オーバーマイスターの島崎棟梁に伺った100年もつ家を建てる方法とは?

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100年もつ家を建てるには?

島崎 英雄(しまざき ひでお)棟梁

島崎 英雄(しまざき ひでお)棟梁は、富山県の職藝学院でオーバーマイスターを務め、伝統構法の基礎を教えておられる。

今の建築業界の問題点と大工棟梁の知恵が詰まっているので是非ご一読頂きたい。

島崎 英雄(しまざき ひでお)さん
COREZO(コレゾ)「伝統構法一筋、日本伝統の建築技術を守る気はあるのか!建築行政に喝を入れ、若手大工を育て続ける棟梁」賞 島崎 英...

古民家は修復するが、古材はモッタイナイから再利用するのではない

古民家は修復するけれど、古材は、モッタイナイから再利用するのではないんだよ。昔は、古材を使うのが当たり前だった。100年も経った木は、乾燥の具合もいいし、狂うだけ狂っていて、新しい材より、ずっと丈夫だ。もう一度使う価値があるから使うだけだよ。ま、すぐにでも腐る新しい材と100年もった材の違いがわかって使えばそうなる。古材と呼ばれること自体、何か、変だな。ちょっと違うような気がするね。

100年もつ家を建てるには、100年経った家を解体してみればわかる

100年保つ家を建てるにはどうすればいいかって、よく聞かれるけど、100年経った家を解体してみればわかる、といつも答える。法規は検査する方の都合でできていて、今のことしか見ていない。新築ばかり見ていたんじゃダメだ。

施工側の手間を省く勝手な都合のしわ寄せが全て施主さんに…

作業場で検査できる人を育てないと、完成したのを検査してホゾや仕口の構造がわかるかい?だから、見てわかる金物を使えという。その上、大壁(おおかべ・柱を壁で覆ってしまう工法)ばかりだから、完成後にわかりゃしない。今じゃ、ハウスメーカーなんてのは、作業工程を効率化して、後期を短縮することばかりに一生懸命で、人工乾燥材や集成材を使って、プレカットだから、木組みを自由にできる技術なんてどうでもいい。その方が儲かるからね。

自然乾燥材が良くて、人工乾燥材や集成材がダメな理由

集成材の寿命は、接着剤の耐用年数だけが頼りだ。人工乾燥材もダメだね。新しい時にはそれなりに強度はあるんだけど、高温で乾燥させるから、繊維を守る脂(樹脂)がほとんど抜けてしまっている。無理矢理乾燥させても、自然界でまた水分を吸わんわけにはいかない。そうなった時の実験は誰もしないんだよ。古い民家を解体した時に、周りの白太の部分が朽ち果てて、木の形がなくなっていても、中芯の脂のあるところはものすごい力が残っている。中には、マッチでその脂に火がつくのもあるよ。

だから、その材木自身が、本来持っている繊維を守るために必要な脂を抜いてしまうのは全く理解できんね。自然乾燥には時間が掛かるし、施工段階で狂いが出にくいとか、木を読まなくていいとか、施工側の手間を省く勝手な都合だね。そのしわ寄せが、そんなこと知らない施主さんにやって来る。

1年と保たない建築金物

防腐処理をした柱に金物を取り付けて1年後の状態(本記事冒頭画像)だ。完全に腐食しちゃってる。こうなったら、ビスも何も効いちゃいない。これを認可した役人に見せたら、見なけりゃよかった、だって、どうしようもないね。この防腐処理の薬がすごいの。相当キツいから金物が負けるんだね。5年刻みぐらいで調査して、絶対的な賞味期限を言えっていうんだよ。それが、認可した側の責任だろ?

竣工時の強度がいつまで保つかわからない今の建築工法

新築時には、何でもそれなりの強度はある。ただ、時間が経って、どうなったら、どうなるか?大工をしてると、解体したりして、色んなものを見る。だから、こういうのが気になって仕方がない。

大壁もダメだね。今どきは、大壁にして、大工の仕事も他に都合の悪いことも全部隠してしまうだろ?築後20年ぐらいしか経っていなくても、大壁の家を建て替え、解体するとよくあることなんだが、壁の内側が結露して、水分が下がっていって、下の木からダメになっている。『下』ってわかるだろ?土台や基礎からダメになるってこと。そうなると、どんな立派な金物があろうと、豆腐にかすがい、ぬかに釘だ。

今の主流の建築工法は、施工されはじめてたかだか数十年…

今の主流の建築工法は、施工されはじめてまだ数十年という歳月しか経っていない。でも、私たちのやっている木造伝統構法には、比較にならないほどの歴史と実績がある。脈々と続いてきた千年以上にわたる技の伝承を自分たちの代でなくしてしまう訳にいかない。私に技を伝えてくれた親方、その親方に伝えた棟梁、・・・・、何代、何十代と遡って、伝えてきてくれた大工、棟梁に申し訳がたたない。

そもそも、マニュアルで検査しようというのが間違っている

いくらいい大工を育てても、作業場で検査できる人間を育てなきゃダメだ。そもそも、伝統構法が分かる人材の育成もしないで、マニュアルで検査しようというのが間違っている。検査官は、マニュアルにないことをされると、判断できない。だから、金物に頼ることになる。金物が付いているかどうかだけで、ことの善し悪しを判断しようということになってしまう。

検査する立場の人間が、検査される側より、知識や経験がなくて、検査ができるのかと言いたい。こっちが、その気になれば、ごまかすのは容易いことだ。だいたい、組み上がってから検査して何がわかるというのか?外から見て、ホゾや仕口の深さや大きさがわかるのか?それすらわかっていない。工務店の作業所で墨付けが正確か否か判断できなければ、検査の意味がないということだ。

下っ端の役人にいくら言っても仕方ないの。建設行政のトップに日本伝統の建築技術を守る気があるかどうかだよ。一度、聞いてみたいね。

伝統構法

柱と梁は補強金物を使わず仕口、継手により接合し、壁には貫を入れるが筋違いは入れない。地面に礎石を置き、その上に建物を乗せ、 地盤に緊結しない。地震には、揺れながらエネルギーを逃す柔構造で対処する。

  1. 土壁は非常に剛性の高い材料だが、変形が限度に達すると壁の隅から崩れ始め、柱と梁が破壊されることを防ぐ。
  2. 土で固定した屋根瓦が落ち、重量を減らすことで建物を守る。
  3. 土壁が落ちてしまうと貫や銅差しが柱の傾きを抑え、最後は足固め、桁固めが柱の曲げ抵抗を発揮し、 柱に組み合っている材が破断するまで抵抗する。
  4. 想定外の強震がきた場合には、礎石から柱が飛び上がることで地震力を逃がす。

在来軸組工法

鉄筋コンクリートの基礎を造り、土台を乗せ、土台と基礎はボルトで固定。壁には筋違いまたは合板壁を入れ、接合部は金物で補強する。地震には、筋違いや金物で固め、剛構造で対処する。しかし、島崎棟梁がおっしゃるように、経年劣化で竣工時の強度を保てない可能性がある。

在来軸組工法と伝統構法の耐震に対する考え方の違い

伝統構法では、屋根瓦が落ち、壁が壊れ建物が大きく傾き、さらに想定外の強震がきた場合には、礎石から柱が飛び上がってでも地震の力をできるだけ逃がして、人命だけは助けようという考え方だが、在来軸組工法は、できるだけ剛性を高く、頑丈にすることで、地震の力を抑え込もうという考え方。しかし、想定外の地震の強震では、接合部が一気に破断し、瞬時に倒壊する危険性が高くなるという。

どちらが人命を尊重しているかは皆さんでお考え頂きたい。

参考、伝統構法の耐震試験

三浦 茂則(みうら しげのり)さん
COREZO(コレゾ)「徳島のお山の杉の子が取り組む、日本の林業再生と人と環境に優しい家づくり 」賞 三浦 茂則(みうら しげのり)さ...

日本の建築工法の歴史

在来工法というと、昔からある工法のようだが、伝統構法と比して歴史は浅く、思想も全く異なる。

今、伝統構法と呼ばれている工法は、戦前までは、ごく一般的な工法で、戦火に遭わなかった地域にはまだその多くが残っているし、法隆寺や東大寺等、歴史的な建造物は全てこの工法だ。

戦後の日本は焼け野原となり、人口は減り、大工や職人も激減したため、一時、粗悪なバラック建築が横行した。それを防ぎ、復興を促進するために、早く簡単に建てられる工法を在来軸組工法と呼んで、それを基準としたため、 伝統構法はカヤの外におかれてしまったという歴史がある。

その後、改正を重ねて現在に至るが、今の建築基準法が一体、誰のためにあるのかよくお考え頂きたい。

参考

まとめ

ツーバイフォーのような合板パネル工法も戦後輸入された工法であり、島崎棟梁が、「今の主流の建築工法は、施工されはじめてまだ数十年という歳月しか経っていない。」とおっしゃるのは、食の世界の添加物の安全性にも通じる話だ。

在来工法では、剛性を高めて地震の力を封じ込めようとしていたはずなのに、東日本大震災以後、基礎に免震ゴムを入れたり、衝撃吸収筋交いのようなものを入れるような動きがみられるが、そもそも柔構造ではない構造躯体にそういう力を逃す部品を入れるのは、現代西洋医学の対処療法的な対処の仕方のような気がしてならない。

設計思想の根本が何かということだ。身の廻りをよく見渡せば、経済と効率を最優先した結果、どうなっているのかが見えてくるはず。

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COREZO (コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.05.09.

編集更新;2015.05.09.

文責;平野龍平

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