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COREZOコレゾ 「創業以来百年以上に亘って『なにわの伝統野菜』にも認証された国産純粋種の『鷹の爪』を守り、極上の七味、和風香辛料をつくり続ける四代目」 賞
辻田 浩之(つじた ひろゆき) さん/やまつ辻田
プロフィール
大阪府堺市
株式会社やまつ辻田 代表取締役社長
鷹の爪・和香辛料 製造・販売
YouTube動画 COREZOコレゾチャンネル
「百年以上守り続ける国産『鷹の爪』純粋種」辻田 浩之(つじた ひろゆき)さん/やまつ辻田①
「鷹の爪・和香辛料づくりも剣道も超正攻法で」辻田 浩之(つじた ひろゆき)さん/やまつ辻田②
「極上和香辛料が創り出す絶妙な味の世界」辻田 浩之(つじた ひろゆき)さん/やまつ辻田③
「すき焼きが一段と美味しくなる魔法の粉」辻田 浩之(つじた ひろゆき)さん/やまつ辻田④
「食材と料理のうまさを引き立てる極上和香辛料」辻田 浩之(つじた ひろゆき)さん/やまつ辻田⑤
「高校教師から家業を継ぎ、実演販売で大人気に」辻田 浩之(つじた ひろゆき)さん/やまつ辻田⑥
「先代の母と二人三脚で歩んだ30年」辻田 浩之(つじた ひろゆき)さん/やまつ辻田⑦
受賞者のご紹介
「鷹の爪」は、唐辛子の一品種名⁉
辻田浩之さんは、大阪・堺にある七味、山椒他、和風香辛料を製造・販売する「やまつ辻田」の四代目。
その七味には欠かすことのできない唐辛子は、中南米原産のナス科トウガラシ属の草木になる実の総称で、世界中に数多くの品種があり、ピーマンやししとうもその仲間だそうだ。
「鷹の爪」と聞くと、粉に挽く前の乾燥した唐辛子の赤い実のことを思い浮かべ、その辛さの記憶から頭のてっぺん辺りが熱くなるのではないだろうか?それほど「鷹の爪」は、唐辛子の代名詞のようになっているが、実は、唐辛子の一品種名で、エレキテルで知られる江戸時代中期の発明家であり、本草学(漢方医学)他、多方面で活躍した平賀源内(ひらがげんない)が「蕃椒譜」(蕃椒=唐辛子)書中で、当時日本で栽培されていた72 種の唐辛子について解説していて、「鷹の爪」に関して、「甚だ小さくして、愛すべき風情・ 食するにはこれを第一とすべし」と絶賛したことから、「鷹の爪」の名称が独り歩きしたのではないか、と云われている。
「鷹の爪」とは、どのような唐辛子?
国内で流通している唐辛子の99%以上が中国産などの外国産が占めていて、粉加工用としては、国産の房なりに実をつける「三鷹」と云う品種が中国で栽培するために持ち出され、さらに多く、大きな実がつくよう改良された「天鷹」が市場を席巻している。
「堺鷹の爪」は、明治時代から大阪府堺市一帯で栽培されてきた在来種で、長さが約3センチと小ぶりで上品な姿かたちをしていて(京都の老舗の千枚漬けに使われているのがこの鷹の爪)、「天鷹」などの品種より約3倍辛く、果実のような香りもある。「やまつ辻田」さんでは、1902(明治35)年の創業以来、120年に亘って、「鷹の爪」純粋種の育種、採種を続けておられる。
膝ほどの高さの木に房なりにはならず、1つずつバラバラに上を向いて着果し、熟す時期もそれぞれ異なるため、人の手でひとつずつ手摘みするしかなく、1kgの粉をつくるのに6,000個ほど必要だが、1人が10時間摘んでも3kg分程度にしかならないそうで、昭和30年代までは盛んだった栽培は、手間がかかるため農家から敬遠され、一時は、「やまつ辻田」さん1軒のみになってしまい、絶滅の危機に晒されていた。辻田浩之さんは、あの手この手で全国の農家を説得して廻り、全量を買い取る契約を結んで安定供給を確保し、純粋種を守り育てておられる。
2021年7月、この「堺鷹の爪」は、100年以上前から府内で栽培され、苗や種子の来歴が大阪独自の品種であること等の基準を満たして、大阪府から「なにわの伝統野菜」(大阪の食文化を支えてきた伝統野菜を見直すため制定)に認証された。
「この『鷹の爪』が認証されたことで、ウチのもんではなく、大阪府のもんになってしもたんですけどね、先祖代々、絶やさず守り続けてきたことが認めてもらえたことは、正直、嬉しいし、感謝の気持ちで一杯です。」と、辻田社長。
鷹の爪・和香辛料づくりも剣道も超正攻法で
「僕ね、子供の頃から剣道やっててね、道場もしてますねんけど、とにかく超正攻法で剣道の基本中の基本の美しいメン打ちをつくるのがウチの道場で大事にしてることなんです。美しい、エエもんをちゃんとつくるというのも同じことで、一つずつ丁寧に摘み取るのはこの辺りの風物詩やからずっと守り続けていきたいです。」と辻田社長。
辻田社長の道場は、全国大会レベルの剣士を数多く輩出しておられる。
極上和香辛料が創り出す絶妙な味の世界
日本一の原料でつくった柚子こしょうとは?
その柚子こしょうを添えて食べると絶品に変身する食べ物とは?
下記動画でご確認下さい。
すき焼きが一段と美味しくなる魔法の粉
すき焼きが一段と美味しくなる魔法の粉とは?
筆者はこの食べ方を教えてもらってから、すっかりハマってしまってヤミツキ状態で、もう、やまつ辻田さんの和香辛料に依存していなかったあの頃には戻れないおっさんになってしまった…。
食材と料理のうまさを引き立てる極上和香辛料
辻田社長の目標は、世界一の粉をつくること。自慢の鷹の爪に合わせるため、日本中、世界中の最高の原料を探し廻り、こだわり抜いてつくられた七味、こだわり抜いた柚子ぽん酢…、豆腐ひとつとっても、和香辛料を加えていくことでどんどん味変し、食の楽しみが増えるのだが、ボキャブラリーが乏しく、ただ、ただ、唸るのみ…、トホホ…。
高校教師から家業を継ぎ、実演販売で大人気に
「なんぼ希少価値があって、うまいゆうても、こんなん(鷹の爪、七味、山椒他和香辛料)、主食や副食とちゃうし、お腹いっぱい食べられへんし、ただの脇役ですやん。でも、一振り10円で主菜の引き立て役になれて、その上、おいしい、ってゆうて喜んでもらえたら、こんな幸せなことはありません。そやから、もちろん鷹の爪純粋種を守り続けられるだけはもらいますけど、大儲けしたろなんてこれっぽっちもありませんねん。元々、大儲けできる商売ちゃいますし…。」と、辻田社長。
そんなん聞いたら、惚れてしまいますやん!
おそらく先代のお母様も他の地方の生産者と同じように顧客獲得や宣伝の場でもあった百貨店催事での実演販売をされていたのだろう、そのグチを聞くようになって、直ぐに高校教師を辞して継がれることになったが、その際、唯一お願いされたのが剣道場の運営だった。
先代の母と二人三脚で歩んだ30年
やまつ辻田さんのWebサイトのご挨拶ページには、武者小路実篤の「自然はものをつくる名人 人間はそれを生かす名人」という言葉が掲載されていて、全ての商品にも添えられているのだが、これはその言葉に心酔された先代のお母様が直談判に出かけられて、使用許可をいただいたそうだ。他にもなかなか使用許可をもらえないという和紙舗「榛原」の千代紙を商品に使用されていたり、商品づくりのほとんどは、先代のお母様が考え、実現し、その中身のレベルを上げるのは、エエ七味や山椒をつくりたい辻田社長の仕事で、「丁度、二人三脚でよかったな、と思います」と辻田社長。
辻田社長は、今でも回数は少ないが百貨店催事で実演販売もされているそうなので、是非とも伺いたいと思う。
既に、お嬢さんや長男さんがやまつ辻田に入社して働いておられるのは、この先心強い限りで、これからもお母様と二人三脚、「鷹の爪」純血種を守り、食べる人を幸せな気持ちにする七味他の和香辛料をつくり続けてくださるよう、願ってやまない。
COREZOコレゾ 「創業以来百年以上に亘り、『なにわの伝統野菜』にも認証された国産純粋種の『鷹の爪』を守り、極上の七味、和風香辛料をつくり続ける四代目」 である。
取材・編集余談
取材当日、「ちょっと今日は僕、ノセせられて喋り過ぎたわ、コレもソレもアレも、ぜ〜んぶ、カットしてね。」とのことだったが、実は、辻田社長は剣道7段の道場主、筆者はひよっこ初段、今回の取材に関しては、格が違いすぎて全く相手にもならずに4時間半以上に亘って一方的に話されたことを収録しただけなのだが、コレもソレもアレもアカンとのことで、編集にはめっちゃ苦労した。
「なにわの伝統野菜」の認証を受けられて以来、TV番組を始め、マスコミの取材が殺到し、取材慣れされているはずなのに、きっと新型コロナの特別給付金で購入したコンパクトカメラ1台のみだったから油断されたのか、初対面にも関わらずとってもリラックスしてお話くださったので、お人柄が分かる本音の部分はできる限り残すよう努めた。
動画取材;2021.08.
文責;平野 龍平
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