佐藤 美子(さとう よしこ)さん

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COREZO(コレゾ)「ズブの素人が一念発起してベリーAぶどうの自然栽培を成功させ、自然栽培の普及に力を注ぐ主婦」賞

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佐藤 美子(さとう よしこ)さん

プロフィール

岡山県井原市

ひだまりジョジョ農園

森山 登志子(もりやま としこ)さん

141115森山

プロフィール

岡山県井原市

ひだまりジョジョ農園

ジャンル

自然栽培ぶどう

無添加ワイン

受賞者のご紹介

佐藤 美子(さとう よしこ)さん、森山 登志子(もりやま としこ)さんは、岡山県井原市の「ひだまりジョジョ農園」で、「地球と人に優しい」をモットーに無農薬・無肥料でのぶどうの自然栽培と自然栽培の普及に取り組んでおられる。

井原(いばら)市は岡山県南西部、広島県との県境に位置し、ピオーネ、ニューベリーA等のぶどうが特産品だそうである。

佐藤 美子(さとう よしこ)さんとは、ある催しで知り合い、普通の主婦の方が無農薬・無肥料でのぶどうの自然栽培に取り組んでおられるとのことで興味を持ち、2014年9月、農園を見学させてもらうことになった。

昔ながらの種のあるベリーAの無農薬・無施肥栽培

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ー 育てておられるぶどうの種類は?

「ニューベリーAというのは、ジベレリンをかけて種なしにしていますが、私たちが育てているのは、昔ながらの種のあるベリーAです。」

種なしにするジベレリンとは?

ー ジベレリンって種なしにする為のホルモン剤のことですか?

「そうなんですよ。ぶどうの蕾が小さい時期にジベレリンっていう植物ホルモン剤の溶液を紙コップに入れて、一房、一房、手作業で浸漬していきます。」

ジベレリンについて調べると、「稲ばか病」というイネがヒョロ長く伸びる病気から日本で発見されたそうで、作用としては、茎、根を細長く伸ばすのが主な特徴で、デラウェアというぶどうの品種の果粒を大きくする試験を行っていた過程で、偶然に種ができずに大きくなることが発見され、種無しブドウ生産の実用化につながったという。

ジベレリンは、自然界に存在するものであり、ジベレリンを生成する能力の高い菌を培養する発酵法によって作られ、半世紀以上も使用されているが、何らかの健康被害が生じたという報告がない。また、国の機関による調査でも毒性のない部類に入れられ、植物ホルモンが動物に対して動物ホルモンと同様の作用を与える事はなく、コップで浸漬させるというジベレリン処理の方法では周囲の環境に何も影響を及ぼさない。以上により、「種なし」を好む消費者の大きなニーズがある限り、ジベレリンの使用を否定する理由は無い。

と使用を肯定する声もあれば、

ジベレリンは、2009年の段階で、136種類あるのが確認されていて、農薬用として用いられるのは、ジベレリンA3という種類で、天然のものではなく、エジプトでは、マウスにジベレリンを投与する動物実験で、乳腺ガン、肺腺ガンが見られることが確認され、警告している。わかっているのは、魚毒性A(通常の使用方法では魚介類に影響はない)というだけで、薬品会社は、ほとんど情報公開をしていない。

という声もある。

植物ホルモンとは?

また、植物ホルモンについて調べると、特に定義はなく、

「特定の器官で生産され、これが血液によって運ばれ微量で生理作用を示し、作用する特定の器官を持つ」という動物ホルモンの定義を植物に置き替え、「植物の特定の部位で生合成されて、発芽や生長・老化などの生理過程を微量で調節する有機化合物で、植物体内を作用部位へと移動して働く」

とされている。

オーキシン・ジベレリン・サイトカイニン・アブシジン酸・エチレンなどがあるそうだ。さらに、ジベレリンは抑毛剤として人用にも利用されているらしく、「植物ホルモンが動物に対して動物ホルモンと同様の作用を与える事はない」とはいえないだろう。

農作物の品種改良時の設計では、耐農薬性を使用基準の1.5〜2倍程度に見積っているらしく、それは、一般の農家は農薬、肥料を使用基準より多く使用する傾向があるからだそうで、噴霧という方法も採られているという情報もあり、使用方法、その量や管理は生産者に任されている訳だから、その賛否については、各自、お調べ頂くなりして、お考え頂きたい。

ベリーAとニューベリーAの違い

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ついでに佐藤さんたちが栽培しておられるベリーAについても調べてみた。

ベリーAの正式名称は、「マスカット・ベリーA(Muscat Bailey A)」で、新潟県の「日本のワインぶどうの父」とも呼ばれる川上善兵衛氏によって、アメリカブドウのラブルスカ種「ベーリー」にヨーロッパブドウのヴィニフェラ種「マスカット・ハンブルグ」を交配し、生まれた実生を選抜育成された黒ブドウ。

1927(昭和2)年に生まれ、その後、1940年(昭和15年)に生食・醸造用品種として公に発表されて、全国各地で栽培されるようになった。粒の大きさは5~7gくらいで、巨峰などに比べると小さいが、甘みが強く、ほどよい酸味もあり、食味のよいブドウとして知られている。

ニューベリーAという名称で売られているものは、ジベレリン処理をされた種無しのマスカット・ベリーAの名称で、但し、現在では生食向けに出荷されるものは、マスカット・ベリーAという商品名であってもほとんどが種無しになっている。

日持ちがよく、生食の他、現在、国内の赤ワイン向けブドウ品種としてはマスカット・ベリーAが最も多く作られていて、このぶどうで作られたワインはイチゴのような香り、渋み成分がまろやかなのが特徴で、ぶどうの種に含まれるタンニンがワインの風味に大きく影響するらしく、赤ワインには種ありの方が使われるとのこと。

2013(平成25)年には、「国際ブドウ・ワイン機構」への品種登録が行われ、ワインをEU諸国へ輸出する際に、マスカットベリーAの品種名をラベルに記載できるようになったそうだ。

マスカット・オブ・アレキサンドリア

マスカットと聞いて頭に浮かぶのは、黄緑色のマスカット・オブ・アレキサンドリアだが、こちらも調べてみた。

名前の由来は、原産地のエジプトのアレキサンドリア港から各地へ輸出されていたことから、「アレキサンドリアのマスカット」と呼ばれるようになったのが、名称の由来らしく、「マスカット」は、「MUSK=じゃこう」が語源とされ、ジャコウのような香りがする、あるいは、ジャコウのように強く芳醇な香りがするブドウとして名付けられたと云われていて、繊細なぶどうで手間が掛かり、栽培の難しい品種だそうだ。

マスカット・オブ・アレキサンドリアはデラウエアなどのようにジベレリン処理だけでは、種無し果にする事ができない品種の為、長年ずっと種有りのブドウとして定着してきたが、種無しにする技術が開発されていないわけではなく、ストレプトマイシン(抗結核性抗生物質)とジベレリン、それにフルメット(合成されたサイトカイニン)を用いた手法があり、一部には種無し果も出回っている都のこと。

ぶどうの主な産地の生産高順位は、上位から、甲州ぶどうで知られる山梨県25%、長野県15%、山形県10%、岡山県8%。品種別の栽培面積は上位から、巨峰35%、デラウェア19%、ピオーネ16%、・・・、マスカットベリーAは6位の3%だそうだ。

慣行栽培をしていたぶどう園を引き継ぐ

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ー ここのブドウの樹は地主さんが育てておられたのを引き継がれたのですか?

「はい、ここにあるのは、地主さんが育てておられた15歳ぐらいの木です。地主さんがこのぶどう園での栽培を止めると云うことで、私たちがお借りすることになりました。山のほぼてっぺんにあるこのブドウ園の景色が気に入ったのと、無農薬かつ草生栽培でやっていくので、周囲とのあつれきを避けたかったこともあり、周囲に地主さんのぶどう園以外はないことが大きな決め手でした。」

「2011年の冬に借りて、地主さんは、慣行栽培されていたので、大麦を蒔いて、生やし、土中の窒素を抜いて始めましたが、1年目は、肥料が残っているところは、甘いのですが、酸味が薄く、味がぼんやりしていて、味にバラツキがありました。」

慣行栽培とは?

※慣行栽培とは、ある農協のサイトによると、普通一般に行われている栽培方法のことで、日本で普通一般に行われている栽培方法とは、化学肥料(有機質肥料を一部使ったとしても一般的には主体的な肥料として化成肥料が使われている)や農薬と言われる化学物質を使い、病害虫の防除を行う栽培方法。世界中でも一般に広く行われているのがこの方法とある。

ー 肥料が入っていないところの方がおいしいのですか?

佐藤「美味しいと思います。無肥料2年目には、どのぶどうも均等に酸味と甘みのしっかりした濃厚な味になりました。また、粒が裂果したり、中に虫が入ることも、年々、減ってきました。」

ー この辺りで他に自然栽培をやっているぶどう園はないのですか?

佐藤「おそらく、井原ではここだけだと思います。去年、ぶどうの自然栽培の講習会をここで3回やったのですが、それに参加された方が、苗木を植えて始めておられます。ベリーAはマスカットと違って丈夫な品種で、芽が途中で折れてもまた芽が出て来たり、生命力が強いですね。品種改良されている品種ほど、農薬や化学肥料とセットで栽培しないと難しいようです。どのタイミングでどの農薬をどれぐらい撒きなさいと云う防除カレンダーというのがあるのですが、こんなに何回も農薬を撒くのかと、びっくりしました。」

ぶどうの自然栽培を始めるきっかけ

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−− そもそも、ぶどうを自然栽培されるようになったきっかけは?

佐藤「10数年前に新築のマンションに入居したのがきっかけで、家族全員シックハウス症候群というか、体調が悪くなって、子供が突然ぜんそくの発作をおこして入院しました。上の子供もじんましんを発症したり、咳が出たり、家族が皆、風邪をひきやすくなりました。今思えば、免疫力がかなり落ちていたのだと思います。」

「私自身も、転勤のたびに新築にばかり入居していたせいか、化学物質が身体に蓄積していたのでしょうね、化学物質過敏症を発症して大変な状態になりました。アレルギーと同じように、許容量を超えるとコップから水が溢れるように一気に症状が出るようです。」

「アレルギーも化学物質と関係が深いと思います。ホルムアルデヒドやアセトアルデヒド他、13種類の物質を厚労省が濃度指針値を示して規制しているようですが、規制されると、それに代わる新たな化学物質を使っていて、それが安全なというわけではなく、実験台にされているのと同じだと思います。」

「下の子供は、毎年秋になるとぜんそくの発作をおこしておりましたが、入居後3年目に、肺炎とぜんそくを併発して入院したのですが、抗生剤の点滴に反応したのか、全身に紅班ができ、アナフィラキシー(急性の全身性かつ重度のアレルギー反応)の一歩手前の状態になりました。」

「幸い、薬をやめてなんとか快方に向かいましたが、このことがきっかけとなって、子供の体質を変えるためにできることはなんでもしようと、デトックスについて調べたり、家庭菜園で有機無農薬の野菜を作り始めました。次第に、自分たちが食べるものは自分で作る暮らしがしたいと思うようになりました。」

佐藤「それで、2010年に実家があるこちらに帰ってきて、いろんな果樹やぶどうの木も植えたのですが、他と違って本を読んでも仕立て方や栽培方法がよくわからなかったので、2011年にぶどうの栽培講習会に参加したところ、秋も深まった頃に、休止予定のブドウ園を借りませんか?と云うお手紙が来て、見学に来たのが、このぶどう園を借りるきっかけになりました。」

佐藤さんと森山さんの出会い

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ー お二人が知り合われたのは?

森山「ウチは純粋な農家ではなくて、兼業農家でした。私は勤めに出ていて、稲刈りを手伝うぐらいでほとんど農業はしていなかったのですが、両親が亡くなって、家庭菜園として、無農薬で野菜を育ててみようかなって始めました。」

「佐藤さんとは、奇跡のリンゴで有名な方が、岡山の桃園に来られた時の集会で知り合いました。私は、その方の指導する自然栽培実行委員会と云うNPOに参加していて、以前は頼んで作ってもらっていたのですが、その方ができなくなって、4年前から自然栽培でお米を作っています。いろいろやって、最終的に行き着くのが自然栽培かもしれませんね。」

佐藤「そこで意気投合した森山さんともう一人の女性の3人で集まって、自然栽培を普及する会を作ろうという話をしていたんですが、3人で見に来て、私は、田んぼも何もなかったので、ここの景色が良かったもので、お借りしてぶどうを栽培することになりました。」

ー 面積は?

「区画が2つあり、こちらが270坪で、向うが120坪です。」

無農薬でも虫喰いがない理由

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ー 来る前にざっと調べたところ、本州では、品種によって10〜20回、数種類の農薬をかけるらしいのですが、ここのぶどうは虫に食われているようには見えませんね?

佐藤「このぶどう園は生物が共生する自然環境があるのでクモがスゴくたくさんいます。ムカデもカマキリもいるし、ぶどうの害虫の天敵がいるので、ある特定の種類の虫が異常発生することがありません。」

森山「堆肥とか肥料をやっていないから虫が少ないのだと思います。余分な堆肥が硝酸態窒素になります。それを人間が食べたら害になるから、虫が寄って来て食べてくれているのです。野菜でも虫食いがあるのは、窒素の肥料が多い野菜はニオイを出していて、それに虫が寄って来るようです。」

「肥料が多いとか、弱っている作物には虫が寄って来るけど、本当の自然栽培の元気な土になって、元気な作物には虫は来ません。だから、有機野菜に虫食いがあるから安全ですよ、と云うのは、私たちからすれば、有機肥料のやり過ぎで窒素分が多いとも考えられますから、それに関しては鵜呑みにできないですね。」

「本当に健康な野菜は硝酸態窒素の含有量を検査して出荷するじゃないですか?関西の有名な高級スーパーではそういうことにも気を配っているそうですよ。」

硝酸態窒素とは?

植物の成長に必要な栄養素の内、特に窒素、リン酸、カリウムが、三大栄養素として挙げられ、窒素は、主に硝酸態窒素(NO3)として植物に吸収される。ヒトをはじめとする多くの動物が多量の食物を摂取した際に、飢餓状態に備えて余剰の栄養素を脂肪として体内に蓄積するように、植物は摂取した硝酸態窒素の余剰分を、栄養素を吸収できない場合に備えて蓄えるそうだ。化学肥料、有機肥料を問わず、多くの肥料を与えて栽培した野菜には、多くの硝酸態窒素が含まれるという。

また、硝酸態窒素とは、水中の硝酸イオンと硝酸塩に含まれている窒素のことで、これによる飲料水の汚染が世界的に問題になっていて、わが国でも厚生労働省が水道水に含まれる「硝酸態窒素および亜硝酸態窒素」の基準値を10mg/l以下と定め、環境省も水に対して同じ環境基準を設定している。

硝酸態窒素の危険性は硝酸塩と同じで、血液中でヘモグロビンと結合し、血液の酸素運搬能力を奪い、特に乳幼児を窒息死の危険に曝し、さらに、硝酸態窒素が体内で亜硝酸態窒素に変化すると、発ガン物質になり、毒性も強くなるそうだ。ちなみに、非加熱のソーセージには、細菌繁殖を抑制するために亜硝酸塩である亜硝酸ナトリウムの添加が義務づけられているらしい。

ー 水の硝酸態窒素汚染も問題になっていて、ペットボトルで販売されている天然水も少なからず汚染されているそうですね?

森山「肥料のやり過ぎや畜産の糞尿も土壌汚染、地下水の汚染に繋がっていると云われ、問題になっています。硝酸態窒素の危険性は、硝酸態窒素を多く含むホウレンソウなんかをすり潰して、乳幼児に食べさせたりすると、ブルーベビー症候群(メトヘモグロビン血症;体内が酸欠状態になり、全身が真っ青になることから名付けられた)を発症することもあるそうです。」

周囲の理解は?

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ー 周りに他のぶどう園がないにせよ、無農薬でぶどうを育てることには周囲の理解を得られたのですか?

佐藤「何か病気が出たり、虫が大発生したら、すぐに報告するように言われています。」

森山「この自然栽培の土が健全になったら、虫が来たとしても、ここより、堆肥の入っている土で育った作物を好むので、Uターンをしてそっちに行くんですけどもね、その辺のところの皆さん方の理解がないんですよ。」

自然栽培ぶどうの栽培方法

佐藤「実は、いろいろ指導をして下さった先生がいらっしゃって・・・。」

森山「私は、自然栽培を学ぶために京都へ毎月1回、半年ほど通いました。その時の果樹の先生が、広島県の農業普及員をされていた方で、現在は、自然栽培では草分け的存在の有名なグループで、果樹栽培の講師をされており、ご自身もお父さんがされていた柑橘系の農園を引き継がれているのですが、その後、ウチの畑にみかんを植えてみようかなと思って、その先生に栽培方法の指導を受けに行ってから、懇意にして頂くようになりました。」

佐藤「それで、自然栽培を普及しようという私たち3人がきちんと理解して、人に伝えられるようにしようということで、その広島の先生を講師としてお招きして、講習会を開催しました。その時、私は、その先生に初めて会ったのですが、ブログで情報発信していますという話をしていたら、ぶどう園を借りました、と云う記事を読まれて、指導しますよと云うコメントを下さって、教えて頂くことになりました。」

佐藤「土づくりだけではダメだと云うことで、その先生が考案された特別な選定方法も教わりました。私たちはブドウ栽培のことは何も知らなかったので、言われた通りにやりました。見に来られたこの辺りのぶどう部会の方たちやいろんな方々から、こんなんじゃダメ、とか散々云われたので、できたら奇跡だねって、1年目の収穫予想は『0』だったのですが、ちゃんとできて、ここで収穫祭も催すことが出来ましたよ、ハハハハ。」

森山「前の年の肥料分が残っているから今年はできたけど、次の年はできないよって云われましたが、2年目はさらにおいしいぶどうができました。3年目の今年は、日照時間とか天候のせいで色づきが悪いのと、去年、房を小さくし過ぎたので、今年は大きめにしようとしたら、大きくなり過ぎちゃいました、ハハハハ。」

年間の作業

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佐藤「2月頃、剪定し、雨に濡れると病気になりやすいので、芽が出る前、3月から4月にビニールトンネルをかけます。5月に入ると、ぶどうの芽はどんどん成長してきますが、それぞれの枝に出てきた芽を1本だけ残して、残りは全て取除く『芽かき』をし、その後、上に向かって伸びる芽をトンネルの骨組みにかけた針金に留める『誘因』という作業をします。」

「ところが、『芽かき』をする時は元気な枝を残すことしか考えていなかったので、『誘引』したい方向に都合のよい芽を選んで芽かきしておかないと、ポキッと根元から折れてしまいます。初心者ならではの失敗で、誘引を繰り返して初めて、元気でなおかつ誘引しやすい芽が理想だということが、わかってきます。
それに芽の伸び方は木や枝によって異なりますし、人間の都合には全く合わせてもらえなくて、待ったなしの作業の連続です。」

森山「その後、ぶどうのつぼみが大きくなると、一枝にぶどう一房にする『摘穂』をして、花穂の整理作業をします。7月になると、房もだんだん大きくなり、粒と粒の間に全く隙間がなくなってきます。さらに粒が大きくなると潰れる粒が出てきて、それが腐って全体に広がらないように、房の中の方にある粒を間引いてゆとりを持たせます。当たり前ですけど、全て手作業です。」

「最後に、ぶどうの房を病気や害虫から保護するために白い紙袋で覆う袋かけの作業をして、あとは収穫を待つばかりとなります。ところが、初年度は、周辺のぶどう農園が毛虫の大量発生で被害を受ける中、虫はあまりつかなかったのですが、猿には困りました。」

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「猿除けネットを設置しても、よじのぼったり、破ったり、下をくぐったりして、ぶどうを食べに来ました。それで考えた秘策が、飼い犬をブドウ園に連れてきて、ブドウ園の周囲にマーキングをさせること。これを続けていたら、猿はぱたりと来なくなりました。ぶどう園の名前にあるジョジョというのは、佐藤さんの愛犬の名前なんですよ。」

出荷すると自然栽培の区別がない現実

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ー 収穫したぶどうは?

佐藤「ワイン用に500kgと、広島の先生が講師をしておられる自然食品店と某百貨店に僅かですが出荷しました。後は、知り合いとかにオトモダチ価格で買って頂いているって感じですね。」

ー ワイン用ということは、他の慣行栽培でつくられたぶどうと一緒くたにされるってことですか?

佐藤「そうです。価格も同じなんですよ。私たちは、自分たちが安全なものを食べたいということで始めましたから、初年度はぶどうの収穫も期待してなかったし、赤字も覚悟の上でした。ぶどうができたらラッキーくらいに思っていました。」

「素人が、初年度から収穫することが出来てしまって、生産者の皆さんにはおこがましくて申し訳ないぐらいですが、自然栽培というのは、生活の糧にしておられる生産者の方々にとっては、リスクが大きいですし、素人の主婦だから、できたのかもしれません。」

「でも、せっかく、広島の先生や地主さん、さまざまな方々のご縁や応援があって、無施肥、無農薬で、育てたのですから、農薬をかけた他のぶどうと一緒にワインにされるのは残念な気持ちもあります。もちろん、自然栽培でぶどうを収穫できただけでも大満足だったのですが、自然栽培のぶどうとして食べてもらいたいなぁ、ってだんだん思うようになりました。」

自然栽培ぶどうのワイン

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「そうしたければ、生食用で販売しきれない分は加工用としても考えなければなりません。いつか自分たちのぶどうだけでワインができたらいいなぁ、と夢見ていましたが、ちょうど食や自然栽培の講演会のイベントで物販をすることになり、自然栽培ぶどうの加工品としてワインを出そうということになり、いろいろなワイナリーに電話をしてみました。」

ー なんでもやりはりますね?

佐藤「広島のワイナリーに電話をして、たまたま出て下さった方が、ニュージーランドで醸造を勉強してワインを造っておられて、去年、日本に帰られてそのワイナリーに入社されたようで、自然栽培のぶどうには興味があるので、上司に掛け合ってみるとおっしゃって下さったんですよ。それで、有難いことに、今年、試しに200kg分作って下さることになって、販売に必要な酒販免許も取ろうかと思っています。」

ー ワインを飲み過ぎると頭が痛くなるので、酸化防止剤のせいかなと思って、あまり飲まないのですが、有名なソムリエの方から、ごく微量でも酸化防止剤を入れないとワインにならないと聞いたことがあります。

佐藤「そうです、亜硫酸塩ですよね。自然栽培のぶどうでワインを造る意味がないから、それは入れたくないって云ったら、超ボジョレーヌーボーのような状態で、低温保存して、1週間以内には飲んでもらうようなワインになります、と云われました。」

ワインの酸化防止剤

ワインの酸化防止剤について調べてみた。

ソルビン酸ナトリウムや亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄が代表的なもので、殺菌作用(ワイン造りには好ましくない酢酸菌等の雑菌を排除し、腐敗を防ぐ)、酵母の働きを抑制する作用、酸化防止作用があるというのが使用する理由。

古代ローマ時代、ワインを保存する壷に、ワインを入れる前に、硫黄のかたまりを燃やして二酸化硫黄を発生させ、雑菌の繁殖を防いでいたと云う記録が残っているらしく、それだけの歴史があり、以来、今日に至るまで、亜硫酸塩はワインの品質を保つ必須の原材料として、日常的に使用され続けている。

また、ワインの本場フランスを始め、ワイン生産国であるEU諸国では、酸化防止剤をワインに添加するのは当たり前の事で、表示義務さえなく、ある一定クラス以上のフランスワインは、法律で酸化防止剤の添加が義務付けられていて、現在、世界の有機ワインづくりにおいても亜硫酸塩の使用を認めているという。

まず、発酵前のぶどうに添加することによって果汁が傷むのを防止し、雑菌の繁殖も抑えることができる。その後、完成したワインをボトリングする直前にも添加することにより、ワインそのものの酸化を防ぎ、瓶内の雑菌の繁殖を抑えられる。勿論、二回とも添加する量は本当にごく微量で、日本の食品衛生法で定められている使用上限は0.35ppm=0.35mg/lだそうで、このくらいならば、まず人体に悪影響を及ぼす恐れはないとされる。

「酸化防止剤無添加ワイン」とは?

「ワイン、酸化防止剤」で、検索すると、大手メーカーの「酸化防止剤無添加ワイン」が次々に上位にヒットする。それが、一様に価格が安く、コルク栓ではなく、スクリューキャップなのである。

察しのいい方なら、もうお気づきのことだろう。酸化防止剤無添加で製造するには、原料輸入(輸送)や醸造行程の中で原料ブドウが雑菌類に侵されないように処理を施したり、出来上がったワインを日本酒のように加熱殺菌(フランスではワインの火入れは違法)したり、細菌を除去する特殊なセラミックフィルター等を使用して濾過するなど、製品が変質しないための処理を行なう必要がある。

これらの処理がなされたものは、通常の醸造法に比べて本来あるべき新鮮な果実の風味を多かれ少なかれ失われてしまって、しかも熱処理をされないものは冷蔵保存が必要になるなど、実は「本来の普通のワイン」ではなくなってしまっているという。通りで、「酸化防止剤無添加ワイン」は美味しくないはずだ。

日本にはワインの定義を定めた法律がないってホント⁉︎

世界各地の主要なワイン産出国では、ワインを定義する「ワイン法」があって、欧州の場合にはEUで定めたワイン法があり、「ワインは新鮮なブドウまたはブドウ果汁を醸造した酒」と定められているが、一方、日本にはワイン法自体がなく、「何がワインなのか」が法律で定められていない代わりに、一部のワイナリーが所属しているワイナリー協会という民間の任意組織があり、そこが定める「国産ワインに関する自主基準」があるそうだ。

日本の国産ワインとは?

それによると、国産ワインは「原料が日本産か海外産かに関わらず、日本で製造・販売する全てのワイン」を指し、さらに使用した果実の全部又は一部がブドウであればよく、ちなみに瓶詰めする工程だけでも日本で製造したと見なされるようだ。

つまり、外国から持ち込んだ濃縮果汁を水で薄め、さらに砂糖や水あめを加えて発酵させても国産ワイン、原料全てがブドウでなくても国産ワイン、さらには海外から持ち込んだワインにこれらを混ぜても国産ワインになるということである。海外でワインを生産する主要国でワインとして認められていないものが「ワイン」としてまかり通り、海外産の原料を使っていても「国産」とされていると云う。

ワインの陳列棚で日の丸マークの付いた国産ワインのコーナーに並んでいるワインの大半は、実は果汁を煮詰めて濃縮した輸入濃縮果汁を使ったワインで、なかでもひときわ目を引くのが、酸化防止剤無添加や無添加と称するワイン。昨今の消費者の自然志向の流れに乗り、この手のワインが売り上げを伸ばしているらしい。

ワインを選ぶのにも知識が必要

それら大手が積極的に売り出している「酸化防止剤無添加ワイン」は、一時のビオワインブーム(ワインに適した良質なぶどうが穫れないワイナリーの生き残り策として、盛んに造られたという説もある)のような通常のワイン醸造工程内でただ酸化防止剤を使用しなかっただけの造り方ではなく、コマーシャルベースなのが容易に推察できる。

但し、酸化防止剤である亜硫酸塩は、一般的に健康な人であるのならば、特に問題はないようだが、気管の弱い人には喘息を引き起こすくらい非常に厄介な物質で、喘息患者の方も安心して飲めるよう亜硫酸を使わない「酸化防止剤無添加ワイン」を、もう何十年も造り続けている日本の中小のワインメーカーもあるそうだ。

また、ワインに添加された酸化防止剤(亜硫酸塩)は、時間の経過と共に化学変化を起こして無害な物質へと変化してしまうという説もあり、長期熟成された古いワインほどこの物質の影響は少なくなっていくと考えられていて、高級なワインでは、一房ずつ、マッチの煙を燻らせる手間をかけた方法をとっているところもあるという。

更に、非常にタンニンが多いワインであれば酸化防止剤添加の必要がない場合があったり、また、二酸化硫黄は空気中に存在し、ワイン醸造過程でも発生することもあり、そのため人間が加えなくても、ワインの中から自然由来の亜硫酸塩が検出されることもあるとのこと。

すっきりした酸味も程よく、自然で上品な甘さ

ー これからの取り組みについてお聞かせ下さい。

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佐藤「ぶどうに関しては自然栽培の価値とこのぶどうのおいしさをわかって下さる皆さんへの生食用の販売を増やすことと、加工用には、無添加のワインを造っていきたいですね。」

森山「それと先程も申しましたが、自然栽培の良さを伝え、取り組む仲間を増やしていきたいです。」

見晴らしがよく、本当に気持ちのいいぶどう園だ。ぶどう園の中とすぐ近くの木陰で、3時間以上お話を伺った。これだけ手間が掛かり、丹精を込めて育てて来られたベリーAを加工用に出荷すると、気の毒なぐらいの安値で取引されているようだ。心ある生産者とその価値がわかる消費者とを直接結ぶネットワークの構築が急務であろう。

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せっかくなので自宅用とお土産用に少し分けて頂いた。ここ10年以上、ベリーAはスーパーの店頭では見かけることがなく、最後に食べたのはいつか思い出せないぐらい久しぶりだったが、こんなに甘かったかと思うぐらい甘くて、それも今のぶどうに多いクドい甘さではなく、自然で上品な甘さで、すっきりした酸味も程よく、実においしかった。

warmerwarmerの高橋一也さんが、農法は生産者の生き方そのものだとおっしゃっていたが、作物にも生産者の人柄が表れるような気がした。今夏の日照時間が少なくて色づきが悪いとおっしゃる粒でも十分に甘く、お配りした皆さんからも大好評だった。これは、上手く宣伝すれば、確実に売れると思う。このぶどうで造ったフレッシュなワインも是非飲んでみたい。

タネを出すのも何の手間でもない。命を繋ぐ植物にタネがないこと自体がおかしいことに気づいて欲しいものだ。

毎年、秋を迎える楽しみがひとつ増えた。年々、おいしいぶどうを育てて頂きたい。

COREZO(コレゾ)「ズブの素人が一念発起して、ベリーAぶどうの自然栽培を成功させ、自然栽培の普及に力を注ぐ主婦」である。

佐藤 美子(さとう よしこ)さん、森山 登志子(もりやま としこ)さんに関するお問い合わせは

メールで、info@corezo.org まで

※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、一切、返答致しません。

COREZO(コレゾ)賞 事務局

編集更新;2014.11.15.

最終取材;2014.09.

編集更新;2015.03.23.

文責;平野 龍平

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