醤油業界の常識、ダッシカコーダイズと遺伝子組み換え原材料って…?

知らぬはホットケシリーズ

業界の常識を知らない消費者

脱脂加工大豆とは?

皆さんは脱脂加工大豆ってご存知だろうか?

日東醸造の蜷川社長と伝統的な醤油づくりをしておられる小豆島の醤油蔵さんを訪問した時のことである。

https://corezoprize.com/yoichi-ninagawa

その醤油蔵の社長と「ダシカコーダイズ」がどうのこうのという会話をしておられるので、気になって尋ねた。

― 蜷川さん、ダシカコーダイズって何ですか?出汁の入った大豆のこと?

「それはですね、漢字で書くと、『脱脂加工大豆』です。スーパーの特売とかで売られている醤油の原材料表示を確認してみて下さい、『丸大豆醤油』とラベルに表記している醤油以外の主原料は、その『脱脂加工大豆』のはずです。」

ー 「脱脂加工大豆」の話だったんですね

「日本の大豆需要の約75%が製油用で、今は、圧搾法(圧力をかけて搾る)ではなく、押しつぶした大豆をノルマルヘキサン(マネキュアの時に使う除光液のようなものらしい)という薬品の溶液に浸漬し、化学的に油分を溶出した後、沸点の異なるヘキサンを蒸発させて、完全に取除いた後、精油します。その方が油をとるのにずっと効率的らしいんです。ヘキサンは100%回収して、再利用する建前になっていますから、ヘキサンは半永久的に補充の必要はないはずですが、精油工場ではそのヘキサンを補充しているらしいという噂を聞いたことがあります。」

「押しつぶされ、油分を除去された脱脂加工大豆は、醤油の原料として、これまた効率的な醸造に都合が良くって、醤油づくりに不要な脂分がほとんど残っていないので、醸造後に油分を取り除く作業が省けます。日本で流通している醤油の主原料の80%以上はこの脱脂加工大豆です。」

醤油や植物油などには、原料に遺伝子組換え農産物を使用しても表示義務がない

「残りの20%の内、国産丸大豆は2%未満、残りが輸入丸大豆です。日本の大豆自給率は5%未満、残りの大部分は北米からの輸入で賄われ、北米の大豆作付け面積の90%以上が遺伝子組み換えのGM種だと云われています。」

「ところが、醤油や植物油などは、遺伝子組換え農産物を原材料として使っていても、その農作物に組み込まれた遺伝子やその遺伝子が作るタンパク質を製品中で検出できないという理由で、表示義務がありません。そんなのは、ショーユギョーカイではジョーシキなんですが、消費者の皆さんはご存じないですよね?」

https://corezoprize.com/gmo

遺伝子組換え食品の表示について

しょうゆの原料である大豆は、遺伝子組換え食品の対象農作物にあたります。しかし、日本に輸入されている遺伝子組換え大豆は、その安全性が厚生労働省から発表されています。しょうゆは醸造期間が6~8カ月かかり、その間大豆たんぱく質が分解されてすべてアミノ酸やペプチドになるため、製品からは検出されないので、遺伝子組換え大豆を使用した場合でも表示は義務づけられていないのです。しかし、消費者の間に遺伝子組換え食品について表示を求める声が高いので、遺伝子組換えでない大豆を使用して製造した事を表示して販売する際の原材料・製造表示の業界ガイドラインを自主的に決めて、表示するようにしています。

https://www.soysauce.or.jp/hyouji/index.html

「因みに、丸大豆というのは、大豆の種類ではなくて、丸のままの大豆を使っていると云う意味で使われています。」

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「ちなみに、ウチのしろたまりは、国産小麦100%ですが、原料に大豆を使っていないため、食品表示法上、醤油とは表記できなくて、小麦醸造調味料なんですよ。ガハハハ・・・。」

 

たまり醤油(大豆100%)の南蔵商店、青木 弥右エ門(おあき やえもん)さんのお話

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「生引きだと、油分が出ないので、まさに自然のままの味です。圧搾の方は、10水仕込みでも5分仕込みでも、私どもは国産丸大豆しか使わないので、搾れば、大豆の油分が出て、その油分が苦味や雑味の元になります。ですから、1週間ぐらい静置して、自然分離し、油分を取除く作業を繰り返します。」

「手間は掛かるのですが、そうしないとおいしい圧搾たまりになりませんし、こうした方が大豆油を搾った後の脱脂加工大豆を使うよりはるかにおいしいのです。」

https://corezoprize.com/yaemon-aoki

丸大豆に含まれる脂分は約20%だが、脱脂加工大豆ほぼ0、丸大豆で醤油を仕込むと醸造中に脂分が脂肪酸や甘みを持ったグリセリン等に分解され、長い熟成期間中に醤油の中に溶け込んでまろやかな風味と深みが生まれ、また、脂分はアルコールと反応して香りの元であるエステルを生成するので、醤油の香りもよくなるそうだ。

規格や基準は誰のためにあるのか?

本来、「品質」や「おいしさ」、「安心」、「安全」他の「価値」は、人と人とのつながりで証明してきたものであるが、より簡易に且つ客観的にそのつながりを証明するために生まれたのが「モノ」や「商品」の規格や基準。

しょうゆの日本農林規格によると、

https://www.soysauce.or.jp/gijutsu/pdf/kikaku_33.pdf

日東醸造の「しろたまり」は、原材料に大豆1粒でも使っていれば「醤油」と表示できるのである。

「本来の醤油」の原料は、大豆、小麦、塩、水、麹だけのはずが、今や、それ以外に、認可されているアミノ酸液、ブドウ糖果糖液糖、醸造用アルコール、増粘剤、カラメル色素他、色んなものを添加しても「醤油」と表示できるのである。さらに、「醤油」の原材料に遺伝子組み換えの大豆を使っても、それを表示する義務はない。

一体、誰のために規格や基準があるのだろう?

「丸大豆」や「脱脂加工大豆」、遺伝子組み換え原料、合成添加物の良し悪しを議論をするつもりなどなく、少なくとも、添加物の使用が劇的に増えたのは戦後で、長くても100年程の歴史しかないが、日本の伝統食は、どれも少なくとも数百年単位の壮大な人体実験の結果が出ているのは事実であるということ。

つくり手や担い手の思い、原材料や製法、商品の背景等々の違いを分かった上で、選ぶ目を持った方がいいのではないかと思う。

 

続く…

https://corezoprize.com/soy-sauce

COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.04.03.

最終更新;2015.04.03.

文責;平野 龍平

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