長野県小布施町のまちづくり1、小布施町並み修景事業とは?

長野県小布施町のまちづくり1、修景事業とは?

長野県北部千曲川東岸に位置する小布施町は、「栗と北斎と花のまち」として知られ、何度か訪れるうちに、つくりものでない町並みには情緒があり、そこに暮らす皆さんはとても魅力的な人が多いことに気づいた。

小布施のCOREZO(コレゾ)賞受賞者の皆さん

https://corezoprize.com/tsugio-ichimura

https://corezoprize.com/kenta-kaneishi

https://corezoprize.com/tetsuo-nishiyama

https://corezoprize.com/hideki-kobayashi

https://corezoprize.com/eiju-hayashi

https://corezoprize.com/tsurukichi-koyama

長野県小布施町の基礎知識

小布施町は、長野県北部の長野盆地に位置し、周囲を千曲川など3つの川と雁田山に囲まれた自然の豊かな総面積 19.07平方kmの平坦な農村地帯。東部は高山村に、西部は千曲川を隔てて長野市に、南部を松川を隔てて須坂市に、北部は篠井川を隔てて中野市に隣接している。

町役場を中心に半径2kmの円に、ほとんどの集落が入る小さな町で、人口は約12,000人。果樹栽培が盛んな農村として、美しい自然環境に恵まれ、人間味豊かな地域社会を形成している。

特徴ある風土を活かし、先覚の残した文化遺産を継承、発展させ「北斎と栗の町」「歴史と文化の町」として全国から注目され、近年は「花の町」小布施のコンセプトを加え、年間 120万人の人が訪れる町となった。

参考

http://www.town.obuse.nagano.jp/soshiki/2/machigaiyou.html

「小布施は北信濃に位置する人口1万2000人の町ですが、年間120万人もの観光客が訪れます。人口の100倍の人々がこの小さな町に訪れるのは、一つには、『小布施町町並み修景事業』以来の考え方、精神がベースにあって、小布施の町並みが、土蔵や土壁、茅葺き民家など、住民の生活感があるのに、昔ながらの風情を残す豊かな空間だからではないかと思います。」

小布施町並み修景(しゅうけい)事業とは?

小布施町並み修景事業は、そこで暮らす人の視点に立ち、小布施堂界隈の町並みを美しく再構築した、1980~87(昭和55~62)年の事業のこと。 行政、個人、法人という立場を違える地権者が、対等な立場で話し合いを重ね、土地の交換あるいは賃貸により、双方に利のある配置換えを果した。 国からの補助金などに頼ることなく、住む人主体で新旧建築物の調和する美しい町並みをつくる新しいやり方は「小布施方式」と呼ばれ、現在に至るまで全国から注目されている。

修景とは、古い町並みを単に保存するのではなく、元の景観に通じる要素を残しつつ、古い建物は可能な限り再利用し、新築の建物は、建築の規模、様式、形、色等を既存の建物群と調和するものにして、住民の生活に溶け込んだまとまりのある新たな景観をつくることだそうだ。

「当事者全ての希望をかなえること」を計画の大前提として、コンセプトを統一するために、コーディネーターを一貫して一人の建築家に依頼し、3事業者、2個人、1行政(小布施町)の計6者が議論を重ねた結果、現代の生活の利便性や居住性等の機能を犠牲にせず、個性と魅力が溢れる空間を創出した。

参考

http://www.obusedo.com/history/shukei.html

修景事業の当事者だった小布施堂社長の市村さんに伺ったこと

https://corezoprize.com/tsugio-ichimura

よくある街並み保存とは一線を画す修景事業

「修景というのは、既存のものを変えて、住民が楽しく快適に住むことのできる環境をつくっていくことで、地域住民が楽しい日常生活が維持できてこそ、その結果として、観光客もその楽しさを体感したいと訪れて下さるのです。だから、町並み保存とは一線を画しています。」

混在性がないと町はおもしろくない

「長い間に育まれた歴史、文化、精神等が背景にある住民の生活があっての小布施の風景なのです。我々は、酒や菓子を生産して、販売していますが、あと、飲んだり、食べたり、働く、学ぶ、遊ぶ、…、日常生活の全てのシーン、そういう機能の複合性がおもしろさなんです。今は、都市計画の世界で、『混在性』という便利な言葉ができましたが、当時は、説明するのに苦労しました。」

「そのためには、車を否定して、車のない時代に戻すのではなくて、車社会を取り込んだ形、テレビのアンテナや現代生活も否定しない形で景観整備をやっていこうということです。同じ長野県でも妻籠なんかは正反対で、テレビのアンテナなんかはとんでもない、洗濯物も見えちゃいけない、江戸時代にタイムスリップした町だから、コーヒーもイメージを損なうと…。町並み全体が古いところはそれでもいいかもしれませんが、小布施はむしろ、生活を窮屈にするのはもっての外、近代的な工場も町の風景に積極的に取り入れ、しかし、建物は全体的に調和のとれたものにしていこうという方向性です。」

町並みが古くても生活感がなければ、テーマパークと変わらない

「ヨーロッパの古い町並みを売り物にしている観光地によくあるでしょ?近郊の別のところで、近代的な住居に住んで、観光客のためにだけ、観光客より早くその観光地に通ってくるなんていうのは、何の生活感もリアリティもなく、テーマパークと何ら変わりありません。」

「小布施もちょっと有名になると、有識者と称する人たちがやって来て、小布施もローテンブルクを目指して欲しいとか、訳のわからんことを言うんですよ。何もわかってないなこの人たちは、って思いましたよ。それから、10年以上後になって、横浜のみなとみらい21に関わる人たちなんかが見学に来るようになって、これでよし、ようやく、小布施はテーマパークではないというのが伝わり始めた、と思いましたね。」

混在性が最近の新たな開発のキーワード

「実は、先程言った混在性が、最近の新たな開発のキーワードにもなっています。六本木ヒルズしかり、六本木ミッドタウンしかり、丸の内の再開発も全てそうで、今や、単一の機能ではもうダメなんですね。丸の内でも、土日人が歩いていないところでは、仕事だってみんなやりたくないんです。土日は土日の賑わいがあり、平日は平日の賑わいがなければ、町はおもしろくないっていうことを、私たちが、30年ちょっと前から云い始めて、ようやく、小布施はそうだなって、再認識されるようになりました。」

「極論すれば、小布施は時代を先取りしていて、私たちが小布施に住んでいること自体もおもしろさの一つなんですよね。」

まとめ

今でもイベントやハコモノ、施設をつくって観光客誘致をしようという地域が多いと思うが、今から35年以上も前に、市村社長と市村町長は、お二人とも30歳そこそこで、町の歴史、文化を大切にした上で、地場産業と住民の日常生活を維持する『小布施町町並み修景事業』のコンセプトを練り上げ、実現された発想力と実行力には敬服する他はない。

そのコンセプトや考え方は、今も脈々と若い世代に受け継がれているのだが、それこそが、小布施の強みであり、大きな魅力のひとつだと思う。

関連記事

https://corezoprize.com/regional-revitalization

 

COREZO (コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.05.13.

編集更新;2015.05.13.

文責;平野龍平

コメント