杉山 開知(すぎやま かいち)さん/太陽系時空間地図・地球歴

COREZOコレゾ「時間とは命の輝き、宇宙的視野で今を生きる自分を知る、太陽系時空間地図、地球暦」賞

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杉山 開知(すぎやま かいち)さん

プロフィール

静岡県静岡市出身、在住

EMERIS / HELIOSTERA 地球暦研究家

地球歴

ジャンル

自然科学

地球暦

受賞者のご紹介

近江神宮の漏刻祭(時の大祭)

2010年にご縁があって、大津市にある近江神宮の漏刻祭(時の大祭)に参加させて頂いた。

近江神宮の御祭神である天智天皇は、千三百年の昔、大化改新を断行し、古代国家の基礎を確立された。近江大津宮に遷都された天智天皇は、漏刻(ろうこく−水時計)を設置して、時刻制度を開始されたそうで、その偉業を讃える大祭だった。

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天智天皇にも、暦にも何の興味も関心もなかったのだが、神事を間近で見るのは初めてだったので、出掛けてみた。 盛大な神事が終わり、直会(なおらい)の隣の席が杉山開知さんだった。外見は今風だったが、礼儀正しい若者で、直会の後、暦(こよみ)についての講演を奉納するという。そのさわりを伺って興味を持ち、約2時間の講演も拝聴した。

開知さんが研究されている「地球暦」のお話は、時間や暦を意識せずに日々を過ごしている現代人にとって非常に示唆に富んだ内容だった。

その後、改めて、静岡に開知さんを訪ね、ご自宅隣の研究室とご自宅から程近い、石部海岸のゲストハウスでさらに詳しい話を伺った。

「暦(こよみ)」に興味を持つきっかけ

開知さんは、東京で専門学校に通ったり、就職して、働いたりしていた頃には、「暦(こよみ)」には全く興味もなかったという。

家を継ぐために静岡に戻って来て、自分がやりたいことを探す中で、経験も知識のない農業を始めて、荒れた山を1人で開墾していると、ある時、畑で木を切っているだけなのに、「今、どれだけ時間が経っただろう?」とか、「この木を切るのに何分かかるだろう?」と考えている自分がいて、山の中に1人で、誰からも指示をされていない自由な時間なのに、時間に追われているというか、時間を気にしているこの気持ちは一体何だろう、と不思議な感覚に襲われたそうだ。

時間の感覚は無意識のうちに身体に染み付いていて、時間を気にして生きて来たけれど、この山の中で時間を気にしているのは自分だけで、動物も植物も他の生物は、そんなの気にして生きていないはずだ。自然の中で、人間だけが時間や時計を気にして生きていることにハッと気付き、人間だけが時間や時計を使っていて、どうも人間だけが時間からはみ出しているような気がして来た。自分も含めて、時間や暦の成り立ちも知らないのに、誰もがそれを信じて生きていて、社会が動いているのはとても不思議に思うようになったそうだ。

そこで、まず、今使っている西暦について調べ始め、その後、イスラム暦やユダヤ暦、アジアの各国で使われている暦にも興味を持って調べる中で、その国の文化をつくっている土台が暦のような気がしてきて、国や文化を越えて地球上のみんなが共通に使える暦ってないのかな、と思い始めた。

電車でとなりに座った方がイスラム暦のあるページを熱心にご覧なっている様子を見た時に、イスラム教徒の方々がイスラム暦を使っていて、太陽の日周運動に則って礼拝をしておられるというのを実感したそうだ。

気になって尋ねたところ、日の出、日の入りの時間は毎日1~2分づつずれていて、それに合わせてお祈りの時間もずれ、その時はちょうどラマダン月で、生活で必要なことは日の入り後から日の出前までしかできないので、日々の生活をどう組み立てるかずっと考えておられるような様子だったそうだ。

そこまで太陽の動きと同調して生活していて、しかも1人でそれ程の意識だから、これが何千、何万の人々が太陽と地球と月の関係に自分の生活や、身体のバイオリズム、宗教儀式を合わせている感覚、地球と同調して生きている感覚は、何年何月何日という西暦を使って生活している自分たちと全く違う感覚だと強く認識したという。

「暦(こよみ)」とは?

「私達が使っている時計ですが、地球は確かに1日に今の時間の単位で、約24時間で1回廻ります。それを細分化した、時、分、秒というものは人間が便宜上、人工的に決めた区切りの単位ですよね?今日、一日、今現在、ということにとらわれてしまうと、時間を使うことで、時間に使われていることになり、狭い視野でしか世の中を見ることができなくなるのでは、と思いました。それが拡大して、日、月、年となって暦となる訳ですが、今の西暦にしても人工的につくったものであり、大きな宇宙の働き、動きとは別のものになっています。」

「一般の方々に一言で暦を説明すると、抽象的になるかもしれませんが、暦の本質は動きをはかることだと思います。天体の動きというのは、つまり、私達は秒速400mで、左回りに自転し、秒速30kmで太陽の周りを左回りに公転している地球というものすごい速さで動いている乗り物に乗っていて見える景色なのです。でも、新幹線に乗っていると、速さを感じないように、地球というとても大きな乗り物に乗っている私達は、その速さを感じることができませんが、その上で生活をしていて、あるがままの宇宙や自然の動きの中で、日の出から日の入りまでの時間や1日の長さを感じたり、無意識の内に時間の長さをはかっている感覚があると思います。」

「その延長線上が暦ではないでしょうか?暦の原点は、1本の棒のようなものから始まったと思います。日が射して落とす影が振り子のように動いて、ある周期で同じ位置に戻って、それが繰り返される規則性を見つけて、暦に発展したのだと思うのです。」と開知さん。

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天智天皇は中国から漏刻という水時計を導入して、日本独自の時刻を人々に知らしめ、日本で時という概念が始まり、天智天皇をお祭りしている近江神宮で漏刻祭(時の大祭)が行なわれ、日本暦学会の事務局も近江神宮にある。

毎年、日本では2億種類のカレンダーや暦がつくられていて、それらをつくっている民間企業と神社の関係者200人ぐらいで日本暦学会の正会員が構成されていて、主に、暦の擦り合わせをしているそうだ。

そこで、国は暦に関与していないのかという疑問が湧くが、今では何もしていないそうだ。明治維新に新暦が導入されるまでは、暦師と呼ばれる官吏が全国で50人ぐらいいたそうだが、グレゴリオ暦というマスター暦を導入したので、誰がつくっても良いし、誰かが管理する必要も無くなり、全て廃業した時点で、暦をつくる官吏は結果的にいなくなった。でも、このグレゴリオ暦は、理論上、約3,200年間ずれませんが、天体の動きや自然の摂理等は無視して、人間が便宜上作った暦なので、この暦を採用した途端、月の満ち欠けのひと月と人間が人工的に作ったひと月の定義が完全に分離して、私達の意識から暦が消えてなくなった、とおっしゃる。

確かに、都会で生活していると月の満ち欠けを気にするのは、お月見の時ぐらいである。しかし、農業や漁業や自然を相手に生活をしておられる方々は、今でも旧暦のカレンダーを使っておられると伺い、その後、お会いした農業を営んでおられる方々に尋ねるとその通りで、カレンダーは両方掛けておられるところが多かった。

「地球暦」とは?

開知さんが研究しておられる地球暦は、暦としての要素もあるが、見方としては地図と同じで、今までは自分中心、地球中心に観ていたものを太陽中心に置き換えて、太陽を中心に廻っている惑星の位置を地球の自転周期、公転周期で細分化して、分度器で測り、角度で位置を表すものだそうだ。太陽系が生まれてこれまでも、これからも同じ惑星配置になることはなく、今、この瞬間も惑星は動いていて、この瞬間の惑星配置はこの瞬間だけのものだから、その太陽系の惑星の配置で今の西暦の年月日を表すこともできるという。

地球の自転周期や公転周期も一定ではないのではという疑問に対しては、実際の星の動きを測っているのでずれることもないそうだ。

私達が今使っている時計は、世界各地に原子時計が約200個置かれていて、原子時が国際時として何時何分何秒と厳密に管理されているのだが、有機体である地球の自転は完全に一定ではなく、また、月がほんの僅かずつ地球から遠ざかっているので、1日の長さも非常にゆっくりと延びていて、地球が廻っていることを基にした力学時と原子時はイコールではなく、全く別の時間だという。現在は人工衛星で正確に地球の自転を計測していて、15分間隔で力学時と原子時が合っているか絶えず補正して、2010年はうるう秒を挿入するのではなく、我々が気づかない内に6秒も補正されているらしい。

んー、奥が深いぞ、時間と暦。

今しかない、今を生きるしかない

地球歴や暦について、皆さんにどのようなことを伝えたいか?という質問に対しては、

「今の西暦では何年何月何日ということしかわかりませんが、地球暦では、大きな太陽系の中の時間で、今現在、自分はどの位置にいるのかがわかります。どんな時を生きているのかがわかれば、自分自身の人生も客観視できるようになります。」

「私達は毎日同じような感覚で過ごしているのですが、天体も宇宙も刻一刻と変わっているのに、日々の生活に追われて、地球という球体の乗り物に乗っていることさえ忘れてしまっています。地球という球に乗って生きていることを自覚できないと、こんなことしなければよかったと後悔したり、過去にとらわれてうまく今を生きることができなかったり、他人や地球環境を無視して自分勝手に生きてしまうことが往々にしてあると思います。」

「地球暦というかマクロの視点で見ると、何だ、オレがお前がと言っても、地球という球に乗ってくるくる廻っているだけなんだ。太陽の周りを80回も廻ればその球からいなくなって、そういうことが綿々と続いてきて今があり、その今現在、自分が太陽系の惑星配置のこういう位置にいることがわかれば、今しかない、今を生きるしかない、という最も大切なことにきっと気付いて頂けるはずです。」と開知さん。

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市井の研究家にはなかなかスポットが当たらないのだが、同氏の講演は、考案された地球暦の図や図表を交えて、地球暦だけでなく、暦や時間について素人にもわかり易く、楽しく話が進んで行く。アートのように美しく、エンタテインメントとしても大変興味深く、よく考えられている。

8月は英語でAugustだが、ローマ皇帝Augustusが自分の名前を付けさせたのが由来とか。その上、当時は30日だったのを自分の名前を冠した月が小の月では権威がないと、大の月に変えさせたという話を聞いたことがある。何となく、暦は時の権力者の力の象徴のような印象を持っていたが、そんな権力とは全く関係のない、人間の力が及ばない太陽系の惑星の位置で、暦が動いていると思うと気分がいいではないか?

会員登録した惑星通信では、自分の誕生日が来ると、地球歴で、「水星 82°33 金星 244°32 地球 248°59火星 202°40 木星 54°39 土星 207°35天王星 5°13 海王星 331°13 冥王星 278°07」のようにメールで知らせてくれる。どんな配置になっているのだろうと思いをはせるだけで、自分と宇宙がつながったような不思議な感覚で、宇宙の壮大な営みの中で生まれて、生かされているんだと思うと、何となく嬉しくなるのである(2015年2月現在、休止中)。

専門家やマニアの方々だけでなく、1人でも多くの皆さんに、自分自身を知る為の時間や暦の大切さを知って頂きたい。

COREZOコレゾ「時間とは命の輝き、宇宙的視野で今を生きる自分を知る、太陽系時空間地図、地球歴」である。

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COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2012.11.02.

最終取材;2012.05.

編集更新;2015.02.25.

文責;平野龍平

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