片上 裕之(かたかみ ひろゆき)さん

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COREZOコレゾ「淡く、旨みのある淡色天然醸造醤油、自己主張して暴れる醤油他、へんこで一途な生きざまを映す、他に比類のない、個性的な醤油づくり」賞

片上 裕之(かたかみ ひろゆき)さん

プロフィール

奈良県御所市森脇

片上醬油代表

受賞者のご紹介

無添加無調整の醤油づくり

日東醸造の蜷川社長から、和歌山に近い方の奈良でおもろいおっちゃんが木桶でおもろい醤油をつくっておられる、と聞いていて、伺う機会を窺っていたら、蜷川社長に連れて行ってもらうことになった。

片上醤油さんは、昭和6年の創業より、天然醸造の手法を守り、奈良県産大豆を主原料として、杉の大桶(計35本)の中で自然の季節のままに発酵熟成し、もちろん食品添加物等は使わない無添加無調整の醤油をつくっておられる醤油蔵である。主力は薄口だそうだが、濃口、再仕込もつくっておられる。

自称、2.5代目

「私の祖父が創業し、叔父さんが一旦継いだんですが、事情があって、別の仕事を始め、継げと云われていたら、天邪鬼なので、云われなかったので、農大の醸造科に進学し、醤油製造論は、不可のまま卒業して、継ぎましたので、3代目でもない、2代目でもない、自称、2.5代目です。」

醤油づくり教室は固定ファン獲得につながる

「最近、醤油のことにも詳しい方が増えていますが、詳しい人ほど、ご存じないところとの谷間が怖いほど深いですね。春先はできる限り醤油づくり教室をしているんですが、何回も続けて参加しているお客さんは、塩水に漬けた麹が醤油になっていくのを実体験されて、そういう谷間が埋まっていくのを実感しています。」

「自分でつくった醬油が無くなったら、自分のつくったもろみの兄ちゃん見に行こか、云うて来てくれはるんです。その時には、大概、友だちも連れて来てくれて、私より上手に説明してくれはるんです。有難い話ですが、そんな私どものファンになって下さるお客様ができるのが、ワークショップのええとこかなぁと思てます。」

蜷川社長がしろたまりのワークショップを始められた時、自分でつくれてしまったら、商品が売れなくなるのでは?と心配したが、自社商品のファンを増やす効果があるようである。

「人間って美味しいものを求めているんですが、頭も納得しないと、本当に満足できないのじゃないかと最近よく思います。」

色は淡くて、“旨い”、製法的には相反する、淡色天然醸造醤油への挑戦

「今や私の得意技は薄口しょうゆみたいになっていますが、そんな窒素(うまみ成分)出してどうすんの?という、ある意味、薄口の素人やからつくれた品物なんです。」

「一般的にうすくち醤油は、塩辛く旨味も薄い物が多く、使い辛いとの声がありました。そこで、色は淡くて、“旨い”、製法的には相反する、淡色天然醸造醤油を目指しました。」

「丸大豆を使ってうまみ成分も濃口の特級ぐらい高い薄口の最大手メーカーの商品があって、そのうまみ成分を1割ぐらい上回る商品をつくる目標を立てました。原料には、着色成分の少ない麦を吟味し、大豆も着色成分を少なくできる工程を増やし、麹菌も普通は、全ての項目で及第点を取れる優等生タイプが使われるのですが、一芸にだけ秀でたヘンなヤツを使ったり、教えてもらったり、ありったけの技術をかき集めて、いろいろ試し、つくり始めて、10年掛かりました。」

「麹菌のコントロールは難しいもので、胞子着生まで成長すると、色が出るんで、人間で云えば、高校生ぐらいの所で止めたいのですが、成長を止めるために温度を下げると、今度は今度は低温障害がでて、醤油が濁ると云う、どないせいゆーねん!と云う、ギリギリのせめぎ合いで、その狭いところを上手くやりこなさなければなりません。」

補助金を獲得して、麹室の設備を小さくする理由

「その麹づくりの精度を高めたいと、ものづくり補助金に申請したら、採用されちゃって、普通は、麹室の設備を大きくして、生産性も効率も向上するのが普通ですが、天邪鬼なので、小さくして、今の設備の能力を3分割して、一回に手入れできる適量になるようにする予定です。ま、自己資金をどうするか算段せんとあかんのですが…。針の穴を通すようなコントロールで、ピンと透き通った、薄口を安定してつくりたいですね。」

「ウチの蔵の発酵菌を調べてもろたら、初発酵の酵母だけで、熟成酵母がいないらしいんです。発酵始めたら、もっと行かんかい!どんどん行かんかい!全開で行かんかい!って云う発酵管理をしてきたんで、そりゃ、最後、ぼちぼちいくヤツがおらんのは、しゃぁないかなぁってとこです。普通は、乳酸菌がおって、主発酵の酵母がおって、熟成の酵母が最後、じわじわといくんですけど、ウチは、ガーンとわいて、ドーンと止まるんで、案の定、おらんかったんですわ。」

「そんなヘンな蔵なんですけど、蔵を世話する人間のクセとか、人柄とか、もろみとのやりとりとかで蔵の性格も決まるんで、仕方ないですね。それも特徴で、濃口も、オレがオレがと主張して、暴れる醤油なんです。」

「まあ、自分でも病的な天邪鬼だと思っていますが、自分の目の届く範囲で、自分の思うようにやりたいんで、自分の生きざまが蔵にも醤油にも出ていると思います。」

白身の刺身や冷奴にも合う薄口醤油

薄口醬油は、関西で好まれ、主に汁ものや煮物によく使われるのだが、濃口と比べると、一般に、色は薄く、うまみ成分は少なく、塩分濃度が高い。しかし、片上さん渾身の淡色天然醸造醤油は、おっしゃる通り、旨みのある薄口醤油。冷奴にかけてもいける、珍しい薄口で、平目の薄造りにスダチを絞って、ちょちょいとつけてみたが、白身の刺身の旨さが引き立ち、そこらで売ってる薄口とは、ひと味もふた味も違う。

片上さんと片上さんの蔵でしかつくれない薄口醤油である。

COREZOコレゾ「淡く、旨みのある淡色天然醸造醤油、自己主張して暴れる醤油他、へんこで一途な生きざまを映す、他に比類のない、個性的な醤油づくり」である。

最終取材;2018.07.

初稿;2018.08.

最終更新;2018.08.

文責;平野龍平

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