長野県小布施町のまちづくり4、小布施の今とこれから

長野県小布施町のまちづくり4、小布施の今とこれから

セーラさんが去った後、小布施では次の世代の新しい動きがすでに始まっている…。

小布施堂、金石 健太(かねいし けんた)さん、西山 哲雄(にしやま てつお)さん

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そこらの地方都市が束になっても敵わない魅力がある町

「いろいろな人が集まってくる仕組みをつくった市村社長や市村町長の世代の人たちの発想力と行動力はスゴいと思っています。その仕組みというのが、1980年からの『小布施町町並み修景事業』だったのですが、それがベースにあって、1995年にセーラさんが小布施に来て、『小布施ッション』や『小布施見にマラソン』を立ち上げて、更に、人が集まるようになりました。僕らが小布施に来たのもそれがきっかけですから、こんな小さな町なのに、そこらの地方都市が束になっても敵わない魅力がある町なんです。」

おもしろい人が集まる仕組み

「でも、セーラさんがいなくなった後も、また、『まちとしょテラソ』が普通の図書館になった後も、既に、僕らと同世代の小林英樹さんや林英寿さんたちが、全く別の活動で町を盛り上げていて、小布施は、もう次の新しい時代が始まっているような気がします。」

「この町に何かをしようという使命感はない、と言いましたが、僕がこの小布施に来たのは、おもしろい人がたくさんいるからです。おもしろい人がいるから、おもしろい人が集まってくる訳で、僕らがおもしろいかどうかわかりませんが、おもしろいことをやらないとおもしろい人にはなれないし、ウチの社長やセーラさんの時代とは違った小布施におもしろい人が集まる仕組みをつくりたいですね。そうしないと僕たちがおもしろくないですからね。」

やり残した経験の中にヒントがある

「修景事業でやって来たことも、自分が個人的にやって来たことも、やりっ放しになっていることはもったいないとは思いますが、やって来たことに関しては無駄だったという感覚はあまりありません。結局、修景事業も含めた小布施堂全体で見ても、何もかもやりっ放しで来ていて、何も残っていないのですが、それはそれでいいのではないかと思っています。」

「というのも、これから、小布施堂も我々も変わっていかなければならないのですが、今までに見たこともないお菓子が開発されて、バカ売れして、画期的に方向性が変わるということではなく、この会社がとにかくいろいろやったことは、それぞれに経験として残っていて、その数多くのやりっ放しでやり残したことの中にさまざまなヒントが隠れているような気がしています。」

浄光寺副住職、林 映寿(はやし えいじゅ)さん

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『人を集める』ではなく、『人が集まる』仕組みづくり

「今の時代にお寺が如何に必要とされるか? 明日、もし、全国の5万軒のコンビニが全てクローズすれば、困る人は多いと思いますが、全国7万7千の寺が全てクローズして、困る人が何人いるでしょうか?既に、東京では宗教離れ、仏教離れが始まり、檀家制度も崩壊しつつある中で、私たちはライバルにコンビニを想定して、浄光寺だけは閉まってもらったら困る、といわれるぐらいに、私たちは、意識改革して、今の世の中で、人が亡くなってからではなくて、生きている内、元気な内に必要とされるお寺にならなくてはいけないと思ったのが原点です。」

「そうはいっても、何もしないですぐに人が来てくれるようになるはずがないし、当初は、人を集めよう、集めようとしても、労力も時間もお金も掛かって、年配の皆さんはなんとか来て下さいますが、何せ、人は集まりませんでした。それで、『人を集める』ではなく、『人が集まる』に方向転換をしました。『を』を『が』に替えるだけで、全く意味合いが違ってくるのです。さらに人の前には、自然を付けて、自然と人が集まる楽しいお寺、寺子屋復活というコンセプトを掲げました。」

生きている間にこそお役に立てる坊さんでありたい

「小布施では、『オープン・ガーデン』といって、一般住民の自宅の庭を訪問客に解放していますが、私たちは、『オープン・本堂』と称して、本堂をもっと開放し、いろんな経験や体験をして頂くことを通して、仏の教えを説いていこうと考えました。」

「坊主冥利に尽きるっていうのは、死んだらアンタに拝んでもらいたい、って言われることだと思うのですが、今、日本にそういう坊さんがどれだけいるでしょうか?死んでからのお弔いをする坊さんはたくさんいるのだから、私は、生きている間にこそお役に立てる坊さんでありたいと思っています。」

IRONCROW共同体代表、小林 秀樹(こばやし ひでき)さん

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403の開発とは?

「おもしろい話があって、20年前ぐらいから、ある事業展開を小布施町としてやっていて、それは403の開発っていうんだけど、403というのは、国道403号のことで、須坂から小布施、飯山に抜ける道、小布施のメインストリート。風水的にも、南から北、北から南っていうのは風通しを良くしないと、ダメなんだ。」

「そういうのって、結構、気にするんだけど、その403の道幅が広がる。広がるってことは、より風通しが良くなって、小布施はもっと、もっと、産業が盛んになり、商人の町になる。直線ではなくて、蛇行させれば、そういうところには、いろんな店もできるはず。今まではどっちかというと、東から西に抜ける道、田舎から都会に抜ける道ってのが、メインだったけど、今度は、一気に変わる。これが20年掛かって、3週間前に長野県がやっと認めた。市村町長も、若い頃からそれにかかわってきたから、すごい嬉しいらしい。」

人の流れのサイクル、2〜30年周期説

「少し話がズレるかもしれないけど、オレ、個人的には、30年周期だと思ってる、やっぱ、人の流れ、サイクルというものは。でも、この30年周期っていうものは、あくまでも、これまでの30年の中での話で、今の時代、時の流れって、もう少し、短縮されている、20年ぐらいになってるのかもしんない。」

「で、この20年周期の中で、今の町長たちが、20年ぐらい前にやろうとしたことが、やっと20年後に新しく変わっていく、さらに、ここで新しくウチらが売り出す、若い人たちが新しい考え、知恵とか、能力とかを活かす場所をどんどんつくる。そこから、また、停滞が始まる。だけど、さらに20年後なのか、その周期が、25年後なのかわかんないけど、その時に、また、そこで、ポッと芽が出る。だから、ここをウチらは、次の代まで、20年、25年っていうのをかんばんなきゃなんない。」

小布施がスッゲー理由

「その町長から、やっとお前たちに、風通しを良くする新しい道を開けられた、っていわれた時に、鳥肌が立った。すっごい嬉しかった。それを聞いて、この人には、やっぱ、全身全霊で付いていくべきだって思った。こういう人がいるから、この小布施も成り立ってんだなって、初めて気づかされた。」

「オレも、多分、林くんもそうだし、いろんな人たちがいるんだけど、自分たちの年代は、ここで、イェーッとか、ヤーッとか、オレ、スッゲーだろ?とかいうのは、みんな、控えだした。次が芽吹くように、肥料をまいてる。それを、みんながちゃんとやってるから、この町、スゲーって思う。」

「町長たちががんばってくれた時代があって、セーラが小布施に来て、やってきたこともそうだけど、あの人は有名になったからね、でも、もう、次の新しい時代に入っていて、誰か1人に頼るのではなくて、小布施って、あの、おもしろい人がいっぱいいる町でしょ、という風にならないと・・・、実際、いっぱいいるからね。」

小布施堂社長、市村 次夫(いちむら つぎお)さん

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本当の情報は人が持っている

「今や、ネットで何でも情報が手に入る時代なんて言ってますけどね、本当の情報は人が持っているんですよ。まず、いい情報を持った人を『集める』ためには、コンベンションが一番手っ取り早いんですね。もちろん、いい情報に敏感ないいホストが必要ですけどね。」

「1〜200人程度の小さなコンベンションを大都市でやると、肩身が狭くて寂しい思いをしているハズだけど、小布施でやれば、それは、ビッグ・コンベンションになります。出席される先生方を送り迎えすれば、いい情報も手に入るってもんですよ。」

「時間が無い、暇がないから発想できないって云うけど、時間があるから、いい発想ができるかというと、そんな訳がない。いい発想をするには、別の組み立てが必要で、そういう意味でも、コンベンションを誘致すれば、送り迎えする中で、学会に参加する先生方の慧眼に直接触れることで、発想力も鍛えられます。」

観光も情報、いい情報を求めて、人が『集まる』ようになる仕組み

「一旦、いい情報を持った人が『集まる』ようになると、情報が一人歩きを始めて、今度は、いい情報を求めて、人が『集まる』ようになります。いい方に廻り始める訳です。更に、いい情報を求めて、色々な人が集まってくるんですね。実はね、観光っていうのも情報なんですよ。」

「『小布施ッション』は、12年144回続けて、それなりの役目は果たしたと思うんですね。もう、その流れは止まらないように思います。これからの小布施を担う30代の人たちに伝えていきたいのは、観光客を増やすとかという発想をしないで、如何におもしろい人が集まってくるかに尽きるぞ、それが勉強だぞ、ということ、異分野の人が訪ねてくると、楽しいし、勉強にもなるし、次の力にもなるという、さっき言ったサイクルを知って欲しいということですね。『小布施ッション』というのは、そういう手段の一つだった訳ですから。」

どんな役目でも、役割でも、率先して引き受けた方がいい理由

「人材というのは、ある面では、その地位に就かないと、才能が開かないという部分もあるかもしれないですし、立場が人をつくることもあると思います。潜在能力がある人間がいても、普通、それは外から見えないでしょう?だから、どんな役目でも、役割でも、率先して引き受けた方がいい。そこで出会った人から得るものは大きいですよ。40代になると、いい意味でも、悪い意味でも保守的になるので、30代の人たちががんばらなければいけない。」

まとめ

『小布施町町並み修景事業』以来、小布施のまちづくりの中心は、「人」である。「人」こそが地域活性化の要であるのに、それを実践している地域がどれほどあるだろう?

市村町長や市村社長の世代のまちづくりへの思いは、確実に30代、40代のこれからの小布施を担う世代の人たちに受け継がれている。

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COREZO (コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.05.16.

編集更新;2015.05.16.

文責;平野龍平

 

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