瀧澤 秀司(たきざわ ひでし)さん

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COREZO(コレゾ)「いいものは残したい、伝統の技が光る『せんたく』で再生可能な飯山仏壇づくりとまちづくり」賞

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瀧澤 秀司(たきざわ ひでし)さん

長野県飯山市

正雲堂瀧澤 房主

漆塗り・金箔職人

愛宕寺町つくろう会 会長

ジャンル

伝統工芸

仏壇製作

受賞者のご紹介

瀧澤秀司(たきざわ ひでし)さんは、長野県飯山市で仏壇店、正雲堂瀧澤を営んでおられる漆塗りと金箔の職人さんでもある。

2014年7月、東洋大学講師の道畑美希さんのご紹介で、飯山市を訪ね、お話を伺うことが出来た。

飯山というと、学生時代、戸狩や斑尾によく訪れたが、スキーをするだけの目的だった。市のWebサイトによれば、

飯山市は、長野盆地の北端で千曲川が流れ、新潟県と接している。天正7年(1579)上杉謙信が築城し、江戸時代は本多氏の城下町として、千曲川舟便の起点であり、物資の集散地として栄えた街であった。島崎藤村の代表作の冒頭の一節に、「さすが信州第一の仏教の地、古代を眼前に見るような小都会、奇異な北国風の屋造、板葺の屋根、または、冬期の雪除けとして使用する特別の軒庇から、ところどころに高く顕われた寺院の樹木の梢まで一すべて旧めかしい町の光景が香の烟の中に包まれて見える。」とある。

伝統的工芸品とは?

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ー こちらの前の通りには、仏壇屋さんがずらりと並んでいますね?

「飯山仏壇は、一定の地域で主として伝統的な技術又は技法等を用いて製造されているということで、伝統的工芸品産業の振興に関する法律によって、経産大臣から伝統的工芸品に指定されています。仏壇の産地としては、飯山の他には、西から川辺、八女福島、広島、大阪、京都、彦根、七尾、金沢、名古屋、三河、長岡、三条、新潟・白根、山形の全部で15カ所が指定されています。」

飯山で仏壇づくりが盛んになったのは?

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「上杉謙信が出城として築城した飯山は、城下町であり、城の防備のために寺を集めたという説もあって、この辺りは寺町でもあります。室町時代に北陸地方から伝播した浄土真宗が、飯山を中心とする北信地方に広く信仰され、昔の飯山小唄で、『寺は三十六、鐘なら愛宕』と唄われているぐらいお寺が多く、今でも17カ寺程が残っています。」

「この地で、いつ頃から、仏壇作りが始められたのかという確かな記録はありませんが、一番古い仏壇屋さんで創業300年と云われ、ウチはそこから別れて、私が4代目で、約120年続いています。木材などの仏壇原材料が地元にあり、清澄な空気と湿度等の気候風土が漆塗りに適していて、豪雪地帯であったことも、冬期の手仕事として盛んになった理由ではないかと云われています。

まちづくりにもご尽力を?

「この前の通りは、『愛宕町雁木通り』とも呼ばれていまして、『雁木(がんぎ)』とは雪よけの屋根のことで、冬を快適に過ごすための雪国ならではの知恵と工夫ですね。今あるような立派なものではなかったのですが、昔から、それぞれの店舗の前に庇を出して、雪が降っても人が通行できるようにしていました。」

「22〜3年前のことですが、今、72世帯ある住民全員が会員になって、『愛宕寺町つくろう会』が発足しました。初代会長は、公民館長だった方になってもらい、その当時の町長と交渉して、町との協議も重ね、この通りだけ、約300mに渡って、雁木整備事業として、全部やり直してもらいました。」

「この雁木が再現された通りには、全国的にも珍しく仏壇店が軒を連ねていることから、別名「仏壇通り」とも呼ばれています。完成して、16〜7年は経っていると思いますが、現在、私が3代目の会長をしています。」

愛宕町に『銀座の柳』があるワケ

「また、私たちの会の活動を通じて、『銀座の柳』を愛宕に寄贈して頂いて、住民が世話をしています。『銀座の柳』というのは、明治時代から銀座の風物詩だったのですが、東京大空襲の時にほとんどが焼失し、補植したのも枯死してしまったそうです。後に、地元の有志の皆さんが圃場に残っていた柳を見つけ、接ぎ木で復活させて、植樹し、日本各地にもその柳の子孫を寄贈する活動をされています。」

『愛宕寺町つくろう会』の活動とは?

「『愛宕寺町つくろう会』には、観光企画部会、自然環境部会、街路部会の3つの部会があって、観光企画部会では、『愛宕町の雁木通り』を花でいっぱいに飾り、住民総出で来訪者をもてなす『いいやま花フェスタ』を毎年10月の第1週の土日に開催しています。私は、その実行委員長もしています。また、この通りにも小さなお寺ですけど、5〜6ヵ寺あるので、寺巡りもしてもらおうと、それらの寺社仏閣のお宝を無料で拝観できる「寺宝展」も同時開催しています。今年で14回目を迎え、昨年は、約8,000人の方々に訪れて頂きました。」

「街路部会では、雁木の維持管理と、この辺りは雪が多いので、雪下ろしを住民たちでひと冬2〜3回実施しているのですが、その運営の管理もしています。各戸間口1mに付きいくらというように積み立てて、実際に作業をしてくれた人への手間賃の原資としています。」

仏壇屋さんの分業とは?

「仏壇屋が仏壇製作の全ての工程を担ってつくるのではなく、木を組んで仏壇の入れ物を造る『木地』屋さん、それに合う仏像を収める宮殿(くうでん)をつくる『宮殿』屋さん、彫刻をする『彫刻』屋さん、金具を造る『金具』屋さん。蒔絵を描く『蒔絵』屋さんがあり、通常、仏壇屋には、白木で来るので、下地をして、『漆塗り』をし、『金箔』を置いて、組み立てて、販売します。このように、仏壇をつくる工程は全部で7工程あって、6業種で分担して作業しています。」

仏壇屋さんの軒数は?

「飯山仏壇事業協同組合というのがあって、私が理事長をやっていた14〜5年前には、仏壇づくりに関連する30数業者が加盟していましたが、その頃から、仏壇の需要が減り始めて、今は17業者です。その間に、この通りの仏壇屋さんも3軒廃業しました。」

飯山仏壇の特徴とは?

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「まず、『肘木組物(ひじきくみもの)』ですね。肘木というのは、寺院の建築でもよく見かけると思いますが、前後または左右に腕のように渡した横木で上からの荷重を支える部材で、全て、木組みで差し込んでつくられています。」

「仏壇全体も組み立て、分解の作業性がいいように、ホゾとホゾ穴で組んであるので、古くなっても、分解して、汚れた部品を薬品で洗って、再塗装をする『せんたく』をして、再生することが出来ます。漆自体は水に強いのですが、表面にキズが入ったりすると、お供えの花の水やお茶、お酒等がこぼれたのが、内部に浸透して痛むんですね。いいモノなら、なるべく残したいですよね。」

「それから、『弓長押(ゆみなげし)』ですね。長押は、日本建築で見られる柱と柱をつなぐ水平材のことですが、襖の鴨居の上にある部材といえばわかるでしょうか?『弓長押』は、欄間の長押の部分が上側に弓状に切り込んだ形をしていて、宮殿がよく見えるようにする工夫です。あとは、扉に蒔絵を描くのも特徴ですね。」

仏壇に使われる樹種は?

「今は、コストの関係で、外材の米松とかが多くなりましたが、国産材では杉ですね。檜でつくれば一番いいんでしょうけど、値段が張りますから…。宮殿(くうでん)には、目が詰っていて細工がし易い朴ノ木(ほうのき)がよく使われていました。」

仏壇屋さんは仏像もつくる?

「いいえ、仏壇仏具といいますが、仏像は仏具で、仏壇とは別の職人、業者がつくります。名古屋が集積地になっていて、そこから全国に送られていますが、こちらも海外製品が増えているようです。」

仏壇の注文のしかたは?

「その宗派によって特別な決まり事やご要望があれば、各職人さんに別注をしますが、一般的には、標準型というのがあって、収める場所が、そのサイズに合わない場合は、拡げたり、縮小したり、調整をします。

仏壇はどのような時に売れ、その販売先は?

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「土地が動いたり、住宅の増改築、新築需要の多い時ですね。土地が売れると、ご先祖さまにも感謝の気持ちを伝えるとか、建て替えや新築の時には、仏壇も「せんたく」をしたり、新調しようという心理が働くのではないでしょうか。飯山仏壇の販売先は長野県内と隣接している新潟方面が多いですね。」

せんたくと新調の仕事はどちらが多い?

「新調も少なくなっていますが、古いのはそれ以上に出てこなくなりましたね。」

新調された場合、古い仏壇は?

「引き取ってきた古い仏壇は、毎年、8月14日に河川敷に集めて、お経を上げてもらって、焼却する供養祭を何十年も前から実施しています。多い頃には、7〜80本も供養をしていましたが、今は、その半分ぐらいです。」

今や、都会ではマンション住まいが増えて、仏壇を置くスペースもないのでは?

「その通りですね。私が30歳代の頃ですから、1980年代に、仏壇組合の青年部で長野県とその周辺地域まで聞き取り調査をしたことがあって、農村部では仏壇の所有率がほぼ100%に対して、都市部では約30%だったんです。あれから30年経って、30代になった人たちが家を新築する時に仏壇をつくるというのは考え難いですし、さらに所有率は低下しているのではないでしょうか?」

「こういう地方の寺町と云われたまちでさえ、人がお寺に集まらなくなったり、あるいは、お寺が人を集めなくなりました。私は今、64歳ですが、子供の頃は、お寺で昔の寺子屋のような催しや色々な行事があって、親に連れられてよく行ったものです。」

「節分の豆まきや幻灯機の映写会なんて覚えていますから、もっと、何かしらのお寺とのつながりがあったような気がするのですが、今は、そういうことが希薄になっていますよね。そんなことも、仏壇が売れなくなっている背景にあるのではないかと思っています。」

伝統的工芸品の指定を受けるには?

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「この先も仏壇で国の伝統的工芸品の指定を受けるのであれば、その地域の職人さんがつくるものでなければならないのですが、それもままならない産地がぼちぼち出てきていますね。ここはまだなんとか全部賄えているのですが、2業種程、後継者がいないので、この先の心配の種です。」

「その産地で職人さんが揃わなくなれば、他の産地から調達しなければならない時代が来るでしょうね。そうなると、産地特有の特徴を出せなくなって、飯山でも、どこの産地でも同じような標準的な仏壇になってしまってしまう懸念があります。」

伝統的工芸品の指定を受けるメリットとは?

「初めの頃は、後継者育成事業なんかで色々補助金もあったのですが、今はそういうものもなくなりましたね。」

購入する人がいないとその伝統産業工芸品もつくり続けられないのでは?

「現実に、ウチでも海外生産の仏壇も扱っています。もう何年も前からですよ。こっちの業者が向こうに行ってつくらせているんですが、そうしないと商売が成り立たない現実もあります。少し前には、秋田の塗りの産地が仏壇づくりに参入して、低価格を武器に全国制覇をしたのですが、中国で生産されるようになると、またたく間に価格では勝負できなくなりました。別の産地で、京都の仏壇を真似て京型仏壇として低価格で販売していた業者も、いつの間にか海外生産の京型仏壇にしてやられました。」

「とにかく、安いところ、安いところに生産が移り、仏壇も国内生産は先細りで、自分で自分のクビを絞めているところがあります。金箔の産地は金沢と京都なのですが、今は、中国産等の海外産が結構入ってきています。衣類なんて、日本製を探す方が難しくなっているでしょ?みんなそうなっちゃってますよね。」

「産地同士が協力せざるを得ない時が来ても、職人の仕事は木地も塗りも、仕事や技術は大きく違うことはないので、形は違っても、見本さえ残っていれば、その産地の特徴を残すこともできなくはないとは思いますが、淘汰されて行くんだか、それとも、100年以上やって来たんだから、誰かしらが残ってやって行くんだか、それはわかりませんが、私たちは、今やれることを精一杯やるしかありませんね。」

今後の『愛宕寺町つくろう会』の取組み

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「2010年にウチの裏手に『高橋まゆみ人形館』というのができて、人は来るようになったのですが、観光に立ち寄るのは、そこ1カ所しかないんで、団体のバスが来ても、見学が済むとそのまま立ち去ってしまいます。できれば、まち中を歩いてもらえるように、もう1カ所でも立ち寄ってもらえる場所をつくるとか、何か方策を考えないといけません。」

「私が子供の頃は、金具屋さんがタガネで叩いているところだの、木地屋さんがカンナをかけているところだの、いろんな仏壇つくりの作業をこの通りの店頭で見ることができました。子供心にも楽しかったですから、今、まち歩きをしながら、そういうのをご覧頂けたら喜んで頂けたかもしれませんが、残念ながら、そういうお店は1軒だけになってしまいました。」

「飯山駅には、2015年に開業する北陸新幹線も停車する予定なのですが、首都圏からここに来る方は車の方が多い気がしますし、駅前は用地整備がされただけで何の開発の計画もないんですよ。結局、ここに暮らしている私たちが、この町をどうしてくのか考えて行動しなければ、町はよくなりませんし、将来も見えてきません。」

「寺巡り遊歩道の途中に、展示試作館・奥信濃という伝統工芸品の展示スペースがあり、20年ぐらい前に、仏壇組合の青年部が、そこのトイレに金箔を貼って、『純金極楽トイレ』にしたので、そこには、おもしろがって見に来てくれる人はいるのですが、それだけではなく、この通りには、団体客ではなく、まち歩き、寺巡りをして頂ける個人客をお迎えしたいと考えています。『いいやま花フェスタ』を続けていく中で、住民の皆さんと次のアイデアも練って、実行していきたいと思います。」

コレゾ財団・賞の趣旨をご説明し、受賞のお願いをしたところ、快諾して下さった。

COREZO(コレゾ)「いいものは残したい、伝統の技が光る『せんたく』で再生可能な飯山仏壇づくりとまちづくり」である。

 瀧澤秀司(たきざわ ひでし)さんに関するお問い合わせは、

メールで、info@corezo.org まで

※本サイトに掲載している以外の受賞者の連絡先、住所他、個人情報や個人的なお問い合わせには、一切、返答致しません。

COREZO(コレゾ)賞 事務局

初稿;2014.07.21.

最終取材;2014.07.

最終更新;2015.03.19.

文責;平野 龍平

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