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COREZOコレゾ 「人生、全て逆算で戦略を立て、ボランティアスタッフも味方につけて、言語の壁を越え、昔暮らし体験でより深く日本を知ってもらい、国際親善・防災に取り組む、外国人観光客に大人気の策士古民家宿亭主」 賞
四宮 康貴(しのみや やすき)さん/昔暮らし体験宿 カジヤ祖谷浪漫亭 初代亭主
プロフィール
徳島県三好市東祖谷
昔暮らし体験宿 カジヤ祖谷浪漫亭 初代亭主
昔暮らし体験宿 カジヤ祖谷浪漫亭
10年以上前、筆者が徳島県三好市を業務で訪れ、「よびごと案内人」の取材をした際、当時、そのメンバーの一人だった四宮 康貴(しのみや やすき)さんと知り合い、その後もこの地を訪れると、偶然なのか必然なのか何度も出会っていて、いつの間にかFacebook友だちにもなっていた。
四宮さんは、奥祖谷と呼ばれる東祖谷に古民家を借りておられて、香川と2拠点居住をし、民泊を始められたのは知っていたのだが、ここ1〜2年、外国人観光客に人気の「昔暮らし体験宿 カジヤ祖谷浪漫亭 亭主」としてTVでよく見かけるようになり、その人気の秘密に興味を持っていた。
偶々、2024年度は、第15回COREZO賞表彰式を同じ徳島県三好市の大歩危で開催していただくことになり、数年ぶりに連絡をしたところ、連日満室なのにも関わらず、キャンセルが出たとのことで快く取材対応してくださった。
昔暮らし体験宿とは?
「昔暮らし体験宿」と云うことで、薪割りや竈門と羽釜を使ったご飯炊き、五右衛門風呂焚きもお客さんが望めば体験できる宿。通常のホテルでの滞在では、スマホを見るぐらいしかすることがなく、外国人観光客の99%は、見たこともやったこともない体験ができる、と自ら進んで楽しんでおられるとのこと。
この地域が特に欧米人に注目されるようになったのは、祖谷に「ちいおり」という古民家を購入して居住したアレックス・カーさんが著した「美しき日本の残像」と云う本や東祖谷名頃の綾野月美さんがつくり上げた「かかしの里」に感動したドイツ人の方があげたSNSがバズったおかげで、海外の方々にも「祖谷」はよく知られていて、海外OTA(Online Travel Agent =インターネット上だけで取引を行う旅行会社)で検索すると、エリアNo.1だったこともあって、常時、評価が9点以上あり、上位表示されるので、集客は約8割がその海外OTAから、2割弱が自前のWebサイト、残りが宿泊客からの紹介とのこと。
宿泊した旅慣れたフランス人旅行者たちがこと細かに具体的な体験やオススメコメントをその海外OTAに書いてくれるのも集客につながっているそうだ。
四宮さん自身、「昔暮らし体験」がこんなに外国人観光客に受けるとは思っていなかったが、コロナ禍明けに、外国人観光客が東京ではなく、徳島県でも山奥の田舎である祖谷に来ていることを知ったTV局が取材に来て、番組になったことでより注目されるようになる。
昔暮らし体験宿 開業のきっかけ
20年以上前、勤め人だった四宮さんはこの古民家を借り、金曜日の勤務終了後、週末の別荘として、香川から通っているうちにストレス発散と同時に自然を間近に感じ、この場所を終の住処にしても良いなと思い始め、お子さんが社会人になったのを契機に、勤務先を辞してこちらで暮らすようになった。ただ、生活費も必要なので、京阪神の中学生の山村体験の話があり、改装をして、受け入れを始められた。
そのカリキュラムに薪割りやご飯炊き体験が含まれていたので、今の原型が出来上がっていき、2013年に海外OTAに登録してから、外国人観光客が増えたので、現在、山村体験は休止中とのこと。
その海外OTAに登録した頃、日本で働いていた米国人女性が帰国前にネットで調べた四宮さんのところで10日ほど居候させて欲しい、と云う連絡があったので、受け入れたところ、お礼にと、芸大出身で絵心もあった彼女がチェックインからチェックアウトまで、英語での外国人宿泊者向けインフォメーションをイラスト入りで作成してくれ、それが外国人宿泊客受け入れに大いに役に立つことになる。
外国人宿泊客に人気の秘密
外国人宿泊者とは関係なく、宿の特色を出すために、初めに日本の東西南北最端の酒造蔵4本、四国の東西南北最端の酒造蔵4本、合計日本酒1升瓶8本を用意し、宿泊されるお客様には、ご自身のお住まいの地域のお酒を持参してください、とお願いしたところ、2年半で日本の47都道府県全てのお酒が揃った。
「酒神殿」と呼んでおられる酒部屋には、その後も持参されたり、後で送ってこられた日本だけでなく、世界各国のお酒が所狭しと並ぶ。
カジヤ祖谷浪漫亭ではお酒の販売はしていないが、宿泊客が持参したお酒をこの酒神殿に奉納すると、酒神殿のお酒を好きなだけ試飲(あくまでも試飲)することができる。つまり酒を持参して奉納したお客様は以前のお客様が奉納したお酒も試飲でき、お酒好きのお客様が奉納する度にコレクションが増え、お酒好きにはたまらないユニークなシステムになっている。
四宮さんがお客様と夜な夜な楽しく酒を酌み交わしておられるのは想像に難くない。
提供する食は、祖谷豆腐(縄で縛り、険しい山道を運んでも崩れないように水分を少なくし、固いため、「石(いわ)とうふ」とも呼ばれる)を始め、地元と四国の食材を基本に囲炉裏端で提供しておられ、食にこだわるフランス人客からはお酒のペアリングも頼まれるそうだ。
次に、日本人が海外で日の丸で迎えてもらったら嬉しいので、外国の方も同じだろうと、まず日本国旗と国連旗を用意し、外国人宿泊者には自国の国旗を持参してください、とお願いすると、今では30カ国以上の国旗が集まり、宿泊客の国の旗を掲揚してお迎えし、周辺の住人の皆さんにどんな国の方々がこの地域に訪れているのかを知っていただくことにもつながっている。
今後のカジヤ祖谷浪漫亭
最近、欧米の富裕層の宿泊客が増えていて、ゆったりした自由な時間を過ごすためには、支出を厭わないように感じると云う。
祖谷まで2時間半で来れる高松に1泊10万円と云う外資系の高級ホテルが2027年夏の開業予定なので、それまでにウォシュレットを完備するなど、そんなホテルに宿泊される方にもご利用いただけるよう、VIP対応できる改装をしたい、とのこと。
災害時、日本人の緊急避難所はあっても外国人用はないので、この場所をこの宿に宿泊されていたり、この地域に取り残された外国人専用の緊急避難場所にしたいと、究極のボランティアである防災士の資格を取得された。
実は、日本の昔暮らし体験というのはサバイバル体験でもあり、ここには湧き水が3ルートあり、購入したキャンピングカーには太陽熱パネルと自家発電気搭載もある。薪を割って、火を熾して、ご飯を炊く、おにぎりにすれば、冷めても美味しく食べれられる。もし滞在中に災害が起こった時の予行演習でもあり、これに衛星電話があれば、避難者の国の大使館とも連絡が取れ、地域の皆さんの助けにもなる。
日本の伝統文化や生活、風土、人情を含めた日本の原風景に興味を持つ外国人はたくさんおられ、それらを体験してもらえばより日本を知ってもらうことにもつながるので、如何にその情報を知りたい人に上手く伝えるかだ、と四宮さん。
この宿は、四宮さんほぼ一人で運営されているのだが、前述の米国人女性のようにテンポラリーなスタッフがインフォメーションを作成してくれたり、フランス人宿泊者が気に入って、自分たちのお子さんをボランティアスタッフで受け入れて欲しいと云う依頼をウェルカムで引き受けると、お礼にWebサイトをフランス語訳してくれるなど、決して押し付けることなく、お互いにメリットがあるお付き合いをされている。
次は、スペイン語訳してくれる方に来て欲しいそうだ。
カジヤ祖谷浪漫亭100年計画
ご自身もおっしゃっているが、「祖谷」という場所、「カジヤ祖谷浪漫亭」という宿、「四宮さん」という亭主が揃っての人気なのだろうが、その一番の要因は、外国語は決して堪能ではないそうだが、言語を超えたコミュニケーション能力、相手の気持ちを汲み取る優れた洞察力と直感力に加えて、亭主、四宮さんの親しみやすいキャラクターだろう。
四宮さんには、「カジヤ祖谷浪漫亭100年計画」があって、この建物を100年残すための初代の四宮さんから三代かけた計画で、75歳になられる9年後までには、日本人でも外国人でも良いので、英語他の外国語も話せる二代目を見つけて、引き継ぎ、引退する予定とのことで、今のところ、候補はいるが、早い者勝ちだそうだ。
人生、逆算で目標に向けて戦略を立て、常に実践してこられた四宮さんのことだ、きっと実現されるだろう。
COREZOコレゾ 「人生、全て逆算で戦略を立て、ボランティアスタッフも味方につけて、言語の壁を越え、昔暮らし体験でより深く日本を知ってもらい、国際親善、防災に取り組む、外国人観光客に大人気の策士古民家宿亭主」である。
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