して憤っておられるのか確定できないが、大凡の察しはつく。

決して、反論ではなく、私見として申し上げる。

我が国の醤油の生産量の半分以上が廃棄されている原因

我が国の醤油の生産量のおそらく半分以上は廃棄されているはずである。

http://corezoprize.com/other-soy-sauces

それは、醤油1ℓが水より安い価格で売られている現状に原因のひとつがあるのは間違いないと思うし、自由主義経済を標榜する限り、仕入値を下回るような価格で客寄せ販売しても、不当廉売として規制はできないと思う。

今や、私たちは、生活者から生産者の都合で生産された商品を消費するだけの単なる消費者に成り下がってしまったのである。醤油の質などどうでもよくて、1円でも安い醤油(のようなもの)に飛びつく消費者がゴマンといる。

水より安い醤油(のようなもの)に誰も疑問に思わない世の中に成り下がってしまったのであり、それは、生産者より大手流通の方が販売の実権を握り、力を持った結果なのである。

大手流通の売り場の棚の争奪合戦

大手流通の言いなりになったのは、消費者だけではない。大手コンビニを含む大手流通の売り場の棚の争奪合戦をしているのは、一体、誰なのか?

農作物も消費者のニーズとは関係のない、食品加工や流通に都合のいいように品種改良がなされているのである。

http://corezoprize.com/seed

塩のことでも触れたが、食品衛生法上の表示義務がなければ、それを隠れ蓑にするのは世の常だ。消費者に正直に情報開示をしている生産者はどれだけいるのだろう?

http://corezoprize.com/polymer-salt

最終の消費者は誰なのか?

今一度、最終の消費者は誰なのかよく考えて欲しい。住宅設備メーカーもハウスメーカーの顔色ばかりうかがっているのである。

http://corezoprize.com/shigefumi-nakamura

そういう世の中だからこそ、真っ当で当たり前なことを当たり前にやり続けること自体が難しく、貴重なのである。

消費者を顧みない生産者

かつて、生産者も消費者に指摘してもらって、よりよい商品をつくり、消費者は生産者の商品から学んで生活者に成長していたはずだが、今ではどちらも流通とマスコミの言いなりに見えるのは筆者だけだろうか?

マスコミに踊らされると舞い上がって、消費者を顧みず、とんでもない値段で売りつける生産者もたくさんいる中、生産者の鑑のような方もいらっしゃる。

食品の製造に求められる第一の要件は、安全性で、次に、風味が秀逸であること。最後に、お求め易い価格。この三つの条件をクリアすることを私たちの目標にしています。

http://corezoprize.com/yasuhiko-kobara

忘れてはならない、生産者の心だ。

そして、

何があってもオレはビクともしねえ。

http://corezoprize.com/masanobu-tomura

揺るぎない信念も必要だ。

適正価格とは?

消費者が納得して買う価格が適正価格なのだろうが、消費者も選ぶ目を磨かないと、どこのどのスーパーやコンビニに行っても同じ(売る側にメリットのある)商品しか並ばなくなって、どんどん、選択する自由と権利を失ってしまっているのである。

嗜好品であるコーヒーは、ブラジルやコロンビア等、南米が一大産地として知られているが、ごく最近まで先住民の人たちには飲む習慣がなく、今でも消費地側の相場で価格が決まるそうだ。砂糖と同じく、ヨーロッパ人が南米に持ち込んで現地の人たちに栽培させ、同時に持ち込んだ疫病で労働力が減るとアフリカから奴隷を連れて行ったという歴史がある。欧米人は、プランテーションの経営はするが、労働はしないという構図が、今も続いていると云う。

そもそも、経済は誰かが誰かを搾取することで成り立っている。消費者の利益なんて誰も考えてはいない。水より安い醤油が販売されている裏にも同じ構図があるはずだ。何の疑問も感じずにそれを購入している消費者は、得をしたのではなく、その仕組みに取り込まれていることを自覚するべきだと思う。

生産者と消費者がきちんと向き合って直接繋がること

蜷川社長が自社で最も売りたいのは、「しろたまり」そのものだそうだが、その販売は商品全体の僅か1%に過ぎないという現実がある。醤油そのものは売れず、「玉子焼きのもと」や「玉子かけご飯のもと」の方が売れる時代だからである。

どこでどうバランスを取るかが、経営者としての手腕だろうと思うが、生産者と消費者がきちんと向き合って直接繋がることこそがお互いにとって大事で、今、蜷川社長が取り組んでおられる、「しろたまり」仕込み教室がそのひとつのきっかけになるのではないかと期待をしている。

不要なものを買わない

安いからと不要なものまで購入してしまった経験のある方も多いだろう。冷蔵庫や食品棚を整理してみて頂きたい。1度使ったきりで、放置された調味液や賞味期限・消費期限が迫ったり、とっくに過ぎてしまった食品はないだろうか?

不要なものを買わない消費者が増えれば、あの「経済」は衰退するかもしれないが、食品廃棄は確実に減るだろうし、損をするのは搾取する側だけだ。不買は、誰にでもすぐにできて、消費者の側から生産者側の意識を変えることも可能な行動であり、世の中をよくする第一歩である。

地域発のスモールビジネスが世の中を変える

近年、先進国の企業は、大量生産し、グローバル化して世界規模でのシェアを拡大することにしのぎを削ってきたが、その結果はどうだろう?個性や独自性が求められるようになってきたが、その価値をわかる人がその生産を維持できる価格で購入すれば、商売は成り立つ。地域発のスモールビジネスがこれからの世の中を変える可能性を秘めている。

http://corezoprize.com/hiroshi-kurazumi

COREZO (コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.04.30.

編集更新;2015.04.30.

文責;平野龍平