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COREZOコレゾ「仁淀川お宝探偵団って?国際水切り大会をはじめ、仁淀川を楽しむことから始める環境保全と流域振興活動」賞
生野 宣宏(しょうの たかひろ)さん
プロフィール
大分県別府市出身、高知県いの町在住
ジャンル
河川環境保全
流域地域振興
経歴・実績
2003年 NPO法人「仁淀川お宝探偵団」設立
2004年 仁淀川柳瀬にて「どっぷり体験仁淀川」開催(水切り大会・野外ライブ)
2005年 「第2回仁淀川国際水切り大会」開催、「仁淀川どっぷり体験流学」発行
2006年 「仁淀川水質マップ2006」発行
2007年 食材・人物・諸団体の調査、「仁淀川美食探偵団」実施
2008年 「仁淀川エコツアー」開始
2009年 天会集落ツアーとして「小川ミニ八十八箇所巡り」実施
2012年 水きり大会子供の部、子供の水辺安全講座を実施、「仁淀川を守る会」設立
2013年 「第10回仁淀川国際水切り大会」開催
受賞者のご紹介
高知オーガニックマーケット
生野 宣宏(しょうの たかひろ)さんは、高知県いの町にあるNPO法人「仁淀川お宝探偵団」の理事長である。
「仁淀川お宝探偵団」や自然派食堂「みんなの家」(本業の彫刻に力を注ぐため、2014年に閉店)の名称は、川窪 財(かわくぼ たから)さんの「たからちゃんネット」で、よく目にしていた。仁淀川の全国的な知名度は、四万十川より、はるかに低いと思うが、昔、働いていた企業のグループ会社にその名称の付いた法人があったので、行ったことはないが、清流であるのは伝え聞いていて、「仁淀川お宝探偵団」って何やろ?と、なんとなく興味は持っていた。
2013年5月、神野 浩史(じんのひろし)さん家宴会で出会った公文 潔(くもん きよし)さんから、「『仁淀川お宝探偵団』なら、僕も理事をしているし、理事長の生野さんを紹介しますよ。」ということで、2013年6月、生野さんがその日、出店しておられるという「高知オーガニックマーケット」に向かった。
「高知オーガニックマーケット」というのは、2008年に高知で始まった、日本で初めてのオーガニックマーケットで、毎週土曜日に高知県立池公園で開かれているらしい。で、高知県立池公園ってどこやねん?調べても、指定管理者のWebサイトしかなく、これが実にわかり難かった。県立やから、県外から来たヤツにはわからんでもええのか?と、声を大にして言いたいところをグッと我慢して、iPhoneのナビに従って行くと、何だか新興住宅地の真ん中に連れて行かれた。
ネットの地図サービスで、探し、探し行くと、これが、なかなか感じのエエ公園で、芝生の広場には、化学肥料や農薬を使わない有機野菜やお米、地元でとれた海産物、干物、オーガニックコーヒー、ハーブティーやお茶等加工品、天然酵母パン、玄米弁当、その他、色々な店が並んでいた。
自然派食堂「みんなの家」で、出店しておられると伺ったので、探していると、間違いなくこの方が生野さんだろうというおっちゃんを発見。ご挨拶して、店先で、お話を伺った。
生野さんは、この高知オーガニックマーケット出店者組合の役員もされているそうで、高知県の有機農業者が、新鮮で安全な食材を求める消費者に、直接農産物を販売する場を作り、種の交換なども行い、在来種を守る運動にもつなげておられる。食育や玄米食のすすめコーナーなども設けている。小規模でも販路を確保することで、高知での就農促進、地域活性化につなげる等、素晴らしい目的、趣旨で運営されているようだ。しかも、出店基準はかなり厳しいらしい。
お話を伺っている間にも、お客さんが次々来店されるので、ご商売の邪魔をしては、と思い、日を改めて、高知城の傍にある、自然派食堂「みんなの家」に伺った。
新鮮なものを、おいしく食べるのが、本来の食の楽しさ
ー 生野さんは高知のご出身ですか?
「いいえ、別府生まれの大分育ちで、東京で美術を学び、サラリーマンになったのですが、辞めて、バックパッカーで世界を巡り、一番ハマったインドには長く滞在しました。」
ー 高知にはいつから?
「日本に戻って来て、20年程前に高知に来ました。八百屋なんかをやっていたのですが、8年前にこの自然派食堂『みんなの家』を開店しました。無農薬、無添加の食材にこだわっていて、玄米ご飯を中心に、オーガニックパスタや天然酵母パン、自分の目で確かめた特定農家の有機野菜を使ったメユーをお出ししています。砂糖は使わず、塩や醤油等の調味料も厳選しています。」
ー 高知には自然食のレストランは多いのですか?
「はい、結構あるのではないかと思います。アレルギーや、食事コントロールをされている方へのメニューも提供しています。そういう方々も外食をせざるを得ない時もあるでしょうから、使命感のようなところもあります。しかし、無農薬・無化学肥料の農産物、食品しか食べないと固執するのではなく、そちらの方が美味しいと感じれば、食べたらいいのであって、ま、食べ比べればわかると思いますし、その方が、身体にも、健康にも、自然環境にもいいでしょうけど、新鮮なものを、おいしく食べるのが、本来の食の楽しさだと思います。」
「仁淀川お宝探偵団」とは?
「約10年前から仁淀川の傍で暮らすようになり、元々、美術を学んでいたこともあって、その川原石で彫刻をしたり、作品をつくるようになりました。その仁淀川は、愛媛県の石鎚山(標高1982m)から源を発し、流路延長124km、流域面積1560平方kmある清流で、四万十川、吉野川と並んで、四国三大の河川の一つなんですが、同じ高知県を流れる四万十川と比べると、まだまだ知名度が低いので、仁淀川とその流域の魅力を一人でも多くの方に知っていただきたくて、活動を始めました。」
ー どのような活動をしておられるのですか?
「まず、2002年に、メンバーを公募し、高知県の事業としての『川の地図づくり』事業がスタートして、地図作成のための調査を実施しました。2003年には、仁淀川お宝鑑定団合同発表会を開催しました。そして、NPO法人仁淀川お宝探偵団を設立し、流域のお宝を一枚の絵地図にまとめた『仁淀川お宝地図』を発行しました。」
「2004年には、仁淀川柳瀬で『どっぷり体験仁淀川』を開催して、この時に企画、実施した『水切り大会』が、『仁淀川国際水切り大会』に発展して、今年で10回目の大会になります。その他に、全国一斉に水環境調査を行なう『身近な水環境全国一斉調査』に参加し、水マップ実行委員として運営に関わって、以後、毎年参加しています。」
『仁淀川国際水切り大会』とは?
「ご存知のように、水切りとは、河原の石を川面に投げて、水の上を跳ねさせる『スポーツ』です。この大会では、男性・女性・子どもの計3部門で、美しさ・飛距離・回数の総合評価で順位を競います。水切りに国境はありませんので、毎年夏に、仁淀川で水切りの世界王者を決めましょう、と呼びかけて、いの町波川公園の河原等で開催しています。年々、参加者が増えていて、今年は、200名超えるのではないかと期待しています。」
「その他にも、流域の体験型プログラムの一覧型パンフレット『仁淀川どっぷり体験流学』や『仁淀川水質マップ』を発行したり、定期的に生物調査を行なう『仁淀川ガサガサ探偵団』や『仁淀川エコツアー』など、さまざまな活動に取り組んでいます。」
「仁淀川エコツアー」には、どんなツアーがある?
「『どっぷり』と、『どきどき』のコースがあって、『川遊びの王道をいこう。どっぷりコース』には、一日と半日の『カヌー体験コース』と、水切りの技を学び、たも網でガサガサと魚や生き物を探す『水切りとガサガサコース』があり、『どーんと、地下へ潜ろう! どきどきコース』には、むかし忍者も修行したという猿田洞を探検する『洞窟探検コース』と洞窟探検は休憩しながら紙芝居を楽しむ『紙芝居や洞窟語りコース』があります。その他にもいくつかのオプションがあります。」
ー どれも楽しそうですね?
「ええ、実は、仁淀川で水に親しんで、楽しく遊んでもらいながら、仁淀川の水質を守っていくにはどうしたらいいか?とか、自然環境を守りながら流域を活性化するにはどうすればいいか?とか、考える機会にして欲しいのです。」
「仁淀川は、水質指標の目安となるBODを基準とする全国ランキングでは、平成14〜5年とも0.6mg/Lで、全国で第7位(同位の河川もあるため、実質3位)。四国だけでみると、徳島の吉野川支流穴吹川と第一位の座を長年に渡り、競い合っています。いずれにしても、仁淀川ほどの大河川で、なおかつ高知や松山といった都市部からも近い川でこれだけのきれいさを保っているのは、仁淀川だけなのです。また、環境基準適合率では物部川と仁淀川が100%となっていて、四国ではほかに吉野川、那賀川の4河川だけです。」
BODって?
「Biochemical oxygen demandの略で、生物化学的酸素消費量とも呼ばれる最も一般的な水質指標のひとつです。水質汚濁の原因のひとつである水中の有機物などの量を、微生物が酸化分解するために必要とする酸素の量で表したもので、魚類が生存可能な溶存酸素濃度の下限が3~5mg/lと言われ、BODの値が大きいほど、その水質が汚濁していることを示します。」
国交省の「平成24年四国内一級河川の水質現況の公表について」のプレスリリースによると、河川水質ランキング(BOD平均値)で、 最も水質が良好な河川(地点)は、穴吹川(穴吹)、貞光川(貞光)、仁淀川(伊野)の3河川(地点)となっていて、現在でも四国内では1位のようだ。
楽しくないと長続きしない
「そうです。活動している私たちから楽しまないと、参加して下さる皆さんが楽しめるはずがありません。都市近郊にあって美しい自然を残す仁淀川は、水遊びの利用者数が多く、河川空間の利用率が高いことも国交省の調査で明らかになっています。ところが、2012年には、仁淀川の源流域に産廃処理施設設置計画が持ち上がり、その計画を止めるために『仁淀川を守る会』を設立して、事務局を担当したりと、楽しいことばかりではありませんが、仁淀川の恩恵を受けて暮らしている私たちが率先して守っていかねばなりません。」と、生野さん。
COREZO(コレゾ)賞・財団の趣旨をご説明したところ、大いに賛同して下さって、受賞も承諾して下さった。で、お腹がすいたので、野菜カレーを頂いた。野菜だけなのだが、なぜかコクがあって旨かった。さすが、インドに長いこと滞在されただけのことはある。
※「高知オーガニックマーケット」への出店は続けておられるようである。
COREZO コレゾ「仁淀川お宝探偵団って?国際水切り大会をはじめ、仁淀川を楽しむことから始める環境保全と流域振興活動」である。
COREZO (コレゾ)賞 事務局
初稿;2013.10.17.
最終取材;2013.06.
編集更新;2013.03.12.
文責;平野 龍平
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