小森 耕太(こもり こうた)さん/八女市黒木町笠原・山村塾

COREZOコレゾ「都市と農山村の境を低くし、住民同士の交流から、棚田や山林他、豊かな自然環境の保全活動を促進する若きリーダー」賞

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小森 耕太(こもり こうた)さん

プロフィール

福岡県八女市黒木町笠原

NPO法人山村塾 事務局長

ジャンル

まちづくり

経歴・実績

1975年福岡市生まれ。

2000年3月九州芸術工科大学芸術工学部環境設計学科卒業。

受賞者のご紹介

北島力さんのご紹介で、山村塾の事務局長の小森 耕太(こもり こうた)さんを訪問した。

現在の山村塾は、棚田や里山に囲まれた中山間地域である黒木町笠原の閉校した笠原東小学校の校舎を利用した笠原東交流センター内にあった。

—こちらのご出身ですか?

「いいえ、福岡市で生まれ育ったのですが、大学時代に山村塾の活動と出会い、2000年4月から山村塾事務局スタッフとして八女郡黒木町に移住しました。」

山村塾とは?

 

「この辺りは、ご覧になられたように自然豊かな山里で農林業が主な産業です。しかし、過疎化が進む地域であり、また、1991年の大型台風17号、19号によって九州北部は大きな被害を受け、この辺りもスギ・ヒノキ林の風倒木災害が生じ、1993年には、記録的な冷夏で米不足が生じ、食糧自給の必要性や針葉樹一辺倒の見直しについて、市民の意識も高まりつつありました。」

「そんな中、山村塾の受け入れ農家の1軒である椿原さんは、以前から合鴨による米作りや有機農業を手がけ、産直グループや生協の生産者として消費者との交流活動を行っていたが、短時間の見学ツアーや単発的なイベントなど、その場限りの交流になってしまい、受け入れの労苦に比して満足されていませんでした。また、もう1軒の受け入れ農家の宮園さんは、生協グループの協力で、風倒木被害地に広葉樹の植林を仕掛けたものの、その後の管理に頭を悩ませていました。」

都市と農山村とが一体となり、棚田や山林、豊かな環境を保全

「1994年、『米づくりを教えて欲しい』と訪ねてきた初代山村塾の事務局長となる方と椿原さん、宮園さんと話が弾み、『都市と農山村とが一体となり、棚田や山林といった豊かな環境を保全する』ことを目的に、この2軒の受け入れ農家が中心となり、都市住民の皆さんに農業と中山間地域の生活を体験してもらう交流拠点として、山村塾を発足し、『稲作体験コース』と『山林体験コース』から会員募集が始まりました。」

「設立当初の会員数は、31口でしたが、受け入れ側の『楽しくなくなったらやめよう』という緩やかなスタンスと、農山村の自然を守りたいという熱い気持ちに惹かれて、次第に人が集まり、活動の幅も規模も大きくなっています。」

国際里山・田園保全ワーキングホリデー

—具体的には、どのような活動を?

「山村塾の活動の幅が広がった一つに、1997年に始まった『国際里山・田園保全ワーキングホリデー』が挙げられます。僕が山村塾に関わるきっかけにもなったのですが、英国の環境保全グループであるBTCVや九州大学芸術工学部重松研究室などと連携した取り組みで、日本各地はもとより、世界から様々な年代のボランティアが集まり、10日間の合宿生活を通じて、人工林の手入れや遊歩道整備、棚田の石垣修復などを行いました。」

「ワーキングホリデーを生んだBTCVでは、コーヒーブレイクをもじって、ナチュラルブレイクという表現を使い、自然の中で汗を流す休暇を呼びかけています。休暇ですから、誰もが気軽に安全に楽しめる活動であることが重要で、そのためには、活動を支える人材や安全に対しての配慮が欠かせません。また、グループで協力しながら活動するための気配りも必要です。このワーキングホリデーの受け入れを通じて、山村塾がそれらのノウハウを得ることができたことは、大きな成果でした。」

荒廃していく里山の保全管理を担う仕組みづくり

「そういうノウハウを活かして、ノコ、ナタ、チェーンソーの使い方、安全な伐木作業などの技術講習をする『山仕事講座』や無農薬による野菜作りを通して、トラクターや耕耘機、草刈機など農作業に必要な機械の講習、堆肥の作り方から始まる土作り講座の他、農具の使い方や身体を痛めないための作業方法も盛り込んだ『農体験塾』の他、グループでのボランティア活動を支援する『ボランティアリーダー講座』も開設しています。これらの講座は、都会の人が農山村に入り込むきっかけを提供すると同時に、安全な技術を身につけたボランティアが、荒廃していく里山の保全管理を担う仕組みづくりを目指しています。」

四季折々、普段の生活を親子、家族ぐるみで体験

「山村塾の活動で大切にしているのは、お客さん扱いをしないで、普段通りの食事、作業、日常を見せること。年間を通じた活動に参加してもらい、景色や気候、においや味といった季節を丸ごと体験してもらうこと。親子、家族ぐるみで体験を共有してもらうことです。」

笠原棚田米サポータ―制度

 

—今後の抱負を

「こちらに来られる道中でもその爪痕をご覧になられたかと思いますが、この辺りは、2012年に起きた九州北部豪雨で甚大な被害を被り、離農する住民や都会に住む子どものもとに身を寄せる住民が増え、過疎化にさらに拍車がかかっています。そこで、棚田で米づくりをする農家を支援しようと、安定して米がつくれるように棚田米を5年間継続して購入してくれる人を募集する『笠原棚田米サポータ―制度』を始めました。5年というのは口約束ですが、志が大切です。実際の契約は1年毎で、1口(年間60キロ)4万5千円で、契約農家から毎月5キロずつ棚田米が発送されます。」

気軽に、農林業、農山村にかかわり、支えあえる仕組みづくり

「食料自給率が40%を切ったと騒がれていますが、大規模で効率的な農業生産を目指すことが効果的な解決策なのでしょうか?農山村で暮らしていると、その結果として、出荷品目以外の野菜づくりを止めたり、米づくりも止めざるを得ない状況が生れているのも見えてきます。作り手が自給に目を向けることが出来ない世の中なのだから、消費者に国内自給の大切さを訴えても響かないでしょう。時間やノルマに追われる暮らしになれば、都会となんら変わらなくなり、都会の人が求める『農山村』は失われてしまうのです。」

「近年、農的な田舎暮らしに憧れる人が増えているようですが、山村塾は、農山村の日常生活を体験する多様なメニューを提供することで、様々な目的や経験を持つ人を受け入れることが可能です。そして、都市と農山村の境を低くし、もっと多くの人が気軽に、農林業、農山村にかかわり、互いに支えあうことができるような仕組みをつくっています。」

「山村塾の取り組みは、一見、非効率的に見えますが、農山村の持つ魅力を引き出し、多くの協力者や農山村のファンを育てることで、着実に農家の暮らしを支え、農山村の担い手の育成に貢献できるひとつひとつのカタチではないかと考えています。」

深刻になるより、ひとりひとりが楽しく汗を流すこと

「環境問題や農山村の課題を考えるとついつい深刻になってしまいがちですが、ひとりひとりが楽しく汗を流すことこそが、解決のひとつの手掛かりになります。その輪を広げることが重要だと考えています。」

その日も外国人を含む若者たちが農作業をはじめ地域のボランティア活動に汗を流していて、着実に輪が広がっていると感じた。

COREZOコレゾ「都市と農山村の境を低くし、住民同士の交流から、棚田や山林他、豊かな自然環境の保全活動を促進する若きリーダー」である。

※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、一切、返答致しません。

COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2015.11.25.

最終取材;2015.11.

最終更新;2015.11.25.

文責;平野 龍平

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