林 映寿(はやし えいじゅ)さん/小布施スラックライン・浄光寺

COREZOコレゾ「コンビニがライバル、生きている間にこそ、お役に立てる坊さんでありたいと、人気職業トップ10入りを目指す副住職」賞

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林 映寿(はやし えいじゅ)さん

プロフィール

長野県小布施町

浄光寺 副住職

小布施スラックライン

浄光寺スラックラインパーク

https://www.facebook.com/obuseslack

ジャンル

教育

スポーツ

お寺を中心としたまちづくり

受賞者のご紹介

林 映寿(はやし えいじゅ)さんは、長野県小布施町にある真言宗豊山派、 の副住職である。

2014年7月、小布施堂の金石 健太(かねいし けんた)さん西山 哲雄(にしやま てつお)さんのご紹介で、浄光寺を訪ね、お話を伺うことが出来た。

小布施町の浄光寺、薬師堂の歴史

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ー 昨年、 に参拝して、大変、古いお寺であることを知ったのですが、林さんで何代目ですか?

「薬師堂が建てられる以前から、ここにはお寺があって、千年以上の歴史があるようなんですが、その頃のものは、もう、何も残っていません。また、途中、中世でわからなくなって、空白の期間もあります。現存する最古のものが、1408年に建立された薬師堂で、606年経っているのはわかっていますから、確実なところで、今の住職が33代目、私で34代目です。」

ー 代々、このお寺を継がれているのですか?

「いいえ、入れ替わっています。元々、私の祖父は長野市綿内の寺で住職をしていました。ここの薬師堂は、重要文化財に指定される以前には、国宝に指定されていたのですが、住職不在の無人寺だったので、請われてこちらに移って来ました。綿内の方の寺は、住んではいませんが、私が兼務で、住職を務めています。」

「そもそも、この薬師堂浄光寺は、将軍制度があった時代に、将軍が戦に行く際には必勝祈願等をしたという、その時代には格式の高いお寺でした。将軍直々の祈祷所、祈願所だったので、一般の檀家さんを取らず、寺領も広く、当時のお寺としては、安定していました。しかし、室町時代が終わって、将軍制度が無くなり、さらに、農地解放で寺領がなくなり、檀家のいない寺には厳しい時代になりました。」

「今では、お寺は、檀家さんがいないと葬儀がないので、他の収入源が必要になります。私の祖父は、小、中、高校の教員をしながら、父は、地元の放送局のアナウンサーをしながら、寺を維持管理してきました。当寺は歴史的には、非常に古いのですが、世間一般には、北斎の天井絵があるお隣の岩松院(がんしょういん)さんの方が知名度では上です。」

お寺にスラックラインのようなスポーツ施設があるワケ

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ー ツリーハウスやスラックラインのようなスポーツ施設があるお寺は珍しいと思うのですが?

※スラックラインとは、5cm幅程のベルト状のラインを立木や器具を利用して張って利用した綱渡りのようなスポーツ。ジャンプや宙返りなどを行う競技は、『トリックライン』と呼ばれている。

「私が大学を卒業して戻って来た頃には、檀家さんもいないし、犬の散歩か、道を1本間違って、天井絵のお寺はここですか?と訪ねて来る人しか来ない、人が来る理由がほとんどないような寺でした。これから、お寺はどういう役割で、どのように運営をしていったらいいのか、考えました。」

お寺とコンビニ、どちらが必要?

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「今、コンビニはどんどん増えて、全国で5万軒あるといわれています。お寺は減っていますが、7万7千寺あります。5万軒のコンビニには、私も含めて、みんな毎日のようによく行くのに、7万7千寺のお寺には、1年に1度行くか、行かないかという時代になりました。」

「どうして7万7千寺もあるのか、その理由を考えると、寺子屋のような読み書き算盤を教える場であったり、今のようなコミュニティスペースがなかった時代には、冠婚葬祭はもちろん、地域住民のいろんな集会、交流の場でもありました。今の小布施町長は、お寺の本堂で勉強していたそうですし、50代、60代の人たちに聞くと、鬼ごっこやかくれんぼの隠れ場所も多く、やんちゃをして、和尚さんに叱られたこともあったが、とにかく遊び場がお寺だったとおっしゃいます。」

「今の時代にお寺が如何に必要とされるか? 明日、もし、全国の5万軒のコンビニが全てクローズすれば、困る人は多いと思いますが、7万7千の寺がクローズして、困る人が何人いるでしょうか?既に、東京では宗教離れ、仏教離れが始まり、檀家制度も崩壊しつつある中で、私たちはライバルにコンビニを想定して、浄光寺だけは閉まってもらったら困る、といわれるぐらいに、私たちは、意識改革して、今の世の中で、人が亡くなってからではなくて、生きている内、元気な内に必要とされるお寺にならなくてはいけないと思ったのが原点です。」

『人を集める』と『人が集まる』の違いとは?

「そうはいっても、何もしないですぐに人が来てくれるようになるはずがないし、当初は、人を集めよう、集めようとしても、労力も時間もお金も掛かって、年配の皆さんはなんとか来て下さいますが、何せ、人は集まりませんでした。それで、『人を集める』ではなく、『人が集まる』に方向転換をしました。『を』を『が』に替えるだけで、全く意味合いが違ってくるのです。さらに人の前には、自然を付けて、自然と人が集まる楽しいお寺、寺子屋復活というコンセプトを掲げました。」

『オープン・本堂』とは?

「実は、広い敷地があり、伽藍と呼ばれる本堂があり、その他にも建物や施設があるお寺は、私たちが一時的に管理をしているだけで、元はと言えば、壇信徒の皆さん、地域の皆さんの浄財を寄付して頂いてつくられたものですから、地域の皆さんに使って頂く場なのです。」

「小布施では、『オープン・ガーデン』といって、一般住民の自宅の庭を訪問客に解放していますが、私たちは、『オープン・本堂』と称して、本堂をもっと開放し、いろんな経験や体験をして頂くことを通して、仏の教えを説いていこうと考えました。」

生きている内、元気な内に必要とされるお寺とは?

「このスラックラインに関しても、技術の上達より前に、基本的なことを当たり前にできない子供たちが多く、実は、大人もそうなのですが、例えば、屋内施設のハウスの中では、履物を一時的に脱いでもらうこともあるのですが、履物を揃えられない人が非常に多いのです。自分のはもちろん、他の人の履物も揃えるということが連鎖するとみんなきれいになります。お寺でやる以上は、当たり前のことを当たり前にできるように、活動、運営してきました。」

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「3世代、4世代のいろいろな年代の皆さんにお越し頂きたいので、いろんな年代が楽しんでできるものというのをキーワードに、楽しく字を書く『筆遊び』を始めたら、4歳から上は80歳ぐらいまで幅広い年代の方々にご参加頂いていますし、自然体験のツリーハウス、ピザ等を焼ける石窯、そしてスリックライン等々を用意して、いろんな経験、体験を通じて、知恵を学べる場を提供しています。知識は学校で教えてくれますが、知恵を教えるところはあまりないでしょ?」

「例えば、東日本大震災の時には、子供たちだけで夜を過ごさなければならない状況もあったそうですが、今は、子供たちから火や刃物を遠ざけようとする傾向があります。しかし、緊急時、置かれた環境で、知識があっても知恵がなければ、明日を迎えることができないかもしれません。ここでは、自分より小さい子がいれば、手助けしてあげるというようなことを子供たちに意識をさせながら、竹やぶの竹をノコギリで切らせたり、ピザを焼く時に火を使わせる等の実体験を通じて、学び合うということを続けているうちに、自然と人が集まるようになってきました。」

スリックラインを導入した経緯とは?

ー 確かに、今日のような平日の夕方でも、スラックラインだけでなく、人がたくさん出入りされていますね。スリックラインを導入された経緯は?

「最初は、何も知らなくて、真ん中から乗ろうとしたのですが、全く、乗れないばかりか、意地になって繰り返していると、半端ではない筋肉痛に襲われました。それでも1週間かかって、5秒間静止できた時は、何を達成した訳でもないのに、それもいい歳をした大人の私がすごく嬉しくて、これは、1万円ちょっとの金額で買えて、1本あれば、大人も子供も家族も仲間も全員が手軽に楽しめるし、今の時代にも受けるかもしれない、と思いました。」

「それに、男の子と女の子が一緒にできるスポーツは少ないですし、大人と子供でサッカーをしようとすると、大人は手を抜かないと勝負になりませんが、スラックラインは、男女関係なく、年齢関係なく、家族全員がそれぞれライバルになれる数少ないスポーツであることを私自身が体験して、実感しました。」

「それで、昨年(2013年)の4月に本堂の前に1本張ってみたら、人がどんどん来るようになって、もう1本追加したのですが、それでも足りなくなって、次に、張れる木がたくさんあるツリーハウスの方に張りました。ところが、斜面ですし、雑木が生えていますし、子供たちがやっているのもこちからは見えないから、安全面でも問題がありそうなので、5月に今の広場に設置しました。」

「当初、こんな大規模にするつもりはなかったのですが、冬でもやりたいって声で、ビニールハウスを建て、暑いっていう声で、テントも張って、1年経ってみると、週末や休日には、朝から弁当持ちの家族連れが4〜50人程、入れ替わり立ち替わり来られますし、昨日は、新潟から大型バス3台で140人が来られました。」

集客の方法とは?

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ー どのように集客されているのですか?

「スラックラインのメリットは、公園やキャンプ場他に持って行って、このベルトを立木に渡して張るだけで簡単に設置できるのと、ひとりひとりが道具を持たなくても共有して使えることですが、やっている人を見て、やりたいと思っても、そこで見ず知らずの人にやらせて下さい、と頼んで一緒にやるのは現実的には難しいですよね?」

「ここ以外に常設しているのは、東京と神戸に2箇所ありますが、どちらもジムの施設内なので、有料ですし、本数も限られています。でも、ここは無料ですし、屋内外合せると12本あり、日本では最大級の規模だと思います。」

「小布施スラックライン部のWebサイトやfacebookで情報発信はしていますが、日本国内の愛好者は約4万人、トリックといわれる競技大会に出場する選手クラスは4〜5百人いますので、情報は自然と行き渡り、週末は県外からも多数お越しになるようになりました。」

独自のスリックライン検定制度を始めたワケ

「この検定制度をつくるきっかけは、全国では、2校目なのですが、小布施中学校が、公立校では初めて、本年度(2014年)から体育の授業にスリックラインを取り入れることが決まったことです。」

ー 公立中学の授業で教えているのですか?

「日本のスポーツ選手は、他の国と比べて、技術は勝っていても、体幹やバランス感覚が劣っているといわれています。私たちが子供の頃は、外で遊び回って、自然に体幹が鍛えられていましたが、今の子供たちは塾通いや遊びがTVゲームになって、今の小学校では、4〜50分の授業をきちんとした姿勢で受けられない児童が全国的に増えているそうです。」

「そこで、子供の頃から体幹やバランス感覚を鍛えた方が良い、と町長に進言したところ、町長、教育長はじめ、教育委員会の皆さんがここに視察に来られて、大変好評だったのですが、予算化して実施してもらうには、ずっと先の話になってしまいます。」

「それで、子供たちの為には、1年でも早く始めてもらいたい、という思いがあったので、用具はこちらで寄付をする、と提案したところ、町長もそれなら早いに越したことはない、ということになって、2日後には、3園ある幼稚園、保育園の園庭に1本ずつ設置し、小学校には3本、中学校にも3本寄付しました。」

「今年、ソチオリンピックが開催されて、多くのスキージャンプのメダリストが、体幹を鍛えるのに導入しているという報道で話題になりましたが、中学の授業に導入してもらうのは、結構ハードルが高くて、年間の授業の計画を変えてまで導入する価値があるのか、いくらいい運動であっても、1時限の授業の中で、1クラス約30名の生徒が何回挑戦できるのかということも指摘されました。」

「体育教師の先生方は、事前にここで何度も試して、これはいい、と後押しをして下さり、当然、文部科学省が定める体育のカリキュラムには入っていないので、設置する本数と挑戦できる回数もシュミレーションして、きちんとしたカリキュラムを作成しました。指導も、私たち、小布施スラックライン部のメンバーがすることで了解をもらい、授業の中でどれだけ進捗したかの評価をするためにも、この検定制度を作ったのです。」

「意外にも、中学生たちが真剣に取り組んでくれたのには驚きました。目標を具体的に細かく設定することで、これならやれるとか、アイツには負けたくないとか、もう少しがんばってみようとか、意識が変わるのでしょうね。」

独自のスリックライン検定制度の特徴とは?

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「日本スラックライン連盟でも10級から1級の検定制度がありますが、途中から極端に難易度が上がり、そこが大きな壁になって、挫折してしまう人も多く、目標を失うと継続もできません。小布施スラックライン部で作った独自の検定制度では、初級、中級、上級と3段階に分けて、それぞれに10〜1級の段階があり、全部で30段階にしているので、ある程度努力すると、級が上がるような設定にしています。また、初級の1級に合格すると、認定証とスポンサーさんからの記念品が授与され、中級に進めるのと同時に、初級の講師にもなることができます。」

「今は、教師や誰かから一方通行で教えてもらうばかりですが、インプットするよりアウトプットする方が遥かに難しく、他人に教えることで、さらに自分の身にも付きます。上のクラスに上がった喜びもさることながら、自分が4級、3級の時に大変だったこと、難しかったこと、学んだこと、上手くなるコツ等、子供たちの実体験として理解したことを、◯◯くん、それは、こうすれば上手くできるよ、と教えて、その子ができるようになると、信頼関係も生まれますし、さらに上の級に合格するとお互いに嬉しくて、教える喜びも倍加されます。」

一等賞になることより大切なこととは?

「今は、何事も結果が全てで、さらに上のクラスに上がって、一等賞になるのが最終目標であるような風潮ですが、1級を取ったことより、その過程でどれだけ努力をしたかを認めて、評価してあげることの方がずっと大事なことなんです。」

「サッカーではピッチに出て試合ができるのは11名ですが、控えの選手や教える人や多くのサポートする人々が裏で支えていて、表舞台に立てる訳です。例え、11名に選ばれなくても、それぞれの役割や価値があるのです。がんばった子供ががんばっただけ、評価されるような検定制度にしました。」

安全対策や保険の整備は?

「ケガをできるだけしないように指導し、設備も整備していますが、歩いていて転んでケガをする人もいるように、スポーツをしてケガをする人もいます。保険のこともよくよく調べたのですが、スケート場やスキー場等はリンク使用料、リフト他が有料なのに、転んでケガをしても何の補償もなく、自己責任です。そういう施設に掛ける保険もないようで、私たちの施設は無料ですし、自己責任でご利用頂くのが前提で、各自の判断で個人のスポーツ保険等にお入り頂くよう掲示も含めて告知をしています。」

検定制度が安全対策や事故防止になるワケ

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「私たちは、安全対策、事故防止のためにも、この検定制度を活用しています。実際、ここでも過去にケガをした人がおられるのですが、スラックラインでは、早足で遠くに行こうとすることで足を踏み外して手をついたり、顔を地面にぶつけたりするケガが、9割以上というデータがあります。」

「子供たちは、必ず、遠くへ早く行こうとするのですが、それをさせないために、検定制度では、片足ずつの静止をマスターするところからスタートします。というのも、静止する方が前に行くことよりも難しく、また、自己流でやみくもにやっても上達しませんから、これを先にマスターすることで、より安全に、上達もより早くなります。

スラックライン用具販売の経緯と経過

「去年、まだソチオリンピックの前で話題にもなっていなかった頃に、頼みもしないのに勝手にこういう施設をよくつくってくれたと、視察に来た日本スラックライン連盟の会長で、ドイツのメーカーの日本支社長から、是非、ここで販売も手掛けて欲しいと頼まれました。」

「スポーツ用品店でも売れないと聞いていましたし、ここは無料で開放しているのに、ここに来る人が買うはずないと思っていたら、販売を始めたら、それが売れるんですよ。長野のスポーツ用品店でも何店かが取り扱いを始めたようですが、ここが一番販売していると思います。」

「これって、簡単そうに見えて思った以上にできません。大人の方は、ここに通えても週1回がいいところで、前回、いいところまでいっても、次に来ると、元のレベルに戻ってしまう方が多く、一緒に来る仲間や家族に差を付けるため、コソ練(コッソリ練習)用に買っていく人が多いようです。」

画期的なスラックライン施設の運営方法とは?

ー 先程、スポンサーの話が出ましたが、こちらのスラックライン施設はどのように運営されているのですか?

狙いは、子供たちの日記のネタになること

「ジムでもスキー場でも、誰かが設備投資をして、利用料で回収するのが、通常のスポーツ施設のビジネスモデルでしょ?私の狙いは、子供たちが、学校が終わったらここに来るというのと日記のネタになることなんです。日記のネタになるというのは、イコール、子供たちが注目していることなので、今は、小学生の6割ぐらいが、スラックラインの何ができるようになったとか、何級になったとか、毎日に近い程、日記に書いているらしいのですが、その割合を8割ぐらいまでに高めるのが次の目標です。」

利用料を徴収する従来型のビジネスモデルではおもしろくない⁉︎

「また、まだ新しいスポーツなので、やってはみたいけれど、お金をかけるのはちょっと、という人はいるのではないかとも思います。どうせやるなら、この施設で、利用料として例えば、100円を頂くというような従来型のビジネスモデルではおもしろくないので、みんなの小さな力を寄せ集めて、みんなが潤ったり、良くなるという仕組みができれば、過疎化に悩んでいるどこの地域でも水平転換できるのではないかと考えました。」

スポンサーにならないと損だと思わせる仕掛けとは?

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「今秋、開催するトリックの大会でもスポンサーを募っていますが、そういうのは、知り合いにお願いして、義理でなってもらうことも多いと思います。しかし、それだと、得をするのか損をするのか不明確で、どちらかというと損をする方が多いでしょう。これは安いし、スポンサーにならないと損だと思わせるぐらい、得をしてもらおうと考えました。」

「屋内施設に使っているビニールハウスの骨組みの間隔は、50cm幅で30の区切りがあります。そこを広告スペースにして、今、のぼり旗1枚が2000円程度でできるのですが、それをスポンサーさんに作ってもらって、掲出することを思いつきました。まさしくバナーですね。」

「この施設が注目されたおかげで、マスコミの取材が多く、必ず、そのバナーが画像、映像に写り込む位置に広告スペースを設定しているのですが、企業のスポンサー料は、バナー(のぼり旗)1枚、年間1万円で月千円しませんので、大変リーズナブルだと思います。メディアはどちらの側から撮るかわかりませんが、両サイドにバナーを貼っておけば、写る確率も高くなります。実際、メインの両サイド合せて60のスペースは完売して、今は、天井部分の募集をしています。」

個人協力金が集まるワケとは?

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「個人は1口2,000円の協力金という形でご協力頂いています。ここが、みんなの小さな力を集めて運営していこうとしているのは皆さんご存知で、子供たちは、毎日ここに来て、体幹やバランス感覚を鍛えて、検定制度で認定の◯印が増えたと親子の会話は弾むし、日記に書くし、返事はできるようになるし、靴も揃えるようになって、こんなに有難いことは無いと、保護者の皆さんが個人協力金を持ってきて下さるので、こちらも有難いことです。」

利用料を頂かないからできることとは?

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「先程、お話ししたように、従来型のビジネスモデルで、1回100円だかの利用料を頂こうとすると、受付を置かなければなりませんし、そうすると、人件費の方が高くつく可能性もありますよね。ここは、基本的に、日の出から、日没まで利用できるので、朝は、5時とか6時から、出勤前の勤め人がトレーニングをしたり、夕方、終業後に来られる方もおられますが、最後の人は、後片付けをして、掃除をする、初めて来られたと思われる方には、必ず、声を掛けて、指導をする等々、全てルール化して、利用者はそれを守ってくれているので、私が不在でも運営していけるようになっています。」

小布施スラックライン部のメンバーは何名?

「役員は私たち夫婦を合せて三夫婦で、facebookに登録している方が約60名、その他、常時来ている方々を合せると約150名ですね。」

お寺の檀家制度とは?

ー お寺の話に戻りますが、今も檀家さんはいらっしゃらないのですか?

「いいえ、今の住職の代になってから、檀家さんを取り始めましたが、お寺と付き合うのは大変だと、お寺離れ、檀家制度崩壊が進みつつある今の世の中で、大切なのは、如何にウチのお寺の檀家になりたい、と言って下さるようにできるかということなんです。」

ー 自然と檀家さんが集まるお寺ってことですね?基本的なことを伺って恐縮ですが、檀家さんの定義は?

「基本的には、檀家になりたいというご意志があって、入壇届けという書類を書いて頂けばそれで完了です。お寺によっては入壇料を納めるお寺もありますが、私どもでは、今の時代にあったお付き合いをしなければいけないと考えています。」

「皆さん、檀家になると、寄付が大変じゃないですか、とよく言われます。最近では、葬儀もセレモニーホールのような施設を使うことが増えていて、お寺の施設を檀家さんが使わないのに、屋根を普請するとか、割当で寄付を募るので、檀家を辞める人も増えているのではないかと思います。」

「私どもでは、普段からお寺の施設を使って頂いて、その人たちから、みんなでお金を出し合うので、本堂が狭いからもう少し広くしようよ、トイレが古くなったから新しくしようよ、寒いからストーブ入れようよ、と言って頂いてはじめて、行動に移します。」

お寺を維持管理するには?

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ー 入壇料や定期的な寄付を募っておられないのに、どのようにお寺を維持管理されているのですか?

「当寺には墓地もありますから、永代供養していかねばなりませんし、寺を存続させていくためには、最低限の費用は必要です。重要文化財の薬師堂を築600年の節目に屋根の総葺き替えをした時には、国が8割負担してくれましたが、残りの2割の自己負担分は、1口いくらで、各々の皆さんが可能な範囲で、お願いしました。労力を提供して下さった方や知恵を貸して下さった方もいらっしゃいました。その時に気持ちよく協力して頂くためには、普段からのお付き合いが大切なのです。」

ー 檀家がいらっしゃらなかったのに、墓地はあるのですか?

「このお寺は、無住職の時代があったからかもしれませんが、この区に昔からお住まいの方は、岩松院さんが菩提寺のお家がほとんどで、その半分ぐらいがウチのお寺にお墓があって、そういう檀家さんを墓檀家さんと云います。今は、霊園も増やしていて、他のお寺とお付き合いの無い方が、こんなに賑わっているお寺だといいですねとか、筆遊びやスラックラインで来ている方が、死んだらここでお世話になりたい、とおっしゃって下さる方もいらっしゃって、檀家さんも増えています。」

気の長いファン獲得作戦

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ー 子供の頃から刷り込んでおられるのですね?

「気の長い話ですが、ハハハハ。今、ここに来ている子供たちが、大人に成った時に、オレは、コンビニよりも毎日、お寺に行ってたぜ、って言ってもらえたり、やがて、生まれた子供たちを連れてきて、お父さん、お母さんも子供の頃からここに来てたよ、って言ってもらえるようになれば、ライバルのコンビニに勝てたことになるのかなと思っています。残念ながら、コンビニは24時間営業なので、そこはなかなか勝てないなって、ハハハハ。」

檀家さんが少なかったからできること

「お寺は、檀家さんが300軒あれば、檀家さんだけでやっていけると言われています。ウチに檀家さんが300軒いらっしゃったら、私は、ここまでできなかったかもしれません。300軒以上あったりすると、葬儀の当日だけでなく、お通夜、その前日の枕経、終わった翌日にお寺参りと4日間はかかるので、1週間に3回も葬儀があると、ずーっと掛かりっきりになってしまいます。だから、檀家さんが増えるのは、有難いことですが、増え過ぎれば、毎日、葬儀関係の仏事が続いて、今のようなことはできなくなると思います。」

生きている間にもお寺が関われることとは?

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「お寺の仕事は死者を弔う仏事だけでなくて、ウチは厄除けの護摩焚きもしますし、七五三とか、車を買った方には交通安全祈願、安産祈願をして、お初参りもあります。生まれた赤ちゃんを連れて、神社にお参りするのは、お宮参りですが、お寺では、お初参りと言います。仏前結婚も増えていますし、このように生きている間にもお寺が関われることはたくさんあります。」

「日本は経済大国になった反面、自殺者が増えていますが、私が、病院で鬱病ですっていわれたら、ショックで立直れない気がします。そうなる前に、こういうところへ来て、周りの環境を変えることで、自分を取り戻せば、人間が本来持っている自然治癒力が高まって、治る可能性もあるのではないかと思います。」

「こういう時代だからこそ、ここへ来て、ボーッとしたり、子供たちが遊ぶ歓声を聞くだけでも癒されると思います。私たちは医療従事者ではないけれど、そういう場を提供して、少し、お話を聞かせて頂くことで、何かしらのお役に立てるのではないかと思うんですね。」

お寺も僧侶も今や人気商売⁉︎

「世代が変わると、お寺との付き合いも無くなったりする時代ですから、お寺も僧侶も今や人気商売じゃないのかなって思います。結婚したい相手の職業に、プロ野球選手、サッカー選手、弁護士は入りますが、どうがんばっても坊さんは入ってませんよね?でも、坊さんにあこがれるとか、坊さんがカッコイイと言う人が増えて、10位ぐらいには入りたいです。それぐらい、私たちは、意識改革をしていかねばならないと思っています。」

何だか懐かしいドリフの世界⁉︎

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そこに、「有難うございました。」と、小学校高学年ぐらいの男の子が挨拶にやってきた。

「彼が着ているのはここのロゴ入りTシャツなんですが、子供たちが自分たちで、初級の1級に認定されたら、親に買ってもらうというルールを作っています。」

「君は1級なの?」と尋ねると、「はい、1級です。がんばってます。」と、元気がいい。

また、別の男の子がやってきて、

「有難うございました。◯◯ができるようになりました。」

「そうか、すごいぞ、宿題ちゃんとやったか?勉強がんばれよ。」

「はーい、さようなら、また明日・・・。」

子供たちはみんなきちんと挨拶ができるし、何だか懐かしいドリフの世界がまだ残っている。

坊主冥利に尽きるっていうのは?

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「できないことができるようになると誰でも嬉しいんですね。平日は勉強がんばれよ、なんですが、週末は、宿題やってきたか?で、やってなかったら、帰らせます。でないと、勉強もしないでスラックラインをしていたら、ゲームと同じで悪者になります。子供たちも宿題を先に済ませておけば、弁当を作ってもらって、一日中、胸を張ってできるし、帰って、ありがとうと言えれば、また作ってもらえる。そんな当たり前のことを当たり前にできる場にしたいし、そうしてきました。」

「坊主冥利に尽きるっていうのは、死んだらアンタに拝んでもらいたい、って言われることだと思うのですが、今、日本にそういう坊さんがどれだけいるでしょうか?死んでからのお弔いをする坊さんはたくさんいるのだから、私は、生きている間にこそお役に立てる坊さんでありたいと思っています。」

と、映寿さんはよく通る声で話して下さった。きっとお堂で読経や法話を聞くと、心に染み渡るだろう。コレゾ財団・賞の趣旨をご説明し、受賞と小布施での表彰式のご協力をお願いしたところ、快く引き受けて下さった。

コンビニがライバルという、自然と3世代、4世代の人々が集まるお寺が実現しつつある。結婚相手の職業人気ランキングにランクインする日も近い・・・・?

COREZOコレゾ「コンビニがライバル、生きている間にこそ、お役に立てる坊さんでありたいと、人気職業トップ10入りを目指す副住職」である。

後日談1.第3回2014年度COREZO(コレゾ)賞表彰式

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雪の中、正装でご出席下さった

COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2014.09.05.

最終取材;2014.12.

最終更新;2015.03.20.

 文責;平野 龍平

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