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COREZOコレゾ 「長良川の伏流水と木桶仕込みでしか醸せない風味がある 『たまり』を業務用から家庭用の主役に! 販路を拡げる『たまりや』親子」 賞
山川 晃生(やまかわ あきお)さん/山川醸造株式会社 代表取締役/天然醸造味噌・たまり醤油製造元
プロフィール
1943年創業、たまり醤油と豆味噌の蔵元「山川醸造」3代目
山川 華奈子(やまかわ かなこ)さん/山川醸造株式会社/天然醸造味噌・たまり醤油製造元
プロフィール
1993年生まれ、東京の食品商社に就職後、家業を継ぐ
山川醸造
日東醸造蜷川社長から、今や「醸造業界のアイドル」が岐阜にいらっしゃる、と聞き、一緒に伺った。澤田聡美(お里)ちゃんもそうだが、女性の受賞者は、蜷川さんからの紹介が多い。
昭和18年創業で、長良川の伏流水と杉の木桶を使い、東海地方の伝統的な調味料、豆味噌とたまり醤油を醸造する醸造蔵。 国内製造量1%ほどの木桶仕込みの製法で、さらに希少なたまり醤油・豆味噌を2年以上の時間をかけて作り続けておられる。
しょうゆの種類
こいくちしょうゆ(全出荷量中約84%)
最も一般的なしょうゆ。塩味のほかに、深いうま味、まろやかな甘味、さわやかな酸味、味をひきしめる苦味を合わせ持っています。調理用、卓上用のどちらにも幅広く使える万能調味料。
うすくちしょうゆ(全出荷量中約12%)
関西で生まれた色の淡いしょうゆで、国内生産量のうち1割強を占める。発酵と熟成をゆるやかにさせるため、食塩をこいくちより約1割多く使用。素材の持ち味を生かすために、色や香りを抑えたしょうゆ。炊きあわせやふくめ煮など、素材の色や風味を生かして仕上げる調理に使われる。
たまりしょうゆ(全出荷量中約2%)
主に中部地方で作られるしょうゆ。とろみと濃厚な旨味、独特な香りが特徴。古くから「刺身たまり」と呼ばれるように、寿司、刺身などの卓上用に使われるほか、加熱するときれいな赤身が出るため、照り焼きなどの調理用や、佃煮、せんべいなどの加工用にも使われる。
さいしこみしょうゆ(全出荷量中約1%)
山口県を中心に山陰から九州地方にかけての特産しょうゆ。他のしょうゆは麹を食塩水で仕込むのに対ししょうゆで仕込むため、「さいしこみ」と呼ばれる。色、味、香りともに濃厚で、別名「甘露しょうゆ」とも言われ、刺身、寿司、冷奴など、おもに卓上でのつけ・かけ用に使われる。
しろしょうゆ(全出荷量中約1%)
愛知県碧南市で生まれ、うすくちよりもさらに淡い琥珀色のしょうゆ。味は淡泊ながら甘味が強く、独特の香りがあります。色の薄さと香りを生かした吸い物や、茶わん蒸しなどの料理のほか、せんべい、漬物などにも使用される。
「五分仕込みたまり」と「十水仕込みたまり」
「たまり」の中にも種類あり、違いは、仕込みに使う塩水の量で、一般的に「濃口」では醤油麹:塩水を10:13で仕込むが、「たまり」では10:5~10と麹よりも少量、仕込みの塩水量によって10:5なら「五分仕込みたまり」、10:10なら「十水仕込みたまり」と呼ばれ、数字が少ない方がより濃厚なたまりになる。
山川醸造のたまり醤油
JAS規格では、うま味成分であるアミノ酸の量は、全窒素の量で表されれるが、濃口の特級で1.5のところ、山川醸造さんの「たまり」は、3程度あり、2倍の旨み成分が詰まっていることになり、少量使うだけで十分な旨みがあるので、脂ののった食材と相性がよく、みりんと合わせてもたまりの存在感がしっかりあるのが山川醸造さんの「たまり」の特徴。
たまりの使い方
たまり醤油は、大豆だけでつくるので、濃度も旨みも濃く、色も醤油の中では一番濃く黒に近いため、色が濃い=塩辛いと云うイメージを持たれがちだが、塩分濃度は一般の濃口醤油より低く、2年以上熟成しているので、塩味の角が取れ、旨みも強いので、延ばしても使え、煮物やつゆ、タレにも合い、魚の煮付けや照り焼きにも味がストレートに入るので美味しく仕上がる。
お刺身や豆腐のつけ醤油・かけ醤油としてはもちろん、色と照りをしっかり付けたい照り焼きなどは、濃口だと結構な量が必要だが、たまりを使うと、その6〜7割の量で、十分な色と味にコクが付き、その上、塩分濃度も低いので、塩分も控えめにできる。
色の濃さが気になる方は、いつもお使いの濃口醤油に少量足して使えば、いつものお料理にコクがプラスされる、とおっしゃる。
脂ののった食材と相性が良いので、マグロの刺身はもちろんのこと、筆者のオススメは、「すき焼き」。関西風は、割下を使わず、すき焼き鍋にザラメを敷いて、肉を焼き、少し焦げ目を付けてから、酒と醤油で香ばしく仕上げるのだが、「たまり」を使うと、さらに旨みとコクがアップする。
筆者は、ザラメや砂糖を使わず、牛脂で肉を焼いたあと、角谷文治郎商店さんのみりん、酒、「たまり」で仕上げ、溶き卵に潜らせて、やまつ辻田さんの極上大辛七味ををパラリとすれば、サイコー!セールの切り落とし肉でもランクが2段階上がり、甘いものが苦手で、すき焼きは年に1回するかどうかだったが、この食べ方を教わってからは、何度か食べる月もある。
しょうゆの塩分濃度
- 濃口醤油(こいくちしょうゆ):16~18%
- 淡口醤油(うすくちしょうゆ):18~19%
- 溜醤油(たまりしょうゆ):12~13%
- 再仕込醤油(さいしこみしょうゆ):11~13%
- 白醤油(しろしょうゆ):13~14%
親子二代の想い
業務用から家庭用へ
創業以来、ほぼ外食の業務用主体で、その内8割が名古屋を中心とした愛知県のうどん店、鰻店、寿司店さん他用にオリジナルでブレンドしてお届けする形を続けてきたが、2000年ごろから、業務用が徐々に右肩下がりになってきたので、「アイスクリームにかける醤油」や「たまごかけごはんのたれ」などの一般消費者向けの商品開発を開始された。
現在、山川醸造さんには、仕込み用の桶が100本もあり、その維持も大変だが、20年程前、木桶がなくなるかもしれないという危機感もあって、6,000リットルの樹脂のタンクを2本導入し、全て木桶と同じようにたまりと豆味噌を仕込み、2年間熟成させたが、味も香りも全く別物が出来上がってしまい、木桶でないと出せない味があることがわかり、その樹脂タンクは貯蔵用に使て、木桶仕込みを続け、煙突と呼んでいるたまりを循環、熟成させるための器具も塩ビのパイプは使わず、木製のものを使う決心をされた。
華奈子さんの想い
華奈子さんは、木桶の蔵があり、醤油は、たまりが中心の家庭で生まれ育ち、山川醸造のたまり醬油がなくなってしまうのはどうしても避けたかったが、3人姉妹で、姉も妹も家業を継ぐ気配がなく、家族のそばで働きたい気持ちもあって、意を決して戻ってこられた。
今の華奈子さんの業務は、Webサイトやネット通販サイトの運営、SNSなどを活用した情報発信、蔵のイベントの企画、運営、広報などを中心に担当されているが、山川社長によると、これまでも情報発信はしてきたが、女性の視点が入ることでさらに充実してきた、とおっしゃる。
華奈子さんは、元々、業務用中心だったので、料理人さんには、山川醸造の名前も、「たまり」の使い方を知ってもらっていたが、父の代では、先ずは、一般消費者の皆さんに「たまり」を知っていただくため、「アイスクリームにかける醤油」や「たまごかけごはんのたれ」など「たまり」を使った商品を開発、販売してきたが、華奈子さんの代では、もっと「たまり」そのものを使っていただくような取り組みをしたい、とおっしゃる。
山川社長の想い
山川社長は、近所の方から、山川さんは醤油屋さんのようだけど、どこで買えるの?と尋ねられたこともあったそうで、一般消費者向けの「たまり」を使った商品を開発、販売を始め、蔵を開放して遊びにきていただいたりして、ある程度、知名度も上がってきたので、華奈子さんには、「たまり」そのもの、さらに、もっと高品質な「たまり」を一般家庭に広めて欲しい、と期待を寄せておられる。
山川社長の「醤油を主役に」の想いは、「たまりを主役に」と云う、華奈子さんの想いに受け継がれている。
COREZOコレゾ 「長良川の伏流水と木桶仕込みでしか醸せない風味がある 『たまり』を業務用から家庭用の主役に! 販路を拡げる『たまりや』親子」である
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