井村 日登美(いむら ひとみ)さん/ホスピタリティ研究所「エイチ・ワン」

COREZOコレゾ「サービスをする側と受ける側のバランスが取れた間尺にあったサービスを提唱する、ホスピタリティの伝道師」賞

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井村 日登美(いむら ひとみ)さん

プロフィール

ホスピタリティ研究所「エイチ・ワン」代表

所属団体

一般社団法人エチケット・サービス向上協会理事

日本観光学会会員

日本旅のペンクラブ会員

総合観光学会会員

日本ホスピタリティマネジメント学会会員

観光ジャーナリスト会議会員

日本温泉学会会員

食文化研究会会員

夕陽と語らいの宿ネットワーク準会員

まちづくり観光経済研究所主任研究員

BIU研究会会員

ものがたり観光行動学会会員

旅行作家の会会員会員

資格

宅地建物取引主任者

ビジネス能力検定1級

サービス介助士2級インストラクター

認知症介助士

防災介助士

ビルクリーニング技能士

経歴・実績

関西学院大学法学部卒業

関西大学大学院社会学研究科産業社会学専攻博士課程修了

1989年ホスピタリティ研究所「エイチ・ワン」を設立

講師履歴

(学)駿台観光&外語専門学校、京都橘大学、桃山学院大学、流通科学大学、夙川女子短期大学、ホスピタリティツーリズム専門学校、西武文理大学、関西国際大学他多数

執筆活動

月刊「ホテル旅館」(柴田書店)、トラベルニュース(トラベルニュース社)、隔月刊「大人組(ジ・アース)」などに連載中。

「オールアバウト」の「関西のホテル旅館」ガイド、「月刊ビルクリーニング」、「あまから手帖」、「じゃらん」「関西のうまい店100軒」他多数。

著書

『観光学辞典』(ミネルヴァ書房、北川宗忠編)、『現代の観光事情論』(ミネルヴァ書房、北川宗忠編)、「楽しくよめてよくわかる 『顧客満足の経営術』」(クリーンシステム科学研究所)、(社)関西環境開発センター刊『ホテルルームメンテナンスマニュアル』、同『クリンクルーのマナー』、『マナーパスポート』(監修)、白川書院「旅の達人がすすめる『三都周辺ひいきの宿』」(日本旅のペンクラブ関西部 編)、『マンション管理員ブック』(ビル新聞、BIU研究会編)他。

近著に、改訂版『ホテルルームメンテナンスマニュアル』(関西環境開発センター刊)がある。

受賞者のご紹介

―大型量販店の紳士服バイヤーをされていたとか?

そうです。新卒で勤めました。でも、企業が女性の総合職を採用し始めたばかりの頃で、バイヤーといっても肩書だけで、男性社員の補助や雑用が主な仕事で、おもしろくなくて、辞めてしまいました。

アメニティグッズのコレクター

―その後は?

専門学校情報誌の編集やビルメンテナンス会社で社内報の編集に従事するうちに、そのビルメンテナンス会社では、ホテルの清掃を請け負っていたので、清掃担当者の採用や教育を担当するようになりました。それと並行して、サービスやホスピタリティを理解するために、ホテルや旅館を泊り歩き、ホテルや旅館のアメニティグッズのおもしろさに出会い、アメニティグッズのコレクターになってしまって、1997年には、約4000軒分のホテルや旅館のアメニティ約4万点を展示した「ホテル旅館情報サービスセンター」(大阪市中央区)を開設し、広く一般に公開しています。

アメニティはサービスの一つ

―最も、感動したアメニティは?

アメニティというか、サービスかもしれませんが、例え1泊でも、ゲストが希望すれば、そのホテルのゲストの名刺をつくってくれる東南アジアのホテルがあって、記念にもなりましたし、いい思い出にもなりました。

―最もガッカリしたアメニティは?

頭を覆えない程小さなバスキャップや先にバリがあって痛くて使えない櫛、1回使っただけで、ブラシが拡がってしまって、使えない歯ブラシとか、コスト削減の結果なのでしょうが、そんなのは、ただ、置いてあるだけのゴミですね。ゴミに無駄なお金を払っているのです。

―そういうアメニティを置いているホテルのホスピタリティやサービスも推して知るべしでは?

その通りです。アメニティはサービスの一つであり、サービスする側の気持ちを「モノ」に託して伝えることができる唯一のモノだと思います。コスト重視で細やか気配りができない、そんなホテルが増えましたね。

ホスピタリティ研究所「エイチ・ワン」を設立

―それで独立されたのは?

ビルメンテナンス会社での仕事はおもしろかったのですが、秘書的な仕事も廻って来て、社内的にいろいろありましてね、ある方から勧められたのもあって、会社を退社し、1989年にホスピタリティ研究所「エイチ・ワン」を設立しました。

―独立されて、仕事のアテはあったのですか?

いいえ、何もありませんでしたが、ホテルや旅館巡りをしているうちに、これからのサービス社会では、ホテルサービスが基本になるという何となくの確信はあったので、サービスとホスピタリティを研究しながら、「月刊ホテル旅館」のフリーの取材記者として、現在に至るまで取材活動を続けています。

ホテルや旅館のサービスを取材しながら、実際に体感し、観光関係、フードビジネス、ビルメンテナンスなどへ研究分野を拡げていくにつれ、ホテルや旅館、ビルメンテナンスなどサービス全般の研修会の講師やコーディネイターの依頼を受けるようになりました。また専門誌や一般などのホテルや旅館関係の記事やエッセイの執筆、サービスマナー関係のマニュアル作成なども手がけています。

―その他には?

ホテル、旅館などのサービス系、観光系の専門学校や大学で、宿泊産業論、外食産業論、観光産業論、観光実務論などの講師をしてきました。

また、ビジネス能力検定やサービス介助士2級インストラクターの資格を取得し、ビジネスマナーやバリアフリー教育をはじめ、それらを組み込んだサービスマナー研修、バリアフリーセミナーなどへも活動の範囲を拡げてきました。そこで出会った多くの受講者の方と接してきたことで、私自身も鍛えられ、影響を受け、さらに視野が広まりつつあるように思います。

施設の清掃、メンテナンスにコスト重視のしわ寄せ

―専門家の目から最近のホテル、旅館などの宿泊サービス業をどうご覧になられていますか?

近年、コスト重視の風潮から、一番、しわ寄せが行っているのが施設の清掃、メンテナンスで、ほぼ100%、ビルメンテナンスなどに外注されています。現在、1室当たりの清掃の相場は、○○○円程度です。

―えっ!そんなに安いんですか?

もう、とうに底も通り過ぎていると思うのですが、ここ数年、さらに安くなっていて、そんな請負費でまともな清掃、メンテナンスが行えるはずがありません。ホテル側が、清掃の質を上げるよう要求しても、清掃業者はこの予算ではこれ以上はできませんと突っぱねるのは当然でしょ?なのに、ホテル側は、さらに1円でも安い業者を探して、業者を取っ替え引っ替えする訳です。さらに安い業者が前の業者より質の高い清掃をするはずがありません。こうなると悪循環ですね。宿泊施設側もメンテナンス業者と長期で付き合い、良好な関係を築いて、クオリティを上げる努力をしなければなりません。

―清掃、メンテナンスの行き届いている宿泊施設は?

ガラス、鏡、水栓類の金属の輝きを見れば、一目でわかります。水垢は、日々、乾拭きを徹底すれば付きませんが、一度付いてしまうと、専門の業者に依頼しなければなりませんが、コスト面で、放置するわけです。そうなると、薬品を使わないと落ちませんし、手入れが行き届いていない印象を与えてしまいます。

老舗ホテルや老舗旅館には、清掃、メンテナンスの行き届いているところ多いですね。メンテナンスが行き届いていて、真鍮なんかの水栓類がピカピカに光り輝いているところは、気持ちが良いし、それがクラッシックホテルの風格にもつながり、付加価値も上がります。

清掃とメンテナンスは、宿泊業の基本

―国民性もあるのでしょうけど、ドイツ系のホテルは、とにかく、ガラスと水回りがピカピカです。

そうですね。老舗ホテルや老舗旅館と云いましたが、必ずしも、宿泊料金とクリンリネスは正比例する訳ではありません。中堅どころやビジネスホテルに清掃、メンテナンスに対しての意識が低いところが多いですね。逆に、低価格路線のビジネスホテルでも、ホテルの従業員が客室清掃まで担当しているところがあり、そういうところは、意識も高く、清掃も行き届いていることが多いです。

清掃とメンテナンスは、宿泊業の基本です。清掃とメンテナンスを日々、しっかりやれば、お客様の印象が良くなるばかりか、改装するサイクルを延ばすこともできます。

ホスピタリティ業界を裏で支えているビルメンテナンス業界の地位的向上が課題

―同感ですね。今後は?

常に信条としているのは、「ホスピタリティ」です。それも表からだけでなく、裏からもみた両面においての「ホスピタリティ」です。サービスは、偏に「サービスをされる側」と「サービスをする側」の2つの立場があって、そのバランスがとれるようなサービスこそが「間尺にあったサービス」であり、双方の納得のいく仕事になると考えています。ですから、労働集約産業が多いホスピタリティ業界を裏で支えているビルメンテナンス業界の地位的向上に向けての活動もライフワークの1つとして、続けていきたいと思います。

独立してから約30年間近く、ホテルと旅館業界を中心に「ホスピタリティとは何か?」を追求し、終わりのない活動を続けてきました。目指すは「生涯現役」です。マイペースで、1日でも長く働き、業界の変化や進化の状況をカタチにして残していけたらと思っています。

 

筆者も長年、旅行業、観光業に身を置いてきたが、サービス業の裏側からの井村さんのお話は、とても新鮮で、勉強になった。

COREZOコレゾ「サービスをする側と受ける側のバランスが取れた間尺にあったサービスを提唱する、ホスピタリティの伝道師」である。

最終取材;2016年11月

初版;2016年11月

最終編集;2016年11月

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