無農薬のお茶づくり2、世界一厳しい安全検査に合格した滋味溢れるお茶とは?

COREZO(コレゾ)「食べられるほど健全ないい土から、世界一厳しい安全検査に合格した滋味溢れるお茶をつくり続ける親子」賞

有限会社いりえ茶園、入江 俊郎(いりえ としろう)さん、入江 隼之介(いりえ しゅんのすけ)さん

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農業生産法人 有限会社いりえ茶園

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農薬を一切使わず、丁寧に草を刈るお茶づくり

「ウチの茶園は、この店の向かいに見える福岡県黒木町と熊本県鹿北町の県境に位置する標高450mほどの釘山の頂にあります。この店をこの場所に作ったのも桜並木の向こうにウチの茶園のある釘山が眺められるからです。農薬を一切使わず、丁寧に草を刈ってお茶を育てています。」

「茶園を始める時、農薬や化学肥料は使用せずに作ろうと決めていましたが、そんな思いを理解してくれる人は誰ひとりとして周りにいなかったし、『病虫害にやられて終わり』と変人扱いされるだけでした。幸い、山の頂でしたから、周囲に隣接する畑はなく、誰にも迷惑をかけず好きなように取り組むことができ、他所で使われた農薬や化学肥料が流入する心配もありませんでした。扇状の段々畑は南向きでどの場所にも十分に日光が当たり、四季を通して朝晩の寒暖差が大きく、お茶の栽培には最高の立地です。」

夏、お茶園にだけは雑草が生えていない不思議な光景

「でも、夏、草だらけになる茶畑なんてないやろ?他所ないやろ?どこも、草、生えとらんやん。あれだけ雨が降りよるとにね、お茶園にだけは草生えてないんですよ。ありえんとです。ウチは次から次からどんどん生えてくるわけですよ。除草剤や農薬を撒きたくないから、ウチは全て人力で刈ったり、抜いたりしているのですが、自分たちだけでは手が廻らないので、延べ150人ぐらいサポートしてくれる方々が手伝って下さるから、なんとか今の規模でもやっていけるんですよ。」

「でも、そういうこだわりのあるマニアックなお客様しか買ってくれないですから、大きなお茶屋さんとか問屋さんで同じようなことができるかというと、商売が先にありきで、まず、ありえないですね。」

消費者の皆さんにももっと賢くなって欲しい

「今では、どんどん科学が進歩して新しい技術が開発され、食品だけでなく、薬品も数え切れないぐらい増えていますから、病気も減るはずなのに、それにも増して医療費が大きくなっていますよね。国家予算の半分近くですよ。この国、どうするとよ?って思うもん。」

「食を征するするものは世界を征するし、食で世界を変えられるとも思っています。しかし、そこにはどうしても経済というお金が絡んできます。学校給食も和食に戻そうとか、出汁をちゃんととってとか言いよるけど、使う材料、食材はどうなの?ということのほうが気になるんですよ。」

ー 一定量の野菜が使われていたり、炭水化物やたんぱく質など必要な栄養素の摂取基準を満たしたコンビニやスーパーの弁当、総菜などを「健康な食事」として認証し、表示できるマークができるとか、特保とかも、何それ?って感じですよね?

「その通りです。ネット社会になって、世の中には情報が溢れているんだから、消費者の皆さんももっと賢くなって欲しいですね。ウチのお茶は、一般のお茶と成分データを比較すると、カテキンが多く、ビタミンCは2倍近くあって、逆にカフェインは少ないのですが、どうしてこうなるかなんです。私は、農法、土の違いにあると確信しています。」

抹茶のようなもののつくり方

「ただし、お茶も嗜好品ですから、私たちがいくらいいお茶を作っても、お客様がおいしいと思って下さらなければ売れません。大きな資本がある企業は、おいしいと思わせるようなものを上手く作りますよ。だって、消費者の皆さんは、それらを買って、飲んだり、食べたりしてるんですから。信じられない話ですが、見るに耐えないクズ茶に重曹なんかを入れて、蒸して、揉んで、緑色にして、抹茶風に仕立てて、あんなのは抹茶じゃないですよ、あくまでも抹茶のようなものをお菓子なんかに使うんですよ。また、それが売れるんですよね。」

「ウチなんかは、まっとうにお茶を育てて、それを信じてくれる人だけが買って下さっているだけの話で、なかなか楽にはならんとです。今後は、さらに消費者のお茶離れが進むかもしれないし、どうやっていくかですね。」

他の茶園には来ないイノシシが来るワケ

「だから、自分たちがやっていることを他の人にも勧めるかといえば、仕事も生活も大変だし、除草剤かけたほうが楽だし、早いもん。肥料もそう、バイオの有機使ったり、一番搾りの油かすを使うと、薬品を使って搾ったのとでは価格が一桁違ってくるばい。でも、いろんな成分がちゃんと残っている肥料は、パワーが違うので、土の微生物もお茶も喜ぶし、使う量も少なくて済みます。」

「それから、自然だからね、虫もわんさか寄ってくる。寄ってきていいんですよ。来ないことの方がおかしい。その中には天敵もいて、食物連鎖で自然の生態系の仕組みができるんですよ。てんとう虫やカマキリやバッタ、蝶々、毛虫とかがいて、アブラムシも発生します。でも、みんな天敵に食べられてしまいます。ミミズが増えるとモグラが増えるし、モグラが増えると蛇も増え、鳥も増え、みんな増えるんですよ。ウチにだけ、ミミズがいるからイノシシも来る。他の茶園には来ないですよ。だって、除草剤をかけると土の中の微生物もいなくなるから、それをエサにするミミズもいません。」

草との戦い

「ウチみたいに、いい肥料をやると、草もどんどん伸びてきて、もう、ホント、草との戦い。地下茎の草は厄介でね、カラスウリとか山芋も、取っても、取ってもまた伸びてきて、イヤになります。草にも強い弱いがあって、結局、自然に淘汰されていくんですよ。」

「自然の植物がどうして実を付けたり、種がなるかというと、子孫繁栄のためであって、人間が食べておいしい農作物を作るには有機質が要るんです。それで、動物性のものを入れ始めると、必ず、病気も一緒に持ってくるんですよ。だから、それをどうバランスをとるかというと、土壌検査をきちんとして、足りないものを補うことになります。それが土作りです。だけど、草はそんなのと関係なく、容赦なく生えてきます。」

いい土、健全な土をつくれば、植物は元気で、病虫害も寄せ付けない

「やっぱり、土づくりには5年ぐらいかかります。それまでは病気も出ます。その時にどうしたかなんです。私の場合は、樟脳を1m間隔でぶら下げ、夏は、蚊取り線香を1m間隔に置いて、毎朝、火をつけて廻って、殺虫ではなく防虫をしました。その間に土に体力というか地力をつけました。」

「私も森部さんと同じく、有機農業研究の第一人者である山本 德(やまもと のぼる)先生の指導を受け、どの病気には自然にある何がいいとか、生と死を司るものは半径50kmの自然界に必ずあるということを教わりました。自然農法と云うけれど、これこそ、本当の自然農法だと思いました。」

「土に体力ができて、抵抗力ができるまでは、自然界のもので補ってやらなくては、お茶の場合は、保ちません。ですから、5年間は本当に苦労をしましたが、今では、病気は出ないし、害虫は寄って来ますが、天敵同士でちゃんと処理をしていて、虫害もほとんどありません。」

「それから、ミミズやバクテリアなんかの地中の微生物が数多く生息する健全な土で育った作物には、微量要素であるミネラルとかビタミン類も豊富なので、作物が傷つけられた時に発散するフィトンチッドという殺菌力を持つ揮発性の物質が多く発散されて、病害虫の発生が抑制されると考えられています。」

「亜鉛とか銅とか鉄とかそれだけ単独では毒だけど、そういうミネラル分が微量でも含まれていないと抵抗力も生まれず、そのフィトンチッドも放出されません。いい土、健全な土で育った植物は元気で、病虫害も寄せ付けないというわけです。」

『これだ!』というお茶を作り上げるのに10年

「父はみかん農家でした。全国各地で、求職しながらさまよっていた20歳を過ぎたばかりの頃、病気を患って入院し、手術をして、隣のベッドの老人から差し出された1杯のお茶が、心身に染み渡るほどの美味しさで、そのお茶が、私の故郷、福岡の八女茶であると聞き、故郷に帰って、私も人に感動してもらえるようなお茶をつくろう、と決心したのが、キッカケたい。」

「早速、お茶屋に勤めてお茶づくりの修行を始め、みかん農家の後継ぎば、せんでよかというので、みかんの木を全部切って、土を3mぐらい耕し直して、1981年、27歳の時に念願のお茶の木を植えました。その当時、無農薬や有機栽培が周囲の農家たちに理解されなかったので、山頂の斜面がきつい悪条件下での始まりでした。有機栽培は土が命なので、忍耐強く土作りに5年を費やし、またさらに5年以上をかけて、『これだ!』というお茶を作り上げました。」

さっぱり売れず、自ら売り歩くこと12年

「しかし、長い歳月をかけてやっと完成させたお茶がさっぱり売れません。そこで、売り方もわからないまま、茶箱を父親から借りた車のトランクに積んで、自分の足で歩いて行商を始めました。転々とするのは効率が悪いので、1日、1カ所の工業団地内で、断られても、断られても、辛抱強く廻り続けました。少しずつお客さんが増え、またお客さんがお客さんを呼び、固定客も増えてきました。自ら売り歩くこと12年、本当に長い道のりでした。」

おいしくて、健康にもよいお茶づくり

「有機だろうが何だろうが、まずいものは売れません。他とはひと味もふた味も違うもの、私らなら、お茶の大吟醸を作り切らんといかんとです。ただ、まだ、全然、満足ばしとらんばってん、気候も天候もあることですが、一生かけても、息子たちの代に引き継いででも、追求していかねばならんとです。」

有機JASが認めている『マシン油』が飲める?

「実は、1998年、福岡県で有機認証を取った第1号は私ですが、一番に辞めたのも私です。有機JASは、決して無農薬ではなく、有機JAS法で、『有機』として使える農薬は50以上あります。こんな信用できない規定は世界に通用せんでしょ、って書いて、農水省に送ったら、次の日、黒塗りの車が何台も来ましたよ。辞めんでくれと言うので、アンタたちが私の眼の前で有機JASが認めている『マシン油』を飲んだら、認めるが、私は、口に入れて大丈夫なものしか使えんから認めん、と突っぱねました。」

食べられん土から食べられるおいしい作物ができるとや?

「ウチに視察や研修に来た人は、入江さんに茶園の土を食べさせられた、ってネット上によく書いているようですが、食べられん土から食べられるおいしい作物ができるとや?食べられんような肥料をやってね、それを吸収した作物は健康にいいといえるとか?という考えです。」

正真正銘、有機無農薬でも、有機JAS法上、無農薬の表示はできない

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「有機JAS認定を辞めましたから、ウチは正真正銘、有機無農薬ですが、有機JAS法上、無農薬の表示はできないので、農薬不使用で対応して下さいと指導されて、それに従いました。」

理不尽な話である。

残留農薬検査証こそが、唯一無二の確実な証明のワケ

「なんともバカバカしい話です。それで、どうするかを考えて、少々、費用は高くついても、残留農薬検査をすることにしました。毎年、日本で指定されている222項目について、全部やっているんです。作業履歴なんか書き替えようと思えばできるでしょ?それに面倒くさいし、農作業が忙しい時にいちいちやってるヒマもないし、そんな言葉や書類なんかより、残留農薬検査証こそが、唯一無二の確実な証明なんですよ。問い合わせがあったら、見せれば済むので、放射能検査も受けています。」

世界一厳しい、EU・ドイツ残留農薬検査にも合格

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「さらに、世界に打って出ようと思い、世界に認められるにはどうすればいいかを考えました。で、わざわざ、ドイツまで行って、現地商社を訪ねて話を聞いて廻り、25mプールに化学物質1滴でも検出するという世界一厳しい、EU・ドイツ残留農薬検査を受けて、2007年に合格しました。」

人間、やるかやらんかだけ。やるなら、徹底してやらんと

「年間、何べん、土手でん、草を切らにゃ。有機の土は柔いから、機械が入らんので、人力でしかできんたい。汗かくしかなかとですよ。人が乗る茶摘機なんかも下の土が固くないと使えんのです。表面が固いと大雨が降ると全部流れてしまって、茶畑は根が浅いんで表層崩れをしやすいんですよ。ウチなんかは、全部吸うんで、暗渠も敷設していませんが、梅雨が終わるまでは、土が流れないように茶畑の周りの土手の草は残しています。見た目、草のない、きれいな茶園とは大違いですが、人間、やるかやらんかだけなんです。やるなら、徹底してやらんと。でも、目先のお金で変わる人が多いですよね。」

植物の栄養は微生物が食べた代謝エネルギー

「ウチの土1gには、3〜10億の微生物が住んでいます。それがウチの社員ですよ。だから、私はそれら社員に健康で働いてもらうために、栄養は何をあげたらいいかを考えます。肥やしというのは植物の肥えじゃないですから、直接、植物に吸収されることはありません。微生物が食べた代謝エネルギーが植物の栄養です。」

硝酸態窒素が流れ出る原因

「植物が吸収する栄養素は2〜3%ですから、あとは土に返して、ミミズや微生物を養わねばなりません。それをしないで農薬で殺してしまうから、硝酸態窒素が流れ出て、水も飲めんごとになっているわけです。」

「水耕栽培野菜の工場も何カ所か見学に行ったけど、液肥使って、あれでどれだけの栄養価があるのか?ただ、腹を満たすだけならいいかもしれないけど、水ぶくれしているだけで、微生物の代謝エレルギーがないから、何の効力もないと思いますよ。」

いりえ茶園のお茶の特長

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「ウチのお茶の葉っぱは、一枚、一枚が大きくて、厚くて、芽重も重いんです。そこが一般のお茶との差で、ウチは一般の半分の面積でも、収穫重量は、ほぼ同じなんです。」

「農薬やらんから収量が少ないとか、有機だからまずいとかはウソです。ただ、無農薬、無肥料のお茶はおいしくありません。ある程度、収量の予測が立って、安定した収入が見込めなければ、農業としては食っていけません。全ては、生産者のバランス感覚なんです。」

「お茶は、摘んだその時から、『酸化』し始めるため、どれだけ早く製茶工場に持って行くかが勝負です。そして、摘み取りから、蒸し、葉打ち、粗揉、中揉、精揉、乾燥と製品として完成するまで、ずっと人間の体温である37℃前後で仕上げていきます。手揉みをしていたのもそういうことです。それだけ、お茶は人間と深いつながりがあるような気がしています。最後の乾燥仕上げだけは200度ぐらいまで上げますが、乾燥することで、アミノ酸値が上がって旨みが増し、保存が利くようにもなります。」

「丹精こめて作ったお茶を飲んで下さって、『美味しかった。』という言葉を頂くことが、私たちにとって、何より最高の喜びです。お茶づくりの苦労なんて吹っ飛んでしまいます。そのことに心から感謝し、健康に過ごして頂くことを願って、おいしく、安全なお茶を作り続けていきます。」

まとめ

お茶処に知り合いがたくさんいて、毎年、新茶のシーズンには、無農薬のお茶を何種類か頂くのだが、入江さんのお茶は滋味深いというか、ひと味もふた味も違うように感じた。

入江さんからいりえ茶園のお茶を1日5〜10杯飲むという健康法を伺い、「ホンマかいな?」と半信半疑で実践してみると、入江さんがおっしゃった通りの結果が出て(ご想像にお任せする)、すこぶる調子がいいので、朝は焙煎したてのコーヒーを飲んでいたのも、朝昼晩、お茶に切り替えた。

元々、お茶好きで、お茶も選んで自分で入れたものしか飲まないようにしている。一般のお茶の栽培にはどんな農薬を何回かけるかご存じだろうか?製茶には蒸しの工程はあるが、洗浄の工程が1回もない。

ペットボトルのお茶はどんなお茶の葉を使ってどうつくられているか、酸化防止剤のビタミンCの正体は何か?ご自身でお調べ頂きたい。

いちいちお湯を沸かすのが面倒な方は、浄水とお茶の葉をボトルに入れて、冷蔵庫に入れておくだけで、ペットボトルのお茶よりずっとおいしいお茶が簡単にできる。100g1,000円のお茶を買えば、500mlのペットボトル20本分ぐらいのお茶が淹れられるので、経済的でもある。ただし、くれぐれも使うお茶は厳選して頂きたい。

「いりえ茶園」のお茶の良さがわかる人が増えれば、食から世界を変えることができるかもしれない。

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 COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.06.20.

最終更新;2015.06.20.

文責;平野 龍平

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