森部 啓助(もりべ けいすけ)さん

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COREZO(コレゾ)「あんしん環境保全型農業を推進する、門外不出、幻の柑橘『きず』の生産農家」賞

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森部 啓助(もりべ けいすけ)さん

プロフィール

福岡県筑前町出身、在住

森部農園 代表

九州環境保全型農業協同組合 理事

九州有機農業塾 塾長

経歴・実績

1957年 福岡県生まれ

1975年 農家を継ぎ、農業に従事

1980年 キュウリの栽培を開始

1998年 「きず」の栽培開始

ジャンル

農業/環境保全型農業

受賞者のご紹介

「きずこしょう」って何?

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2012年の春、武富 勝彦(たけとみ かつひこ)さんのご自宅にお伺いした際に、お目に掛かり、その後、中村 武夫(なかむら たけお)さんの天空の郷「とんこば」で一緒に宴会をした。

その時には、その日、獲って来られたイノシシと唐津で採って来て下さったハマグリをご馳走になった。「とんこば」の窯で焼いたイノシシのローストは抜群に旨く、「きずこしょう」を付けて食すと、さらに旨くなる。

「日本人で初めてスローフード大賞を受賞された武富さんから、「きずは、柑橘類で一番風味があって、おいしい。」と伺っていて、一度、食してみたいと思っていたのだが、なんと、森部さんはその「きず」の生産農家だった。

幻の柑橘「きず」とは?

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ネットで「きず・柑橘」を調べても、「木柚」、「木酢」、「貴酢」と漢字名もまちまちで、みかんを品種改良した柑橘類という説明も見かけたが、みかんとは全く風味が異なる柑橘類である。香りの高い柚子は皮に香味成分が多く含まれ、種が多く、果汁が少ないのだが、「きず」の皮も柚子とは違った香りの良さがあり、種が少なく、果汁がたっぷりなのである。

九州では、唐辛子をこしょうと呼ぶようで、九州でよく食される「ゆずこしょう」は、ご存知の方も多いと思うが、「きず」もその皮の香りの良さから「きずこしょう」もごく少量であるがつくられている。「とんこば」では、毎年、森部さんから「きず」を仕入れ、無農薬、無化学肥料で育てた胡椒(唐辛子)を使って、おかあさん(中村美津代さん)が、「きずこしょう」を手作りされているが、これが抜群にうまい。鍋物、汁物はもちろん、焼き鳥、焼きに肉、刺身にも合う、万能薬味である。手に入いる機会があれば、是非、味わって頂きたい。

森部さんが「きず」園を見学させて下さるとおっしゃるので、お伺いした。

福岡県筑前町のファーマーズマーケット「みなみの里」で待ち合わせをして、森部さんのご自宅に向かった。山の中のあるご自宅は乗って行った車のナビでは表示されなかった。そこで軽トラックに乗り換え、未舗装の山道をさらに山中に入って行くと、アミューズメントパークのアトラクション並のスリルが味わえる。しばらく登って、竹やぶを抜けると、急に視界が開け、山の斜面に「きず」園が広がっていた。

森部さんが育てている「きず」は、筑前町にある標高約400mの夜須高原だけで栽培されている柑橘類で、生産量も少なく、地域にあるゴルフ場の売店等でごく少量しか販売されていなかったが、評判が良かったそうで、1998年頃、町役場の職員(故人)が、地域の特産品に育てようと、森部さん他の地元の生産農家に「植えるとしたら、何本ぐらい植えれるか?」といったアンケートをとったそうだ。

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森部さんは「300本ぐらい。」と答えたところ、「苗木を準備したから植えて欲しい。」と言って来たので、仕方なく、ユンボで杉山を30アール切り開いて植えることになったという。そうして何軒かの農家が栽培を引き受けた。今でも、栽培を続けているのは6〜7軒だけで、年間の生産量は全体でも20t程度だという。

森部さんたちが育てている種が少なく、果汁が豊富な「きず」は、苗木自体も当地域以外へは門外不出になっているそうで、まさしく、幻の柑橘類なのである。

苗木を植えて約15年でみかんの木程度の大きさにしかならず、成長が遅いそうだ。実の大きさはスダチとカボスの中間ぐらい。森部家は16代続く、武家のお家柄だそうで、「きず」は平家の落人が当地に持ち込んだのではないかとおっしゃる。

森部家には「きず」の古木が植わっていて、今の「きず」の木は二代目で樹齢が100年程度だが、お父様の代に枯れた初代は樹齢約300年で、幹は両手で抱え切れない程の太さがあったそうだ。

しかし、ゆずと比べて、まだまだ、知名度が低いため、大きな収入にも成らず、出来るだけ手間を掛けたくないので、農薬をかけるどころか、雑草を刈り取って、隣にある竹林で収穫するタケノコの皮を堆肥に敷く程度で、その他は、ほとんど世話もしないという。

秋の収穫時期になると、地元のシルバー人財センターを活用して、2日で収穫して、全量加工業者に出荷してしまって、終了とのこと。

いわゆる放置プレイで、結果的に無農薬、無化学肥料栽培になっている。病気や虫害にも強いのだが、鹿の食害が一番の問題だそうだ。

森部さんが猟をする理由

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「この山の更に上の方も開墾して、きずを植えたのに、鹿にほとんど食われてしまったのよ。ユンボ借りて、労力と時間と、◯◯万円がパー、そりゃもう、ガックリくるよ。僕がね、猟を始めたのは、地域の食害を少しでも減らすためで、仕方なく、鹿や猪を駆除してしている。かわいそうだという人もいるけど、これ以上増やすと、山がダメになるくさ。僕らにとっては死活問題なのよ。」と、森部さん。

その日の夜は山中で、近所の方が釣って来られたという、なんと「関サバ」と「関アジ」の刺身と地鶏の鍋をご馳走になった。地鶏の鍋には自家製の「にんにくこしょう」がとてもよく合った(「みなみの里」で販売されている)。

森部さんは、農家を継いでから、お父様が栽培していた椎茸、タケノコと林業を中心にされていたが、久留米の市場の魚屋さんの紹介で、農学博士であり、樹医博士で、「農薬や化学肥料によって土が悪化している。子どもたちに安全な食を提供するためにも、健全な土を取り戻さなくてはならない。」という思いから、農薬を使わずに安全でおいしい野菜や米を育てる事が出来る土づくりに取り組んでおられる山口県の山本 德(やまもと のぼる)先生に出会い、そのご指導を受けた。

そして、1980年頃から、無化学肥料、減農薬で、きゅうり栽培を始め、朝採りで、高級野菜としてデパートに出荷するようになった。夜中2時に起きて、収穫を始め、6時には出荷というキツいスケジュールだったが、それなりの値段が付いた。しかし、周りが同じことを始めると、価格は下落し、ウマ味が無くなってしまった。椎茸、なめ茸の原木栽培も当初はかなりの儲けが出たが、周りが同じことを始めると一気に価格が下落してしまい、中国等からの大量に輸入されるようになると、勝負にならなくなってしまったそうだ。

「そんな現状で、状況は厳しいけど、ウチの集落は専業農家ばかりでね、みんなで協力しながら、工夫して、何とかやってますよ。」と、森部さん。

「九州環境保全型農業協同組合」と「九州有機農業塾」

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理事をしておられる「九州環境保全型農業協同組合」についても伺った。

「我々、農家は、気の遠くなるような長い時間をかけて地球の岩石を土へと変えてきた微生物達を、戦後の食料供給の名の下、近代農業と称して、知らず知らずのうちに、農薬、除草剤や化学肥料で殺してしまい、土を痩せたものにしてしてしまったのよね。」

「それでくさ、僕らはね、山本先生から学んで、農家が地球規模の驚くほど広範囲の環境を破壊し、次世代に多大な『ツケ』を残していることをより多くの人々に認識してもらい、自然に近い農法で栽培、収穫した農畜産物を提供することで、食を通じて、身体だけでなく精神面の健康も提供していこうと願って設立したのが『九州環境保全型農業協同組合』なの。」

「農薬、化学肥料、除草剤を使わずに農作を実施している先人達やそれを目指そうと努力している農家、学識経験者で構成され、長年培ってきた技術や知識を提供して、自然農法を目指す農家を少しでも増やそうと活動してるの。『九州有機農業塾』は、その勉強会。」

「具体的には、農薬、除草剤、化学肥料を使わずに、環境に負担を掛けない農業を目指して、滋養に溢れた健康な農産物を生産し、有機栽培の牧草と防腐剤、防黴剤、ホルモン剤等の化学薬品を使わない飼料で肥育した家畜を育てる。化学肥料の使用を止めると同時に、土着菌を補う菌体肥料である有機肥料を使い、安心・安全な作物本来の栄養と味をつくり出す、というような活動やね。」と、森部さん。

まだ春先だったので、「秋の収穫時期にまたおいで。」とおっしゃって頂き、その年の11月に「とんこば」の皆さんと再訪した。「とんこば」の皆さんは、10月の収穫時期(実が青い状態)の時にも来られたそうで、今回は実なり完熟(木に成ったまま実が黄色く熟している状態)の「きず」の収穫が目的だという。森部さんによるとその年はたくさん成った反面、実が小さかったそうだ。

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これは便利でうまい!万能調味料「にんにくこしょう」

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森部さんの「にんにくこしょう」の原料に使う、にんにくもこしょう(唐辛子)も、もちろん、無農薬、無化学肥料で栽培しておられて、畑も見せて頂き、収穫もさせてもらった。ちなみに、塩は武富さんの塩だとのこと。

猪肉を炭火で炙って、森部さんの「にんにくこしょう」で食べると、それはもう、サイコーで、ビールが進む、進む。

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料理をする人ならわかると思うが、ニンンクの皮を剥いて、きざむのは、結構、手間が掛かるし、手やまな板にも匂いがつくが、チューブに入って売っている「おろし生にんにく」には、きっとアレやコレやいろんなものが入っているのは間違いなく、あのエグい味がダメなので、この「にんにくこしょう」はとても重宝している。

「にんにくこしょう」は手軽に使えて、とても便利。ペペロンチーノなら、これをオリーブオイルで炒めて、パスタを絡めれば一丁上がり。中華の味付けは大抵これでOK。子供用に作ったカレーもこれを加えれば大人のカレーに大変身、とこれも万能調味料で、これを使い始めてから、生のにんにくを買ったことがない。

小分けにして、冷凍しておけば、長期保存も利く。

「『ゆずこしょう』と『にんにくこしょう』はウチで作っているけど、『きず』は加工業者に出荷して、その一部で、ウチの名前で『きず酢』と『ポン酢』をつくってもらってます。自分のところで生産した農作物を使って加工品を作れば、一番利益が上がるんだけどね、『きずこしょう』なんて、消費者は知らないし、作っても売れ残ったら困るし・・・、ね。」と、森部さん。

絶品食材調達の達人

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その他にも椎茸となめ茸の原木栽培の現場も見せて頂いたが、なめ茸は、天然モノが採れるのと同じ環境で栽培されていて、姿形は天然と区別がつかない。実際に、食べさせてもらったが、風味も天然モノと変わらない程、見事だ。

私が、九州に出かけ、「とんこば」さんでお世話になっていると、「平野さん、海うなぎって、食べたことある?」とか、いつもご自身で獲った食材を持って来て下さる。ご存知の方はご存知と思うが、うなぎは川から海に出て産卵してまた川に戻るそうなのだが、海にいるうなぎは金色に輝き、川うなぎとはまた別モンの美味しさだ。

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栽培されている野菜やご自身が獲った鹿やイノシシ、ヒヨドリはもとより、川に入って、ずがに(もくずがに)、すっぽん、鯉に鮒、釣りもされるので、カンパチ、シマアジ、イカとなんでもござれで、絶品食材調達の達人なのである。愛車には網、仕掛け、釣り道具、胴付長靴等道具が満載で、もちろん、助手席には、釣り新聞も…。

都会にいて、オイシイモンが食べたくなったら、森部さんのご尊顔が頭に浮かぶのである。

森部さんは、四国に息子さんがいらっしゃって、1回目の大歩危での表彰式から、3回連続でご出席頂いている。

人気が出て、入手難になるのは困るのだが、幻の柑橘「きず」のおいしさをより多くの人に知ってもらって、生産を続けて頂きたいものだ。

COREZO(コレゾ)「あんしん環境保全型農業を推進する、門外不出、幻の柑橘『きず』の生産農家」だ。

森部 啓助(もりべ けいすけ)さんに関するお問い合わせは

メールで、info@corezo.org まで

※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、返答致しません。

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COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿:2012.10

最終取材:2014.11

更新:2015.02.16

文責:平野 龍平

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