大型宿泊施設をつくったり誘致しない理由とは?
年間 120万人の人が訪れる長野県小布施町には、小規模な宿泊施設が数軒あるのみで、大規模な宿泊施設がない。
小布施町の市村良三町長から伺ったこと
最初に訪れた時から、どうしてなのか不思議に思っていたのだが、2014年12月7日(日)に 「COREZO(コレゾ)賞表彰式開催記念イベント」として、小布施北斎ホールにて開催した「小布施まちづくりフォーラム」にご出席下さった小布施町の市村良三町長に尋ねてみた。
小布施は農業を中心に栄えてきた町
「敢えて、大規模宿泊施設をつくろうとは思いませんし、誘致するつもりもありません。それは、元々、小布施は農業を中心に栄えてきた町ですから、観光を産業の中心に据えてしまうと、町としてのリアリティが失われるのではないかと考えています。」
「1980年に修景事業を始めるにあたって、当初は、行政主導で小布施がどこにでもあるような観光地化するのを阻止しようとしたのですが、私と同じく当事者であった小布施堂の市村社長と一緒に、各地のまちづくりの事例を視察に行ったり、町並み保存関係のセミナーに出掛けたり猛勉強をして、地域住民が日常生活が維持でき、楽しく暮らせてこそ、その結果として、観光客もその楽しさを体感したいと訪れて下さるということに気づき、修景事業のプランを練りました。」
住民が楽しく暮らせるまちづくりを進めた結果としての観光
「ですから、小布施のまちづくりは、先に観光ありきではないので、観光客が増えてもそれに迎合して何かを増やしたり、新しくつくったりしないで、既存のものを変えていくことを基本としています。最初から観光客の誘致を目的にするといいものはできませんし、住民が楽しく暮らせるまちづくりを進めた結果、観光があると考えています。」
「宿泊についても、小布施になくても周辺や長野市内には宿泊施設がたくさんあります。長野市内から小布施まで長野電鉄で30分ほどですから、町の魅力を高めれば、わざわざ訪れて頂けるようになるでしょうし、そういう旅や観光があってもいいはずだ、と考えました。」
他所から訪ねて来られた方々を受け入れてもてなす歴史と文化
「その昔、宿場町は別として、日本の田舎には、旅館のような宿泊施設はなくて、小布施でも遠来の客人は地元の有力者の自宅でお世話をしていました。自宅に招き、夜にまたがる交流には、情報交換等々、大きな意味がありました。現在、小布施にも桝一客殿やゲストハウスなどの小規模の宿泊施設が何軒かありますが、それらは、その延長線上にあるのです。」
「また、小布施では、毎年11月に『小布施若者会議』が開催されます。町内外、全国から100 名を超える若者(18歳〜35歳)が集まり、3日間、これからの地方や日本の未来について語り合い、新しい取り組みに向けたアイデアや方法論を考える会議なのですが、その時の宿泊には、小布施町のお寺(テラステイ)や一般家庭でのホームステイ、各町内にある「公会堂」での宿泊(マチステイ)を利用頂き、参加者同士はもちろん、小布施町民との交流を楽しんでもらっていて、大変好評です。」
「小布施町民の皆さんには、そういう他所から訪ねて来られた方々を受け入れてもてなす歴史と文化が根付いています。」
参考
https://corezoprize.com/tsugio-ichimura
https://corezoprize.com/corezoprize-ceremony-2014
まとめ
地場産業である第1次産業、第2次産業を大切にして、安易に観光地化しない姿勢と他所から来た人たちを受け入れ、もてなそうという歴史と文化が小布施町の魅力をさらに高めているように思う。
関連記事
https://corezoprize.com/obuse-1-landscaping
https://corezoprize.com/regional-revitalization
COREZO (コレゾ)賞 事務局
初稿;2015.05.14.
編集更新;2015.05.14.
文責;平野龍平
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