おいしく感じる味覚の仕組み、ニンゲンが本能として持っていた自然を理解する潜在能力とは?

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人間の味覚

味覚としての甘味の役割の変化

人間の味覚には、酸味、塩味、苦味、旨味、甘味の5つの要素があり,甘味や旨味はおいしい味、酸味と苦味はまずい味として、塩味は低濃度では好ましい味、高濃度では嫌な味として認識される。これら5つの味を、より少量でその味を感じる順に並べると、苦>>酸>>塩>=うまみ>甘みという順番になるそうだ。

我々の祖先は狩猟・採取生活をしていたので、危険な食物摂取から身を守るため、本能的に、少しの量でも苦味や酸味、それらから生まれるエグ味を感じる→嫌な味→毒=不可食と先に判断し、その後、甘味を感じる→好ましい味→可食=毒でない→おいしいと判断していたと云われている。

甘味は砂糖などのカロリー源、塩味はミネラル類、旨味はタンパク質など、ニンゲンにとって必要な栄養源に対し、苦味や酸味は、自然界に存在する毒物や腐敗物など、摂取を避けるべきものに対し、反応するシグナルとして味覚は進化してきたそうだ。

市販のカレールウをさらに美味しくする方法

実は、市販のカレールウの原材料の大半は小麦粉と油脂で、カレーの風味を出すスパイスは僅か数%程度である。それに、砂糖や甘味料もたっぷり含まれているのに、さらに砂糖、にんにく、バター、とうがらしを加えて調理すると一層おいしく感じるという。

その理由は、砂糖や甘味料の甘味の量を苦味や酸味、塩味を感じる量より多くすると、最初に甘味を強く感じるので、先に「甘味」の信号が脳に送られて、好ましい味=「おいしい」と思い込み、次に、うま味(にんにく、バター)、塩味、苦味や酸味、最後に刺激成分である辛味(とうがらし)を感じ、総合的にカレーとして、とっても「おいしい」と判断するのだそうだ。

ちなみに、カレールウやカレー粉を使わなくても、クミンシード、コリアンダー、ターメリック、チリペッパー、塩、コショウ、ニンニク、ショウガ、タマネギ、トマトで本格的なインディアンカレーが家庭でも簡単につくれる。

農耕が始まり、狩猟・採取中心の生活をしなくなったニンゲンは、味覚をその食物を摂取することが有益か有害かの判断より、「おいしい」か「まずい」かを判断する感覚に使うようになっていった。

精製された直接糖がもたらしたもの

かつて砂糖は金と並ぶ貴重品だったが、19世紀末頃から大量生産され、安価に手に入るようになると、一般大衆にも普及し、一気に消費量も増えた。

元々、自然界には甘味成分の多い食物は少ないので、甘味にも敏感であったはずだが、糖度の高い精製した直接糖を摂取するようになると、甘味に対する感覚も鈍くなり、より強い甘味を求めるようになて、いつの間にか、甘味=エネルギー源という認識より、「おいしい」という嗜好性をより強く認識するようになったそうだ。

確かに、甘い=おいしい、となって、確かに、トマトやイチゴを筆頭に、糖度の高い農作物がオイシイともてはやされている。

しかし、砂糖や油脂の味は、脳内の「報酬系」という神経回路を強く刺激して快楽を感じさせ、強い依存性があるらしく、さらに甘味や油脂を求めるようになるので、今や、健康問題にもなっている。

旨味調味料

関西で有名なビアホールの名物が鶏の唐揚げで、これをつまみにするとビールが進むのだが、飲食後、異様にノドが渇くのである。ある日、その唐揚げに付いてくるスパイスに塩ではない白い結晶が相当量入っているのに気がついた。どうも旨味調味料らしく、おいしく感じさせた上に、ノドの渇きも生じさせる効果もあるようで、ビールの消費量が増えて一石二鳥なのである。

コンビニのおにぎりは、購入後、1日経ってもご飯が乾かず、甘味があるのは、何か添加されているのであろうし、回転寿しや惣菜の寿しを食べるとノドが乾くのも寿司酢に旨味調味料等を加えているのだろう。市販の合わせ調味料や中食、外食産業では、最初にガツンと「おいしい」と感じさせるように砂糖や甘味料、旨味が舌に残って後に尾を引くように旨味調味料をたっぷりと使うのは、ギョーカイのジョーシキだそうで、そういう手を使っているところは他にもたくさんありそうだ。

中華料理店症候群

一時、中華料理店症候群というのが話題になった。確かに中華料理では旨味調味料を多く使うようだ。関西一と云われた北京料理のシェフがいて、その人がつくるフカヒレ料理は絶品だったのだが、調理を間近で見る機会があり、中華のオタマで思いっきりうまみ調味料をすくって、鍋に投入したのを見て唖然としたことがある。

最近ではあまり目にしないが、以前は、客の目の前で丼にスプーンで白い粉を入れてからスープを注ぐラーメン店もよく見かけた。

老舗ラーメン店で修行の後、独立して、独自のラーメンを作り上げ、大成功を収めておられる経営者の方にお目に掛かかる機会があり、お話を伺うと、「成功した一番の要因は、羅臼昆布や宗田節などのこだわりの材料を惜しみなく使った自慢のスープだ。」とおっしゃるので、「ご自身のお子さんにも毎日食べさせたいラーメンですか?」と尋ねると、「旨味調味料を使っているので、毎日は食べさせたくないですね。いくらいい材料でいいスープを取っても、最後に入れないとお客様もおいしいとおっしゃって下さらないんですよ。味が締まらないんですね。」とのことだった。

もうすでに旨味調味料はラーメンや中華の味の一部になっているのかもしれない。

ちなみに、アミノ酸系のグルタミン酸ナトリウムに核酸系の5′-リボヌクレオチド二ナトリウム(高価らしい)を少量加えるだけで、最強の旨味調味料になると聞いたので、調べでみると、

昆布のうま味に代表されるグルタミン酸ナトリウム92%に8%の5’―リボヌクレオタイドナトリウム(しいたけやかつお節のうま味成分)を配合した「ハ◯ミー」は、グルタミン酸ナトリウム97.5%に2.5%の5’―リボヌクレオタイドナトリウムを配合した「◯の素」の倍の価格のようだ。

経験上、鶏肉か豚肉と長ネギ、ショウガ、にんにく、酒、塩、醤油、ゴマ油を使えば、中華の味になるし、スープは、ポットに水と昆布と鰹節、干し椎茸を入れて冷蔵庫に一晩置いたのを加えたらできるのだが…。

減塩には保存料がつきもの

さらに、砂糖、甘味料や旨味調味料をたっぷり使うと、甘味に見合う塩分が必要になり、薄味ではもの足りなくなるので、味付けも濃くなる傾向があるそうだ。巷では、塩分の摂り過ぎは健康に善くないとかで、減塩の醤油や味噌がもてはやされるようになったが、塩分濃度を15%以下に下げると腐敗しやすくなるので、自ずと保存料を添加することにもなる。

どっちの方が身体に悪いのだろう?塩分が気になるなら、通常の塩分濃度で使用量を減らせば済むことなのに…。

毎年、日本では食品が金額ベースでいくら廃棄されているかご存知?
日本の食品廃棄量が増えているワケ スーパーに並んでいる刺身パックには添加物が常識 保存料を使うようになって、塩分濃度を上げたり、乾燥...

調理をしない人が増えて、中食惣菜やコンビニ弁当を利用する人が増え、調味をしない人が増えて、調味で味付けをする人が増え、食品に表示される消費期限や賞味期限に頼り切ってしまって、食品が痛んでいるかどうかも自分の舌や鼻で判断できない人が増えているらしい…。

自然の中に生きるものとしての潜在能力

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内野 加奈子(うちの かなこ)さんは、伝統航海術で航行するカヌー、「ホクレア号」の初の日本人クルーで、ハワイから日本への5ヶ月間の歴史的な航海も経験された女性だ。

ハワイのホクレア号という双胴船は、古代ポリネシア人が、伝統航海術を使って太平洋を渡り、ハワイにたどり着いたという説を、海図やコンパス、勿論、GPSも使わず、人間が星や波の変化、海鳥や風の動きなどを読み取って、風力により航海することで実証したが、ベテランのナビゲーターの頭には、刻々と変わる洋上の天体の全体図が常に入っていて、進路、距離等、航行状況を逐一記憶し、五感を研ぎすませ、その全てをフル活用して操船の指示をするそうだ。

「かなり厳しい生活でしたが、不思議と海の上ではこれが苦になりません。信じられないかもしれませんが、ナビゲーターは、眠らないんですよ。彼の頭の中では、『今までどの方向にどれだけ進んだか』が、常にインプットされているので、眠ってしまっては情報を更新できなくなります。だから、ナビゲーターは、合間、合間に10~15分の仮眠を取りつつ、24時間ずっと起きているんです。こんなことを言うと、カヌーに乗っているのは人間離れした特別な人たちのような気がしますよね?でも、決してそうではなく、大きな海の上を進む小さなカヌーに乗っていると、人間も自然を形成する一部にすぎないのだということを痛感すると同時に、自然の中に生きるものとしての潜在能力が目覚めてくるのです。」

ヨットをやっている人にこの話をしたら、太平洋を1人で横断する人は、同じように合間、合間に仮眠して、24時間起きているそうだ。

「海の真ん中にいると、太陽、星、風、空、・・・、周りには自然からのメッセージがあふれていて、それをどのように自分の中に取り込んで、解釈するかという能力が、どんどん高まっていくのがわかります。例えば、夜は水平線と星の位置で方角を知るのですが、そのためには、220個ぐらいの星の配置を覚えなければなりません。そんなの絶対無理と思うかもしれませんが、人間にはそれを覚えて活用する能力が備わっているのです。ミクロネシアでは皆んな自然と共に生活していますから、『3時間後に雨が降る』なんて、ピタリと当たるんですよ。もちろん、日本人もそんな力をちゃんと持っていて、ただ、便利な生活の陰に眠らせてしまっているだけなんです。」

内野 加奈子(うちの かなこ)さん
COREZO(コレゾ)「人間は自然とつながって生かされている、シンプルな真実をホクレアから学び、土佐山から伝える、ナビゲーター」賞 内...

まとめ

このまま、近年まで摂取していなかった精製された直接糖や化学合成された物質を多く摂取し続けていると、ニンゲンが本能として持っていた自然の風味を感じ取れる味覚だけでなく、その他の能力もどんどん退化していくのではないだろうか…?

COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.04.09.

最終更新;2015.04.09.

文責;平野 龍平

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