鳥山 欽示(とりやま きんじ)さん

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COREZO(コレゾ)「食の現場を家庭に取り戻したいと、伝統製法を守りながら、その先の食べ方、楽しみ方を提案し、新たな可能性を創る、味噌醤油醸造元9代目」賞

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鳥山 欽示(とりやま きんじ)さん

プロフィール

愛知県西尾市

株式会社はと屋 代表取締役

みそぱーく

みそ一級技能士

ジャンル

食づくり

味噌づくり

醤油づくり

伝統文化継承

受賞者のご紹介

鳥山 欽示(とりやま きんじ)さんは、1958年、愛知県西尾市生まれ、同志社大学商学部卒業後、1981年、タニザワフーズに入社。同社退職後、1983年、株式会社はと屋に入社し、1988年、同社代表取締役に就任。愛知県西尾市で、豆みそ、たまり、白しょうゆの醸造元で、味噌醤油を楽しむテーマパーク、「みそぱーく」を運営する株式会社はと屋の9代目である。

2014年10月、COREZO(コレゾ)財団、中部支部、碧南地区総長補佐代理心得見習の、COREZO(コレゾ)財団とは関係なく、モーソーでセカイセーフクを窺うBLKニナガワこと、日東醸造の蜷川さんが、碧南の東隣の西尾市に、本業は豆味噌と白しょうゆ屋さんだけど、自社の商品を使った飲食業もやっておられるところがあるのでそこで食事をしましょう、とお連れ頂いた。

『赤白おでん・鶏料理 傳の蔵』

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とっぷり日が暮れて、辺りが暗くなっていたので、雰囲気はよくわからなかったが、レストランや味噌蔵が並ぶ町並みを通り抜けた奥にある蔵は、「傳の蔵」というお店で、中に入ると、落ち着いた大人の雰囲気のとてもお洒落なバーだった。全然、似つかわしくないおっさん二人で、ビールを飲み始めたところに、鳥山さんが来られた。

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挨拶と乾杯を交わして、まず、出して頂いたのが、「西尾おでん」だった。

ご自慢の豆味噌(色は八丁味噌をご想像頂きたい)を使った「赤おでん」だそうで、大根が真っ黒なのだが、見た目ほど、塩辛くなく、とてもコクがあって美味しい。これがおでんと聞くと、へんこつ関西人にはちょっと違和感がありそうだが、ところ変われば、品も味も変わるわけで、うまけりゃ何でOKのワタクシには、一緒に盛り付けられた玉子と豚の角煮も味わい深く、ビールが進む、進む。ちなみに、白しょうゆを使った「白おでん」もあるそうだ。

次に、澤田酒造さんで澤田社長からオススメ頂いた「冷おろし白老千本錦」を飲みましょうということになって、「たまり」で軽く漬けにしたマグロが出てきたのだが、これとお酒との相性抜群で、飲む、飲む。澤田社長が、地元の料理を引き立てるお酒とおっしゃっていたが、その通りだった。

醸造元ならではの究極の料理とは?

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さらに、鳥山社長が、「赤ワインに合うたまりの料理があるんですよ。」と出して頂いたのが、ローストした合鴨に濃厚なたまりをかけた一品で、脂がのった鴨肉に濃厚なたまりの旨味が絡んで、これがめちゃウマ〜、赤ワインに合う、合う、合う。思わず唸って、赤ワインをお代わりしてしまった。

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「豆味噌は木桶に仕込んで上に重石を載せて、3年間、熟成しますが、3年経つと、桶の重石の下には、赤黒褐色の濃厚な『たまり』が溜まってきます。その『たまり』の濃厚度合は、弊社の『昔たまり』の倍以上、通常の醤油と比べれば5倍くらい濃厚です。醤油と違って味噌のたまりですので塩分濃度は12%弱ですから、濃厚なのに塩分が少ないのです。従って、旨味が甘味として感じられ、味醂なども必要ありません。これは、その、まさに「たまり」をソースのように使って仕上げた醸造元ならではの究極の料理です。」

「たまり」恐るべし、ヘタなソースなんかより断然ウマい。この一品で、ワタクシのイタイケなお口と胃袋は完全に鷲掴みにされてしまった。その他にもいろいろ飲んで食べて、最後に、沢庵にカマンベールを乗せ、黒胡椒を利かせたつまみをアテに食後酒を頂いて、すっかりご機嫌になってしまった。

入店した時間が早かったのか、ワタクシたちだけだったのが店を出る頃には満席になっていた。名古屋から名鉄で4〜50分の名鉄西尾駅から徒歩7〜8分のところにこういう隠れ家的なお店があるというのは、この辺りの文化度、民度の高さと、鳥山社長のセンスの良さを感じた。

『はと屋』の歴史

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すっかり、夜も更けたのに、せっかく来られたのだから、と味噌蔵の他、「みそぱーく」をご案内下さった。来る時は、すでに暗くなっていたので、何気なく通り過ぎてしまったのだが、はと屋さんの所有する6797㎡の敷地と2932㎡の蔵等の建物を利用して、何棟も建物が並ぶ、かなり大きな施設であった。なんと、木造館という、木造住宅展示場?まである。

「弊社は、江戸時代中期、初代の鳥山傳兵衛以来、両替商や質屋を営んできました。現在の味噌溜(みそたまり)醸造業を創業したのは、江戸時代末期、文久元(1861)年、五代目、傳兵衛の時です。」

「『はと屋』と言う屋号の由来ですが、当時はまだ、「○○味噌」「○○醤油」という名前が普通でした。名付け親の先々代の7代目伝兵衛(幸一)は、ハイカラな人で、歌舞伎、土人形、鳩のコレクションなどの多趣味が高じて、昭和2(1927)年、当時の作詞作曲の名コンビ『中山晋平』氏と『野口雨情氏』を西尾に招き、『西尾小唄』と自社の宣伝歌を依頼しました。今でいうコマーシャルソングのハシリですね。」

「歌詞には「鳩さん、鳩さん、豆が好き、お味噌は豆から味噌も好き」というフレーズがあります。デザインにも凝って、名古屋の画家『伊勢門水』氏に頼んだのですが、このデザインの中にも『鳩は可愛い おみそはおいしい』というコピーがあります。つまり、味噌の原料は豆、鳩は豆が好き、豆つながりで、『はと屋』というわけです。」

『みそぱーく』とは?

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「私は、外食産業に就職した後、家業の株式会社はと屋に入社し、平成元(1988)年に、父から代表取締役を引き継ぎました。社長に就任してから、社内体制の再構築に取り組み、当時の主力社員たちが定年退職を迎えていた頃だったので、大幅な若返りを図り、モチベーションとモラルの向上に力を入れました。それから、かつては、食の現場は家庭にあり、おふくろの味、手作りの味が、家族の心と身体の健康の源でした。」

「それを取り戻すためには、醸造業を生業として、どうお手伝いできるかを考え、インスタント全盛の今の世の中で、食とは、本来、手間、暇、愛情をかけるものであり、『はと屋』は、家庭では絶対にできないものを醸造し、歴史と伝統のこだわりを商品化してご提供すると決め、その商品をどのように家庭で使ってもらえるようにするかまで提案することにしました。」

「先行して、平成18(2006)年6月に、味噌料理と自然食が楽しめる『味噌料理自然食ビュッフェ伝』をオープンし、平成21(2009)年1月に、『赤白おでん・鶏料理 傳の蔵』、さらに、平成21(2009)年10月には、レストラン施設に加え、見る=味噌蔵・三河土人形・鳩ギャラリー、食べる=レストラン2店舗、体験=体験工房、買う=蔵売店・味噌醤油スイーツを楽しめる「はとギャラリー」を併設して、味噌醤油のテーマパークである『みそぱーく』を開園しました。」

『味噌料理自然食ビュッフェ伝』

ー 蜷川さんから聞くところによると、レストランも連日盛況だそうですね?

「おかげさまで、『味噌料理自然食ビュッフェ伝』は、味噌料理やおばんざいを中心とした50種類のバイキングビュッフェで、味噌おでんや味噌カレー、味噌グラタン、肉ネギ味噌パスタ等、お好きなだけ召し上がって頂けます。料理レシピも『みそぱーく』のWebサイトで公開しています。」

日本一固い究極の豆みそとは?

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しんと静まり返った味噌蔵をご案内頂くと、ひとの背の丈よりもずっと高い木桶がずらりと並び、ほのかなみその香りが漂っていた。

「はと屋自慢の豆みそは、この百年蔵百年桶で三夏三冬以上熟成させた日本一固い究極の豆みそです。原料の大豆は、岡崎市で有機肥料づくりに情熱を注ぐ、小久井農場さんの有機肥料だけで作る特別栽培フクユタカを使用しています。特別栽培というのは、その農産物の生産過程等における節減対象農薬の使用回数及び化学肥料が、慣行農業のレベルの5割以下の栽培方法です。」

「そして、塩は、瀬戸内海産の業務用藻塩を使用し、岡崎の八丁味噌と同じように、大豆100%を味噌玉麹にします。味噌作りの過程で一番気をつかうのが、この麹造りです。味噌玉を室(麹を造るための部屋)に入れ、4日間つきっきりで麹付けを行います。できた味噌玉麹の表面には、うぶ毛のような菌糸がびっしりと繁殖します。これを潰して、塩水と仕込みますが、水分が少ない硬仕込みが特長です。」

仕込木桶と土蔵と重石

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「仕込む木桶は百年使用している杉の六尺(181.8cm)桶、その桶が並ぶ味噌蔵も一番古い蔵は1904年築の百年蔵です。この桶と蔵に長年住み続けている菌たちが、美味しい味噌作りの重要な役割を担っています。水分を少なく仕込むために、長期の熟成と多くの重石が必要となります。」

「八丁味噌はピラミッド状に積みますが、はと屋は俵状に積みます。はと屋の場合、桶の味噌4tに対して重石を約200個、2.5tほど積みます。これだけたくさんの重しをすることで、桶全体の熟成が均一になり、水分が調整されて、固い豆味噌になります。そして、はと屋の参年仕込みは三夏三冬以上の長期熟成が規格となっています。」

味噌の健康効果

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「味噌の健康効果としては、高血圧の抑制、コレステロールの低下、過酸化脂質の生成抑制、老化防止等、多くの効能が上げられています。そして、その多くが大豆の成分に由来するものです。米みそは大豆と米麹、麦みそは大豆と麦麹が原料ですが、豆みそは、大豆100%、しかも、原料の大豆を全て麹にする全麹仕込みですから、大豆成分が豊富で、健康には最強の味方です。」

「しかも、過酸化脂質の生成抑制、老化防止等に効果があるとされる『褐色色素』が、長期熟成豆みそには豊富に含まれています。褐色が究極に深まる三夏三冬仕込む参年仕込は、まさに最強の豆みその中でも更に最強と言えます。」

「それから、たまり醤油も大豆100%、味噌玉麹と塩水を木桶に仕込み、もろみを1年半熟成して造ります。商品名は『昔たまり』で、一般的な濃口醤油よりも旨味である窒素分が1.7倍もあり濃厚な味わいで、大豆からの旨味が充分楽しめる無添加自然食品です。旬の寒鰤は脂がのっているので、普通の醤油では粘度がなく、はじかれてしまいますが、五分たまりと云われる濃厚なたまり醤油は負けることなく、しっかりとからみます。」

はと屋の白しょうゆ

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ー 白しょうゆも造られているのですよね?

「はい、白しょうゆは、ご存知のように、蜷川さんの日東醸造さんがあるお隣の碧南市が発祥の地で、金山寺(味噌)の上澄みからヒントを得て生まれたとされています。」

「はと屋の白しょうゆは、昔ながらに木桶で濃目に仕込む、濃厚かつ芳醇で、光をかざすとまばゆい黄金色の醤油です。原料は小麦(9割以上)とわずかな煎り大豆で仕込みます。麦麹を造り、塩水と一緒に仕込み、約60日間の早期熟成で色を抑えます。短期間ながら、小麦のデンプン質を麹の酵素がしっかりと分解し、濃厚で芳醇な甘味が特長です。」

予約制の『味噌知る無料ツアー』とは?

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「こちらの味噌蔵は、作業がなければ、随時、見学が可能です。また、予約制の『味噌知る無料ツアー』というのもやっていて、味噌を知るミニ講座、味噌蔵を実際にガイド付きで見学できる『味噌知るツアー』を無料で体験して頂いています。しかも、こちらは、味噌醤油スイーツの試食や国産・粒甘味噌料理パンフレット、試供品のプレゼント、修了証の授与などの特典があります。」

「それから、体験館では、有料ですが、『オリジナルドレッシング教室』、『万能調味・そばつゆの素教室』、『味噌床・みそ漬け豚体験』等を5名以上から受け付けています。さらに、地域の畳屋さんとコラボして、豆畳や畳コースターを作成する畳体験教室を実施したり、金山寺作り体験、五平餅作り体験他、提携先へのご紹介もしています。」

家族の心と身体の健康の源である、おふくろの味、手作りの味の復権のために

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ー みそぱーく」の評判は如何ですか?

「味噌、醤油を作り、提供するだけでなく、その先の料理、菓子、食べ方、楽しみ方等のアウトプットも積極的に提案し、可能性を広げていきたい、と思ってつくりました。中心地から離れた、しかも表通りに面していないような場所ですから、お客様は来てくれるだろうかという心配も抱きつつのスタートでしたが、『みそぱーく』という名称の響きや面白さもあるのでしょうか、オープン直後から、メディアにも数多く取り上げられて、今では、市外からのお客様もたくさんお越し頂いています。西尾市はものづくりの里です。『いいものは伝わる』という信念からのチャレンジでもありましたが、地域や中心市街地のにぎわい創出につながればと思います。」

COREZO(コレゾ)財団・賞の趣旨をご説明し、受賞のお願いをしたところ、「なんだかよくわかりませんが、蜷川さんも受賞されているなら、いい加減な賞でしょうから。」とご承諾下さった。いい加減=just the righの賞であることは間違いないが、隣で、「そう、そう。」と頷いておられる蜷川さんがとってもBLKに見えたのは言うまでもない。

『みそぱーく』は、単に食品メーカーの工場併設直営レストラン施設ではなく、日本の醸造文化を体験、学習できる、提案型施設だったのである。蜷川さんからの前説がほとんどなかったので、食事に来たつもりが、「合鴨のローストたまりがけ」でスイッチが入って、鳥山社長のお話に聞き入ってしまった。改めてお伺いし、きちんと取材をさせて頂きたいと思う。

COREZO(コレゾ)「食の現場を家庭に取り戻したいと、伝統製法を守りながら、その先の食べ方、楽しみ方を提案し、新たな可能性を創る、味噌醤油醸造元9代目」である。

鳥山 欽示(とりやま きんじ)さんに関するお問い合わせは

メールで、info@corezo.org まで

※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、一切、返答致しません。

COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2014.10.28.

最終取材;2014.10.

最終更新;2015.03.22.

文責;平野 龍平

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