大松 秀雄(おおまつ ひでお)さん/大松農場 代表/たまご生産農家

COREZOコレゾ 「食は命、命を支える農は農人の生きざまそのもの 健康な純国産鶏、飼料、環境、自然循環にこだわり続け 集大成の飼料自家生産に挑む、高志のたまご農家」 賞 

大松 秀雄(おおまつ ひでお)さん/大松農場 代表/たまご生産農家

プロフィール

1942年千葉県旭市の農家に産まれる。

高3の時、原因不明の病で食事が出来なくなり病臥していたが、伊豆の断食道場で玄米自然療法により起死回生したという体験から、科学物質などを排除し、餌までこだわりぬいた養鶏を開始する。

またコーンのポストハーベストフリーのさきがけでもある。

“農業は芸術”をモットーとし、いずれは自分のライフワークを絵にしたいと考えている。

尊敬する人物は、地元が誇る江戸時代後期の農政学者であり、農業協同組合を世界で初めて創設した”大原幽学”

趣味は読書で、ライブラリーは数え切れないほど。

農を始め様々な分野に常にアンテナを張り、そこで得た魅力的な情報を独特な語り口で聞かせている。

大松農場

1961年 祖母の庭先養鶏を引き継ぎ、養鶏を150羽からスタート。 自らの玄米自然療法体験より抗生物質を一切排除し、飼料の自家配合を確立

1963年 愛農養鶏研究会発足

1965年 鶏600羽に拡大

1968年 鶏3,000羽に拡大

1978年 旭愛農農産物供給センターを設立し、生活クラブとの取り組みが始まる

1989年 コーンをポストハーベストフリー(輸入時の消毒剤撒布をさせない)にする為、米国農家との提携に成功し、安全飼料普及のさきがけとなる。また、鶏舎をウインドゥレス(窓のない鶏舎)にせず、雛を自ら育て温度管理と育雛技術もわが国のさきがけとなる

農人 大松秀雄さん

大松さんに初めてお目に掛かったのは、佐藤 文彦(さとう ふみひこ)さんのくりもと地球村・クリモトファームに訪問した際、確か2011年、その年に起こった東日本大震災の原発事故で千葉県の農産物も少なからず影響を受けていた頃だったと思う。大松農場にもお邪魔したが、丁度、COREZO賞の構想を始めた時期で、眼光鋭く、「食べるということは生命をいただくこと」、「自然循環農法」、「ポストハーベストフリー」…、その頃、まだ筆者には聞き慣れない言葉やお話が次々に飛んできて、タジタジとなって退散した覚えがある。

そして、2012年、第1回COREZO賞表彰式を開催することができ、くりもと地球村・クリモトファームの佐藤 文彦(さとう ふみひこ)さんにもご受賞いただいたのだが、翌年、残念なことに急逝され、大松さんにお目に掛かったのは、佐藤さんのお葬式に参列した時が最後だった。

2023年3月、突然、その大松さんから、「COREZOまだやってるの?コレゾ、っていう響きが何故か脳裏に残っていて、気になってね」と電話があり、同年9月に東京でお会いすることになった。

COREZO賞のことは佐藤さんから聞かれていて、葬儀の際に少しお話したことを覚えていてくださったようで、大松農場にお邪魔して、ひと時、お話を伺っただけでも、COREZOなたまご農家さんであることは間違いなく、10年以上ぶりに美味しいたまごをいただいて、初めて大松さんのたまごを食べた「くりもと地球村」のことも懐かしく思い出した。

改めて大松農場を視察・見学させて欲しい、とお願いして、11月に伺った。

卵(たまご)

たまご掛けご飯を始め、エッグベネディクト、オムレツ、だし巻き…、たまご料理は、数々あるが、使われているたまごのことは、どのぐらいご存じだろうか?

たまごの価格

日本の国民一人当たりの卵の消費量は、令和2(2020)年には、年間340個(前年比2個増)と、年間380個(前年比8個増)のメキシコに次いで世界第2位で、1990年以降の卵10個パック販売価格の推移は、78円から458円までの幅広い価格帯で推移しているようだが、卵の価格は、少し前まであまり値上がりすることがなく、「物価の優等生」と呼ばれていた。直近の10年間は、200円前後で推移していたが、2022年夏ごろから急騰し、2022年3月には、1kg当たり194円だったが、1年後には、約1.75倍の340円に値上がりした。

これは、円安、ウクライナ情勢などの影響で、飼料の輸入コストの高騰、梱包材、運搬費等の生産コストの上昇の他、鳥インフルエンザが流行したことが原因とされるが、2023年11月現在では、鳥インフルが落ち着いたこともあり、調べた直近の価格は、278円と、300円弱前後で推移しているようだ。

以前は、「98円」とか、「148円」とか、「198円」とかで、スーパーの特売でよく見かけたが、運送、流通、販売費他も入れて、どうやってこんな販売価格が実現できているのか不思議で仕方なかった。

かつて、卵は高級品で、調べてみると、昭和26(1951)年の卵の価格は、10個入り161円だったようで、現在の貨幣価値に換算すると、10個で3,200円(1個当たり320円)、その約10年後の筆者が子供の頃でも、卵を持って行かないと、お好み焼き屋さんでは「豚玉」は食べられなかった。

米国式集約的畜産方式の導入

1960年代、トウモロコシの過剰生産に陥っていた米国が開発した集約的な家畜生産方式と共にその飼料として日本に輸出を始めたことで、ケージを使った採卵鶏の多羽飼育が可能になり、既存の養鶏業者が規模を拡大したり、企業経営の大規模養鶏業者が現れ、大量供給が可能になって、卵の価格も急激に下落する。 

卵と同様に米国式集約的畜産方式を導入した、鶏、豚他の食肉なども価格が安くなり、日本人の食は豊かになったのだが、現在でも、日本の畜産は米国からの輸入配合飼料なしでは成り立たないようだ。

レイヤー鶏

日本の鶏卵の自給率は95%と高い水準だが、卵を生産する鶏の種鶏は約96%が海外から輸入されており、国産鶏は、残りの約4%のみ。

「lay eggs;卵を産む」、「layer;産卵鶏」

鶏の原種が産む卵の数は年間30個程度だが、品種改良されたレイヤー鶏は、現在、年間約300個を産むので、ほぼ毎日卵を産み、レイヤー鶏の生産寿命は約100週間で、その間に約500個もの卵を産むことになる。

ブロイラーは大型鶏種で、オス・メス関係なく飼育されるが、レイヤー鶏の場合、卵を産むのはメスのみなので、多くの卵鶏の養鶏場ではメスのみが飼育される。レイヤーは細身の鶏種で、オスは肉用に転用して飼育してもコストが合わないので用途がなく、ヒヨコは、生まれてすぐにオス・メスで分別され、オスは殺処分されるそうだ。

昭和の時代、縁日には、赤や緑や青の色を付けた「ヒヨコ釣り」があり、喜んで家に持ち帰っても、可愛いヒヨコは、あっという間にニワトリの姿になって、持て余した。この縁日のヒヨコがレイヤー鶏のオスだったらしく、確かに鶏冠の大きな雄鶏になって、その後どうしたかは伏せておくが、子供ながらに、ヒヨコの悲しい運命を思い遣ったことを覚えている。やがて、ヒヨコの取引にも動物取扱業登録が必要になって縁日からも姿を消した。

廃鶏

廃鶏とは、採卵期間を終えて鶏舎から出される雌鶏のことで、親鶏や成鶏と呼ばれることもあるが、食肉用のブロイラーや地鶏は採肉が目的であるため、廃鶏とは呼ばない。

採卵用鶏は、生後約5ヶ月から産卵を始め、産卵効率の良い14~16か月程度の間は産卵させるが、まだ健康で産卵も可能でも、歳をとるにつれて産卵個数が少なくなり、殻に異常のある卵が増えて、卵の商品価値や生産性が低下するので、廃鶏にして、採卵用鶏を更新する。

1年以上採卵を続けた廃鶏の肉は、肉の旨みは強いものの、肉用鶏に比べると肉質が固くなるため、一般に広く流通している肉質の柔らかい若鶏(ブロイラー)より、肉用としてのニーズも市場価値も格段に低く、主にミンチにされて加工肉や冷凍肉、レトルト食品、ペットフード他に利用されるが、引き取り手のない廃鶏は、処理費用を支払って、廃鶏処理業者で殺処分される。

パタリーケージ

集約的畜産方式では、バタリーケージと呼ばれる、ほとんど身動きできないほどの小さい金網の箱のなかで飼育することにより、狭い場所で多くの鶏を飼育でき、生産性を高めている。

バタリーケージとは、採卵養鶏業で使用されている鶏の飼育方式の一つで、2020年IEC(国際鶏卵協会)データによると、日本の採卵養鶏場の94%以上がこのバタリーケージ飼育だそうだ。多段式のケージは、卵が転がり易いよう傾斜し、止まり木や砂浴び場もなく、四方と天井は金網で囲まれ、床も糞が下に落ちるよう粗い目の金網で、日本での鶏1羽あたりの一般的な飼養面積は、370㎠以上430㎠未満程度(20cm×20cm程度)、高さ40〜45cm程度の大きさとのこと。

このバタリーケージは動物福祉の観点から、1990年代後半より、スイス、EUをはじめ、米国の6州、ブータン、インド、オーストラリア他で禁止され、廃止への動きが加速しているが、日本には規制がない。

ウインドウレス鶏舎

さらに、日本国内では、窓がなく、空調等で環境をコントロールできる「ウインドウレス鶏舎」が防疫に役立つ、という考えから普及し、給餌から採卵まで工業的なオートメーション化が進み、効率を極めると、養鶏家1人で10万羽も飼えるそうだ。

しかし、2022年後半から2023年初めにかけて、鳥インフルエンザが猛威を振るい、2022年度シーズンの鳥インフルエンザによる殺処分数は、約1771万羽と過去最多となり、これまで最も多かった2020年11月~21年3月の約987万羽を大きく上回った。その殺処分された鶏のほとんどが卵を産む「産卵鶏」で、国内の約1億4000万羽のうち1割以上が殺処分されたことになり、この「ウインドウレス鶏舎」でも鳥インフルエンザは発生していて、鳥インフルエンザは1羽でも発病すると、農場内のすべての家禽を殺処分するため、当たり前のことだが、規模が大きいほど被害も大きくなる。

鳥インフルエンザのウイルスは、渡り鳥によって国内に持ち込まれ、カラスやネズミなどの野生動物が媒介すると考えられているが、予防に有効なワクチンはいまだ開発されていないらしく、開発されても、変異株への対応も必要となる。

卵の価格の安定を支えてきたのは、このような養鶏経営の大規模化だけでなく、ここでは詳しくは触れないが、「鶏卵価格差補塡事業」と「成鶏更新・空舎延長事業」から成る、農林水産省の「鶏卵生産者経営安定対策事業」で、税金も投入されている。

鶏肉

ブロイラー

ブロイラーは、英語の「broil;あぶる、焼く」由来の名称で、焼き肉用の鶏肉を意味し、米国で品種改良して開発された鶏種で、飼育方法などには特別な基準はない。

定義が曖昧過ぎる「銘柄鶏」を含め、日本の肉用鶏の100%近く(地鶏が約1%)を占める。

「地鶏」の場合、日本農林規格(JAS)の規定により、出荷するまでに75日以上かかるが、ブロイラーは、品種改良により通常の鳥類では考えられないようなスピードで成長し、わずか45〜50日で出荷できるが、骨格が成熟するよりも速い速度で体重が増加するため、腰や膝の関節骨格が体を支えることができなくなり、脚弱、さらには歩行困難に陥る鶏も少なくないそうだ。

また、より早く出荷させるために成長を促す飼育方法を取り、ほとんど動かず飼料をたっぷりと与えられて育つので、肉質がやわらかく、また、短期間で出荷できるので、生産効率が高く、価格もリーズナブルになり、スーパー等では「若鶏」として販売されている。

ブロイラーは、100%が交雑種であり、その組み合わせが行われる系統は銘柄によって異なるが、全てイギリス原産の白色コーニッシュ種と、アメリカ原産の白色プリマスロック種の交雑によるものだそう。

地鶏 日本農林規格(JAS)/2015年改正

 地鶏肉の生産の方法についての基準は、日本農林規格(JAS)で定められているが、それ以外の鶏肉については、明確な定義がない。

素びな(ヒヨコのこと)

「在来種」由来血液百分率が50%以上のものであって、在来種由来血液百分率が50%以上のものであって、出生の証明ができるものを素びなとする。

飼育期間

ふ 化日から75日間以上(改正前は80日)

 飼育方法

平飼い(28日齢以降)

 飼育密度

10羽/㎡以下( 28日齢以齢以降)

在来種 (地鶏肉のJAS規格別表) 

会津地鶏、伊勢地鶏、岩手地鶏、インギー鶏、烏骨鶏、鶉矮鶏、ウタイチャーン、エーコク、横班、プリマスロック、沖縄髯地鶏、尾長鶏、河内奴鶏、雁鶏、岐阜地鶏、熊本種、久連子鶏、黒柏鶏、コーチン、声良鶏、薩摩鶏、佐渡髯地鶏、地頭鶏、芝鶏、軍鶏、小国鶏、矮鶏、東天紅鶏、蜀鶏、土佐九斤、土佐地鶏、対馬地鶏、名古屋種、比内鶏、三河種、蓑曳矮鶏、蓑曳鶏、宮地鶏、ロードアイランドレッド

日本三大地鶏

「名古屋コーチン」、120日から150日程度の長い飼育期間によって出荷され、非常に引き締まった肉質で、赤身の割合の多い鶏。

「比内地鶏」、天然記念物の比内鶏の雄とロードアイランドレッド種の雌を交配した一代交雑種で、雌はふ化日から150日間以上、雄は100日間以上飼育して出荷され、噛みごたえがあり、旨みが強い。

「薩摩地鶏」、120日から150日程度の長い飼育期間によって出荷され、もともと非常に活動的な鶏ということもあって、肉の引き締まり具合が鶏の中でも郡を抜いている。

地鶏出荷量日本一

「阿波尾鶏(あわおどり)」、在来種の軍鶏にブロイラー種のホワイトプリマスロックを掛け合わせた鶏種で、低脂肪でコク・甘み・うま味が多く、やや赤みを帯びた肉色と適度な歯ごたえが特徴。

銘柄鶏(一般社団法人日本食鳥協会がガイドラインを設定)

「地鶏に比べ増体に優れた肉用種で、通常の飼育方法と異なり、飼料内容等に工夫を加えたもの」と、あるが、これはJAS規格ではなく、一般社団法人日本食鳥協会が 通常の飼育方法と異なり、飼料内容等に工夫を加えた「銘柄鶏」のガイドラインを設定しているだけで、何が通常の飼育方法と異なり、飼料内容等にどんな工夫を加えたのか、具体的な基準はない。

要するに、スーパー等で見かける「地鶏(JAS規格)」以外の赤鶏さつま、あじわい丹波鶏、華味鶏、つくば茜鶏他、「〇〇鶏」がこれにあたると思われる。

種鶏の供給は世界的大企業3社が独占

大松さんから「種鶏は、海外の大企業数社に牛耳られている」との衝撃的な話を伺って、調べたところ、農林水産省「鶏の改良増殖をめぐる情勢」(2019年)によると、我が国の鶏卵や鶏肉については、ほとんどが、EUや北米から輸入される外国産種鶏を用いて生産されていて、種鶏の育種は、世界的大企業であるEWグループ(独)、コッブ・バントレス社(米)、ヘンドリックス・ジェネティックス社(蘭)の3社でほぼ独占し、元となる種鶏が囲い込まれている状況らしく、種苗と同じように食の支配が進んでいたのである。

鶏の遺伝子組み換え

イスラエルの遺伝学者であり家禽育種の専門家が開発し、遺伝子組み換え鶏ではない、と主張する、羽根のない鶏が開発されたと話題になったことがある。羽根がないことで環境の変化や病気に弱く、普及していないらしいが、弱点が改良される可能性もある。

既に、日本でも遺伝子組み換えの鶏が研究されているようで、近い将来、医薬品開発の原材料になったり、卵アレルギーフリーの卵が市販される可能性もある。

ゲノム編集で誕生「金の卵」を産むニワトリ

国立研究開発法人産業技術総合研究所「ゲノム編集により鶏卵を使って有用な組換えタンパク質を大量生産」によると、近年、バイオ医薬品など組換えタンパク質の需要は拡大しているが、高い製造コストが課題となっていて、その課題解決の手段として、ニワトリの遺伝子を改変し、有用組換えタンパク質(ヒトインターフェロンβ)を大量に含む鶏卵を長期間、世代を超えて安定的に生産する技術を開発し、高価な有用組換えタンパク質を、鶏卵を用いて(極めて安価に大量生産できる新技術に道筋をつけたとのこと。

ゲノム編集でニワトリを品種改良

同じく、産総研「ゲノム編集でニワトリを品種改良(低アレルゲン性卵の生産へ道筋)」によると、ゲノム編集技術をニワトリに適用して、アレルゲンであるオボムコイドの遺伝子を欠失したニワトリの作製(原文通り)に成功し、強力なアレルゲンを含まない鶏卵の生産など新たな畜産技術開発が期待されるとのこと。

国産鶏

国産鶏の種鶏育種をしているのは、独立行政法人家畜改良センター

国内で地鶏の増殖を行っているのは、37都道府県と2民間しかなく、独)家畜改良センターは、31都道府県(37銘柄)、2民間(3銘柄)に対して種鶏を供給しているそうだ。

国産採卵用鶏「もみじ」、「さくら」

日本国内の気候・風土の中で、幾世代にもわたり育種改良してきた「純国産鶏もみじ」から産まれた卵が「もみじたまご」、「純国産鶏さくら」から産まれた卵が「さくらたまご」。 

さくらの特徴

羽毛は白色、強健で抗病性に優れる、環境適応力があり、飼いやすい、産卵率が高く、採卵量も多く、各種鶏病に対する抵抗力があり、寒暑などのストレスに強い。

さくらが産んだ「さくらたまご」は、卵殻は強くて美しく濃いさくら色で、肉・血斑が少なく、しっかりした濃厚卵白で、卵内容質にも優れている

もみじの特徴

羽毛は茶褐色、丈夫で健康、抗病性に優れ、卵殻が硬く、商品価値の高い最高級の赤玉を産む。

「もみじたまご」は、美しい褐色卵で、殻や形がよく、卵質も優れてい、生で食べると濃厚な黄身のコクや甘さがある。

大松農場のたまご

大松さんは、8,000坪の農地を有する農家の三代目。

高校3年生の時、原因不明の病で食事が摂れなくなり病臥していたが、伊豆の断食道場で玄米自然療法により起死回生したという体験から、人間の身体は食べ物でできていること、「食は命」そのものであることを再認識し、人を愛し、大地を愛し、自然に沿い、そして限りなく努力して、有機自然循環農法に取り組んでこられた。

大松さんのたまごは、飼料に黄身を着色するような成分は配合されていないので、日本タンポポのような鮮やかな黄色、これがたまご本来の黄身の色だそうだが、味は濃厚で、卵かけご飯にすれば、そのおいしさは格別だ。

「たまご」はまさに鶏の餌そのもの

家畜にも農作物にもウソはつけない、手をかけたらかけるだけ、応えてくれる、と鶏を健康に育てることだけを考えて、飼育環境や飼料にこだわってこられた。

色々な種類の素材を長年の経験から自家配合して与え、鶏がいつも健康でいられるように気を配り、 価格が高騰中のとうもろこしも、非遺伝子組換え品種を守り続けている。

純国産の採卵用鶏

現在、日本の採卵用鶏は、外国産のレイヤー鶏がほとんどだが、大松農場の鶏は岐阜県にある後藤孵卵場からきた 「もみじ」と「さくら」という純国産鶏なので、日本の風土に合っているのでいつも元気に飼育されている。

「ひよこ」から一貫して育てる

卵を産む状態の鶏を買ってくるのではなく、ひよこから一貫して育てることで、環境に適応しやすくなり丈夫な鶏になる。

自然環境の鶏舎

最近では、80%以上の鶏小屋が窓なしの「ウインドウレス鶏舎」だが、 大松農場では、”自然の風”と”太陽の光”が十分鶏に行き渡るように 「平飼い鶏舎」と「開放鶏舎」で飼育している。 

抗生剤など一切使用

雛のころより一貫して抗生剤や鶏舎の消毒剤な どの化学薬品を一切使用せず、 鶏自体の免疫力を高めていく努力をし、人にも環境にもサステナブルな農場づくりに取り組んでいる。

農産物は農家の生きざまそのもの

大松さんは、「矢澤淳良先生のこの本、知ってますか?」と、次々と書籍のタイトルが出てくる程の読書家で、60年以上に亘って、大勢の皆さんに喜んでもらえ、誰もが安心して人生を全うしてもらえる、美味しくて、生命力あふれる農産物を生産し、農業を通じて、人さまのお役に立つことこそが農家の最大の喜び、と粉骨砕身、力を尽くしてこられた。

10年前にお目に掛かった時には、農業への取り組み、志に凄みさえあって、大松さんの生きざまが言葉の端々に溢れ、近づき難いオーラを発しておられたが、今では、筆者のようにテキトーに生きている若輩者にも優しく接してしてくださるようになった。

ピーク時には、60,000羽を飼育しておられたが、鶏の健康を考えると羽数を少なくした方が良く、徐々に減らして、今では、3,000羽になった。今後は、オーナー制にする等、農業に興味がある人たちが養鶏だけでなく、大豆や麦、野菜他の農作物をつくり、農業・福祉連携のコミュニティのようなものをつくりたい。また、その一環として、コロナ禍があって、色々考えるところがあり、今後は輸入飼料に頼らず、飼料の自家栽培・生産に取り組む準備も進めている、とのこと。

「食べるために農業をしているのではなく、生きるために食べるのだから、どの職業も大切だが、農業の役目の大きさをこの歳になって身をもって感じている。食は命で、農業は生命を支える産業であり、平和な社会の基盤でもある。日々の生活に追われて深く考えられない人もいるだろうけど、これからの大松農場をそう云う大事なことを発信できる拠点にして、志のある若者に引き継いで行きたい。」とおっしゃる。

是非とも、農人としての集大成をやり遂げていただきたい。

COREZOコレゾ 「食は命、命を支える農は農人の生きざまそのもの 健康な純国産鶏、飼料、環境、自然循環にこだわり続け 集大成の飼料自家生産に挑む、高志のたまご農家」である。

取材;2023年11月
初稿;2023年11月
文責;平野龍平

 

 

 

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