建築用材は乾燥させてから使いますが、葉枯し乾燥ってご存知ですか?

杉の切り旬と葉枯し乾燥

杉は、とりわけ含水率が高く、乾燥が難しいそうだ。

木材の乾燥は、現在では、低温、高温、加圧、高周波の併用等の違いがあるが、基本的に、ボイラー等で加熱した蒸気を使うのが一般的である。メリットとして、乾燥期間(時間)を大幅に短縮できることと、仕上がりの含水率を低く、均一に揃えることができる一方、デメリットととして、燃料費、設備費等の費用が掛かり、木材自身が持っている脂分も蒸散し、内部割れや強度も低下することも指摘されている。

切り旬

木材は木の断面の中心部分の心材部と周辺部分の辺材に分けられ、辺材部は、木の生命活動も活発な部分で含水率が高く、4~7月の成長期間には、成長に必要なデンプンの含有量も増えるので、穿孔性害虫の活動も活発になる。一方で、8~2月の期間には、成長期にデンプンを消費するため、年間を通じて最も含有量が少なくなり、この期間がスギ伐倒の適期となる。

http://www.ts-wood.or.jp/technique/tree-season1.html

葉枯らし乾燥

木材を伐採後、枝葉を付けたまま一定期間(約3ヶ月)山林内に寝かせ、太陽の恵みを利用し、葉から水分が蒸発して黄変または赤変して枯れるまで自然乾燥させる方法。

水分が多い辺材の含水率を下げ、全体の水分分布を均一化できるので、ワレ・クルイ・ソリの少ない木材が提供できること、材の色艶を良くできること、山林内で重量を約70%まで軽量化できるので、運搬費のコストダウンがはかれること、バラツキの多い心材色がほぼ揃うことなど、さまざまな利点があるそうだ。

http://www.ts-wood.or.jp/technique/index.html

強度

一時途絶えていた地域伝統の葉枯らし乾燥を復活させ、以前、通用していた、スギは構造材として強度に問題がある、という間違った常識に異議を唱えるべく、杉実大材の強度実証に日本で初めて挑戦し、予想を越える強度を科学的に実証した方々がおられる。

http://www.ts-wood.or.jp/technique/strong-evidence.html

三浦茂則さん

COREZO(コレゾ)「徳島のお山の杉の子が取り組む、日本の林業再生と人と環境に優しい家づくり 」賞

https://corezoprize.com/shigenori-miura

まとめ

他の条件は同じで、巣箱の材質だけを変えて、生まれたマウスを100匹育てたところ、大人になるまで生き残ったのは、木の巣箱で85匹、金属製の巣箱で41匹、コンクリート製巣箱では7匹だった、という静岡大学の実験結果(他大学でも追試されている)があるそうだ。

また、島根大学の調査によると、団地やマンションなどコンクリート集合住宅に住む人と、木造に暮らす人の平均死亡年齢を比較すると、団地・マンション族のほうが、約9年も早死にしていて(調査件数:木造270件・コンクリート集合住宅62件)、その後の全国調査でも「木造率が高いほど平均寿命が高い」ことが立証されたという。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/d/08/

平均死亡年齢の比較に関しては、その他の条件が明確にされていないところもあり、それらの実験結果や調査結果をどう捉えるかは人それぞれだと思うが、個人的には、自然の木の方が心地よいと感じる。

同じ材木でも、天然木と集成材、輸入材と国産材、同じ国産材でも自然乾燥と人工乾燥では大きな違いがあるようだが、どれが環境に負荷をかけているかは誰が考えても明らかであろう。

自然の木材は、同じ樹種でも山の南側、北側、山頂、山腹、谷部と育った場所でそれぞれ性格の違いがあり、また、同じ場所で育った同じ樹種でも木表と木裏があって、それらの性格や特性を活かし、どこにどう使うかが、大工さんや材木屋さんの腕の見せ所だった。

http://www.ts-wood.or.jp/technique/strong3.html

人工乾燥して、薄く切り、接着剤で貼り付けて集成材にしてしまえば、表も裏も関係なく、金具を取り付けてボルトで止めれば一丁出来上がり。大工さんや材木屋さんの目利きや腕も経験も必要なくなった。

便利な世の中になったものだ。経済と効率を最優先してきた結果である。その一方で、戦後、奨励されて植林されたスギやヒノキが放置され、海外ではラワン材がほぼ絶滅した。その意味を今一度考える必要があるだろう。

『経済』発展のための開発という名の下に、自然破壊が当然のように続けられています。1990年頃、タイに行った際、タイのNGOの人にある小高い山に連れて行かれたのですが、そこで見た光景は、見渡す限りの山々が全て真っ黒焦げだったのです。30年以上前には、幹周りが数m、高さが5〜60mにもなる巨木が生い茂っていたそうなのですが、ラワン材として全て伐採されてしまったというのです。

その後、耕してトウモロコシを栽培し、いわゆる先進国に飼料として輸出していましたが、斜面を耕すので、雨で土が流されて、土がどんどんダメになって、10年程で作れなくなりました。次は、やせ地でも育つタピオカを栽培し、それも飼料として輸出しましたが、また、それも10年程で作れなくなり、もはや荒地となってススキや茅しか生えなくなって、年に1回、焼いているという状態でした。その熱帯雨林に住んでいた多くの少数民族は、開発により追い出されて、近くの町に移り、それがスラム化にもつながっています。

日本は、国産材より安いという理由で、山ごと購入し、根こそぎ伐採して、どんどん輸入しました。そして、価格で太刀打ちのできない日本の林業は30年前から壊滅的な状態になり、国内産業のひとつを潰してしまったのです。最近では、熱帯雨林の伐採できる樹がなくなったので、寒帯林の北米や北欧、シベリア、また、オセアニアからの輸入を増やしています。

『経済』効率を優先して、海外の森林や環境を破壊すると同時に、国策として奨励して植えさせた杉や桧の人工林が利用されなくなり、お金にならないので、間伐も手入れもされなくなって放置林となり、大雨が降れば、土砂災害が頻発するようになりました。

https://corezoprize.com/shimpei-murakami#i-21

 

 

COREZO (コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.05.07.

編集更新;2015.05.07.

文責;平野龍平

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