小堀 夏佳(こぼり なつか)さん/愛の野菜伝道師/日本野菜テロワール協会 代表理事

COREZOコレゾ 「『日本野菜テロワール協会』を立ち上げ、子どもたちに手渡すため、地域に息づく在来種野菜たちを守り、食文化として育て続ける、愛の野菜伝道師」賞

小堀 夏佳(こぼり なつか)さん/愛の野菜伝道師/日本野菜テロワール協会 代表理事

プロフィール

COREZOコレゾチャンネル

受賞者のご紹介

プロフィール 

小堀 夏佳(こぼり なつか)さん

愛の野菜伝道師、野菜プロデューサー

日本野菜テロワール協会 代表理事

大学卒業後、大手都市銀行に勤務。その後、創業初期の オイシックス に参画し、初代野菜バイヤーとして全国の農家を訪ね歩く。二十六年以上にわたり、生産者と向き合い、野菜の背景にある土地、人、文化の物語を伝え続けてきた。

代表的な仕事に、「ピーチかぶ」「かぼっコリー」「トロなす」などがある。野菜の個性を言葉にして世に届け、多くのヒット商品を生み出した。

2020年に独立。種から販売、レシピ、商品企画、ブランディングまで、野菜に関わる全体をプロデュースしている。

2022年8月31日(野菜の日)には 日本野菜テロワール協会 を設立。全国の在来種・伝統野菜を未来につなぐ活動に取り組んでいる。

「野菜には愛がある。」
小堀さんは、野菜を単なる農産物ではなく、その土地の風土、歴史、そしてつくり手の思いが宿る存在として捉えている。

愛の野菜伝道師

銀行員から愛の野菜伝道師へ

一見すると、大きな転身に映る。だが、小堀 夏佳(こぼり なつか)さんの歩みをたどると、それは単なる職業の変更ではなく、「価値とは何か」を問い直し続けた結果であったことが見えてくる。

大学卒業後、小堀さんは大手都市銀行に総合職として勤務した。数字や効率、合理性が重んじられる世界である。巨大な組織のなかでは、目の前のお客様から貴重な意見や要望をいただいても、それを実際のサービス改善に結びつけるまでには、多くの時間と複雑な手続きが必要だった。

小堀さんが次に選んだのは、「お客様の声」がよりダイレクトに反映され、自らも関心を持てる分野だった。生活に密着し、変化の手応えが直接届く「食」の世界。当時、この分野でスピード感を持って新しい価値をつくろうとしていた創業間もない オイシックス に転じた。

当初、小堀さんが思い描いていたのは、おしゃれなスイーツや加工品の開発だった。ところが会社から命じられたのは、最も興味のなかった野菜バイヤーの仕事だった。当時20代。野菜に特別な関心はなく、むしろ食べるのが苦手だったという。

味覚を揺さぶる「本物のきゅうり」

転機は、福島の農家から送られてきた一本のきゅうりだった。

「いいから食ってみろ」と勧められ、その場で口にした瞬間、それまでの常識が覆った。きゅうりは味がないものだと思い込んでいたが、そこには強烈な旨味と甘み、そして瑞々しさの奥に力強さがあった。

「なぜこんな味がするのか。この農家に会ってみたい。」

その思いに突き動かされて福島の畑を訪ねた小堀さんは、さらに深い教えを受ける。

きゅうりの蔓の愛らしさに触れ、「私の指にも巻きますか」と尋ねると、農家の方はこう答えた。

「姉ちゃんはイライラしてるから巻かないよ。」

作物は、窒素・リン・カリといった栄養素だけでなく、作り手の思いや気配までも吸収して育つのだという。

この経験によって、小堀さんにとって野菜は、単なる商品から、土や水や気候、そしてつくり手の愛が詰まった生きものへと一変した。単に仕入れて売るバイヤーではなく、その背後にある人の思いや土地の物語を伝えるメッセンジャーになろうと決意したのである。

以来26年間、全国の農地を歩き、名もなき名産品に「ピーチかぶ」や「かぼっコリー」といった物語を添えて世に送り出してきた「伝説のバイヤー」は、自らを「愛の野菜伝道師」と名乗り、野菜の向こう側にある、土地と人の物語を伝えるを伝える活動へと舵を切った。

在来種との出会い、食の原点

小堀さんの歩みをさらに深く方向づけたのが、在来種・固定種との出会いだった。

小堀さんは、オイシックスのバイヤー時代、農薬や化学肥料を抑えた「特別栽培」を安心の基準として取り扱ってきた。しかし、お子さんの誕生を機に、自身の食生活や「食の安全」の本質について深く考える中で出会ったのが、在来種の守り手である岩崎 政利(いわさき まさとし)さんの著書だった。

そこで突きつけられたのは、日本の野菜の9割以上が、農家が種を採ることができない「F1品種(一代交配種)」であるという衝撃の事実で、これまで扱ってきた野菜は「未来に繋がる種」なのか?「農薬の有無」という基準以前の、命の連続性に対する大きな衝撃を受けた。

「この野菜の正体を知りたい」と、即座に岩﨑さんへ電話し、長崎県雲仙の畑へ向かった小堀さん。そこで、代々その土地の記憶を繋ぎ、自家採種を繰り返す「在来種・固定種」の生命力に触れた。

「命の原点である種を繋げる野菜を、次世代に食べさせたい」と強く確信。この瞬間に、彼女の「愛の野菜伝道師」としての真の使命が定まった。

もちろん、小堀さんはF1品種を否定しているわけではない。F1品種とは、異なる特性を持つ親同士を掛け合わせて生まれる一代交配種である。多くは種苗会社が品種改良によって開発し、栽培しやすく、形が揃い、収量や病気への強さにも優れることから、戦後の食卓を豊かにし、食糧増産と安定供給を支えてきた。

一方で、その特性は次の世代にそのまま安定して受け継がれにくいため、農家は自家採種によって種をつなぐことが難しく、多くの場合、毎年あらためて種苗会社から種を購入して栽培することになる。

これに対して在来種・固定種は、その土地で種を採り、育て、また種を採るという営みを繰り返すなかで、土地の気候や土壌、人々の暮らしに馴染みながら品質が定着してきた種である。地域ごとの食べ方や保存の知恵とも結びつき、まさに土地の記憶を宿した野菜と言える。

小堀さんが強い危機感を抱くのは、その在来種・固定種が急速に姿を消しつつあることだ。市場に出回る野菜の大半が均質化されるいま、在来種は1%にも満たないとも云われる。

だからこそ小堀さんは、まず月に一度でもよいから在来種を食卓に取り入れてほしいと語る。それは単なる懐古ではなく、野菜本来の味に立ち返ることで、その土地が育んできた風土や文化、そこに生きてきた人々の記憶を、身体で感じてほしいという提案なのである。

小堀さんの歩みをさらに深く方向づけたのが、在来種・固定種との出会いだった。

感覚的なネーミングによるヒット商品

オイシックス時代、小堀さんが優れた野菜に対して抱いた感覚は、極めて直感的で強烈なものだった。

最も美しく色づき、形を成す野菜の姿に「受精の瞬間のような最高の躍動」を感じた小堀さんは、当初「官能野菜(エロティックな意味も含めた)」というネーミングを考案したが、社内での議論を経て、最終的には「農を感じる」という当て字を用いた「感農野菜」として市場に流通した。この「五感で命を感じる」という視点は、後の「愛の野菜伝道師」としての活動の核となる。

かつて野菜が「ただのカブ」「ただの小松菜」として一括りにされていた時代、小堀さんは、その個性を際立たせるために画期的なネーミングを次々と生み出した。

 食べた瞬間の驚きを直感の翻訳でそのまま言葉にし、「桃のようにジューシーだからピーチかぶ」、「コリコリ食感だからかぼっコリー」と名付けた。当時は、野菜が持つ「口の中での感覚」を伝えることが、消費者と野菜を繋ぐ最良の方法であり、次々に、ヒット商品が生まれた。

「キャッチーなネーミング」への違和感

しかし、20年以上にわたって野菜伝道師として活動する中で、小堀さんは違和感を抱くようになった。世の中にキャッチーな名前の野菜が溢れ、実態が伴わない「名前負け」した商品が増えてきたのである。

「ただ消費者の耳目を引くだけの言葉ではなく、もっと根源的な価値を伝えなければならない」との想いが、新たな挑戦へと向かわせた。

独立後の活動:厳選した「こだわりの流通」

オイシックス時代には、年間何百セットもの販売実績を築いてきたが、2020年、独立後は、より顔の見える、丁寧な流通を選択し、月に一度、日本橋の「遠忠商店」を販売拠点に、「ベジバルーンセット」をパートナーの山根氏らの助けを借りながら出荷。また、「こだわりのネットワーク」を築き、 信頼の置ける自然食店や飲食店、特別なイベント等を通じて、岩﨑さんの野菜の価値を直接届けている。

日本野菜テロワール協会

テロワールとは

ここで重要になるのが「テロワール」という考え方だ。

もともとテロワールは、フランス のワイン文化から生まれた言葉で、土地の自然条件が生み出す、その土地にしかない固有の味わいを意味する。土壌、水、地形、風、気候の違いが、同じ品種でも異なる個性をもたらすという考え方である。

だが小堀さんは、この言葉をさらに一歩広げて捉える。土や気候といった自然条件だけではない。そこに種を守り、育て、食べ継いできた人の思い、地域の歴史、文化、技術までを含めて、その土地の個性と見る。

その土地の自然風土や文化が生む、他では再現できない固有の味わいこそが、小堀さんの考えるテロワールである。

日本野菜テロワール協会 設立

2022年8月31日、「野菜の日」に小堀さんは 日本野菜テロワール協会 を設立した。

そこに込めた思いは明快だ。野菜そのものを売るのではなく、その野菜がどの土地で、どのような人々に育まれてきたのか。その背景ごと伝えることで、土地とつくり手への敬意を可視化し、野菜にアイデンティティを与えたいというのである。

テロワールは、そこに存在するだけでは価値にならない。違いを見抜き、その意味をつかみ、人に伝え、社会のなかで共有されたとき、はじめて価値になる。野菜を「一過性の商品」ではなく、「土地と人の結晶」として再定義したいという強い意志があった。

ニッポンテロワール(NIPPON TERROIR)

小堀さんは、「ニッポンテロワール(NIPPON TERROIR)」を商標として取得し、日本の食文化を世界に伝えるためのひとつの考え方として掲げている。

効率が優先されがちな現代社会において、日本各地に息づく多様な風土と、小規模であっても卓越した技術と誇りを持つつくり手こそが、日本のものづくりの源泉であるという信念がその背景にある。

フランスのテロワールが「土地(環境)」に重きを置くのに対し、小堀さんは「日本人の繊細な技術と精神性」をニッポンテロワールの最大の構成要素と定義し、単なる農産物の普及に留まらず、日本のアイデンティティとしての食文化を守り、ブランディングすることで、つくり手への最大のリスペクトを形にしようとしている。

「伝統野菜」や「地場野菜」という言葉は、国内では通じる。しかし海外の市場や一流のシェフに対しては、その背景にある価値の深さが必ずしも十分に伝わるとは限らない。そこで小堀さんは、世界に共有されている「テロワール」という言葉を手がかりに、日本の農業を単なる産業としてではなく、文化であり、時に芸術として捉え直そうとしている。

それは、日本の農家を単なる生産者としてではなく、土地の個性を育み、表現するつくり手、すなわち固有の価値を持つアーティストとして社会に位置づけ直す試みでもある。

GIが守るもの、ニッポンテロワールが問いかけるもの

この背景には、日本の食をめぐる制度への問いかけもある。

たとえば、ヨーロッパの地理的表示制度(GI)は、地域の文化や伝統製法、小規模生産者を守ることを土台に育ってきた。そこでは、何を守るべきかという「違い」が、すでに社会のなかで共有されている。だから制度は、その共有された違いを守るために存在している。一方、日本のGIは、産業振興や地域ブランド化という役割が前面に出ることが多い。

もちろん、それ自体にも意味があるが、小堀さんが問いかけるのは、その前提にある。

  • そもそも、私たちは何を「守るべき違い」として共有できているのか。
  • その土地の風土が育んだ味わいなのか。
  • 代々受け継がれてきた種なのか。
  • そこに暮らす人々の知恵や技なのか。

ニッポンテロワールは、そうした土地ごとの違いを見つめ直し、その意味を言葉にし、社会のなかで共有していこうとする試みでもある。

違いは、ただ存在するだけでは価値にならない。見いだされ、理解され、共有されたとき、はじめて守るべきものとして立ち上がる。

価値を伝わるカタチにする、山根さんとの協働

その思いを形にするうえで、重要なパートナーとなっているのが 山根 正充(やまね まさみつ) さんである。山根さんは、「合同会社くらしとデザイン舎」 を主宰し、「おだしソムリエ」としても活動している。

小堀さんが畑に立ち、その土地の畑に眠る「違い」を愛で見抜き、その意味をつかむ役割だとすれば、山根さんはそれを人に伝わる形へ翻訳する役割である。言語化、デザイン、映像。目に見えない価値を、デザインの力で共有される「価値」に変えていく。

二人の協働は、価値を生みだし、一般消費者と社会へ届けていくプロセスそのものでもある。

「飲んで食べる おだし、テロワール」

その象徴的な取り組みが「飲んで食べる おだし、テロワール」だ。

雲仙には「味の箱舟(スローフード協会)」にも認定された『雲仙こぶ高菜』のような有名な伝統野菜もあるが、それらは既に地域を挙げて守られている。一方で、岩﨑政利さんが数年前から小堀さんに伝えていたのは、「誰も見向きもしない、ひっそりと残っている赤紫大根を知ってほしい」という切実な願いだった。

「雲仙赤紫大根」は、長崎県雲仙の神代(こうじろ)という地域に土着した伝統野菜。かつて佐賀藩の鍋島家が雲仙の神代に移った際、佐賀の在来種である「女山(おんなやま)大根」を持ち込み、長い年月を経て、佐賀の赤い大根が雲仙の風土に馴染んで、独自の個性を育んだものだと伝えられている。

かつて鍋島藩は、女性たちの婚姻(貴族などとの縁組み)を通じてその勢力を広げてきた歴史的背景があり、岩﨑さんは、この赤紫大根の鮮やかな色に、歴史の中で家を支えてきた女性たちの強さや、現代における「女性の自立」へのロマンを感じ取っていた。単なる特徴としてだけでなく、この色は抗酸化作用を持つアントシアニンそのものであり、女性の「美と健康」を支える力を持っている。

世界的な認定を受けた伝統野菜には光が当たる一方で、この赤紫大根は地域でひっそりと守られてきた存在だった。小堀さんは、あえてこの「見向きもされない野菜」を主役に据えることで、伝統野菜の多様性と、埋もれた歴史(鍋島藩の女性たちの婚姻の歴史など)に再び息を吹き込もうとしたのである。

小堀さんは、「おだしソムリエ」である山根さんの知見と掛け合わせることを考案した。おだしには、母乳に近い安心感や、幸せホルモン「オキシトシン」を促す癒やしの効能があると云われている。

山根さんと共に現地を訪れ、実際に赤紫大根を1cm幅に切る工程から撮影・記録を行った。

輪切りにした雲仙赤紫大根を乾燥し、同じく雲仙産の「いりこ」を組み合わせ、素材の力をダイレクトに感じる「マグカップで食べるおだし」が誕生した。

輪切りにした雲仙赤紫大根を乾燥し、地元のいりこと組み合わせる。マグカップに入れ、お湯を注いで二分待つ。それだけで、土地の記憶が香り立つ。忙しい現代女性が毎日続けられる「簡便さ」と、伝統野菜の「物語」を両立させた。

いりこは、環境の変化で獲れにくくなったカタクチイワシではなく、硬質なマイワシをあえて選ぶことで、現代人が忘れがちな「噛んで自らの酵素(唾液)を出す」ことを促し、成長期の子どもや「ゆらぎ世代」の女性の身体の土台を作るカルシウムを丸ごと摂取できる。

この商品の価値は、便利さだけではなく、「噛む」という身体感覚を取り戻し、忙しい日常のなかに、ほんの少し立ち止まる時間を生み出していることである。

「消費されなければ、栽培を続けることはできず、種も途絶えてしまう」、この危機感を背景に、小堀さんは伝統野菜をただ保存するのではなく、現代人の生活にフィットする形へとリデザインした。これは、岩﨑さんが守ってきた「地域固有の種」を、次世代が「食べ続けられる文化」へと着地させるための、挑戦的な試みだ。

在来種の守り人 岩崎 政利 さんとの関係

岩﨑さんが守る「畑の中の多様性の小宇宙」

岩﨑さんの畑では、年間を通じて50〜70種類もの多種多様な在来種が育てられている。冬場だけでも15〜20種類ほどが収穫され、野菜の鮮度(生命力)が落ちないよう、旬のバランス考え、畑の状態を見極めながら最適なセットを組み、夏と秋冬でそれぞれ約20種類前後を選定し、種を繋ぎながら、その季節にしか味わえない「命の多様性」を消費者に提案し続けている。

在来種・自家採種の厳しい現状と新たな兆し

現在、「日本の在来種の種」を採種するには、 広大な土地や交雑を防ぐ管理が必要なため、日本国内で維持することは極めて困難な状況にあり、種苗会社が販売する多くの種が海外の隔離された環境で生産されている。一方で、大規模な流通ではなく、個人レベルで自家採種を行い、草の根の広がり的に、種をやり取りするこだわり派の生産者が近年増えつつあり、希望ある変化も見えてきたそうだ。

18年にわたる絆と文化継承

岩﨑さんとの出会いから18年。小堀さんは「美味しい野菜の普及」を超え、土地の歴史や文化を物語る「在来種とテロワール」を守る活動へと深化した。効率優先の市場では対極にある「在来種」の価値を、今もなお熱い情熱で社会へと翻訳し続けている。

愛の野菜伝道師の今後

47都道府県テロワール・プロジェクト

長崎(雲仙赤紫大根)の次は、山根氏の故郷でもある山形(だだ茶豆と渥美かぶなど)の展開が控えている。各地の伝統野菜と、その土地の出汁素材(昆布、椎茸、魚介)を組み合わせ、日本中の「土地の記憶」をパッケージ化する計画だ。

伝道師育成講座(3名の選鋭)

自分一人で全国を回るのには限界があると感じており、「物語を語れる人」のネットワーク化を急いでおられる。

「野菜を売るプロ」ではなく、「つくり手の生き様を翻訳し、他者の心に響かせるプロ」の育成である。単なる知識の伝達ではなく、小堀さんが培ってきた「引き出しの質問術」や「違いを感じ取る感性」他を伝承したい、とのこと。

新たな商品開発

「美しい漬物」の開発働く女性に向けた「美と健康」をテーマに、伝統野菜を使ったピクルスやスタイリッシュなお漬物の開発も進めています。「古臭い」と思われがちな伝統食を、現代の食卓に並びたくなる「憧れ」へと変えていく試みである。

まとめ

小堀さんは、在来種・固定種の野菜を「常に食べ続けること」を求めているのではない。その土地の風土や文化、人々の営みが宿る野菜を実際に食することで、日々の暮らしの感覚や身体の感覚をあらためて呼び覚まし、「食べることは生きること」という食の原点を再認識してほしいと考えておられる。

まずは、その価値を知り、味わってもらうことが大切なのである。日本野菜テロワール協会での活動も、そうした「知る」、「味わう」機会をつくるための取り組みである。

小堀さんは、伝統野菜を使った料理教室も開講しておられるのだが、厚かましくも、取材前にお昼ご飯をご馳走になった。どのお料理も素材を生かした滋味深い味わいで、美味しくいただいた。中でも、「飲んで食べる おだし、テロワール」の「雲仙赤紫大根」を口に含み、ゆっくり噛みしめたとき、、2014年にCOREZOで取材させていただいた当時の岩崎 政利(いわさき まさとし)さん柔和な笑顔とあの畑の風景が鮮やかによみがえった。

これこそが、小堀さんと日本野菜テロワール協会の活動が意図するところなのだろう。

実は、取材はさせてもらったものの、一般に広く流通しているものではないので、岩﨑さんの野菜そのものを口にしたのは今回が初めてだった。

背景を知らなければ、ただのお湯で戻した乾燥大根かもしれない。だが、そのひと口には、生産者の営み、小堀さんたちの思い、その土地の時間が確かに詰まっていた。

生鮮であれば、食べられる人も季節も限られてしまう。それを、手を伸ばせば誰もが味わえるパッケージにデザインしたことは、実に意義深い。

「消費されなければ、栽培を続けることはできず、種も途絶えてしまう。」

この言葉は、重い真実である。

だからこそ、小堀さんには、残すべき在来種・伝統野菜に愛を込めて光を当て、これからも進化し続ける「愛の野菜伝道師」であってほしい。

COREZOコレゾ 「日本野菜テロワール協会を立ち上げ、子どもたちに手渡すため、地域に息づく在来種野菜たちを守り、食文化として育て続ける、愛の野菜伝道師」である。

取材;2026年3月

初稿;2026年4月

文責;平野龍平

 

 

 

コメント