富田 進(とみた すすむ)さん/龍神村活性化に取り組むみらい龍神代表

COREZOコレゾ「教職で赴任した龍神村で家庭を持ち、定年退職後は、地元の里芋を使った焼酎づくり、田んぼアート、スポーツ振興などで、地域活性化に取り組む元校長」賞

富田 進(とみた すすむ)さん

プロフィール

和歌山県田辺市龍神村

みらい龍神 代表

動画 COREZOコレゾチャンネル

富田 進(とみた すすむ)さん/龍神村活性化に取り組むみらい龍神代表(その1)「沖縄への修学旅行を実現した伝説の校長」

富田 進(とみた すすむ)さん/龍神村活性化に取り組むみらい龍神代表(その2)「頼まれたら断れない、さといも焼酎」

富田 進(とみた すすむ)さん/龍神村活性化に取り組むみらい龍神代表(その3)「地域おこしのさといも焼酎で顛末書⁉」

富田 進(とみた すすむ)さん/龍神村活性化に取り組むみらい龍神代表(その4)「田んぼアートで地域おこし」

受賞者のご紹介

龍神村で教員生活

富田 進(とみた すすむ)さんは、和歌山県みなべ町のご出身で、高校卒業後は地元税務署への就職を希望しておられたそうだが、恩師の勧めで、大学に進学し、教員になられた。

最初の赴任先が山間部にある和歌山県龍神村で、毎日、夜になると寂しくて仕方がなく、先輩の教師に誘われて、山を下り、田辺市に行く途中て、街の灯りが見えた時には、涙が出たそうだ。

そんな富田先生も龍神村ご出身の奥様とご結婚されて、家庭を持ち、定年退職されるまで、龍神村の小中学校で勤め上げられたそうだ。

富田先生が校長になられた頃には、ほとんどが授業のある平日は龍神、週末は村外の自宅に戻る教員になり、村の行事に教員も協力しないと、学校の行事に協力してもらえない、と率先して村の行事に協力して来られた。

みらい龍神

教員を辞められてからも、その姿勢は変わらず、これからの地域活性化に取り組む任意団体「みらい龍神」を立ち上げるので、代表になって欲しいと頼まれ、引き受けることになった。

まず、会員が当時のフイルムカメラを持って、オススメできる名所、スポットの写真を撮って、持ち寄り、龍神の魅力を発信しようという取り組みを開始した。

里芋焼酎づくり

 

その内に、埼玉県の商工会議所青年部が開発した里芋の焼酎がヒットしているという情報を聞きつけた会員から、「里芋が採れる龍神もつくってみたらどうだろう。」という話が出た。

龍神村の気候は、気温の寒暖の差が大きいため里芋に甘みがあって粘りが強いのが特徴だが、現状、自家消費用がほとんどなので、里芋の栽培量は少量であり、その限られた資源を有効に活用するため、焼酎には、子いもを収穫した後、捨てられてしまう親イモを利用すれば良いのではないか、と云うことになり、申請したら、補助金が付いてしまった。

ところが、年明けに交付されて、3月末までに完了しなければならない補助金だったために、すでにその年の里芋の収穫時期は終わっており、周辺の生産地へ走り回って、掻き集め、また、里芋には粘りがあるため、フードカッターが使えず、生産を請け負ってくれる焼酎メーカーがなく、ようやく見つかったのが長野県のメーカーだった。

補助金事業の旅費予算はほとんど使い切っていたため、富田先生は教え子から4tトラックを借りてきて、夜通し運転をして、原料を届けた。

 

2010年、仕込んだ焼酎が出来上がり、プレミアム「てち(35°)」3,675円(税込)、「ほいも(25°)」2,625円(税込)で販売を開始したところ、多くのマスコミにも取り上げられ、地元行政を中心にご祝儀購入でほぼ完売したのだが、売上金の回収が確実にできておらず、売掛未収金が多発して、「みらい龍神」は、任意団体のため、富田先生が個人借入して、未収を埋める羽目になってしまったと云う。

その内に、マスコミに取り上げられたのが、災いしたのか、国税がやってきて、呼び出しを喰らい、始末書を書かされ、帳簿をつくり、所定の酒税納付をした。

「そんなん、販売を始める前に、ちゃんと税務署に行って尋ねたし、税理士に相談もして、これでエエって、云われたんですよ。まぁ、素人が要らんことしたらアカンちゅーこっちゃ。」

じじばば

翌年度からは、ご祝儀購入が無くなり、価格が高いという声も多く、在庫を抱えたので、「じじばば(20°)」720ml、1,575円を新しく開発、販売を開始した。ラベルには親しみを持ってもらえるよう多くの生産者の顔写真を使い、「龍神村のじじ、ばばが無農薬で愛情たっぷりに育てて、収穫したら一つ一つ手作業で皮をむいてまっせ~」という作業工程をそのまま商品名にした。

「実際、価格の安い『じじばば』が一番売れてるんやけど、儲けは、ほとんどあれへん。里芋を買い取るって云うたら、お年寄りたちがせっせとつくって、持って来はるのやから、私らも頑張って売らなあかんねん。」

田んぼアート

 

また、耕作放棄地を地域活性化に生かそうと、「みらい龍神」が中心となり、地元の小中学生も参加して、水田に色の違う稲を植えて絵を描く「田んぼアート」の事業も実施しておられる。

「この地域は、どんどん人口が流出してるんで、どんなことをしてでも交流人口を増やさんとあかん。」

富田先生は、校長時代、毎朝、1日も欠かさず、通学路まで出て、子供たちを出迎え、山村の子供たちに沖縄の海を見せてやろうと、平和教育の一環として修学旅行で沖縄に連れて行った。退職後は、日帰り温泉の龍神温泉元湯や公衆トイレの清掃も頼まれたら、引き受けて続けておられる。

「いろんなところから来はるお客さんとも喋れるし、僅かやけど、アルバイト料ももらえるから、楽しいで。」

筆者もこんな先生に教わっていたら、もう少しマトモに育ったかも…。

 

COREZOコレゾ「教職で赴任した龍神村で家庭を持ち、定年退職後は、地元の里芋を使った焼酎づくり、田んぼアート、スポーツ振興などで、地域活性化に取り組む元校長」である。

 

最終取材;2018.03.

初稿;2018.08.

最終更新;2018.08.

文責;平野龍平

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