種タネの話3、F1種のキュウリが工業製品のように姿形、大きさが揃う理由とは?

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cucumber

固定種・在来種と採種しても栽培できないF1種との違い

近所のスーパーで売っているキュウリ、見事に姿形、大きさが揃っていて、曲がっているのなんてほとんど見かけない。

今回は、固定種・在来種とF1種の違いについてもう少し詳しく…。

自然農園「なな色の空」代表、村上真平さん

村上 真平 (むらかみ しんぺい)さん
COREZO(コレゾ)「日本の財、震災を乗り越え、自然農園を再開し、未来の子供たちに、自然を収奪せず、人を搾取しない生き方を探求する、不撓不...

筆者も農業家の村上真平さんにお話を伺うまで、今、普通にスーパーで売っていて食べている野菜のほとんどがF1種で、採種しても次のシーズンに栽培できない品種であるのを知らなかった。

今や農家の方々も自家採種しないで毎シーズン種苗会社や農協から種子を買うのが当たり前になっているそうだから、私たちが知らないのも仕方のない話かもしれないが、消費者として自分たちが食べているのはどういう野菜なのか理解しておくべきではないだろうか?

固定種・在来種とは?

固定種・在来種とは、大昔から受け継がれてきた「単一の遺伝子が親から子へ受け継がれる種」のことで、農家は、代々、できの良い野菜のタネを採種し、翌年にまた蒔いて収穫することを繰り返してきた。ところが、今では、ごく一部の京野菜などの伝統野菜を除いて、一般には固定種・在来種の野菜を育てる農家はほとんどなくなっているそうだ。

「在来種」種採農家の第一人者、岩崎 政利(いわさき まさとし)さん

COREZO(コレゾ)「自然の中で選抜を繰り返し、その土地の風土にあった種を育て、命を繋ぐ、農家本来の姿を復活した種採農業家」賞

岩崎 政利(いわさき まさとし)さん
COREZO(コレゾ)「自然の中で選抜を繰り返し、その土地の風土にあった種を育て、命を繋ぐ、農家本来の姿を復活した種採農業家」賞 岩崎...

在来種

農家が自家採種を続けてきたタネで、自家受粉しない他家受粉植物では他の近種と交雑して変化している場合も多いとのこと。

固定種

「固定種」は、「在来種」と区別するための種苗業界の用語で、タネ屋さんが、種取り用の種として交雑しないように周囲に近種が栽培されていない人里離れた場所で栽培するなどして、慎重に育て、遺伝子を固定化した「自慢のタネ」なのだそうだ。

固定種・在来種の長所と短所

固定種の長所としては、味が良い(伝統野菜など)、自家採種ができる、多様性・環境適応力がある、長期収穫ができる(自家菜園向き)、さまざまな病気に耐病性を持つ個体がある、オリジナルの野菜が作れる等があるが、その反面、姿形、大きさ、収穫時期が揃わない。

F1種とは?

「F1種」とは、一代雑種「first filial generation」(種苗業界用語では一代交配種)の略で、文字通り、一代限りの雑種(英語ではハイブリッド/hybrid)のこと。

雑種強勢(ヘテロシス/heterosis)

遺伝的に遠縁の異なる形質をもつ系統をかけあわせて作られた雑種は、一代目に限り、もとの両親より生育が早くなったり、大柄になったり、収量が多くなったりすることがあり、この「雑種強勢(ヘテロシス/heterosis)」と呼ばれる性質を最大限発現するように両親を選んで交配する品種改良技術によってつくられた品種。

雑種強勢だけでなく、交配した第一世代には、両親の対立する形質のうち、優性の方だけが現れる(優性遺伝、形質の優劣ではない)というメンデルの遺伝の法則も利用しているのだが、簡単にいうと、遺伝的に遠縁の多収性の種、生育の早い種、味がいい種等を選び出し、人工的にかけあわせて、両親のいいとこ取りだけした品種なのである。

F1種の特徴

こうして、現代のF1種の野菜は、従来の固定種や在来種と比べて、生育が早く、サイズが大きく、姿形、大きさが揃い、収量も増えた。さらに、生育も早くなり、収穫時期も揃うので、同時期に種を蒔いたり、苗を植えれば、一斉に収穫することができるようになり、植える時期をずらせば、1週間毎にでも計画的に収穫することができるようにもなった。

農家では、自家採種するために親株をずっと畑にとっておくスペースが不要になり、予め収穫時期がわかり一斉に収穫できるので、労働の効率化が可能になり、さらに、短期間で違う品種を栽培できるようになって、単位面積当たりの生産性が飛躍的に向上した。

F1種の隆盛と固定種、在来種の衰退

こうして、F1種は、サイズ等の規格が揃い、長距離輸送に耐えられるよう表面が固く、日持ちのする品種も開発され、生産農家と流通にメリットがあり、大量生産、大量消費という時代のニーズにも合致して、1960年代頃から急速に普及した。

現在、スーパーで売られたり、外食、中食産業で使われている野菜はもちろん、種苗店や園芸店、ホームセンターなどで販売されている種等、流通しているほとんどが「F1種」だそうだ。

この固定種や在来種からF1種への変化は、農業の生産性と効率の向上という点で画期的な出来事だったという。

F1種の長所と短所

F1種の長所として、そろいが良い(出荷に有利)、毎年種が売れる(メーカー利益)、生育が早く、収穫後の日持ちが良い(雑種強勢が働いた場合)、特定の病害に耐病性を付け易い、特定の形質を導入し易い、作柄や味など流行に合わせたバリエーションを作り易い等がある。

また、F1は全て同じように成長するので、同時に蒔いたタネは一斉に収穫時期を迎え、全部引き抜き、水洗いし、束ねて出荷すれば、一度の手間でお金になる。この方が、農家にとって効率的なわけで、農家はそういう種を欲しがり、種屋は一所懸命そういう種を作り、日本中がそういう種で栽培するようになって、在来種や固定種が世の中から忘れ去られていったという。

しかし、F1種の親の優れた特性(優性な形質)が子に出るのは一代限りで、二代目は遺伝子が揃わなくなる(劣性形質が現れる)ため、種を採っても、親と同じようには育たず、形や性質が不揃いになってしまうので、毎年、農家は、その種子を購入することになるが、種苗会社には、同じ一代雑種を作り、継続して販売できるという大きなメリットが生まれる。

この一代限りのF1種は、世代を超えて生命の受け渡しをすることができないので、自然界では循環しない自然の摂理に反した品種と云う人もいるようだ。

市場からのニーズ

また、F1種が急速に普及したのは、収穫物である野菜が工業製品のように均質であらねばならないという市場からの要求も大きかったという。

F1以前のダイコンは、同じ品種でも大きさも重さもまちまちだったため、野菜をいちいち秤にかけて、1貫目いくらとかで売っていた。それでは大量流通には向かないが、F1野菜は、メンデルの第1法則によって、異品種間の雑種の一代目は、両親の優性形質だけが現れるため、見た目が均一になる。箱に入れたダイコンの太さが8cm、長さが38cmというように、どれも規格通り揃うので、一本100円均一などで売りやすくなった。

GMO遺伝子組み換え作物とは?

遺伝子組み換えされたタネ(Genetically Modified Seed)。別稿で改めて…。

まとめ

筆者も農業家の村上真平さんにお話を伺うまで、今、普通にスーパーで売っていて食べている野菜のほとんどがF1種で、採種しても次のシーズンに栽培できない品種であるのを知らなかった。

今や農家の方々も自家採種しないで毎シーズン種苗会社や農協から種子を買うのが当たり前になっているそうだから、私たちが知らないのも仕方のない話かもしれないが、消費者として自分たちが食べているのはどういう野菜なのか理解しておくべきだと思う。

家庭で調理される野菜は3割弱

現在、流通している野菜で、家庭で調理されているのは3割を切ったそうで、今や種苗会社は、個々の消費者ではなく、外食産業や食品加工会社、大手流通の方に向いているのは、容易に推察できるだろう。つまり、外食産業や食品加工会社では、味付け、加工のしやすい、均一、均質で、味の薄い野菜を求めていて、不揃いで、味にも個性がある在来種や固定種にはニーズが少ないということだ。

栽培作物の遺伝的多様性のうち、75%がすでに失われ、毎年さらに2%ずつ失われている現実

在来種や固定種は、自然のなかで交雑を繰り返しながら生まれ、それが違う土地に渡っていって栽培されると、また交雑し、気候風土にも適応して、多様多様な品種が生まれてきた。そうして、何年もかけて、種をつなぎながら、遺伝子を固定し、品種としての特性が親から子、子から孫へと代々保たれているので、世代を超えて種として存続していくことができ、これこそが、長い年月をかけて環境に適応しながら生き延びてきた証でもあるという。

農家が毎年、種苗会社からF1種のタネを買って、栽培するようになると、その地域固有に存在していた伝統的な品種は、栽培も採種もされなくなって、次々と消滅しているそうだ。例え、冷凍保存していても、年々、発芽率は低下するそうで、栽培作物の遺伝的多様性のうち、75%がすでに失われ、毎年さらに2%ずつ失われているという。また、多様性が失われると、遺伝的均一性によって、害虫・病気・気候変動への耐性が弱くなっていくそうだ。

近代農業に必須の三点セットとは?

F1種の栽培は多肥が前提で、耐肥性を持つように作られていて、化学肥料を多く投入すれば作物はよく成長するが、他方、雑草もよく繁茂し、その分、除草剤の使用量も増え、短期的に収量が増えても、長期的には、土壌の劣化や害虫の発生などで栽培が困難になり、結局は収量が減ることもあるそうだ。

近代農業に必須の三点セットは、F1種、化学肥料、農薬で、これらを農家は毎年購入しなければならず、それだけコストがかかる。大きな成果を期待して近代的農業を採り入れた地域、国々でも、今では、病虫害、土壌汚染、多額の負債、貧富の格差拡大といった問題を抱えるようになっているという。この辺は、村上真平さんから伺った話にもつながる。

在来種や固定種の野菜を選択する自由や権利を失なってしまった現実

私たちは、経済と効率が最優先される現代において、知らないうちに在来種や固定種の野菜を選択する自由や権利もほぼ失ってしまっているということを認識しておいたほうがいいだろう。

農産物も工業製品のように扱われる時代になったということだ。

TPP云々以前に米国の「食品安全近代化法」についても知っておいた方がいいのでは?

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COREZO (コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.05.22.

編集更新;2015.05.22.

文責;平野龍平

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