牛島 智子(うしじま ともこ)さん/美術家・八女櫨研究会主宰

COREZOコレゾ感性豊かに身近な自然や資源にも目を向け、地元の素材を活かして木蝋ろうそくも作品にして、地域の文化を伝える美術家」賞

ushijima-tomoko

牛島 智子(うしじま ともこ)さん

プロフィール

福岡県八女市

美術家

八女櫨研究会

ジャンル

地域資源

伝統文化

経歴・実績

1958 福岡県生まれ

1981 九州産業大学芸術学部美術学科卒業

1985 Bゼミスクール修了

主な展覧会

1984 ギャラリー手、東京

1986 ヒルサイドギャラリー、東京

1986 「牛島智子TOOU WORKS」 エリア・ドゥ・ギャラリー、福岡

1987 「TOOU三角点」 コバヤシ画廊、東京 / アートスペースユア-ズ、伊東 / ギャラリー手、東京

1988 ヒルサイドギャラリー、東京

1991 ヒルサイドギャラリー、東京

1992 「表面に働いて,いつもできるだけ小さい面積をとろうとする力」スカイドア・アートプレイス青山、東京

1993 「多重ことば」 スカイドア・アートプレイス青山、東京

1995 「 第30回今日の作家展~洋上の宇宙・アジア太平洋の現代アート」 横浜市民ギャラリー、神奈川

1996 「POSITION」 スカイドア・アートプレイス青山、東京

2001 「旧家でアート」 八女市白壁ギャラリー・堺屋、福岡

2004 「ひとりでうたうSinging Table」 福岡市美術館、福岡

2008 「旅する青二才」ギャラリーアートリエ、福岡

2009 「歩く動物」 由布院アートホール、大分

2010 「帽子じゃないよ、滑走路」 九州日仏学館、福岡

2011 「逆光のクマクジラ」 旧玉乃井旅館、福岡

2013 「一週間だけろうそく屋」旧玉乃井旅館、福岡

2013 「木蝋ろうそくのための燭台の展覧会」宇久画廊、福岡 ”Exhibition of candleholder for Haze-candle”

2014 「風が吹けば、ダイヤ五成る桶屋がモウ軽の編」九州芸文館教室工房2、福岡 ”Diagonal”

2014 「ブダペストキッチン」九州芸文館教室工房1、福岡 ”Budapest kitchen”

2014 「腰曲げレットウ」art space tetora,福岡 ”Archipelago form of bending the waist”

受賞者のご紹介

牛島 智子(うしじま ともこ)さんは、生まれ故郷の八女で活動する美術家で、北島力さんのご紹介でお目に掛かった。地域の資源にも目を向け、八女櫨研究会の活動もしておられる。

八女櫨研究会

—八女櫨研究会の活動を始められたきっかけは?

「八女には、櫨の木が多く残っていることから、興味を持って調べ始め、八女が櫨の産地であったことを知りました。それで、櫨のことを多くの人に知ってもらい、共有財産として次世代につながっていけばいいなって思って、櫨の実をちぎる体験会や、ろうそくをつくる教室を開くようになりました。」

櫨は和ろうそくの原材料

—櫨は和ろうそくの原材料ですよね?

「そうです。櫨の実から搾り取った木蠟を加熱して熔かしたものを、和紙および、イグサから作った芯の周りに手でかけ、乾燥させることを繰り返してつくるので、完成した蝋燭は、断面が年輪状になります。今では、櫨の蝋のみで作ったろうそくはとても高級です。」

「日本では、江戸時代に琉球王国から持ち込まれ、それまでの原料であった漆の実に取って代わるようになった、と云われています。」

「櫨はウルシ科の落葉高木で、ウルシほど強くはありませんが、樹液の中にアレルギーをおこす成分があり、それに触れたり、敏感な人は木の下を通るだけでもかぶれる恐れがあります。櫨は、5月~6月に花が咲き、その頃、木のパワーが最も強く、緑の葉がついている間はかぶれる可能性が高くなりますが、11月頃、葉っぱが落ちるとかぶれる心配も少なくなるようです。」

櫨ちぎり

「木の高さが5m~8mにもなるので、櫨ちぎりは大変な作業です。近年では、植栽して2〜3年で主木を切り、横に伸ばす低木仕立てが多くなっています。」

「根の深さは、1m~1.2mほどで、あまり深く根をはらないので風害には弱いですが、他の作物に影響を及ぼすことが少ないということもあり、かつては、櫨の実を収穫することが農家の副業にもなっていて、八女でも農閑期に櫨の実をちぎり、お金に変えていたようです。」

櫨からろうそくのつくり方

—櫨からろうそくをつくるには?

「ちぎった実の茎やゴミをふるって取り除き、それを砕いて、蒸し、玉締めの油圧式器具を使って搾る『玉締め圧搾法』とヘキサンを使って化学的に抽出する方法があります。以前、『玉締め圧搾法』を見学したのですが、3kg~5kgの櫨の実を圧搾しても数滴しか出ないほど効率が悪いんですよ。櫨の搾りカスは藍だての燃料や肥料に使われます。」

木蠟の利用法

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ー藍染絣工房の山村さんのところで使っておられるのを拝見しました。

「そうでしたか。櫨からつくる木蝋は、日本酸ともいわれるパルチミン酸が主成分で、融点が49℃~60℃と低いので、少し熱いけれど、手でさわれないこともないので、手がけでもろうそくもつくれるのです。また、粘度がちょうどいいのでお相撲さんの鬢付け油にも使用されます。あと、少し緑がかった木蝋は、天日で干すと白くなるのですが、それを白蝋といって、明治時代から海外に輸出されていました。化粧品としても使われているようです。」

ろうそくの炎

「ろうそくは灯りとして使われてきましたが、ろうそくの炎を見るのも楽しいですよ。ろうそくの芯にマッチなどの火を近づけると、芯に染み込んでいた蝋が気体となって燃え、小さな炎となります。ろうそくの炎はよくご覧になるとわかりますが、芯に近い方から炎心、内炎、外炎の三層になって燃えています。炎心では、蝋が気体となり、内炎では、酸素不足のため、不完全燃焼して炭素は一酸化炭素になって、外炎では、さらに酸素と結びついて燃え、二酸化酸素になり、水素も酸素と結びついて燃え、水蒸気になります。」

一週間だけろうそく屋

—「一週間だけろうそく屋」という企画展を開催されているとか?

「はい、八女では、江戸時代より櫨(はぜ)を品種改良して世界に誇れる木蝋を生産してきました。そんな文化をろうそく屋に見立てた私の作品の展覧会を通して観覧者の方と共有したい、と願い、2013年に津屋崎玉乃井、2013年に旧八女郡役所と展示をさせてもらって、2015年は、福岡県立美術館で開催しました。有明海の肖像画と蝋燭の屏風絵を描いて、燭台や蝋燭も並べ、蝋燭屏風の設えにしました。会期中、竹筒型木蝋ろうそくづくり教室も実施しました。」

ろうそくも作品にして観覧者に伝える活動

「私は、ろうそくも絵ろうそく等の作品にしてしまうのですが、銅の容器に水を張って、中に木蝋で作ったろうそくを入れて3ヶ月ほどたつと化学反応して、ブルーに変化するのを発見しました。おそらく、銅イオンの色だと思うのですが、不思議でしょう?」

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牛島さんが制作された櫨とろうそくの1枚のプリントを頂いたが、それだけで櫨とろうそく、灯りの歴史が一目でわかる見事な作品になっていた。

COREZOコレゾ「感性豊かに身近な自然や資源にも目を向け、地元の素材を活かして木蝋ろうそくも作品にして、地域の文化を伝える美術家」である。

※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、一切、返答致しません。

COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.11.25.

最終取材;2015.7.

最終更新;2015.11.25.

文責;平野 龍平

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