鈴木浩哉(すずき ひろや)さん・かおりさん/季来里ふぁーむ・すずき

COREZOコレゾ「毎年変化する自然環境の中で、いかにぶどうたちが最大限の力を発揮できるようにすることがぶどう農家の役割と、充実した就農生活を送るご夫婦」賞

鈴木浩哉(すずき ひろや)さん・かおりさん

IMG_0337

プロフィール

長野県生坂村

季来里ふぁーむ・すずき 代表

信州ぷ組 組員

ジャンル

農業

ぶどう農家

経歴・実績

受賞者のご紹介

石綿薫さんのご紹介で、信州ぷ組組員の「季来里ふぁーむ・すずき」代表の鈴木 浩哉(すずき ひろや)さんのぶどう園にお邪魔した。

生坂村は、巨峰の産地

IMG_0328

―鈴木さんも新規就農なんですよね?

「そうです。この生坂村は、巨峰の産地で、3年間、巨峰等の栽培管理の研修を受けて手当てをもらいながら、自分でも成木の巨峰園を借りて栽培し、経営できるという、新規参入者の受け入れ体制が整っており、また、自分のやりたいスタイルの農業ができるということで大きな魅力を感じてこの地に来ました。」

―元々、何をやられていたのですか?

「不動産会社のサラリーマンをしていました。せっかくやるのだから、『モノづくり』とか、『スケールの大きい』仕事がしたいと思って入社して、仕事は、それなりにやりがいもあっておもしろいこともありましたが、自分でつくっている実感が無かったり、達成感を得られなかったりして、自分は、本当にこの会社に必要とされているのか?ただ、大きな組織の中の一パーツでしかないのでは?等々の疑問を持つようになりました。」

「人は、生きる為に働き、そこから学んで、進化すると思うんですが、当時の状況では、それが満たされていませんでした。自分を必要とされるところで働きたい、自然と接することの出来る暮らしや仕事がしたい、と漠然と考えるようになり、今から思うと、サラリーマンをやりながら自分が本当にやりたい仕事をさがしていたような気がします。」

自分で植物を育てて売る職業=農業

―それで、就農しようと思われたのは?

「ガーデニングが趣味でそれを楽しむうちに植物を育てることからその生命力に感動し、その手伝いが出来ればと思い、『自分で植物を育てて売る職業』=『農業』ということで、自然と農業の方に目が向いていきました。」

「それで、妻に相談したところ、妻は、生け花を小学生のころからやっていたため植物が好きで、田舎暮らしにも興味をもっていたようで、なんのためらいもなく賛同してくれました。」

「それからは、農家出身ではないので、実際に自分たちが農業を出来るのか?インターネットや本で調べたり、ニューファーマーズフェアや新規就農者の方の話を聞きに行ったりして情報を収集しました。」

どうしても農業をやってみたい

「頭で考えるだけではなく、農業とはどんなものか、実際に体験してみようと思い、夫婦でワーキングホリデーに参加したり、『就農準備校』や『家庭菜園教室』に通ったりしました。」

「その就農準備校や家庭菜園教室は週末に実施されることが多く、家から車で一時間もかかっても、それが、もう楽しくって、どんなことも苦になりませんでしたし、朝早くから暗くなるまで夢中で作業をして、人生でこんなに夢中になることはなかったぐらいにのめり込みました。」

3年間手当てがある研修制度

「それで、農業というものにやりがいを感じ、どうしても農業をやってみたい、と改めて実感し、考えたり、悩んだりしているだけではダメだと思って、興味のある作物や受け入れ態勢を行っている県や農業法人に実際に訪れ、話を聞いたり、体験もさせてもらいました。その中で、長野県の就農相談会に行き、この長野県生坂村の研修制度を知りました。」

「長野県は東京からも近くて、小さい頃から旅行やスキーに来たり、学生時代の友人もいて、馴染みがありましたし、信州というブランドは販売に有利なのでは?また、生坂村は安曇野という観光地の近くなので集客力もあるのでは?という目論みもありました。」

「また、寒暖の差がおいしいくだもの作りには良い条件だということも長野県に目が向いた理由の一つで、中でも生坂村は、山と川がほとんどなので田舎暮らしが満喫でき、自然とたくさん触れ合え、農業に専念できる環境だと思いました。」

ぶどう栽培を通して自分たち自身も成長

―何年ぐらいでぶどう園は軌道に乗ったのですか?

「当初、3年間の研修手当ては有難かったですね。今は何とか食べられています。でも、新規就農してからの10年間は、豊作と不作の良い時も悪い時も両方を経験しました。ぶどうたちが応えてくれる喜びを感じた反面、天候に左右される農業は、残念ながら、手をかければかけただけの成果が伴わないことも身にしみて経験しました。」

「人間の力ではどうにもできない自然の力を目の当りにして、初めての不作を経験した時には、正直、何のためにやってきたのかと、身も心もズタズタに打ち砕かれ、その気持ちをどこにぶつけたらいいのか、もがき苦しんだこともあります。その頃は、まだ経験年数も浅く、手をかければ必ず応えてくれるものだと思い込み、見返りを求めてぶどうたちに接していたのだと思います。」

「でも、経験値を重ねていくうちに、毎年変化する自然環境の中でいかにぶどうたちが最大限の力を発揮できるようにすることがぶどう農家である自分たちの本当の役割なのだと気づきました。自分自身も自然の中の本当にちっぽけな存在であり、自然の流れの中で精一杯、汗して、涙して、どんな状況でも謙虚な気持ちと素直な心を持ちでぶどうと向き合うことで、技術向上にも繋がり、自分自身も成長できるのだと気づかされました。」

―今は観光ぶどう園中心なのですか?

「ええ、観光シーズンには観光ぶどう園をやっていますが、同時に、出荷もしています。有難いことに、ほとんどが個人のリピーターの方々が中心です。」

将来の夢はワイナリー

―今後は?

「この10年、夫婦で力を合わせてやってきたぶどう作業と、ぶどうの成長に合わせた生活を送る中で、ぶどうの仕事をしてきたので、真夏の暑い日だろうと、梅雨の雨の中だろうと、冬の寒い日だろうと、外で作業をやる強い精神力、根性は鍛えられたと思います。ぶどう農家を10年やってわかったことは、『ぶどう』と向き合うことが好きで、自分は、生涯、ぶどうに携わって生きていきたいということでした。」

「新たに農地を借りて、ワイン用のぶどうの栽培を始めます。収穫したぶどうは全量ワイン醸造メーカーに買い取ってもらう契約なのですが、いずれは自分たちが育てたぶどうでワインをつくるワイナリーをやってみたいですね。」

「ぶどう栽培の作業は、根気作業だよ、と先達のおひとりが教えてくれましたが、立派な房もそうでない房も、その一房を作り上げるには何度も手を入れる手作業の連続です。だからこそ、どんな時もあきらめることだけはしたくないですし、いつもぶどうに対して最大限の努力を惜しむことのない「ぶどう農家』になっていきたい。 初心を忘れることなく、ぶどう作りに対していつまでも謙虚で素直な気持ちを持ち続け、食べた人が美味しいぶどうだったなあと、心と舌の記憶に深く残るぶどう作りを目指していきたいと思っています。」

とっても充実した就農生活を送っておられるのだろう。取材後、ご夫婦、満面の笑みで写真に納まって下さった。

COREZOコレゾ「毎年変化する自然環境の中で、いかにぶどうたちが最大限の力を発揮できるようにすることがぶどう農家の役割と、充実した就農生活を送るご夫婦」賞

※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、一切、返答致しません。

COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.11.25.

最終取材;2015.11.

最終更新;2015.11.25.

文責;平野 龍平

コメント