木下 雅春(きのした まさはる)さん

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COREZO「職人も、売れている時に次のものを考えておかないといけない、と釣り堀用に延べ竿の活路を見出した、八女最後の和竿職人」賞

木下 雅春(きのしたまさはる)さん

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プロフィール

和竿素材 つり具の木下店主

受賞者のご紹介

和竿とは?

木下雅春(きのしたまさはる)さんは、福岡県八女市上陽町でただ一人残る、和竿づくり職人である。

和竿という分類は、明治時代以降、西洋から竹を縦に裂いて再接着して製造する竿が紹介され、それら西洋の竿(洋竿)と区別するために、和の竿(和竿)という呼称が用いられ定着した。また、当時の日本の釣り竿の殆どが竹竿であったため、日本で作られる竹竿全般を指すこともある(Wikipediaより)。

木下さんのお父様が和竿の製造販売を始めた戦後すぐの頃には、八女だけでも和竿をつくる和竿屋は、30軒ぐらいあったそうだが、「和竿素材つり具の木下」1軒が残るのみとなっている。

延べ竿

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木下さんのつくる釣り堀用の延べ竿と呼ばれる継ぎ目のない1本の竹でつくる長いタイプの和竿は、関東一円から東北の釣り堀用として需要があり、出荷されているが、全国でつくっているのは、木下さん一人だけだそうだ。

「僕が子供の頃には、この竿しかありませんでした。矢部川や星野川、八女の川では、使われなくなったんですけど、竹が取れない関東とか東北とかでは珍しいようで、キャンプ場とか遊園地とかで、この竹の貸し竿を置いて、釣り堀をしてもらおう、という趣向で需要があります。」

布袋竹(ホテイチク)

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「原料の竹は、鹿児島産の布袋竹(ホテイチク)といって、竹の節の間が不規則に短く詰まって丸く膨らんでいるので、それが七福神の布袋さんの膨らんだ腹に似ていることから、布袋竹と名付けられたと云われています。」

「桜島の火山灰が堆積した土壌で育った布袋竹は強度があり、和竿の原料に最も適していて、日本一だと云われています。ウチでは、釣り関連の布袋竹素材は、全て鹿児島県で専属の職人さんが伐り出した青竹から加工をして、出荷しています。」

「昭和の終わり頃より国内の竹の消費が減少して、竹林は放置状態になり、すでに竹林から姿を消した竹も多数有りますが、可能な限り、竹材を確保して取り扱っています。」

油抜き

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「植物は枯れると白く変化しますが、青竹も、時間が経って枯れてくると色が悪くなります。長く使うなら、表面の油を取る作業が必要で、火抜きと云って、青竹を火で炙って油を取ります。」

「油抜きは、苛性ソーダを溶いた水を沸騰させて、15分間ほど煮詰めてもできますが、苛性ソーダで煮ると竹のバランスが崩れるので、竿は、火で炙る火抜きという方法で油抜きをしています。曲がった竹も火で炙って、真っ直ぐに修正します。」

「節の模様のきれいなものは、つり竿の握り手のグリップの部分に使われ、人気があるので、こうして火抜きや炙って修正をしながら、いい竹を選び、高級なつり竿をつくっている東京とかの竿師さんや釣具店に納めます。」

竹製竿の用途

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「カーボンやグラスファイバーに比べると重いので主に短い竿に使われていて、短くたためる竹竿は、海の船釣りに使われます。竹とカーボンロッドではしなりが違い、カーボンロッドは曲がると戻ろうとする反発力が非常に強いですが、竹は、魚が餌に食いつくのに合わせて、ゆっくりしなってくれるので、特に石鯛なんかは竹の方がよく釣れると云われています。」

「そういう釣り竿でも、全部が竹製のものではなく、カーボンやグラスファイバーと組み合わせて使う方が多く、竿にこだわる方のカスタマイズ用に竹竿のパーツを作っています。」

石鯛用釣竿には50万円以上するものも

「東京の竿師さんとかがつくる石鯛を釣る竿には50万円を超えるものもあります。それを自分の手でつくろうというブームが一時あって、それ用の半加工の素材も卸しています。」

原料の竹の現状

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「原料になる竹があるのが九州の強みですが、高級品の素材だけを扱っていても商売にならないので、釣り堀用も合わせて仕入れた竹を全部商品として出荷できるようにしています。」

「釣り堀用は数千本ですが、鹿児島の職人さんも高齢化で年々減っているので、切ってくれる範囲でしか作れません。」

後継者問題

「後継者はいません。竹を切ってくれる人がいなくなれば、竿も作れなくなります。和竿をつくりたいという人は結構いましたが、自分で鹿児島まで竹を切りに行きますか?と云うと、誰も手を挙げません。僕がこの仕事を辞める頃には、竹を切る職人さんもいなくなっているでしょう。」

「竹の切旬は、8月から正月までが一番いいと云われています。梅雨が明けてからすぐに発注して、10月ぐらいまでは入ってくるのですが、それから先は有明海の海苔の養殖が始まって、養殖用に使う竹が大量に必要になるので、そちらが優先で、なかなか、思うように入ってきません。でも、海苔の養殖用の竹の需要があるから、ついでに切ってもらえているというのが現状です。」

全国的に釣り人口が減少

「この辺りは若い人がいなくなったので、昭和に比べると釣り人口は1/5に減っています。今、流行っている鮎釣りには、9mとかの長い竿を使いますが、竹製は重いので、使われません。」

「全国的に釣り人口が減っているのに加え、若い人たちに人気のあるのは、ルアーフィッシングになっていますし、つり具を加工するにしても、ノコとかナイフとかの道具を使えない世代が増えていることから、釣具屋さん向けの出荷は、15~20年前に比べると1割まで減っています。」

釣り具の将来

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「釣り具の将来は厳しいですが、厳しいなりにやっていかなければなりません。父の代は、長い延べ竿をやっていましたが、カーボンとかグラスが流行り始めると、九州では全く売れなくなりました。」

「それで、僕の代になって、分割できる竿を作り、東京や大阪の釣具店に材料として売り始めたら、また、仕事が来るようになり、その需要が減ってくると、関東の方でマスの釣り堀が盛んになっているという話を聞いて、釣り堀用の延べ竿をネットに載せていたら、だんだん注文が入るようになって、今があります。」

「職人もずっと同じものばかり作っていては売れなくなる時が必ず来ます。売れている時に次のものを考えておかないといけません。」

 

COREZO「職人も、売れている時に次のものを考えておかないといけない、と釣り堀用に延べ竿の活路を見出した、八女最後の和竿職人」である。

 

取材;2018年10月

最終更新;2019年6月

文責;平野龍平

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